執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
イソフラボンってどんな成分?
女性に嬉しい成分と言われる”イソフラボン”。
じつは、イソフラボンは男性の健康や若々しさの維持にも役立つことをご存知でしょうか?
まずは、イソフラボンの効果や摂取源について確認しましょう。
大豆由来の抗酸化物質
イソフラボンは、ダイズイン、ゲニスチン、グリシチンなどの大豆のえぐみ成分の総称です。
フラボノイドの一種に分類されるため抗酸化作用があり、酸化ストレスの低減のほか、さまざまな健康効果が期待されているんです。
例えば女性においては、イソフラボンが女性ホルモンであるエストロゲンの作用をサポートすることで、更年期障害における体調や精神のゆらぎの安定化に役立つとされています。
また、エストロゲンは骨からカル シウムが溶け出すのを抑える働きがあります。
閉経によりエストロゲンの分泌が低下すると急激に骨密度が減ってしまいますが、イソフラボン摂取により閉経後の骨粗鬆症を予防することが期待できるんですね。
大豆製品やソイプロテインが主な摂取源
イソフラボンは”大豆”の胚芽に多く含まれます。
よって、豆腐、豆乳、納豆、きなこ、厚揚げ、ソイプロテインなど、ほぼすべての大豆製品にイソフラボンは含まれます。
大豆製品に特有の成分として、イソフラボンと「サポニン」も有名ですよね。
サポニンは、大豆の加工により含有量が大きく減少するため、製品により摂取が期待できないものがあります。
例えば、豆腐や豆乳はサポニン含有量が大きく減少するんです。
また、食物繊維も同様で、豆腐や豆乳は食物繊維がほとんど取り除かれてしまいます。
一方、イソフラボンは製品や種類により含有量の差はあれど、大豆製品全般から摂取できるのが特徴。
特にきな粉や揚げ大豆は、大豆よりも100gあたりのイソフラボン含有量が多いんですよ出典[1]。
このように、イソフラボンはほとんど全ての大豆製品に含まれる成分と言えるでしょう。
男性がイソフラボンに期待できる効果とは
ここからは男性がイソフラボンに期待できる効果についてご紹介します。
アンチエイジング
アンチエイジングとは「抗加齢」「抗老化」のことで近年注目を浴びていますよね。
アンチエイジングの天敵であるのが、活性酸素による酸化ストレスです。
体内で酸素を消費しエネルギーを生成する過程で生じる活性酸素は、肌の細胞を攻撃することでコラーゲンやエラスチンの生成に影響し、肌の老化を促進させます。
そこで、美肌やアンチエイジングに欠かせないのが抗酸化作用。
イソフラボンの抗酸化作用により皮膚の酸化ストレスが抑えられ、アンチエイジングに繋がることが期待できるんです。
実際に、イソフラボンには肌のアンチエイジング効果や抗酸化能力を高める働きが確認されています。
ラットにイソフラボンを週5日間投与した研究では、イソフラボンを投与していないラットと比べて、皮膚表皮の厚さと真皮のコラーゲン繊維、弾性繊維の量が有意に増加したことが示されました出典[2]。
またこの研究では、イソフラボンを投与したラットでは活性酸素を除去する抗酸化物質「スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)」の濃度が37%以上増加したこともわかっています出典[2]。
イソフラボンは、肌のアンチエイジングや美肌に効果があると言えそうですね。
コレステロール値の改善
コレステロールには、LDL(悪玉)コレステロールとHDL(善玉)コレステロールがありますが、血中で増えすぎると動脈硬化の原因となるのがLDLコレステロール。
増えすぎたLDLコレステロールは血管を傷つけやすい酸化LDLへと変性し、血管内皮に沈着して血管の弾力性を奪ってしまうんです。
大豆イソフラボンには、動脈硬化を予防するカギとなる「LDL受容体」の活性を高める効果が確認されています。
LDL受容体の役割は、血中のLDLコレステロールを捕まえて細胞に取り込むこと。
LDL受容体が活性化すれば血中のLDLコレステロールの量を減らせるため、血管への酸化LDLの沈着を防ぐために役立つでしょう。
実際に、マウスにイソフラボン強化食を与えた研究では、イソフラボンを強化していない食事を与えられたマウスよりも血漿コレステロール値が30%低く、アテローム性動脈硬化の程度が大幅に減少したことが示されました出典[3]。
コレステロール値が気になる人、動脈硬化を予防したい人はイソフラボンの摂取がおすすめです。
薄毛やニキビの改善
薄毛やニキビに悩む男性は少なくないでしょう。
じつは、男性ホルモンであるテストステロンの変化が、薄毛やニキビの原因のひとつになっていることをご存知でしょうか?
