執筆者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識できるよう日々邁進中。
そもそもHIITとは?
近年、人気が高まりつつあるエクササイズのHIIT。それではHIITとはそもそもどのような運動なのでしょうか?
HIITはHigh Intensity Interval Trainingの略で、直訳すると高強度間欠運動となります。つまりかなりきつい運動を休憩を挟みながら繰り返す運動全般を指します。
運動時間と休憩時間は様々なため、一概には言えませんが、従来の運動と比べて比較的短時間で終わるため、忙しい現代人において人気が高まっています。
HIITのメリット6つ
ここではHIITを実施することで得られるメリットについてご説明します。HIITは有酸素運動と無酸素運動の中間のようなタイプのエクササイズであり、2つの方向からメリットが得られます。
短時間で終わる
HIITの最大の特徴はなんといっても運動時間の短さです。方法にもよりますが、15分程度で終わるものがほとんどです。
2015年にコロラド大学で行われた研究では、HIIT、ウエイトトレーニング、ランニング、サイクリングのそれぞれ 30 分間で消費されるカロリーを比較しました。その結果、HIIT が他の形式の運動よりも 25 ~ 30% 多くのカロリーを消費することを発見しました 出典[1]。
つまり、HIITは短時間にも関わらず、筋トレや有酸素運動と同等以上の効果が得られるエクササイズと言えるでしょう。ダイエットはしたいけど、運動する時間が限られている人にとって有効な運動です。
脂肪燃焼効果
短時間にも関わらず従来の運動と同等以上のカロリー消費が期待できるHIIT。脂肪を燃焼することでカロリーを消費するため、身体を引き締める効果が期待できます。
短時間の運動ではありますが、比較的強度が高いため、運動後に回復のためにエネルギーを多く使います。
実際にHIITの実施と体組成の変化を調査した39個の研究をもとに解析した精度の高い研究では、HIITは男女に関係なく腹部および内臓脂肪を減少させるのに効果的であることが示されています出典[2]。
腹回りの脂肪が気になる方は是非取り入れてみてください!!
筋肥大
HIITは筋肉を大きくしたい人にもおすすめです。
座りがちな肥満の被験者を対象とした研究では12週間、週3回HIITを行うことで体幹と脚の筋肉量が増加したことが報告されています出典[3]。
ジムでの筋トレほど大きな効果は期待できませんが、運動習慣がない人にとっては筋肉を増やすことができるでしょう。
持久力向上
有酸素運動としての側面も持つHIIT。筋肉だけでなく心肺機能の向上にも有益です。
HIITは、ランニングや水泳などの有酸素運動と比べると運動中の酸素消費量は多くありません。しかし休憩中や運動後に回復のために酸素や栄養素を全身に届けるために心臓から血液を送り出します。
パワーと持久力の両方が求められる球技系アスリートにとっても有益な運動といえるでしょう。
血圧の低下
さらに心肺機能の向上を通じて、血圧や安静時の心拍数の低下にも繋がります。
2016年にカンザス州立大学で行われた研究では、高血圧の成人を対象にエアロバイクで 8 週間の HIIT を行ったところ、血圧が従来の継続的な持久力トレーニングと同じくらい低下したことがわかりました出典[4]。
別の研究では運動前の血圧が高い人ほど、HIITの血圧低下効果が大きいことが確認されています出典[5]。
健康診断で血圧を注意された人はHIITに取り組んでみるのも1つです。
血糖値の低下
HIITは血圧だけでなく血糖値の低下にも有益です。実際に2型糖尿病の被験者を対象としたいくつかの研究で血糖値改善におけるHIITの有効性が示されています出典[6]。
血糖値は、筋肉が糖を取り込むこと等を通じて高くなりすぎないように調整されています。HIITは筋肉が糖を取り込む機能を向上させることで血糖値を低下させます出典[7]。
甘いものが大好きな人は、スイーツを食べた日だけでもHIITに取り組むとよいでしょう。
HIITの具体的なやり方
HIITの方法は次の通りです。
- 1~4分間の息が上がる程度の運動をする
- 運動時間の1~2倍程度の時間、休憩をとる
- 1と2を4~10回程度繰り返す
運動習慣のない人がいきなり強度の高い運動を行うと怪我につながるため、最初は追い込みすぎないようにしましょう。慣れてきたら息が上がるまで強度を上げていくとよいでしょう。
運動の種類は1つでも複数でも問題ありません。自分が鍛えたい部位を注力するのもあり、全身を満遍なく鍛えるのありです。
次の章で具体的な種目を紹介しますので、自分に適したものを取り入れてみてください。
HIITの代表的な種目
最後にHIITの代表的な種目をご紹介します。
