監修者
アロマインストラクター
鈴木香美
IAI認定アロマセラピスト、アロマインストラクターなどの資格取得後、アロマサロンを開業。高いスキルと知識、丁寧なサービスで多くのクライアントの心と身体をサポート。現在はアロマ講師として活動する傍ら、webメディアにおけるアロマ関連記事の執筆・監修も手掛けている。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
香りの生理学的作用
香りは自律神経にはたらきかけ、身体に様々な変化をもたらします。まずは香りが身体に与える影響についてご説明します。
心や神経を休ませる鎮静作用
香りの効果として一番想像しやすいのが鎮静作用でしょう。ある種の香りは副交感神経にはたらきかけることでリラックス感や安心感をもたらします。近年流行りのアロマディフューザーなどはこの目的で使用する人が大半なのではないでしょうか。
また香りの成分を用いた療法であるアロマセラピーは、古来より病気治療の手段として用いられてきました。不安症状を抱える人を対象とした研究でも、アロマの吸入は症状緩和に有効であることが報告されています出典[1]。
不安やストレスは自律神経の乱れを招きがちですが、香りは自律神経を整えストレスコントロールに対する効果が期待できます。うまく利用してリラックスし、心や神経を休ませましょう。
脳を活性化する覚醒作用
鎮静効果とは逆に、脳を活性化する覚醒作用を持つ香りもあります。すっきりした香りを嗅ぐことで気分がリフレッシュしたことはあるでしょう。
実際にペパーミントなどの清涼感のある香りを嗅ぐと、覚醒を表す脳波が増加することや、眠気が少なくなることが研究で確認されています出典[2]。
目覚ましや気分転換などに香りを使うことで、集中力や記憶力が上がることが期待できます。
人間の五感の中で嗅覚は脳や神経に作用するスピードが最も早いとも言われています。即効性も期待できるので仕事中や起床時などに是非試してみてください。
睡眠の質を高める6つの香り
ここからは良い眠りのために、おすすめの香りをご紹介します。主に鎮静作用が確認されている香りが深い眠りや入眠に有益です。
ラベンダー
甘いフローラルの香りに加えてハーブのさわやかさが特徴のラベンダー。小さな紫色の花を咲かせ、その香りの良さから古代から現在まで広く愛されています。
ラベンダーの香りは副交感神経を刺激し、鎮静、抗不安、気分安定、抗痙攣作用をもたらすことが認められています出典[3]。さらにリラックス状態を表す脳波であるα波が増加することもわかっています出典[4]。
2020年にトルコで行われた研究では睡眠不足の問題を抱える更年期女性を対象にラベンダーオイルを用いたアロマセラピーを実施しました。その結果、睡眠の質だけでなく、生活の質が向上することが明らかになりました出典[5]。
睡眠の悩みがある、リラックスしたいなどの場合、まずは代表的なハーブとも言われるラベンダーがおすすめ。
ローズ
甘く優雅なローズの香り。花のとおりに華やかでありながら、気分が落ち着く香りが特徴です。
その香りには鎮静作用と抗うつ作用があることが、これまでの研究で確認されてきました出典[6]。
実際ローズウォーターを用いたアロマセラピーの研究で、血液透析患者の不安を著しく減少させることがわかっています出典[7]。また心臓病患者の眠りの質に良い影響を与える可能性を示す報告もあります出典[8]。
このように香りの素晴らしさだけではなく、効果が実証されています。癒されるローズの香りに包まれて眠りに落ちるのもよさそうです。
カモミール
カモミールは人類が知る限り最も古い薬草のひとつで、白い花を咲かせるキク科の植物です。
薬草らしい安らぎ感のある匂いに加え、ほんのりとリンゴのように甘い芳香もあわせ持ちます。主にローマンカモミールとジャーマンカモミールの2種類がよく知られています。
カモミールの乾燥した花は多くのフラボノイドやテルペノイドという薬効成分を多く含んでいます。これらが心身をリラックスさせ、更に炎症や胃腸障害にも好影響を及ぼすと考えられています。
2019年に発表されたシステマティマティックレビューでは、カモミールが睡眠の質を大幅に向上させることが報告されています出典[9]。カモミールの精油はたくさんの花からほんの少量しか摂れないことから高価なため、ハーブティーとして寝る前だけに飲むことをおすすめします。
ただしキク科の植物にアレルギーがある人は注意が必要です。
セドロール
セドロールは植物の名前ではなく、スギ科やヒノキ科の樹木に含まれる香り成分です。副交感神経を優位にし鎮静効果がある可能性が示されています。森林浴でリラックスするのはこの成分が作用していることも一因です。
実際にセドロールを投与した実験では、偽薬を使った被験者と比較して入眠までの時間が短く、入眠後の深い睡眠が長く続いたとの結果が出ています出典[10]。
森に出掛けることは難しくても、精油を使用すれば手軽に森林浴気分を味わうことができます。さわやかな森の香りはまさに癒し。不安やイライラした気分も静めてゆっくり眠りましょう。
イランイラン
