執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
赤ワインが勃起にもたらす3つの効果
「赤ワインは体に良い」と聞いたことがある人も多いでしょう。
赤ワインにはアントシアニン、レスベラトロール、タンニンなど豊富なブドウ由来のポリフェノールが含まれています。
ポリフェノールこそ、健康に良いと言われる所以になっているんです。
では早速、赤ワインが勃起力にもたらす3つの効果について見ていきましょう。
抗酸化作用で精巣を若々しく保つ
私たちが生きるためには呼吸や代謝をする必要がありますが、その際に必ず生まれてしまうのが活性酸素。
活性酸素が過剰に発生すると細胞を傷つけ、老化やがん、生活習慣病などの健康被害を引き起こす可能性があるんです出典[1]。
また、精巣は酸化ストレスの影響を受けやすいため、酸化ストレスによりテストステロンの合成能力や性機能の低下に繋がることがわかっています出典[2]。
そこで酸化ストレスの減少に役立つのが、抗酸化物質。
赤ワインには抗酸化物質であるポリフェノールが豊富に含まれています。
実際に、抗酸化物質は活性酸素を取り除き、精巣を保護してテストステロンの減少を抑えることが示されています。
赤ワインの摂取量と勃起機能を調査した研究をまとめたレビューでは、赤ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用は男性の生殖機能に有益であると示唆されています出典[3]。
老化や病気を予防したい人だけでなく、勃起力を向上させたい人にとっても赤ワインに豊富なポリフェノールは注目の成分ですね。
血管拡張を促して勃起をサポート
勃起力向上には、テストステロンだけでなく血流の増加も大切な要素。
なぜなら、勃起とはそもそも陰茎に血流を送り込むことで起こる現象だからです。
血流量を増やすためには、血管の拡張が重要であることは言うまでもありませんね。
赤ワインに豊富なポリフェノールの抗酸化作用は、血流の改善効果も期待できます。
というのも、ポリフェノールは血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)の放出を増やすことがわかっているんです。
NOは血管内皮細胞から産生され、血管を拡張する働きがあります。
実際に、2002年にドイツで行われた研究では、ヒトの静脈内皮細胞を赤ワインポリフェノール抽出物で処理したところ、ポリフェノールの濃度が増すにつれてNOの放出量が増加したことがわかりました出典[4]。
血管内皮細胞から産生されるNOは、勃起時の血流を増やすために陰茎で分泌量が増える物質です。
ワイン由来のポリフェノールでNOを効率よく増やせれば、血流が改善し、より勃起しやすくなるかもしれませんね。
レスベラトロールがテストステロンを保護する
女性ホルモンとして知られるエストラジオールは、男性の体でも生成され、骨の代謝や健康などに関与しています。
エストラジオールはテストステロンから変換されるのですが、その際に必要なのが「アロマターゼ」という酵素。
アロマターゼが多いと、テストステロンがエストラジオールへ変換されてしまい、テストステロンの量を減らしてしまうんです。
そこで役立つのが、赤ワインに含まれているポリフェノールの一種、レスベラトロール。
レスベラトロールはアロマターゼを阻害する働きがあるため、赤ワインの摂取によりテストステロンの減少を防ぐ可能性が示されています出典[2]。
実際、植物由来のフラボノイドの多くには抗アロマターゼ活性が確認されており、もちろん赤ワインにも抗アロマターゼ効果があることが複数の研究によって示されているんです出典[5]。
レスベラトロールの活性能力は、進行性の乳がんにおいてエストロゲン増殖を抑える薬剤、抗アロマターゼ薬であるアミノグルテチミドに匹敵するほど出典[6]。
赤ワインの摂取により、テストステロンの減少が抑えられ勃起力向上に役立つでしょう。
飲みすぎ注意!赤ワインの勃起へのデメリット2つ
赤ワインはいくら健康に良いと言えども、もちろん飲み過ぎると良くないですよね。
赤ワインにはポリフェノール以外にも、アルコールや糖質などが含まれています。
ここからは赤ワインを飲みすぎることによる悪影響についても解説しましょう。
過度のアルコールはテストステロンを下げる
赤ワインを飲みすぎることによる悪影響は、大きく分けて3つあります。
- 酸化ストレスを増やす
- アロマターゼ活性を高める
- テストステロンの分泌シグナルを阻害する
まずは酸化ストレスについて。
ポリフェノールにより抗酸化作用がある赤ワインですが、アルコールの過多は酸化ストレスを増やすため、飲み過ぎるとせっかくの抗酸化作用が台無しになってしまいます。
さらに、アルコールにより発生した酸化ストレスは、体内の抗酸化活性を落とすこともわかっているんです出典[7]。
また、アルコールの大量摂取によりアロマターゼの活性が高まり、テストステロンが減少してエストロゲンが増える可能性が示唆されています出典[7]。
もちろん、赤ワインには抗アロマターゼ活性のあるレスベラトロールが豊富ですが、酸化ストレスと同様、飲みすぎると逆にテストステロンを減少させてしまう可能性があるということですね。
さらに、アルコールはテストステロンを分泌する指示を出すホルモンの産生を阻害することもわかっています。
つまり、アルコール摂取はテストステロン値を低下させる可能性があるんです出典[2]。
実際に、世界5大陸の23,258人を対象に、アルコール摂取が男性の生殖機能に及ぼす影響を調べた40件の研究をまとめた報告では、1日あたり20g以上、1週間で約140g以上の純アルコールを摂取する場合、テストステロン値の減少が見られたと報告されています出典[8]。
赤ワインの適量摂取は勃起力に効果的ですが、飲み過ぎは逆に男性機能を下げてしまうことを知っておきましょう。
糖質を含む醸造酒は体脂肪を合成しやすい
アルコールの影響で忘れてはいけないのが、体脂肪や体重増加です。
アルコール自体にカロリーがあるのはもちろん、ビール、日本酒、ワインのような醸造酒は糖質を含むため血糖値が上がりやすい特徴があります。
血糖値が急上昇すると、血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌されます。
インスリンが大量に分泌されると糖質が体脂肪として合成され、体に蓄積されてしまうんです。
実際に、ビール、日本酒、焼酎をそれぞれエタノール40gに相当する量だけ飲んだ場合の血糖値の上昇度を調べた研究が行われました。
その結果、血糖値やインスリン分泌量は、糖質含有量が多いビール、日本酒、焼酎の順に高くなったことがわかっています出典[9]。
ちなみに、この研究では、糖質が含まれない焼酎では血糖値の上昇がほとんど起こらず、インスリンの分泌量も大きく抑えられていました出典[9]。
ワインは、ビールや日本酒に比べて糖質量は少ないですが、ゼロではないため、飲みすぎによる血糖値急上昇に注意が必要です。
では、体脂肪が増えると、勃起力にどのような影響があるのでしょうか?
