執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
エナジードリンクが妊活男性に与える悪影響4選
元気が出る感覚を得たり、疲れや眠気を軽減するために飲まれるエナジードリンク。妊活のサポートに役立つのではとの考えから、エナジードリンクを積極的に飲んでいる男性もいるかもしれませんね。
しかし妊活男性とエナジードリンクとの相性は基本的によくないため、妊活中はエナジードリンクを控えるべきとの考え方が一般的です。まずはエナジードリンクを習慣的に飲むことで想定される、妊活男性への悪影響について解説します。
血糖値スパイクが勃起力や精子の質を下げる
エナジードリンクには砂糖をはじめとする糖類が数多く含まれています。糖分の補給は疲労回復に役立つほか、脳のエネルギー源として優先的に使用されるため、元気が出る感覚や作業のパフォーマンスが向上する感覚を覚えやすいでしょう。
一方でエナジードリンクのような液体に含まれる糖類には血糖値スパイクのリスクがあります。
血糖値スパイクによる高血糖状態では、活性酸素が増えることで血管や精巣が傷付いてしまいます。血管が傷付き弾力性を失うと、血流が滞り、勃起不全の原因になることも。
また精巣は活性酸素の影響を非常に受けやすい組織。精巣が血糖値スパイクによるダメージを受けると精子の量や質が低下するほか、性欲や性機能に関わる男性ホルモンのテストステロンの合成能力も落ちてしまうでしょう。
ブドウ糖の摂取により血糖値スパイクを人為的に起こした状態では、テストステロン濃度が平均で25%低下するとのデータもあるほど出典[1]、血糖値スパイクが精巣やテストステロンに及ぼす影響は深刻です。
また高血糖状態が生じやすい糖尿病患者においては、精子の運動性や精子のDNA、精液の成分など、男性の生殖能力への影響がもたらされやすいとも言われています。
とくに精子DNAの損傷は受精胚の質を落として着床率を低下させるため出典[2]、妊娠の成功率を大きく落とす可能性もあるでしょう。
勃起力の低下やテストステロンの減少、精子の質や量の低下をもたらしかねない血糖値スパイクは妊活の大敵。糖類が豊富なエナジードリンクの摂取はなるべく控えた方がよいでしょう。
高カロリーのため肥満を招きやすい
エナジードリンクには多量の糖類が含まれているため、1本あたりのカロリーもかなり高めです。
人工甘味料の使用割合が低いものであれば、100mlあたりのカロリーは30~50kcalほど。また清涼飲料水であるエナジードリンクは甘さと炭酸の刺激による「のど越し」がよいため、量が多いものでも一気に飲めてしまうでしょう。
仮に100mlあたり45kcal、1本あたり350mlのエナジードリンクを飲むと、摂取カロリーは157.5kcalとなります。炊いた白米100gが156kcalであることを踏まえると、カロリーの多さも際立つのではないでしょうか。
このような高カロリーのドリンクを1日に4本も5本も飲んでいては、カロリーの摂りすぎにつながります。消費しきれないカロリーは脂肪になるため、肥満のリスクを大きく高めるでしょう。
肥満により増えすぎた脂肪組織は炎症を起こしやすく、テストステロンを減らす炎症性サイトカインやアロマターゼといった物質の発生量を増やしてしまいます出典[3]。精子の質を低下させたり、勃起不全を生じたりするリスクも高まるため、妊活中は男性も体重管理に注意すべきでしょう。
人工甘味料の摂りすぎも肥満の原因に
エナジードリンクからのカロリーの摂りすぎを防ぐために、人工甘味料で甘く味付けされたカロリーゼロのものを選ぶ方もいるかもしれません。しかし人工甘味料もまた、肥満のリスクを高める危険物質であるため摂りすぎは危険です。
カロリーゼロであるはずの人工甘味料が肥満のリスクを高める理由は、人工甘味料の摂りすぎによる腸内環境の悪化にあります。
