グルタミン酸とは?5つの効果と適切な摂取方法
2022年11月25日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

グルタミン酸とは

まずはグルタミン酸の基本情報についてご説明します。

1.どんな栄養素?

グルタミン酸はアミノ酸の一種です。体内で合成することができるため、体たんぱく質の合成に欠かせない「必須アミノ酸」と区別して「非必須アミノ酸」と呼ばれます。

グアニル酸やイノシン酸と同様に、食べ物の「うま味成分」として知られていますが、うま味発見の礎となったのがこのグルタミン酸です。だしとして使われている昆布の煮汁からグルタミン酸が抽出されたことをきっかけに、味の要素である「甘味、塩味、酸味、苦味」に新しく「うま味」という要素が加えられました。

グルタミン酸は水に溶けにくく、そのまま添加してもうま味を感じにくいため、ナトリウムが結合した「グルタミン酸ナトリウム」の形を取ることで、溶けやすく使いやすい状態になり、かつより強いうま味を感じることができるようになっています。このグルタミン酸ナトリウムは「うま味調味料」として、特に和食の調味によく使用されています。

自然界のグルタミン酸は、ナトリウムだけでなくたんぱく質と結合した形で、あるいは単体で、あらゆる食品に存在しています。一般には食品内や体内にある「あらゆる形態のグルタミン酸」を考えるときにグルタミン酸という用語を使い、調味料として使用されるナトリウムとの結合物をグルタミン酸ナトリウムと呼んで区別しています。

 

2.体の中でどんな働きをする?

グルタミン酸はアミノ酸からのエネルギー生成の中心的役割を担うほか、様々な化合物の合成材料となり、各臓器で機能の保護などに役立てられています。

私達はグルタミン酸を日々様々な食品やうま味調味料から摂取していますが、グルタミン酸の摂取量が増大しても、血中のグルタミン酸濃度はほとんど変わりません。これは血中へグルタミン酸が移行するより前、すなわちグルタミン酸を吸収する場である腸でそのほとんどが消費されているためです。

私達が食品から摂取したグルタミン酸はそのほとんどが腸を中心とした消化管に留まっています。グルタミン酸はアンモニアと共に酵素の力を受けて「グルタミン」に変化したり、別のアミノ酸と共に「グルタチオン」を合成したりして、消化管の保護や胃腸機能の改善、免疫の向上などに役立っています。

また、グルタミン酸は脳においても重要です。グルタミン酸は非必須アミノ酸であるため体内で合成でき、脳ではグルコースから作られています。脳内の情報伝達を行うための「神経伝達物質」の材料として使われるため需要は高く、日々大量の合成と分解が繰り返されているのです。

 

3.どんな食材に含まれている?

グルタミン酸は、自然界では昆布や野菜類、チーズなどの発酵食品、味噌や醤油などの発酵調味料など、様々な食品に含まれます。一方、さとうきびを発酵させて作られるグルタミン酸ナトリウムは、調理の際にうま味を加えるための調味料として使用されます。

以下の表には、馴染みのある食品の中で特にグルタミン酸を多く含むものをまとめています。動物性食品では概ね多く含まれていますが、特にチーズやビーフジャーキーといった加工品の含有量が群を抜いています。植物性食品では大豆など、植物性たんぱく質の摂取源として優秀な食品に多く含まれる傾向にあります。
 

【グルタミン酸を豊富に含む食品(動物性食品(食品化合物を含む))とその含有量(100gあたり)】出典[9]

食品

100gあたりの成分量(mg)

ナチュラルチーズ(パルメザン)

9,900

ビーフジャーキー

9,200

するめ

8,900

豚肉(ヒレ、焼き)

5,900

鶏肉(むね、焼き)

5,800

しらす干し

5,600

鶏卵

1,700

牛乳

700

【グルタミン酸を豊富に含む食品(植物性食品(食品加工物を含む))とその含有量(100gあたり)】出典[9]

食品

100gあたりの成分量(mg)

大豆(いり)