じつは、肥満はテストステロンを減少させてしまうことがわかっているんです。
脂肪量の増加とテストステロンレベルには逆相関があり、肥満になればなるほどテストステロン量が減少することが明らかになっているんです出典[10]。
赤ワインの摂取で体重が増加してしまっては、テストステロンにとって元も子もありませんね。
勃起力を高めるための赤ワインの飲み方とは?
勃起力の向上に効果的な赤ワインですが、飲み過ぎると逆に男性機能が低下してしまうことを解説しました。
それでは一体、勃起力を高めるための赤ワインの適量はどれくらいなのでしょうか?
ここからは赤ワインの摂取量やタイミング、一緒に食べる際におすすめのおつまみについて解説していきましょう。
1日ワイングラス1杯半を目安に
赤ワインの摂取量は、1日あたりどれくらいが良いのでしょうか?
結論、1日あたりワイングラス1杯半(180mL)程度が目安です。
というのも、アルコール摂取が男性の生殖機能に及ぼす影響を調べた報告では、1週間あたり純アルコール換算で140g未満、1日あたり20g未満の摂取であれば、性ホルモンへの悪影響が確認されなかったとされています出典[8]。
また、「健康日本21」における”節度ある適切な飲酒”として示されている量も1日あたり純アルコールで約20g出典[11]。
純アルコール20gまでであれば、健康被害を避けながら勃起力向上の効果を得ることができるでしょう。
ちなみに、純アルコール20g相当に該当するワイン量は、アルコール度数が14度なら約180mLです。
ワイングラス1杯120mLとすると、1杯半ですね。
また、肝機能障害やアルコール依存症を回避するためには、週2日程度の休肝日を設けることも忘れないでください。
低糖質かつ低カロリーのおつまみを取り入れる
赤ワインには多少なりとも糖質が含まれるため、飲みすぎると血糖値が急上昇する可能性を解説しました。
赤ワインの量を適度に保っていても、おつまみで糖質たっぷりの食品を選んでしまうと血糖値上昇のリスクがあるため、低糖質のおつまみを選ぶようにしましょう。
あたりめ、枝豆、豆腐、チーズ、キムチなどは低糖質かつ低カロリーでおすすめです。
それでは、余計なカロリーを摂らないために、おつまみなしでワインを飲むのはどうでしょう?
空腹時であれば、良い選択とは言えません。
空腹時の飲酒ではアルコールの吸収速度が高まるほか、胃腸に負担をかける可能性があるんです。
悪酔いや体への負担を防ぐためにも、おつまみを取り入れるほうが良いでしょう。
揚げ物やスナック菓子など高カロリーのおつまみは避け、低カロリー・低糖質な食材を選んでくださいね。
寝つきをよくするための飲酒は厳禁
寝つきを良くするためにお酒を飲んでいませんか?
実際、お酒にはリラックス効果があり、寝る前のアルコール摂取で入眠までの時間が短縮される効果が示されています。
しかし、寝る前のアルコール摂取で寝つきは良くなるものの、睡眠の質は大きく低下してしまうんです。
アルコール摂取で睡眠の質が下がる理由は2つ。
- アルコールの利尿作用により中途覚醒や早朝覚醒のリスクが高まる
- アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドが交感神経を刺激するため、眠りが浅くなり目覚めやすくなる
アルコールを飲むと、夜中にトイレで目が覚めてしまいませんか?
一度目が覚めることで睡眠の質がぐっと下がってしまいます。
さらに、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドによって眠りが浅くなり、「寝てもすっきりしない」「翌朝に疲れがとれない」といった症状が起きることもあるでしょう。
じつは、睡眠不足はテストステロンを大きく低下させるため注意が必要です。
10人の若い男性が5時間睡眠を1週間続けた研究では、血中テストステロン値が10~15%も減少したとの報告があります出典[12]。
睡眠の質を落とさないためにも、寝る前に過剰に飲酒しないようにしたいですね。
まとめ
赤ワインにはブドウ由来のポリフェノールが豊富です。
ポリフェノールは強い抗酸化作用があり、酸化ストレスから精巣を保護することでテストステロンの減少を抑えます。
また、ポリフェノールは血管拡張作用のあるNOを増やすことで血流の改善による勃起力向上も期待できるでしょう。
ただし、いくら健康に良いとは言っても飲みすぎは、逆効果。
過度のアルコール摂取はむしろテストステロン値を下げてしまいます。
1日ワイングラス1杯半までを目安に、低糖質で低カロリーなおつまみと一緒に赤ワインを摂取するようにしてみてくださいね。
出典
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