【認知力/記憶力を向上!?】バコパモニエラとは?5つの効果と適切な摂取方法
2023年8月4日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

バコパモニエラとは

バコパモニエラという栄養素をご存知でしょうか? 「バコパ」との名称で、サプリメントとして売られているのを見たことがあるかもしれませんね。この記事ではバコパモニエラがどのようなものなのか、摂取することでどのような効果をもたらすのか、どの程度摂取するのが効果的か、などについて、実際に健康効果が得られた各国の研究結果と共に紹介します。

1.どんな栄養素?

バコパモニエラ(バコパ・モンニエリ)とは、記憶力や学習能力を向上させる効果があるとされるハーブの一種です。日本では馴染みの薄いハーブですが、インドではアーユルヴェーダ医学において、古くから発熱、炎症、痛み、喘息、てんかん、記憶力低下などの状態を治療するため、薬用植物として使用されてきました。

アーユルヴェーダとはインド・スリランカで生まれた世界最古の伝統医学です。ハーブを用いた食事療法や瞑想、マッサージ、ヨガなどを生活に取り入れることで体と心の健康の維持増進をはかることを目的としています。

バコパモニエラを始めとするアーユルヴェーダの薬物は、日本においても健康食品として注目され始めています。しかしアーユルヴェーダ医学自体は、薬食道源の考え方に基づき、体調に合わせた食事をすることによる健康の維持増進を目的としており、特定のハーブや薬物を摂取すれば体に特定のよい効果をもたらす、という意味合いのものではありません。バコパモニエラについても、基本的な生活習慣や食事バランスを整えないままに摂取しても健康増進の効果はあまり期待できないことに注意する必要があるでしょう。

 

2.体の中でどんな働きをする?

バコパモニエラに含まれる有効成分はステロイドサポニン、バコパサポニン、バコシド、アルカロイド、フラボノイドなどがあります。これらの成分には親油性のものが多く、脂質に溶ける、あるいは結合する、という過程を経て、脳へ入るための血液脳関門を通過することができます出典[1]。このためバコパモニエラの有効成分については脳への効能が期待されます。

  • バコシドAおよびバコシドB
    シナプス活性の回復に関係するキナーゼという酵素の活性と、ニューロンの合成を促進することにより、損傷したニューロンの修復効率を上げると考えられています。神経細胞の保護、認知機能の維持増進にも役立つ効果が期待されています。またバコシドAには炎症性サイトカインの過剰な発生を抑える効果もあり、抗酸化物質として機能する一面も持つことが分かっています。
  • ステロイドサポニン
    バコシドと共に、学習能力および記憶力の改善に役立つとされる活性化学成分であることが分かっています。
  • バコパサポニン
    神経伝達物質の分解酵素を阻害する作用が報告されています。神経伝達物質の保護に役立ち、特に記憶力の維持をサポートできるとして注目されています。
  • アルカロイドおよびフラボノイド
    強い抗酸化物質として体内で機能し、脳における活性酸素を除去することができます。脳へのダメージを防ぐ、脳機能を保護する、アルツハイマー型認知症を予防する、などの効果が期待されています。

いずれも神経伝達物質の保護や抗酸化作用としての効果により、脳機能の維持、認知機能の改善などに役立つ物質であることが判明しています。

 

バコパモニエラに確認されている作用や効果

バコパモニエラは、健全な食生活の中に適量取り入れることで脳や精神などによい効果をもたらすことが分かっています。以下ではバコパモニエラに期待されている健康効果について具体的に説明します。

1.記憶力および認知力の向上

バコパモニエラの有効成分の中で最も有力であるのが、記憶力および認知力の向上です。これは主にバコシドやバコパサポニンによる神経細胞を保護する効果が関係していると言われており、認知機能の維持増進に繋がると考えられています。

バコパモニエラ抽出液を摂取することによる学習や記憶の能力変化について調べた二重盲検プラセボ研究において、バコパモニエラ抽出液を300mg/日、12週間にわたり摂取した群では、プラセボ摂取群と比較して、視覚情報処理速度や学習率、記憶の統合力、不安心理などが改善していたという結果が得られています出典[2]

