執筆者
管理栄養士
鈴木 亜子
大学卒業後、主に医療機関に勤務。チーム医療の一端を担い、生活習慣病や腎疾患(透析療法や腎移植後)などさまざまな疾患の栄養管理に取り組む。得意分野は糖尿病で、糖尿病透析予防や特定保健指導(糖尿病重症化予防)なども担当。現在は豊富な栄養相談経験を活かし、健康に関わる分野のライターとして活動中。「なるほど!」と思っていただける、分かりやすい記事執筆を心がけている。
トンカットアリとは
トンカットアリは、別名ユーリコマ・ロンギフォリアとも呼ばれる東南アジアの熱帯雨林に自生する植物です。そんなトンカットアリの特徴や体への影響について解説します。
1.どんな成分?
トンカットアリは主に根が抗生物質や食欲増進など、さまざまな症状に対する民間薬として用いられています。
その主な有効成分はグリコサポニン、クアシノイド類、ステロール類、アルカロイド類、テルペン類など。
これら豊富な生理活性物質を含むトンカットアリは、とくに性機能向上に役立つとして注目されています。
2.テストステロンの女性ホルモンへの変換を阻害
トンカットアリに含まれる有効成分クアシノイドの一種であるユーリコマノンは、男性ホルモンであるテストステロンの生成を増強することが確認されています。
ラットの精巣のライディッヒ細胞を豊富に含む間質細胞を単離し、異なる容量のユーリコマノン(0.1、1.0、10.0μM)を投与したところ、投与量の増加に従いテストステロンの産生も増加したことが確認されました。
これは、テストステロンからエストロゲン(女性ホルモン)への変換阻害によるものであることも明らかとなっています。
さらに高濃度のユーリコマノンを投与することで、勃起不全を引き起こすホスホジエステラーゼ活性を阻害する可能性も示唆されました出典[1]。
性腺ホルモンはまず、コレステロールからテストステロンの合成が行われ、テストステロンからエストロゲンに変換されます。トンカットアリには、この作用を阻害することで体内のテストステロン濃度の維持・増強に役立つことに加え、勃起不全の改善が期待できるといえるのです。
トンカットアリに確認されている作用や効果
トンカットアリにはグリコサポニンやクアシノイド類をはじめ、さまざまな有効成分が含まれており、主に男性ホルモンの増強や性機能の向上が期待されています。ここでは調査・研究の結果を踏まえ、トンカットアリに確認されている効果について見ていきましょう。
1.テストステロンの上昇
更年期障害の悩みは女性だけのものではありません。男性ホルモンの分泌低下は男性更年期障害を引き起こします。トンカットアリにはテストステロンの体内濃度を増加させる作用があるため、更年期障害の症状の一つである気分の落ち込みなどへの効果も期待できるでしょう。
63名の被験者(男性32名、女性31名)に、トンカットアリの根の抽出物1日あたり200mgおよプラセボを4週間投与し、ストレスホルモンと気分状態を評価する研究が行われました。
その結果、トンカットアリ投与群において、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールの低下とテストステロンの16%増加が見られ、特定の気分状態(緊張や怒り、混乱の低下)が改善されることがわかりました出典[2]。
男性更年期障害の症状の緩和に用いられるのがテストステロン注射です。テストステロン製剤による治療においては多血球症や睾丸の萎縮、前立腺がんなどの重大な副作用のリスクが増加します。
トンカットアリは天然の成分であり、これまでの研究において重大な副作用も報告されていないことから、テストステロン製剤の代替としての期待が高まります。
2.男性機能の向上
トンカットアリには、男性ホルモンの欠乏が明らかな中年期の男性および健康な男性の性生活の満足度向上にも役立つことが報告されています。
アンドロゲン欠乏症と診断された45名の男性(47.38±5.03歳)をプラセボ群とトンカットアリサプリメント群(1日あたり200mg)に分け、さらにそれぞれを2群に分け一方に週3回、60分間のトレーニングを実施させました。6ヶ月にわたる調査の結果、トンカットアリサプリメント群において勃起機能が大幅に改善され、トレーニングを併用した場合でより改善が大きいことが分かりました出典[3]。
