執筆者
管理栄養士
西村 俊司
給食施設や食品メーカーなどを経て、現在は老人福祉施設で栄養士として勤務。専門学校卒業後18年のブランクを経て、管理栄養士国家試験に初挑戦し、一発合格。食のプロフェッショナルとしての知識と経験を生かしながら、心も体も喜ぶ「食の提案」を多くの人に届けたいと思っている。家では妻と2人の子供との4人暮らし。食べることや料理を作ることが大好き。趣味は自転車とキャンプとDIYなオジサン。
マカとはどんな植物?
「マカ」は南米に位置するペルー共和国が原産の植物です。大根やキャベツ、ブロッコリーなどと同じ、アブラナ科の植物で、見た目は日本のカブに似ています。食用となるのはカブや大根と同じく「根」の部分です。
古代インカ帝国(13世紀から16世紀にかけてペルーを中心として栄えた帝国)の頃から食用とされていて、当時は上流階級の人々だけが食べられる、非常に貴重な栄養源であったとされています。
主にマカが栽培されているのは「アンデス高地」と呼ばれる場所。標高は3000〜4,000メートルとされ、日本一の山である富士山よりも標高の高い場所でも育てられています。そんなアンデス山脈の気候は過酷そのもの。強く吹き付ける風に強い紫外線。昼夜の寒暖差は激しい上、岩が多い痩せた土壌。一見植物にとって過酷な環境ですが、マカはそんなアンデスの環境に適応した植物なのです。
このように過酷な環境で育つマカには、ストレスに耐えるためのさまざまな成分が入っていることがわかりました。その中でも特に最近注目を集めているのは「ベンジルグルコシノレート」という成分。
これはマカが持つ辛味成分で、アブラナ科の野菜に含まれるグルコシノレートと呼ばれる成分の一つです。身近では、大根やワサビにもグルコシノレートが含まれています。
マカを研究している企業の報告によると、マカに含まれている「ベンジルグルコシノレート」は、体内の脂肪をエネルギーの材料として使いやすくする効果があるとされており、運動効率の向上、ひいては脂肪燃焼を促し肥満の抑制につながるとされています。
マカにはそのほかにもタンパク質のもととなるアミノ酸やカルシウムなどのミネラル、ビタミン、食物繊維などが豊富に含まれています。古くからアンデスではスーパーフードとされていた理由がわかりますね。
マカに確認されている主な効果6つ
ここからはマカに確認されている具体的な効果についてご紹介します。
1.運動パフォーマンスの向上
マカの摂取により、運動のパフォーマンス向上や持久力の向上が見込めるとされています。
ヒトが運動する際、運動の初期は体内の筋肉に蓄えられている糖質であるグリコーゲンが使われ、その後に脂質がエネルギー源として使われます。グリコーゲンの貯蔵量には限りがあり、枯渇すると疲労感や運動パフォーマンスの低下につながってしまいます。持久運動の際、15〜20分ぐらいで疲労感が増しますが、その後に体が軽くなる感覚はありませんか?この体が軽くなったと感じるのが、グリコーゲン→脂質にエネルギー源が変わった合図。エネルギー源として効率の良い脂質を使うことで、高いパフォーマンスを維持した状態での持久運動が可能なのです。
マカに含まれているベンジルグルコシノレートは脂肪を優先的にエネルギー源として放出する効果があり、これによりグリコーゲン→脂質のエネルギー源切り替えがスムーズに進むと考えられます。
実際に海外で行われた研究で、参加者にマカ抽出物と偽薬を14日間与え、その前後で40kmのサイクリングのタイムトライアルを課した実験では、偽薬を投与された対象に比べて、タイムが向上したという結果が発表されています出典[1]。
また、ラットでの実験ではありますが、マカ抽出物を3週間投与したラットは、投与されていないラットと比較して水中での遊泳時間が25〜41&向上したという結果も得られています出典[2]。
マカで持久力を高めて、パワフルな体を目指しましょう。
2.太りにくい体になる
マカには肥満予防の効果が期待できます。
生物にとって生きるために必要なエネルギー。ヒトは、糖質や脂質、タンパク質などからエネルギーを得ていますが、余ったエネルギーは体内で脂質に変換されて蓄えられます。これは、脂質が1gあたり9kcalとエネルギー効率が良いから。そのため、ヒトを含む動物は、食事が取れないときでも動けるように脂質という形で体内にエネルギーを蓄えています。
ところが、今は飽食の時代と言われ、食事が取れないということがなくなりました。蓄えすぎた脂質は「肥満」という形で生活習慣病の原因となりました。
マカに含まれているベンジルグルコシノレートは、脂質をエネルギーに変える働きがあるため、体内に蓄えられている脂質を燃焼させる手助けをしてくれると考えられます。国内企業のマウスを使った研究によると、ベンジルグルコシノレートを投与された対象は体脂肪組織の大幅な現象が見られたことが明らかになっています出典[3]。
お腹周りが気になり始めた方はマカを試してみてはいかがでしょうか?もちろん、適度な運動も忘れずに。
3.性欲の向上を促す
マカを接種することで、性欲の減退を軽減し、向上させる効果があるとされています。古くより、マカは古代インカ帝国の「媚薬」としても使用されていました。