7,400

アーモンド(乾)

5,500

えだまめ(冷凍)

2,300

昆布(つくだ煮)

1,700

ブロッコリー(ゆで)

640

アボカド

240

【グルタミン酸を豊富に含む食品(調味料)とその含有量(100gあたり)】出典[9]

食品

100gあたりの成分量(mg)

顆粒和風だし

25,000

固形ブイヨン

8,900

米みそ

3,000

こいくちしょうゆ

1,600

 

グルタミン酸に確認されている作用や効果

非必須アミノ酸であるグルタミン酸ですが、腸や脳に多く存在し様々な役割を持っています。この章ではグルタミン酸の作用や期待できる効果について解説します。

1.エネルギー生成のサポート

私達が摂取したたんぱく質はアミノ酸単位まで分解された後、「TCAサイクル」という代謝システムに入りエネルギーを産生します。このTCAサイクルに入る際に必要となるのが「アミノ基転移反応」であり、グルタミン酸が中心的な役割を果たしています出典[1]

全てのアミノ酸は名前の通り、分子構造として「アミノ基」を持っています。このアミノ基があるとエネルギーとして利用することが難しいため、アミノ基を取り外してからTCAサイクルに運ぶ必要があります。ここで取り外されたアミノ基がα-ケトグルタル酸というものに移ることでグルタミン酸が生成されます。このように、グルタミン酸は代謝経路においてはアミノ基を引き取ることで生じ、他のアミノ酸をエネルギーとして利用しやすくする役割を担っているのです。

また、エネルギー需要が増した際には、グルタミン酸のアミノ基を外してα-ケトグルタル酸に戻すという「酸化的脱アミノ反応」を行うことで、TCAサイクルに入ることもできます。

その後、筋肉や消化管など、体の各器官でアミノ酸が利用されると、その代謝物として有害なアンモニアが生じます。グルタミン酸はこのアンモニアと結合し、酵素の反応を得てグルタミンと呼ばれる別のアミノ酸に変化することができます。グルタミン酸とアンモニアの結合は、有害なアンモニアを解毒の臓器である肝臓まで安全に運ぶ役割を担っているのです。

 

2.免疫力向上

グルタミン酸は、細胞に流れ込んだアンモニアと結合してグルタミンに代わり、アンモニアを無害化した状態で外に出すことができます。細胞の中に入り込んだアンモニアがそのまま留まると、エネルギー生成の場所であるミトコンドリアの働きが損なわれてしまいます。アンモニアが過剰に増えることでエネルギー不足を引き起こし、疲労しやすくなったり免疫力を低下したりしてしまうため、アンモニアの管理を担うグルタミン酸は免疫の維持においても重要です。

更にグルタミン酸の免疫調節作用として、T細胞の活性化やB細胞免疫グロブリンの産生といった細胞免疫の管理に不可欠である可能性も、全身性免疫細胞で実施された研究において指摘されています出典[2]

このようにグルタミン酸は、アンモニアの管理や免疫細胞の調節といった役割を持つ栄養素として、特に重要視されています。

 

3.血圧を下げる

グルタミン酸を積極的に摂取することで、血圧管理によい効果をもたらすのではという可能性が指摘されています。

成人女性を対象とした横断研究において、総たんぱく質の摂取量が多いほど、またグルタミン酸、ロイシン、チロシンの摂取量が多いほど血圧が低下しており、動脈硬化のリスクが低減されていたことが報告されました出典[4]。また中国、日本、イギリス、アメリカの四か国の40~59歳を対象にした横断研究においても、食事由来のグルタミン酸摂取量が多いほど、血圧が低下していたことが明らかになっています出典[5]

グルタミン酸を含めたアミノ酸が血圧低下をもたらすメカニズムについては完全には特定されていません。化合物であるグルタチオンの持つ抗酸化作用により、血管の酸化ストレスが低減され動脈硬化を防いでいるのではとも考えられますが、推測の域を出ない状況です。しかしこれらの研究により、心血管疾患の予防としてグルタミン酸を含めたアミノ酸の摂取が有効である可能性も指摘されており、グルタミン酸が血圧の管理によい影響を与える栄養素であることは証明されつつあるようです。