イランイランは東南アジア原産の樹木で黄色の花を咲かせます。甘くエキゾチックな香りで「官能的な香り」といわれることも。古くはクレオパトラも愛用し、媚薬としても使われてきました。
2008年にノーザンブリア大学で行われた研究ではイランイランは平穏な気持ちを増加させることが分かりました出典[11]。
香りが強いので、ほんのり香る程度で充分です。長時間の使用も避けて下さい。あまりなじみのないイランイランですが、その甘い香りの魅力で幸福感を高めてくれることでしょう。
紅茶
紅茶の香りはストレスを低減すると言われています。花のような香りや草木の香りなど多くの成分が関与し、さらに発酵の過程を経て複雑な香りを形成します。
この中には鎮静効果のある香り成分が含まれており、ストレスによる睡眠の悩みに対する効果が期待できます。
実際にストレス意識の高い女性を対象とした調査で、紅茶の香りを嗅ぐことで入眠時間の短縮、睡眠時間の延長などが改善し、睡眠の満足度の向上とストレスが低減したとの報告があります出典[2]。
紅茶を飲むときは香りも存分に味わいたいですね。ただし紅茶にはカフェインが含まれているので、就寝前や飲みすぎには注意を。
目覚めによい5つの香り
続いて目覚めの良い香りについてご紹介します。作業中に眠い時や起床時に是非吸ってみてください。
コーヒー
コーヒーは飲むことで覚醒効果があることはよく知られていますが、香りを嗅ぐだけでも目覚める効果があるようです。ただし豆の種類によって、その香りがもたらす効果が異なることがわかっています。
4 種類の異なるコーヒーフレーバーの 香りを嗅いだときの心拍数および抹消皮膚温を検討した研究があります出典[12]。結果はローストの香気を強調したフレーバーでは心拍数が減少し、甘いバニラのような香気のフレーバーでは心拍数が増加し 皮膚温が低下する傾向がみられました。
これらのことから、ローストタイプ コーヒーの香りは副交感神経活動を活発 にし、バニラタイプコーヒーの香りは交感神経活動を活発にする、といったように コーヒーの香りのタイプにより異なった作用がみられることがわかりました。
ビジネスマンの方はブラックコーヒーを好む人が多いかもしれませんが、香りを嗅ぐだけの場合は少し甘めのコーヒーの香りを用意するとよいかもしれません。
ローズマリー
ローズマリーは地中海沿岸に自生するハーブ。さわやかできりっとした力強い香りを持つ葉を持ち、古い歴史があります。肉料理などによく使われ、イタリア料理やフランス料理には欠かせません。その香りには覚醒作用やリフレッシュ効果、抗菌・抗酸化作用があるといわれています。
実際の研究でローズマリーの吸入後に被験者は血圧、心拍数、呼吸数が上昇し、活動的になったとの報告があります出典[13]。この結果から自律神経の活動、気分の状態が影響を受けることがわかりました。
香りを楽しむだけでも気分がすっきりしますが、刺激の強い部類のハーブですので精油を使用する場合は注意が必要です。特に妊娠中、授乳中、小さい子供などは使用を控えましょう。
ペパーミント
ペパーミントは眠気覚ましとしてよく知られていますね。スーッとしたさわやかな香りはリフレッシュにもってこいです。清涼感のもとはメントールという成分で冷却効果があり、ガムや歯磨き粉、お菓子などにもよく使われています。
ペパーミントはシソ科の植物で鎮痛、抗菌・抗酸化、抗炎症効果などがあります。鼻づまりの解消にも効くといわれています。
ある研究でペパーミントの精油を用いたハンドマッサージ後の香りに対する評価を調査しました。結果は、「さわやか」、「目が覚める」、「やる気が出る」、「興奮する」といった覚醒に関連する項目で高い得点がでました出典[14]。
ペパーミントの香りで気分をシャキッとさせ、集中力アップに役立てましょう。
セージ
セージは和名をヤクヨウサルビアといい「長寿のハーブ」と呼ばれています。肉料理の臭み消しとしても使われ、おなじみのソーセージは代表的な料理です。
セージの香りは気持ちを前向きにし、元気が出るといわれています。さらに認知機能を改善する伝統的なハーブとして使われてきた歴史があります。高齢者の記憶力の回復効果が期待できるといわれているのです。
実際、健康な被験者とアルツハイマー病に対するセージの効果を研究する調査が実施されました。その結果、両者で認知パフォーマンスを高める効果を発揮し、かつ安全性が示されたことが報告されています出典[15]。ただセージの効果についてはさらに臨床試験が必要であると考えられています。
セージは作用が強いので部屋の芳香用に使うのがおすすめ。特に妊娠中の場合は使用を控えたほうがよさそうです。
レモン
フレッシュで爽快感あふれるレモンの香りは、老若男女に好まれる傾向があります。レモンなど柑橘系の香りには眠気覚ましや頭をすっきりさせる効果があり、そのため集中力アップや疲労回復が期待できます。
実際の調査でレモンの香りによって爽快感がもたらされ、心地よい気分が向上することがわかっています出典[16]。参加者のほとんどがレモンの香りに対して好意的であったことから、香りの嗜好が気分に影響する可能性があると考えられます。
仕事の合間などに気軽にリフレッシュできるのも香りのいいところです。疲れやイライラを吹き飛ばしてやる気アップしましょう!