性欲は食欲と睡眠欲と並んで、ヒトの三大欲求の一つ。年齢とともに減退していく性欲ですが、適度な性欲を保つことが、健康で長生きすることにつながることはさまざまな研究で明らかになってきています。また、パートナーとの性行為は生活の中にメリハリをつけ、若々しく過ごすために必要ではないでしょうか?
海外における研究で、8週間〜12週間にわたりマカエキスを摂取した男性を観察したところ、偽薬を摂取した対象と比べて性的欲求の改善が見られたという研究結果が明らかになりました出典[4]。また、女性が多く参加した別の研究では、マカを3.0g /日で摂取したグループは、摂取していないグループに比べて性行為に対する満足度が向上したという結果も報告されています出典[5]。
セックスライフに不満があるパートナーに、マカはおすすめのアイテムです。
4.男性の妊活サポート
不妊に苦しんでいるパートナーは日本にたくさんいますが、マカはそんなパートナーにとって必要なアイテムになるかもしれません。マカの摂取により、男性由来の不妊を改善するという報告があります。
妊娠は女性の卵子と男性の精子が受精することで始まりますが、受精には正常な精子がある程度必要な数で産生される必要があります。男性由来の不妊は、精子の量が少なかったり、正常な精子が産生されなかったりするものがあるのです。
海外の研究で、マカ粉末を1.75g/日を与えられた男性は、投与前に比べて総精子数は20%、精子濃度は14%、精液量は9%、正常な精子が21%増加したと報告されています出典[6]。
不妊で悩んでいる男性は、マカを試してみると良いですね
5.ED(勃起不全)の緩和
ED(勃起不全)は、セックスレスに陥る大きな原因の一つであり、性欲の減退や不妊にもつながってしまいます。また、男性としての自信の喪失にもつながり、心身ともに不安定になってしまいます。実はマカには男性のEDを改善する効果があるという研究結果が示されています。
海外の研究で、乾燥したマカを2.4g/日与えた男性は、偽薬を与えた男性と比べて、国際勃起機能スコア(IIEF-5)が大幅に増加しました。さらに、偽薬を投与されたグループに比べて、マカを投与されたグループは性交に対する満足度が高いという結果が報告されました出典[7]。
セックスライフを楽しむためにも、EDの改善は大切です。気になる方はマカを試してみてはいかがでしょうか。
6.引き締まった体を維持する
引き締まった体は多くの男性にとっては夢であり、目標ではないでしょうか。マカを摂取することで、その目標に近づくかもしれません。
マカには多くのアミノ酸が含まれていますが、中でも「アルギニン」が豊富に含まれています。アルギニンはヒトの体内で合成できるため「非必須アミノ酸」に分類されていますが、加齢とともに合成量が減る上に、ストレスによって消費されやすいため、食事によって摂取することが望ましいアミノ酸です。このアルギニンは、成長ホルモンの合成に関わるアミノ酸。成長ホルモンは脂肪を燃焼させ筋肉を強化させる働きがあります。
また、海外の様々な研究をまとめた論文によると、アルギニンの摂取は有酸素運動と無酸素運動いずれのパフォーマンスを向上させるとされています出典[8]。引き締まった体型の維持にはうってつけのアミノ酸と言えるでしょう。
若々しい体を維持して、生き生きとした毎日を送りましょう。
マカサプリ利用の上で知っておくべき事
マカが逞しさを求める男性に必要不可欠なことはご理解いただけましたでしょうか?最後にマカの摂取上の注意点についてご紹介します。
最適な推奨量と副作用のリスクについて
マカは古くからアンデスで食べられている食品で、いろいろな栄養素が入っていますので、決められた推奨量というのはありません。また、マカ単体での摂取における副作用についても報告されている文献は少ないため、摂取過剰によるリスクは低いと考えられます。
一般的には抽出物として1,500mg〜3,000mg程度が良いとされていますが、持病がある方はかかりつけの主治医に確認することをお勧めします。また、マカエキスと他の栄養素を複合したサプリメントを使う場合は、含有する栄養素を確認し、過剰摂取とならないような注意が必要です。
効果が出るまでの期間とは
多くの研究では、8週間〜12週間程度の投与がなされております。マカは食品由来のエキスであり、さまざまな栄養素がバランスよく含まれているため、マカを摂取する以外にも、バランスの良い食生活や運動習慣が必要であると考えられます。
マカを飲む理想のタイミングは
マカに関して、いつ飲むのが最適かを示すデータは存在しません。カフェインなどの神経作用物質は入っていないため、基本的にはいつ飲んでもOKです。就寝前など、忘れにくいタイミングで習慣的に摂取する事がおすすめです。
まとめ
古くからスーパーフードと呼ばれるマカの効能、いかがでしたでしょうか。野菜としてはなかなか目にすることがない植物ですが、現代を生きる男性にはおすすめの効能がたくさんあります。サプリメントを選ぶ際は、配合されているマカの量と補完されている栄養素にも気を配って選んでみてください。いつまでも元気で若々しく過ごすためにも、おすすめの食材です。