 

4.脳機能をサポート

グルタミン酸は脳においてグルコースから生成されており、神経伝達物質として機能しています。

神経伝達物質には、意欲や集中力の向上をもたらす興奮性のドーパミンやアドレナリン、気分の落ち着きや不安の解消をもたらす抑制性のセロトニンやGABAなどがありますが、グルタミン酸は興奮性のものに該当し、脳機能を活性化させ、意欲や集中力、記憶力を高めたり、認知症を予防したりする効果があるとされています。

しかし同じ神経伝達物質であるGABAの供給源として、グルタミン酸を材料にした合成経路があることが判明しています。抑制性のGABAが興奮性のグルタミン酸から作られる、という関係性により神経伝達物質のバランス調節が容易になり、精神を安定化させることに役立っていると考えられています出典[6]

また、グルタミン酸はアンモニアと共に酵素の影響を受けることでグルタミンに変化します。この反応により脳のアンモニアがグルタミンに変換されるため、アンモニアが無毒化されます。アンモニアは脳を含む様々な臓器でのダメージとなるため、グルタミン酸はアンモニアを処理する役割を担うことで脳機能の保護にも役立っていると考えられています。

 

5.満腹感の向上

基本味である甘味、塩味、酸味、苦味、うま味はどれも食べ物の「美味しさ」を支える重要な要素であり、食事に楽しさや充足感を与えることに役立っています。中でも「うま味」には食事に対する満足感を高め、過剰な食事摂取を防いでくれる効果があるとして注目が集まっています。

正常体重の女性を対象とした介入研究において、ブイヨンスープにグルタミン酸ナトリウムを添加したものを摂取すると、その後の自由食において高脂質・高糖質な食べ物の摂取量が少なくなり、総エネルギー摂取量も有意に減少していたという結果が得られました出典[7]。グルタミン酸ナトリウムを利用した食事により、脂質や糖質の過剰摂取を避け、適正なエネルギーでの食事を維持する効果が期待できるようです。

 

6.消化機能をサポート

うま味成分であるグルタミン酸には、消化を助ける働きがあるとも指摘されています。動物実験においては、犬にグルタミン酸を含むうま味物質を添加させたエサを与えることで、胃酸の分泌量が増えることが確認されました出典[3]。また臨床研究においても、慢性萎縮性胃炎の患者がグルタミン酸ナトリウムを摂取することで、胃液の分泌が亢進されたことが明らかになっています。

胃酸の分泌量が増えることにより、特にたんぱく質の消化の助けとなります。たんぱく質は特に消化に時間を要する栄養素であるため、胃酸が不足していると胃に食べ物が留まる時間が増えやすく、これにより胃の内圧が上昇すると逆流性食道炎の原因にもなってしまいます。胃酸の分泌を促すグルタミン酸は、胃にかかる負担を軽減するために重要であると言えます。

 

7.胃腸粘膜の保護作用

グルタミン酸とシステインとグリシンという3つのアミノ酸が連なった化合物をグルタチオンと呼びます。グルタチオンは優秀な抗酸化物質として機能し、体内の酸化ストレスを低減させますが、この抗酸化作用は消化管において大きな役割を果たします。

胃や十二指腸、小腸などの粘膜部分にあたる上皮細胞は、食べたものや消化液と直に触れ合う場所であり、食事由来の毒素や酸化を起こしやすい成分に晒されやすくなっています。また細胞自体の代謝回転率も高いため、酸化ストレスをより多く受ける場所のひとつです。ダメージを受けやすく、保護の必要性が高い腸管において、グルタチオンは特に重要であると言えるでしょう。

グルタミン酸には他にも、胃の迷走神経を活性化させて胃の活動自体を活発にする、腸管の絨毛を修復して栄養吸収効率を高める、などの作用があると報告されています出典[8]。消化管の状態をよりよく保つためにグルタミン酸が果たす役割は大きく、消化管がこのように保護されることで腸管免疫の維持にも繋がると考えられます。
 

グルタミン酸の摂取方法や注意点

グルタミン酸は様々な食品に含まれており、日々の食事において自然と摂取することができます。しかし食品の選び方や調理の仕方に一工夫すると、より効果的にグルタミン酸の恩恵を受けることができます。この章ではグルタミン酸の効果的な摂り方や、食事の際の注意点について説明します。

1.どのくらい摂取すればいい?