テストステロンの一部は、体内にある酵素「テストステロン5α-レダクターゼ」の作用を受け、「ジヒドロテストステロン」に変化します。
ジヒドロテストステロンが過剰生成されると、脱毛や薄毛、ニキビなどの原因となるほか、前立腺肥大症のリスクを上げることにもつながるんです。
そして、イソフラボンはテストステロン5α-レダクターゼを阻害する働きがあり、ジヒドロテストステロンの生成を抑制することがわかっているんです。
実際に、ラットから抽出したテストステロン5α-レダクターゼを用いた研究では、イソフラボンの投与によりテストステロン5α-レダクターゼの働きが阻害されたことが明らかになりました出典[4]。
イソフラボンは薄毛やニキビの原因になるジヒドロテストステロンの生成を抑えることで、男性の容姿にプラスに働くことは間違いないでしょう。
前立腺肥大や前立腺がんの予防
70歳以上の男性の約70%以上が発症すると言われる前立腺肥大症出典[5]。
前立腺肥大症は、悪性の腫瘍であれば前立腺がんに、良性でも放置すると尿路感染や膀胱結石などのリスクにつながります。
高齢になるにつれ前立腺肥大症の発症リスクが上がりますが、じつは30歳前後から前立腺の肥大は始まっていることがわかっているんです出典[6]。
よって、若いうちから予防を心掛けることで発症を抑制できる可能性がありますね。
そこで役立つのがイソフラボンです。
前立腺肥大症や前立腺がんは、イソフラボンを多く含んだ食品の摂取によって発症リスクが低下することがわかっているんです出典[5]。
実際に、41人の前立腺がん患者に対し平均5.5カ月間イソフラボンを補給してもらい、前立腺肥大や前立腺がんで上がる血清PSAというマーカーを検査する研究が行われました。
その結果、イソフラボン補給により血清PSA上昇率が14%から6%にまで抑えられたことが示されたんです出典[7]。
また、40~69歳の男性約43,000人の食生活を11~14年間調査し、イソフラボン摂取量と前立腺がん発生率との関連を調べた大規模な研究結果では、イソフラボンの摂取量が多いグループで限局性前立腺がんのリスクが低くなったことも示されました出典[8]。
つまり、前立腺肥大症や前立腺がんをすでに発症した人にとっても、まだ発症していない人にとってもイソフラボンは効果があると言えるでしょう。
成人から高齢まで幅広い男性に、前立腺肥大や前立腺がんの予防のためのイソフラボン摂取をおすすめします。
骨粗鬆症の予防
イソフラボンと言えば、閉経後に女性ホルモンが減少することで起こる骨粗鬆症を予防すると聞いたことがある人もいるでしょう。
じつは、イソフラボンは女性だけでなく男性においても、骨粗鬆症の予防に役立つ可能性があるんです。
イソフラボンの一種であるゲニステインには、骨密度の低下を予防する効果が示されています。
雄のマウスに対し、精巣を摘出し骨密度が低下しやすい状態にしたのち、ゲニスデインを投与し骨量を測定する実験が行われました。
その結果、精巣摘出により骨密度が3.8mg/cm²低下したのに対し、0.4mg/日のゲニステイン投与で3.2mg/cm²の低下に、0.8mg/日の投与で1.6mg/cm²の低下にまで抑えられたことがわかったんです出典[9]。
寝たきりの原因になる骨粗鬆症を予防するために、男性もイソフラボンがおすすめです。
男性がイソフラボンを摂る際の注意点
男性の健康や若々しさに効果をもたらすイソフラボンは、どれくらいの量を摂取したら良いのでしょうか?