出典
- 1.
Stone M, Ibarra A, Roller M, Zangara A, Stevenson E. A pilot investigation into the effect of maca supplementation on physical activity and sexual desire in sportsmen. J Ethnopharmacol. 2009 Dec 10;126(3):574-6. doi: 10.1016/j.jep.2009.09.012. Epub 2009 Sep 23.
- 2.
Eun HyeChoia,Jung IlKangb,Jae YoungChoaSeung HoLeebTae SeokKimbIk HyunYeobHyang SookChuna, Supplementation of standardized lipid-soluble extract from maca (Lepidium meyenii) increases swimming endurance capacity in rats. Journal of Functional Foods Volume 4, Issue 2, April 2012, Pages 568-573
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1756464612000436
- 3.
Mayumi Ikeuchi,a Tomoyuki Koyama,a Shin Takei,b Takao Kino,b and Kazunaga Yazawa. Effects of Benzylglucosinolate on Endurance Capacity in Mice. Journal of Health Science, 55(2) 178–182 (2009)
- 4.
Gonzales GF, Córdova A, Vega K, Chung A, Villena A, Góñez C, Castillo S. Effect of Lepidium meyenii (MACA) on sexual desire and its absent relationship with serum testosterone levels in adult healthy men. Andrologia. 2002 Dec;34(6):367-72.
- 5.
Dording CM, Fisher L, Papakostas G, Farabaugh A, Sonawalla S, Fava M, Mischoulon D. A double-blind, randomized, pilot dose-finding study of maca root (L. meyenii) for the management of SSRI-induced sexual dysfunction. CNS Neurosci Ther. 2008 Fall;14(3):182-91.
- 6.
Melnikovova I, Fait T, Kolarova M, Fernandez EC, Milella L. Effect of Lepidium meyenii Walp. on Semen Parameters and Serum Hormone Levels in Healthy Adult Men: A Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Pilot Study. Evid Based Complement Alternat Med. 2015;2015:324369.
- 7.
Zenico T, Cicero AF, Valmorri L, Mercuriali M, Bercovich E. Subjective effects of Lepidium meyenii (Maca) extract on well-being and sexual performances in patients with mild erectile dysfunction: a randomised, double-blind clinical trial. Andrologia. 2009 Apr;41(2):95-9.
- 8.
Viribay A, Burgos J, Fernández-Landa J, Seco-Calvo J, Mielgo-Ayuso J. Effects of Arginine Supplementation on Athletic Performance Based on Energy Metabolism: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2020 May 2;12(5):1300.
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