また別の研究では、40歳から65歳までの30名の健康な男性を対象とし、プラセボおよび200mgのトンカットアリ抽出物を含むサプリメントを1日1錠摂取させ、12週間後にアンケート調査を行ったところ、プラセボと比較してサプリメント群では性欲や性的パフォーマンス、機能に対する満足度が大幅に改善他という結果も出ています出典[4]。
トンカットアリを摂取することで男性機能が改善し、性生活の満足度にもつながります。運動を併用することでより高い効果が得られることも、興味深い結果ですね。
3.精子の質を向上
男性不妊に悩む方にとっても期待の大きい成分がトンカットアリ。妊活するにあたって男性がトンカットアリを摂取することで、精子の活動や形態に良い影響を与える可能性があります。
精子濃度の低下や運動率低下、精子形態異常による特発性不妊症と診断された平均年齢32.7歳、不妊歴5.3年の75名の男性患者が、トンカットアリ抽出物100mgのカプセル2錠(1日あたり200mg)で治療を受けた結果、介入期間9ヶ月で14.7%にあたる11名が自然妊娠しました。
この11名の精子の運動率は研究前と比較して133%まで改善、正常な形態の精子の出現率においても154%まで向上したと報告されています出典[5]。
精子の運動率や正常な形態の精子の割合が上昇すれば、妊娠の可能性は高まります。これから妊娠を希望される方にとって、トンカットアリは摂取しておきたい成分であるといえますね。
4.性欲の向上
性欲の低下は妊活が思うように進まない原因の一つでもあります。トンカットアリには精子の質の改善に加え、性欲の向上も期待できると報告されています。
30〜55歳までの109名の男性を対象とし、トンカットアリ抽出物300mgまたはプラセボのいずれかを12週間摂取させ、QOLや性的な健康に関わるアンケートおよび国際勃起機能スコアによって評価する研究が行われました。その結果、トンカットアリ摂取群はプラセボと比較して、国際勃起機能スコア、性欲においてより高いスコアを示しました出典[6]。
5.筋力の向上
筋力をアップさせるために最も重要なのは筋力トレーニング。よりパワーアップするために、筋トレと合わせてアミノ酸などのサプリメントを摂取している方も多いでしょう。実はトンカットアリにも、筋トレと併用することで良い効果をもたらすことが報告されています。
19〜25歳まで40名の若年男性をプラセボ群、トンカットアリサプリメント群、筋力トレーニング群、トンカットアリ+筋力トレーニング群の4つのグループに分け、トンカットアリサプリメント群とトンカットアリ+筋力トレーニング群には1日あたり200mgを摂取させ、8週間の調査を行いました。
筋力トレーニングは、トンカットアリサプリメントの有無にかかわらず下肢の筋力を向上させましたが、トンカットアリサプリメントと組み合わせることでよりパワーを向上させました出典[7]。
6.脂肪燃焼
有酸素運動は、酸素および体内の糖質と脂質をエネルギー源として行う運動です。トンカットアリを摂取して有酸素運動を行うと、脂肪燃焼に役立つことが示唆されています。
男性アスリートに、体重1kgあたり1.7mgのトンカットアリもしくはプラセボを3日間摂取させ、最大酸素摂取量(VO2max)の65%の速度で1時間のトレッドミルを行い、呼気ガス収集による糖質と脂肪の代謝分析、血液サンプル採取による遊離脂肪酸(FFA)、グリセロール、中性脂肪、グルコース、インスリン、コレステロール(総コレステロール、HDL、LDL)、テストステロンおよびコルチゾールの濃度を測定しました。
その結果、血中グリセロールとコルチゾール濃度が増加する一方で、FFAとLDLの減少が観察されたことから、トンカットアリ群のアスリートはエネルギー源としてグルコースよりも脂肪を利用していることが示唆されました出典[8]。
有酸素運動に加えトンカットアリを摂取することで脂肪燃焼が促進される可能性があるので、減量を目指す方にもぴったりの成分であるといえますね。
7.免疫力の向上
トンカットアリを摂取するとある種の免疫細胞が増加し、免疫力の向上につながるという研究報告が挙げられています。
83名の男性被験者に、1日あたり200mgのトンカットアリ抽出物を4週間摂取させたところ、免疫細胞の一種であるT細胞数が6.5%増加しました。