ここからはイソフラボンの摂取量について解説していきましょう。
摂りすぎは男性ホルモンを下げる可能性
イソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンに似た構造をもつことから「植物性エストロゲン」と呼ばれます。
エストロゲンに似た働きをする作用もあるため、男性ホルモンであるテストステロンに影響を及ぼさないか心配な人も多いかもしれません。
具体的には、イソフラボンが体内のエストロゲン受容体に作用し女性ホルモン様の働きをすることで、テストステロンの合成が抑制されてしまう、という噂があるんです。
テストステロンは男性ホルモンの代表格であり、筋肉の発達や男らしい体を作るだけでなく、勃起や精子形成などの男性機能や性欲にも重要な役割を果たすホルモンです。
イソフラボンの摂取により、テストステロンが低下してしまうのは事実なのでしょうか?
結論、”テストステロンには影響を及ぼさない”と結論付けられた研究がほとんど。
しかし、一部の報告ではイソフラボンの摂りすぎによりテストステロンが低下したというデータが存在するのも事実です。
実際に、イソフラボンを1日100mg以上摂取した8件の研究のうち、2件でテストステロンが減少していることが明らかになっています出典[10]。
イソフラボンの恩恵を受けながらテストステロンに影響を及ぼさない、適量のイソフラボン摂取を心掛ける必要があります。
1日75mgを超えないように調整しよう
それでは、適量のイソフラボン摂取量とはどれくらいなのでしょうか?
日本の食品安全委員会が発表している声明では、大豆イソフラボンの安全な1日摂取目安量の上限値は70〜75mg/日とされています出典[11]。
それでは、大豆製品におけるイソフラボン含有量を確認しましょう。
食品 | 平均含有量(mg/100g) |
きな粉 | 266.2 |
揚げ大豆 | 200.7 |
大豆 | 140.4 |
高野豆腐 | 88.5 |
納豆 | 73.5 |
煮大豆 | 72.1 |
味噌 | 49.7 |
油揚げ | 39.2 |
豆乳 | 24.8 |
豆腐 | 20.3 |
おから | 10.5 |
醤油 | 0.9 |
厚生科学研究(生活安全総合研究事業)食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)出典[1]より
きな粉はイソフラボン量がかなり多いように感じますが、1食あたりで換算するとそこまで多量ではありません。
実際に、イソフラボン量75mg/日を上限に、1日で摂れる大豆製品の組み合わせを紹介しましょう。
【大豆製品の組み合わせとイソフラボン量(mg)】
・納豆 1パック(40g:約30mg)+豆腐 半丁(175g:約35mg)
→イソフラボン量の合計:65mg
・ソイプロテイン 1杯(200mL:約50mg)+きな粉(10g:約25mg)
→イソフラボン量の合計:75mg
・煮大豆 小鉢1皿(50g:約35mg)+油揚げ みそ汁1杯分(20g:約8mg)+豆腐 みそ汁1杯分(30g:約6mg)+豆乳 (100mL:約25mg)
→イソフラボン量の合計:74mg
ソイプロテインや豆乳などはイソフラボン量が多くなりやすいため、大豆由来のドリンクは1日1杯までにとどめておきましょう。
1食につき大豆製品の入った料理が1品ある程度であれば、イソフラボンが上限目安量を大きく上回ることはないでしょう。
安全な摂取量を意識したい場合には、1食につき1品、かつ1日2回までを目安にするとよいかもしれませんね。
まとめ
イソフラボンは女性だけでなく、男性の健康や若々しさにも効果のある成分です。
肌のアンチエイジング、コレステロール値の改善、薄毛やニキビの改善、前立腺肥大や前立腺がん、骨粗鬆症の予防にも効果があることが示されています。
ただし、イソフラボンの摂り過ぎには注意が必要。
イソフラボンはエストロゲンに似た働きをする作用もあり、摂り過ぎるとテストステロンを低下させるというデータが一部存在します。
イソフラボンを安全に摂るための目安は、1日あたり上限70~75mgです。
大豆製品に含まれるイソフラボン量を確認し、適量範囲内で効果的に摂取しましょう。
出典
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