勃起時の硬さを持続させるために役立つ栄養素のひとつに、亜鉛があります。まずは亜鉛と勃起力との関係について解説します。

テストステロンが勃起の指令を出す

亜鉛と勃起力との関わりについて知るためには、まず男性ホルモンであるテストステロンの役割と分泌の仕組みを把握する必要があるでしょう。

テストステロンは性欲や勃起力などの性機能全般をサポートするホルモン。興奮時には脳から陰茎へ勃起の指示が出されますが、テストステロンにはこの指示出しを促す重要な役目があるのです。

亜鉛には、テストステロンの分泌を促すために脳から分泌されるホルモン、この合成をサポートする作用が確認されています^出典[1]。

20週間の亜鉛制限によりテストステロン濃度が3分の1以下にまで減少したケースや、6か月の亜鉛補給によりテストステロンが倍近くまで増えたケースも確認されています^出典[2]。体内の亜鉛の充足率が、テストステロンの量に影響を与えることは間違いなさそうですね。

亜鉛補充によりテストステロンを増やすことで勃起が回復したケースは、ラットを用いた動物実験で確認されています^出典[3]。ヒトでは体内の亜鉛量の減少が性機能障害と関連している可能性が指摘されています^出典[4]。

一方で体内の亜鉛量と勃起機能との相関が確認できなかったケースもあるようですが、テストステロンの増加は見られているため^出典[5]、性欲や精子の製造能力など、性機能全般に関するポテンシャルは亜鉛不足の解消により高まると考えられるでしょう。

抗酸化能力により酸化ストレスを減らす

亜鉛のもう一つの効果は、亜鉛自身が持つ抗酸化力にあります。私たちは呼吸や代謝といった生命活動のなかで活性酸素を生成。過剰な活性酸素は酸化ストレスとして細胞にダメージを与えてしまいます。体を若々しく健康的に保つためには、亜鉛のような酸化ストレスを減らせる抗酸化物質の摂取が重要ということですね。

勃起力との関係においては、血流と精巣の状態に注目すべきでしょう。テストステロンの分泌場所である精巣は、酸化ストレスにとくに弱い組織^出典[6]。そのため亜鉛により精巣を保護できれば、テストステロンの分泌を維持しやすくなるでしょう。

また勃起時には陰茎の血管が拡張して多量の血液が集まります。血液を陰茎になるべく多く集めるためには、良好な血流の維持が不可欠。サラサラの血液とやわらかい血管を維持できれば、勃起もスムーズになると考えられそうですね。

亜鉛により酸化ストレスを抑える力は、血中脂質の酸化による動脈硬化の防止に役立つ可能性があります。亜鉛の補給により活性酸素の発生を抑えられることは、ラットやヒトを対象とした研究ですでにいくつも実証されており、心筋梗塞のような冠動脈疾患の予防策として役立つ可能性も指摘されています^{出典[7]出典[8]出典[9]}。

亜鉛のような抗酸化力を持つミネラルを不足なく摂れれば、精巣や血管の状態を良好に保ちやすくなるでしょう。勃起に関わる組織のコンディションを保つための栄養素として、ぜひ亜鉛の摂取を意識したいものですね。

亜鉛はテストステロンの分泌をサポートしたり、抗酸化力を持つ栄養素として勃起に関わる器官のコンディションを整えたりするように働きます。亜鉛不足の解消により、勃起力をより高める効果が期待できるかもしれませんね。

亜鉛は赤身の肉や魚、牡蠣、ナッツなどから多めに摂取できますが、サプリメントを活用すればより手軽な補給が可能です。しかし亜鉛のサプリメントを使用する際にはいくつか気を付けておくべき点も。ここからはサプリメントを使用する際のポイントについて解説します。

継続摂取が重要

亜鉛サプリの目的は、継続摂取により勃起しやすい体質を作ることにあります。亜鉛サプリを性行為の数時間前に飲めば、たちまち勃起しやすくなると考える方もいるかもしれませんが、亜鉛にはそのような即効性はなく、直前だけ飲むようなやり方では効果が出づらいことを覚えておきましょう。

たとえば亜鉛不足が見られた高齢男性では、テストステロンの体内量が倍近く増加するまでに、6か月もの亜鉛補給を必要としています^出典[2]。

また、ラットを用いた亜鉛補給の実験でも、28日間の継続によりテストステロンや勃起能力に関する効果が確認できていました^出典[9]。

また、テストステロンの減少を病態とする男性の性腺機能低下症においては、テストステロンの増加や精子数の改善のために亜鉛の投与がおこなわれることがありますが、この場合にも1～4か月間の継続摂取が一般的とされています^出典[10]。