バービージャンプ
●開始姿勢:胸をやや張り、まっすぐ立つ
●やり方
- しゃがみこみ、両手を地面につける
- 膝を後方に伸ばし、腕立て伏せの姿勢をとる
- 1の姿勢に戻る
- 垂直方向にジャンプし、開始姿勢に戻る
●注意点や意識すべきポイント
動作をできる限り素早く行う。腕立て伏せの姿勢やジャンプ時に腰を丸めない。
もも上げ
●開始姿勢
胸をやや張り、まっすぐ立つ
●やり方
- 片足の太ももをできる限り持ち上げる
- 持ち上げた足を戻し、逆足も同様に持ち上げる
●注意点や意識すべきポイント
太ももを上げるのに合わせて、腕もしっかりと振る。腰は丸めず、まっすぐを保つ。
バットキック
●開始姿勢
- 胸をやや張り、まっすぐ立つ
- 手の甲がお尻につくように腕を後ろに置く
●やり方
- 手のひら(お尻)にかかとがつくように片足を曲げる
- 持ち上げた足を戻し、逆足も同様に曲げる
●注意点や意識すべきポイント
腰は丸めず、まっすぐを保つ。
サイドランジ
●開始姿勢
胸をやや張りながら、膝を曲げて、腰幅で立つ。
●やり方
- 片足を横に動かし歩幅を広げる
- 膝が90°となるようにしゃがむ
- ゆっくりと最初の姿勢に戻る
●注意点や意識すべきポイント
膝が内側や外側に向きすぎると怪我につながる可能性がある。膝は足の中指と人差し指の間を向くようにする。
かえるジャンプ
●開始姿勢
拳1つ分足を広げ、膝を45°に広げ、しゃがむ。
●やり方
- 開始姿勢からジャンプし、両手を挙げる
- 足が地面についたら開始姿勢に戻る
●注意点や意識すべきポイント
着地場所ができる限りぶれないようにまっすぐ跳ぶ
タックジャンプ
●開始姿勢
胸をやや張りながら、腰はそらないように、腰幅で立つ。
●やり方
- 両膝をを手で抱え込むようにジャンプする
- 膝を軽く曲げながら着地する
●注意点や意識すべきポイント
膝に大きな負荷がかかる運動のため、中級者以上の方ににおすすめ。
マウンテンクライマー
●開始姿勢
うつ伏せで両手とつま先を地面に着き、腕立て伏せの姿勢をとる
●やり方
- 片足の太ももを前方に持っていく
- 元の位置に戻したら逆足も同様に持っていく
●注意点や意識すべきポイント
動作中、腰が丸まったり、お尻が上がりすぎたりしないようにする。
ジャンプスクワット
●開始姿勢
うつ伏せで両手とつま先を地面に着き、腕立て伏せの姿勢をとる
●やり方
- 片足の太ももを前方に持っていく
- 元の位置に戻したら逆足も同様に持っていく
●注意点や意識すべきポイント
動作中、腰が丸まったり、お尻が上がりすぎたりしないようにする。
ジャンピングジャック
●開始姿勢
胸を少し張り、足を閉じて、直立する。
●やり方
- 軽くジャンプし、両手と両足を広げ、手は頭の上まで持っていく
- 素早く開始姿勢に戻る
●注意点や意識すべきポイント
素早く、テンポ良く行う
スタージャンプ
●開始姿勢
胸を張り、少し膝を曲げて立つ
●やり方
- 両手と両足を大きく広げながら、大きくジャンプする
- 両手と両足を閉じながら着地し、開始姿勢に戻る
●注意点や意識すべきポイント
できる限り大きい動きを意識する
ジャンプランジ
●開始姿勢
足を前後に広げ、前足が90°となるように腰を落とす
●やり方
- 垂直方向に跳ぶ。
- 両脚を入れ替えて着地する
●注意点や意識すべきポイント
疲れてきた時もしっかりと深くしゃがみ込む。
腕立て伏せ
●開始姿勢
- うつ伏せでつま先を床につけ、膝を完全に伸ばす。
- 手を肩の真下に下ろし、床につける。手の間隔は肩幅よりも5~8cm広くとる。
●やり方
- 肘の角度が90°となるように身体を下ろす。
- 身体はまっすぐのまま、つま先を床につけたまま手で床を押し、肘を完全に伸ばす。
●注意点や意識すべきポイント
身体は一直線を保つ。下す時に腰から下げないように、上げる時に胸だけ上げないように注意する。
シットアップ
●開始姿勢
- 床に仰向けに寝ころび、膝を自然に曲げる
- 腕は胸の前でクロスする
●やり方
- 太ももに近づくように上半身を起こす
- ゆっくりと元の姿勢に戻る
●注意点や意識すべきポイント
反動をつけて無理やり上げると首を痛める可能性がある。ゆっくりと腹筋群を意識して持ち上げる。
ツイストクランチ
●開始姿勢
- 床に仰向けに寝ころび、膝を自然に曲げる
- 手は耳の横にあてる
●やり方
- 片肘と反対側の膝を近づけるように上体を起こす
- ゆっくりと元の姿勢に戻る
- 逆の肘と膝も同じように行う
●注意点や意識すべきポイント
膝と肘をくっつけるイメージでは行わないこと。腹斜筋を収縮させた結果、肘と膝が近づくだけであり、あくまで腹筋の動きを最大限に意識する。
プランク
●開始姿勢
うつ伏せの姿勢で前腕と肘とつま先で身体を支える
●やり方