2019年にスペインのグラナダ大学から発表された論文では、スクラロースやサッカリンなどの人工甘味料を動物が摂取した場合、腸内細菌叢が変化したり腸内に炎症を生じたりする場合があると説明されています出典[4]。
腸内環境の悪化や炎症は肥満や糖尿病、動脈硬化症などとの関連が強く、リスクを高めるとされる危険因子出典[5]出典[6]。カロリーがゼロに近い人工甘味料でも、肥満や動脈硬化を通して、テストステロンの減少や精子の質の低下、勃起力の低下を招くかもしれません。
人工甘味料のエナジードリンクであればどれだけ飲んでもOK、との考えは危険です。妊活中のエナジードリンクは原則控えるべき、との考えでいた方がよいでしょう。
カフェインの摂りすぎによる不眠に注意
エナジードリンクの疲れや眠気を軽減する効果には、カフェインが関係しています。苦みの強いコーヒーと異なり、エナジードリンクはカフェインをおいしく摂れる手段として、若い年齢の方からも人気の高い飲料です。
もちろんカフェインにより元気が出る感覚は得られますが、摂りすぎによる不眠の傾向には注意が必要。夕方から夜間にかけてエナジードリンクを飲むと、カフェインが睡眠の質を下げるように働いてしまいます。
カフェインの覚醒作用により寝付きが悪くなるほか、利尿作用によりトイレが近くなるため朝を待たずに深夜や早朝に目覚めてしまうことも多くなるでしょう。
睡眠不足が妊活に与える影響は深刻です。慢性的な睡眠不足により、テストステロンが低下しやすくなることに加え出典[7]、勃起不全のリスクも高まることがわかっています出典[8]。
さらに睡眠不足は肥満のリスクを高めることでも知られています。睡眠不足は食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌量を減らし、食欲を増すホルモン「グレリン」の分泌量を増やすため、食欲のコントロールが難しくなり食べ過ぎてしまいやすくなるのです出典[9]。
4時間程度の短時間睡眠を2日間続けただけでも、食欲のコントロールが難しくなるとされています。カフェインをおいしく摂れるエナジードリンクは、飲む量に加えタイミングにも十分注意すべきでしょう。
こう飲もう!エナジードリンクとの正しい付き合い方
エナジードリンクに含まれる糖類やカフェインの摂りすぎは、妊活において悪影響をもたらすことがわかりました。
しかしエナジードリンクを習慣的に飲んでいる方においては、明確なゴールの見えない妊活期間中、ずっとエナジードリンクを断つことは難しいと感じるかもしれません。
そこでエナジードリンクの悪影響を抑えるために役立つ、飲み方や選び方の工夫について解説しましょう。
ノンカフェインやノンシュガーのものを選ぼう
妊活ファーストの食生活を整えたい場合には、妊活の妨げとなる可能性がある、糖類やカフェインを含まないものを選びましょう。
健康志向の高まりとともに、ノンカフェインやノンシュガーのエナジードリンクも増えています。夜間に飲む際にはノンカフェインのものを、血糖値の上昇やカロリーの多さが気になる場合にはノンシュガーのものがおすすめです。
さらに、カフェインと糖類を含まない「ノンカフェイン・ノンシュガー」のエナジードリンクも開発されているようです。
たとえば「2Energy」は、ゼロカロリーかつゼロシュガー、そしてカフェインフリーのすべてを実現しているため出典[10]、妊活中の男性にも影響が少なく、飲みやすいでしょう。
(出典:https://2foods.jp/pages/2energy?srsltid=AfmBOooPxCc5NJx3VkN1cT7KroSykDYIkHldGKUXwHSpuQkikocuXB0m)
ただし、糖類やカフェインを完全にカットしただけの清涼飲料水からは、エナジードリンクとしての効果をほとんど期待できない点に注意が必要です。
一方で「2Energy」はこの問題を解決するため、カフェインと同じく脳を活性化させる働きが認められた、Zynamite®と呼ばれる物質を使用しています。