香りの取り入れ方
最後に香りを実生活に取り入れる方法についてご紹介します。自分にできる方法で是非取り入れてみてくださいね。
アロマディフューザー
アロマデュフューザーとは植物から抽出した精油やアロマオイルを用いて香りを効果的に拡散できる器具です。拡散方法や運転時間が異なるいくつかの種類がありますので、部屋の広さやシチュエーションを考慮して選びましょう。
超音波式アロマディフューザーは少量の精油と水を超音波でミストにして部屋に拡散させるタイプ。加熱しないため安全で、ミストが広がる効果を見て楽しむことができます。精油の使用量を抑えられます。
噴霧式のアロマディフューザーは精油の原液を使用し、霧状に噴射することで香りを拡散します。水なしで使用できるのが特徴で非常に香りが強いため、広範囲に香りを拡散させたい場所に向いています。精油の消費がやや早いことがデメリットです。
リードアロマディフューザーは精油などの入ったボトルにリードという籐製などのスティックを挿し、精油を吸い上げることで周囲に香りを広げる気化式タイプです。電気や熱を使わないため置く場所や時間を選びません。スティックの本数によって香りの強さを調整できますが、香りの拡散力はほかのタイプに比べ弱いといえます。
加熱式アロマディフューザーはアロマポットやアロマランプとも呼ばれます。精油を垂らした水をライトやキャンドルで温めると、ほんのりと部屋に香りが広がります。香りの拡散力は弱めですが手軽に使用することできます。ただし、火や熱を使いますので就寝時はつけたままにしないように注意しましょう。
スプレーを枕や部屋に
シュッとひと吹きすることで手軽に香りを楽しむことができます。寝る前に枕や部屋にリラックス効果の高い香りをスプレーして睡眠の質を向上させましょう。市販のアロマスプレーもたくさん販売されていますが、好みの精油と無水エタノール、精製水で簡単に作ることもできます。
最近ではリフレッシュなどの目的でマスクに使用されるアロマスプレーもあります。何種類か香りを揃えてシチュエーション別に使うのもおすすめです。
シャンプーを替える
毎日のシャンプー、目的にあった香りを選ぶことで心と身体が変わるかもしれません。
例えば夜にシャンプーをする場合はリラックス効果のある香りを、朝シャンプーする場合は気分がシャキッとなる香りを選んでみてはいかがでしょうか。香りを重視したアロマシャンプーが販売されています。
肌に塗りつける
香りを直接肌に付ける方法もあります。肌に塗れるアロマオイルやボディミストが市販されています。ただし精油(エッセンシャルオイル)の場合は高濃度なのでキャリアオイルなどとブレンドしてください。
マッサージオイルを塗る
皮膚から浸透したアロマは全身の毛細血管やリンパ管から有効成分が吸収され全身を巡ります。さらに鼻から香りを吸入することで心身ともにリラックスすることができます。
精油を使ってマッサージオイルを作る場合はキャリアオイルとブレンドして希釈濃度が1%以下になるようにしてください。
まとめ
香りを楽しみながら、自然の与えてくれた力を大いに活用してください。ストレスの多い現代社会に歴史ある芳香療法は実はとても合っているのではないでしょうか。その即効性、薬理作用は心身の健康に役立ち、原因のわからない不調を改善してくれます。香りは好みによって心地よさの度合いも異なります。心から癒される香りをみつけて今日からぐっすり眠りましょう。
出典
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