T細胞にはウイルスや細菌を排除するキラーT細胞と、抗原刺激に応答し他の免疫細胞の働きを調節するヘルパーT細胞があります。このうちまだ抗原(病原性ウイルスや細菌)にさらされたことのない未熟なT細胞「ナイーブT細胞」が28%増加していることが判明。また、免疫細胞の数や機能をスコア化した「免疫力スコア(SIV)」も4.8%増加していることが明らかとなりました出典[9]。
トンカットアリは、ウイルスや細菌感染への抵抗力を高めたい方にもおすすめの成分であるといえます。
トンカットアリの摂取方法や注意点
性機能の向上や不妊に対する効果など、トンカットアリの効果を十分得るためにはどのくらい摂取すべきなのでしょうか。ここでは、トンカットアリの効果的かつ安全に摂取できる量などについて解説します。
1.どのくらい摂取すればいい?
研究論文によると、テストステロンの上昇および精子の質改善効果が期待できる摂取量は1日あたり200mgです出典[2] 出典[5]。
テストステロンの減少による男性更年期障害の諸症状や、不妊に対する効果を得るためには、この量が目安となるでしょう。
2.健康に摂取できる量は?
トンカットアリに関する4週間の亜急性および13週間の亜慢性毒性試験の結果によると、一日許容摂取量(ADI)は体重60kgの成人1日あたり最大1.2gであると報告されています出典[10]。
この量は、テストステロンの上昇や精子の質改善に効果を示すとされる摂取量200mgの6倍にあたります。
この研究でも毒性は認められず、基本的には天然由来の安全な成分です。サプリメントを摂取する際も、1日あたりの摂取目安量を守れば安全に摂取できるでしょう。
まとめ
東南アジアに自生する植物トンカットアリ。その根の抽出物はテストステロンの上昇や妊活にも役立つ可能性のある成分です。
研究論文などによる効果的な摂取量は200mgですが、サプリメントで摂取する場合は1日あたりの摂取目安量を守って摂取しましょう。基本的には安全な成分なので、適切に摂取して日々の生活に役立ててくださいね。
またトンカットアリをより効率的に摂取したい場合は規格化された「LJ100」がおすすめです。LJ100は性欲や男性機能、また筋肥大において重要な遊離テストステロンを上昇させることが多くの研究で報告されている素材です。
出典
- 1.
- 2.
- 3.
- 4.
- 5.
- 6.
Shaiful Bahari Ismail, Wan Mohd Zahiruddin Wan Mohammad, Annie George, Nik Hazlina Nik Hussain, Zatul Mufiza Musthapa Kamal, Eckehard Liske.Randomized Clinical Trial on the Use of PHYSTA Freeze-Dried Water Extract of Eurycoma longifolia for the Improvement of Quality of Life and Sexual Well-Being in Men.Evid Based Complement Alternat Med
. 2012;2012:429268. - 7.
- 8.
- 9.
Annie George,Naoko Suzuki,Azreena Binti Abas,Kiminori Mohri,Masanori Utsuyama,Katsuiku Hirokawa,Tsuyoshi Takara.Immunomodulation in Middle-Aged Humans Via the Ingestion of Physta® Standardized Root Water Extract of Eurycoma longifolia Jack—A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled,Parallel Study.PHYTOTHERAPY RESEARCH Phytother. Res. (2016) Published online in Wiley Online Library
(wileyonlinelibrary.com) - 10.
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