腹筋に力を入れ、20~60秒キープする
●注意点や意識すべきポイント
上半身は一直線となるように意識する。腰を反ったり、丸めると怪我の原因となる。
まとめ
本記事ではHIITのメリットと具体的な方法・種目についてご紹介しました。短い時間で有酸素運動と筋トレの両方のメリットを受けられるため、忙しく運動習慣がない人には一度は試してもらいたいエクササイズです。一回は短時間で終わりますが、効果が表れるのは早くても3か月後。自分にできる頻度で中長期的に取り組むことをおすすめします。
出典
- 1.
Falcone PH, Tai CY, Carson LR, Joy JM, Mosman MM, McCann TR, Crona KP, Kim MP, Moon JR. Caloric expenditure of aerobic, resistance, or combined high-intensity interval training using a hydraulic resistance system in healthy men. J Strength Cond Res. 2015 Mar;29(3):779-85.
- 2.
Maillard F, Pereira B, Boisseau N. Effect of High-Intensity Interval Training on Total, Abdominal and Visceral Fat Mass: A Meta-Analysis. Sports Med. 2018 Feb;48(2):269-288.
- 3.
Martins C, Kazakova I, Ludviksen M, Mehus I, Wisloff U, Kulseng B, Morgan L, King N. High-Intensity Interval Training and Isocaloric Moderate-Intensity Continuous Training Result in Similar Improvements in Body Composition and Fitness in Obese Individuals. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2016 Jun;26(3):197-204.
- 4.
Skutnik BC, Smith JR, Johnson AM, Kurti SP, Harms CA. The Effect of Low Volume Interval Training on Resting Blood Pressure in Pre-hypertensive Subjects: A Preliminary Study. Phys Sportsmed. 2016;44(2):177-83.
- 5.
Clark T, Morey R, Jones MD, Marcos L, Ristov M, Ram A, Hakansson S, Franklin A, McCarthy C, De Carli L, Ward R, Keech A. High-intensity interval training for reducing blood pressure: a randomized trial vs. moderate-intensity continuous training in males with overweight or obesity. Hypertens Res. 2020 May;43(5):396-403.
- 6.
Alkhatib A, Tsang C, Tiss A, Bahorun T, Arefanian H, Barake R, Khadir A, Tuomilehto J. Functional Foods and Lifestyle Approaches for Diabetes Prevention and Management. Nutrients. 2017 Dec 1;9(12):1310.
- 7.
Jelleyman C, Yates T, O'Donovan G, Gray LJ, King JA, Khunti K, Davies MJ. The effects of high-intensity interval training on glucose regulation and insulin resistance: a meta-analysis. Obes Rev. 2015 Nov;16(11):942-61.
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