亜鉛サプリはテストステロンを増えやすくして男性機能全般を向上させたり、抗酸化力により血管や精巣の状態を良好に維持したりする効果が期待できるものです。体質改善のためのサポートアイテムとして、まずは2～3か月を目安に継続摂取してみましょう。

すでに亜鉛が足りている場合には効果が出にくい

亜鉛は体内で合成できない必須ミネラルであり、不足により性機能を落とす可能性のある栄養素です。そのため亜鉛不足を解消できれば勃起力を含めた性機能全般を高める効果が期待できますが、一方で亜鉛の不足がない状態においては、サプリメントによる亜鉛補給は効果を発揮しない可能性がある点に注意しなければいけません。

たとえば、1日あたり11.9～23.2mgの亜鉛を摂取できている20代の男性に亜鉛サプリを補給したケースでは、テストステロンの増大効果は確認できていませんでした^出典[11]。

日本人の食事摂取基準（2025年版）では、20～29歳や65歳以上の男性で1日あたり9.0mg、30～64歳の男性で9.5mgが、亜鉛の推奨量として示されています^出典[12]。1日あたり11.9～23.2mgの亜鉛は不足の起こらない十分な量であり、これ以上の亜鉛を必要としていなかったと推測できるでしょう。

令和5年度の国民健康・栄養調査における亜鉛の平均摂取量は、20～69歳で9.1～9.4mgと、推奨量をおおむね満たす量です^出典[13]。そのため1日3食、規則正しく食事をしている方においては、亜鉛の不足は起こりづらいものと考えてよいでしょう。

一方で、朝食の欠食が多い方、インスタント食品やジャンクフードの利用が多い方、魚介類や赤身の肉などの摂取が少ない方では、亜鉛の摂取量が少ない可能性があります。また汗からは亜鉛を含む複数のミネラルが失われるため、運動習慣がある方や労作業の時間が多い方なども、亜鉛が不足しやすい傾向にあるでしょう。

自身の生活を振り返り、亜鉛のサプリメントが必要な状態であるかを確認してみましょう。

ほかの食品との食べ合わせに注意

亜鉛補給を効率化するためには、亜鉛の吸収率を下げる食品との食べ合わせを避けることも重要です。ただでさえ亜鉛の吸収率は約30％と低いため、栄養素の組み合わせに注意して、サプリメントの吸収が阻害されないよう注意する必要があるでしょう。

亜鉛の吸収率を下げる栄養素として、次のようなものが知られています^{出典[14]出典[15]}。

• タンニン：コーヒー、緑茶など
• フィチン酸：全粒穀物、豆類、ナッツなど
• 多すぎるカルシウム：乳製品
• 多すぎる食物繊維：オートミール、全粒粉パン、ゴボウなど

コーヒーや緑茶のような、苦み成分のタンニンが多い飲料で飲むと、亜鉛を十分に吸収できなくなる可能性があります。亜鉛のサプリメントは水で飲むようにしましょう。

また、フィチン酸は、亜鉛のような金属イオンの吸収を阻害する成分です。玄米やオートミールのような未精製の全粒穀物のほか、大豆のような豆類にも豊富に含まれています。

ナッツ類や豆類、野菜類、フルーツ、シリアルなど、さまざまな植物性食品における亜鉛とフィチン酸の量、および亜鉛の吸収量を調べた論文では、亜鉛とフィチン酸の比率が増えるほど、亜鉛の吸収率が低下したことが確認できています^出典[16]。

玄米やオートミール、豆類などにはフィチン酸に加えて食物繊維も豊富であり、食べ過ぎることで亜鉛の吸収率を落とす可能性も。亜鉛のサプリメントを飲む場合には、これらの食品を摂る時間帯からはズラした方がよさそうですね。

亜鉛不足が続くと、勃起を維持する力が弱まる可能性があります。テストステロンの分泌不足や、抗酸化力の低下による血流の低下を防ぐためにも、亜鉛を不足なく摂ることは重要。食事からの亜鉛摂取が難しい場合には、手軽に摂れるサプリメントを継続摂取すれば、勃起を維持する力の回復が期待できるかもしれません。

とはいえ、勃起に関わる栄養素や生活習慣の課題は人によりさまざま。自身にどのような課題があるのかは、自らの振り返りだけでは見えてこないことも多いはず。

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