グルタミン酸は体内で生成が可能な非必須アミノ酸であるため「どれだけ摂ればいい」というような推奨量や目安量は定められていません。通常の食事に多く含まれるため、長期の絶食や極端な欠食をしない限りは、不足について注意する必要はないとされています。

食品や調味料からの過剰摂取についてですが、グルタミン酸はアミノ酸の一種であるため、グルタミン酸を豊富に含むたんぱく質食品を食べ過ぎることで消化器への負担が増大します。グルタミン酸を摂りすぎないようにするため、というよりは、全体の食事バランスを保つためにたんぱく質の過剰摂取は避けるべきと言えるでしょう。

うま味調味料でのグルタミン酸摂取は長年の調査により安全が証明されているため、過剰摂取を心配する必要はないとされています。しかし極端な食生活により過剰摂取が続いた場合、神経伝達物質としてのグルタミン酸の働きが強まりすぎて、神経の興奮や幻覚、手足の痺れなどが起こることがあるとされています。うま味調味料としての利用は砂糖や食塩と同様に、料理の味のバランスを崩さない常識的な範囲に留めるべきでしょう。

 

2.理想の摂取方法やタイミングはある?

美味しさを引き立てるために有効なうま味調味料は、減塩や減量のサポートとしての利用にも適しており、活用によって健康管理がしやすくなる可能性があります。

食塩に含まれるナトリウムは全体の約39%ですが、うま味調味料に含まれるナトリウムは約12%程度と少なくなっています。また調味に使用する際、うま味調味料の使用量は食塩使用時の5~10%で済むため、食塩をうま味調味料で代用する場合には、食塩相当量やナトリウム量は大きく減少します。料理全体での塩分摂取量を抑える手段として、うま味調味料の利用は非常に有用であると言えそうです。

また、グルタミン酸自体に食事の満足感を高める効果があることから、うま味を多く含んだ料理は減量のサポートにも適していると言うことができます。この満足感を向上させる効果は、グルタミン酸単体でなく、イノシン酸など他のうま味物質を含む食品と組み合わせることで更に高まります。この「うま味の相乗効果」を活かせるような食材の選び方の例を以下に紹介します。

  • 鶏肉の昆布巻き:昆布のグルタミン酸と鶏肉のイノシン酸との相乗効果
  • しいたけの肉詰め:シイタケのグルタミン酸と豚肉のイノシン酸との相乗効果
  • 五目炊き込みご飯:顆粒和風だしのグルタミン酸、干ししいたけのグアニル酸、鶏肉のイノシン酸との相乗効果
  • 貝の味噌汁:顆粒和風だしのグルタミン酸、アサリやシジミのコハク酸

このように、異なる種類のうま味を組み合わせることでより強く美味しさを感じ、満足感を得やすくなります。肉類や魚介類の料理の味付けにうま味調味料を使用するだけでも、うま味の相乗効果を得ることができるでしょう。
 

まとめ

グルタミン酸は、アミノ酸としてもうま味成分としても様々な働きを持つ栄養素です。日々の食事の中で不足や過剰を起こさないよう殊更に気を配る必要はありませんが、他の栄養素と同様に、極端な偏食や過食は避けるようにするべきでしょう。

様々な働きを持つグルタミン酸を「美味しく」摂取できるというのが、うま味調味料であるグルタミン酸ナトリウムの強みです。是非、減量や減塩のサポートとして、うま味調味料を効果的に活用してみましょう。

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