カフェインの過剰摂取で生じやすい、血圧の増加や動機といった副作用も見られないことから、Zynamite®は安全なカフェインの代替品として捉えられているのです出典[11]。
糖類やカフェインを避けつつ、エナジードリンクの効果を得たい方には「2Energy」の使用がおすすめです。
1日1本までを目安に
カフェインや糖類を含まないエナジードリンクにも、人工甘味料は含まれています。先程の「2Energy」にもスクラロースの含有が確認されています。やはりエナジードリンク特有の味わいを出すためには、何らかの甘味料が必要ということですね。
人工甘味料の摂りすぎもまた、腸内環境の悪化を通して肥満や動脈硬化のリスクを高めます。カロリーがないからといって、1日に4本も5本も飲むようなやり方は避けましょう。
妊活への影響を抑えつつエナジードリンクを飲む場合には、やはり1日1本までを目安にすべきです。カフェインの少ないものが望ましいものの、一般的な高カフェインのものを飲む場合には、睡眠への影響が出ない日中の摂取を心掛けましょう。
水分補給の感覚でエナジードリンクを飲んでいるような方は、まず炭酸水への移行をおすすめします。甘さは感じられないものの、エナジードリンクの炭酸ガスに似た刺激が得られるため、カフェイン、糖類、人工甘味料をストレスなく抑えやすいでしょう。
ほかの飲み物での代替も検討しよう
エナジードリンクの疲労の軽減や眠気覚ましの効果を期待している場合、カフェインフリーのエナジードリンクでは意味がないと感じるかもしれません。
エナジードリンクによる効果を目的に飲み続けていた方の場合は、同様の効果を得られるドリンクでの代替を検討する必要があるでしょう。
たとえばカフェインを摂りたい場合には、コーヒーや緑茶、紅茶からの摂取をおすすめします。とくにコーヒーはエナジードリンクよりも安価で購入でき、高濃度にカフェインが含まれています。
ブラックで飲めば肥満のリスクも抑えられるほか、脂肪燃焼のサポートに役立つポリフェノール「クロロゲン酸」も同時に摂取できるため、妊活中の体重管理のサポートとしておすすめです。
また、エナジードリンクに含まれていることが多いアルギニンには血流改善効果があるため出典[12]、勃起力の向上に役立つのではと考える方もいるかもしれません。
ほかの飲料で血流改善効果を期待する場合には、ポリフェノールが豊富な緑茶や赤ワインなどの摂取がおすすめです。
とくに緑茶のカテキンにはエネルギー消費を高める効果もあり、カフェインとあわせて肥満の改善に高い効果を発揮することがわかっています出典[13]。妊活中の体づくりに、ぜひ緑茶を活用しましょう。
なお、緑茶やコーヒーのカフェインにも当然ながら睡眠への影響があるため、夕方以降の摂取を避けることを忘れずに。
まとめ
疲れの軽減や眠気覚ましに役立つエナジードリンクですが、妊活中は原則控えるべき飲料。糖質の摂りすぎによる血糖値スパイクや肥満、カフェインの摂りすぎによる睡眠不足は、テストステロンの減少、勃起力の低下、精子の量や質の低下など、妊活におけるさまざまな悪影響をもたらします。
妊活中、どうしてもエナジードリンクを飲みたい場合には、糖類あるいはカフェインを含まないものを選ぶとともに、人工甘味料の摂りすぎによる悪影響を避けるため、1日1本までに留めるようにしましょう。
エナジードリンクの味わいを捨てきれない場合には、似た刺激を得られる炭酸水の活用もおすすめです。眠気覚ましにはコーヒー、血流改善には緑茶、といった飲料への代替も検討しましょう。
妊娠の成立には女性と男性、両方の協力が重要です。体重管理や体質改善のため、エナジードリンクを飲む際には種類や量、タイミングに十分注意しましょう。
出典
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