執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
トマトジュースがテストステロンに役立つ理由3選
「トマトジュースがテストステロンに良い」と聞いたことはありませんか?
男性ホルモンであるテストステロンは、活力を高めたり生殖機能を維持したりするために重要なホルモン。
実際、トマトジュースにはテストステロンの増加をサポートする効果が期待できるのです。
早速、トマトジュースがテストステロンの向上に役立つ理由を解説していきましょう。
多様な抗酸化物質が精巣を保護
私たちが生きるためには呼吸や代謝をする必要がありますが、その際に必ず生まれてしまうのが活性酸素。
精巣は酸化ストレスの影響を受けやすいため、酸化ストレスによりテストステロンの合成能力や性機能の低下に繋がることがわかっています出典[1]。
そこで酸化ストレスの減少に役立つのが、抗酸化物質。
実際に、抗酸化物質は活性酸素を取り除き、精巣を保護してテストステロンの減少を抑えることが示されています。
トマトに含まれる抗酸化物質と言えば、リコピン、βカロテン、ビタミンCなどがあります。
ラットにリコピンを30日間投与した研究では、テストステロン値や精巣重量の改善、酸化ストレスのマーカーであるマロンジアルデヒドの減少などが確認できたことが示されています出典[2]。
また、抗酸化作用をもつリコピンは、精子の質にもポジティブな影響をもたらす可能性が示唆されています出典[3]。
不妊症の男性30人に対し2mgのリコピンを1日2回、3ヶ月間摂取してもらい精液分析をした研究では、精子の濃度、運動性、形態がそれぞれ66%、54%、46%の人で改善したことがわかりました出典[4]。
このように、トマトに含まれる抗酸化物質は精巣や精子を保護することで、男性機能改善に役立つでしょう。
血糖値スパイクによる活性酸素の発生を防ぐ
血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し急降下してしまう現象を言います。
じつは、血糖値スパイクは酸化ストレスを発生させるため、テストステロンの分泌能力を低下させる可能性があります出典[5]。
実際に、19~74歳の74人の男性に対し、75gの経口ブドウ糖負荷試験を行いテストステロン濃度を測定した研究では、血糖値スパイクによりテストステロンの濃度が平均25%低下したことが明らかになっているんです出典[6]。
そこで、血糖値スパイクを防ぐ栄養素として注目されているのが、トマトに豊富なリコピン。
実際に、2000年にオーストラリアで行われた1597人を対象とした調査では、リコピンをはじめとしたカロテノイド化合物の血中濃度が高いほど、血中グルコース濃度が低いことがわかりました出典[7]。
また、ラットを用いた実験では、リコピンを多く含むトマトとリコピンを含まないトマトを4週間摂取させた後、経口ブドウ糖負荷試験を行いました。
その結果、リコピンを多く含むトマトを摂取したラットは、リコピンを含まないトマトを摂取したラットよりも血糖値が15分後に10%、30分後では9%それぞれ低く計測されたことが示されたんです出典[8]。
トマトを継続的に摂取することで、血糖値スパイクを防ぎやすくなりそうですね。
体脂肪を減らしてアロマターゼの分泌を抑える
毎日のトマト摂取は、体脂肪や体重を減らす効果が示されています。
「痩せホルモン」として知られるアディポネクチン。
アディポネクチンは、脂肪の分解を促進します。
そして、トマトに豊富なリコピンにはアディポネクチンを増やす作用が確認されているんです。
実際に20~30歳の成人に対して、毎日280mLのトマトジュース(リコピン32.5mgを含む)を2か月間飲んでもらった結果、血中のアディポネクチン濃度が増加し、さらに体重、体脂肪、腹囲が減少したことがわかりました出典[9]。
体脂肪が減ると、男性ホルモンにどのように良い効果が得られるのでしょうか?
じつは、体脂肪が増えすぎて炎症が起こると、「アロマターゼ」というテストステロン量を減らす働きのある酵素が増えてしまうんです出典[10]。
アロマターゼは、テストステロンをエストラジオールへ変換することで、テストステロンの量を減らす作用があります。
さらに、テストステロンが低いと脂肪が増えやすくなることもわかっているんです。
つまり、体脂肪の増加→テストステロンの減少→体脂肪の増加→…の悪循環に陥る可能性があるんですね出典[10]。
悪循環を防ぐためにも、肥満を改善し正常な体脂肪量を維持することが大切ですね。
男性がトマトジュースを飲むときのポイント
このように、トマトジュースにはテストステロンの向上や男性機能の改善効果があることがわかりました。
ここからは、トマトジュースの効果をより高めるための摂取量やタイミング、選び方などを解説します。
1日コップ1杯を目安に
トマトジュースのおすすめの摂取量は、1日1杯です。
トマトジュースは低カロリーなので、1杯以上飲んでも体重増加の危険は少ないですが、多く飲んだからといって効果が高くなるわけではありません。
トマトジュースを1日でたくさん飲むよりも、継続的に摂取するほうが効果が得られるでしょう。
トマトの摂取と血糖値についてのラットの研究でも、血糖値の低下の効果は、トマトを4週間継続摂取することで確認できていましたね出典[8]。
1日あたり多くても2杯までとし、毎日摂取を心掛けましょう。
食塩や砂糖の添加されていないものを
トマトジュースを選ぶときは、原材料が「トマトのみ」のものを選んでください。
市販のトマトジュースの中には、おいしく飲みやすくするために砂糖や食塩が加えられているものがあります。
血糖値スパイクを防ぎたいのに砂糖が入っているトマトジュースを飲むと、むしろ血糖値が上がってしまい逆効果。
また、食塩が入っていることで血圧が上昇し、血流低下を招くおそれもあります。
「食塩不使用」や「食塩無添加」と書かれているものを選ぶか、原材料を確認して食塩や砂糖が入っていないかを必ず確認しましょう。
朝に飲んでリコピンの吸収率UP
トマトジュースを飲むタイミングはいつが良いのでしょうか?
じつは、リコピンは朝の摂取で最も吸収率が高まることがわかっているんです出典[11]。
リコピンのような脂溶性物質は、朝食で胆汁酸分泌が増大するに伴い吸収率が上がると示唆されています出典[12]。
また、昼食や夕食よりも、朝食は絶食時間が長くなることで吸収率が高くなるからである、とする考えもあるようです出典[11]。
いずれにしても、リコピンは朝の摂取で最も吸収率が高まることがラットやヒトを対象とした研究でも示されているため、迷った人はぜひ朝に飲んでみてください。
料理への活用もおすすめ
トマトジュースに飽きてしまうときは、トマトやトマトジュースを使った料理も良いですね。
むしろ、料理に取り入れることで他の栄養素と一緒に摂取することができ、吸収率が高まる可能性があります。
というのも、リコピンは脂溶性成分のため、脂質とともに摂ることでより吸収率が高まるんです。
カレーやラタトゥイユ、ミネストローネとして摂取するのはいかがでしょうか?
ミネストローネなら作り置きでの保存ができ、温めることですぐ用意できるため、忙しい朝の食事にもぴったりですね。
まとめ
トマトジュースには抗酸化物質であるリコピンが豊富に含まれています。
リコピンの抗酸化作用により、酸化ストレスから精巣を保護することでテストステロンの増加が期待できるでしょう。
また、リコピンは血糖値スパイクを予防し、体脂肪を減らす効果も示されています。
トマトジュースは1日でたくさん飲めば効果が上がるものではないため、1日1杯を目安に継続的に摂取しましょう。
朝に摂取すること、脂質と一緒に摂ることで吸収率が上がりますよ。
出典
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