バコシドは神経細胞であるニューロンの合成を促進するほか、更にニューロンにおける、情報伝達の際に重要なシナプスという部位の回復機能を促進する効果があることも分かっています。そのためバコパモニエラは学習能力の向上をサポートする効果があるとして注目されています。

また、行われた二重盲検プラセボ研究における対象者がいずれも認知症の兆候のない65歳以上の高齢者であったことから、加齢による認知力の低下防止にも役立つのではないかとの期待も寄せられています。

 

2.精神を安定させる効果

バコパモニエラはアーユルヴェーダ医学にて、精神障害の改善のために使用されることもあり、動物実験あるいは臨床試験において、いくつかの抗うつ薬に匹敵する抗不安活性があることが明らかになっています。

バコパモニエラを摂取して1時間後および2時間後に認知機能や気分の変化を調べたランダム化比較試験においては、320mgおよび640mgのバコパモニエラを摂取した群は、プラセボ摂取群と比較して、認知機能の向上および気分の改善が確認されました。またストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの体内濃度がバコパモニエラ摂取群において低下していたことから、バコパモニエラにコルチゾールの分泌を低下させる効果があるとも考えられています出典[3]

抗うつ作用においては、バコパモニエラの成分がセロトニン受容体を活性化し、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの活性を増やす作用があるとされています。一般に抗うつ薬や抗不安薬として処方される薬剤にも同様の作用があり、ラットを対象とした動物実験においては、イミプラミンという抗うつ薬の活性に匹敵する抗うつ活性や出典[4]、ロラゼパムという抗うつ薬に匹敵する抗不安活性が確認されています出典[5]

ストレス低減や抗うつ・抗不安効果において、バコパモニエラは有効に作用していると言えるでしょう。

 

3.疲労の緩和

バコパモニエラにおける抗疲労効果については、有効成分であるバコパサポニンなどが有する抗酸化作用による活性酸素の除去効果が関係していると考えられています。

ラットの水泳時における継続時間や血液成分を調べた動物実験において、バコシド抽出物を投与した群は対照群と比較して、水泳可能時間が約3倍に増加していました。これらバコシド抽出物を投与したラットにおいては、疲労の指標となる乳酸の値などが大幅に低下しており、また抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼ(CAT)などの減少も抑制されていたことが分かっています出典[6]

激しい運動時には活性酸素が発生し筋肉組織などにダメージを与えたり、またエネルギーの消費により生成した乳酸の蓄積により疲労を強く覚えたりするため、運動強度が上がるほどに運動の継続が難しくなります。そのためバコパモニエラの摂取により活性酸素を除去し乳酸の蓄積を抑制する効果が発揮されることで、疲労軽減に繋がるのではないかと考えられているようです。

 

4.胃腸の機能を改善

アーユルヴェーダ医学においては、バコパモニエラは胃腸障害の改善のためにも使用されているようです。過敏性腸症候群の患者を対象とした臨床試験においては、このバコパモニエラを含んだアーユルヴェーダ製剤を投与した群において、対照として標準治療を行った群よりも症状の改善がより見られたとの結果が得られています出典[7]

また、胃潰瘍など潰瘍性の消化管疾患においてもバコパモニエラが効果を発揮する可能性があるとして期待が寄せられています。胃潰瘍モデルのラットを用いた動物実験においては、バコパモニエラ抽出物の投与により治癒効果が得られています

同実験において、胃の防御因子に対するその効果を調査したところ、バコパモニエラ抽出物の投与によって、胃粘膜を保護するムチンの分泌量が増加し、また抗酸化効果も増大したことが分かりました出典[8]。バコパモニエラに含まれるバコパサポニンなどの有効成分は、このように胃の粘膜防御因子を強化することで、潰瘍性の消化管疾患の予防に役立つ可能性があるようです。

 

5.ADHDの緩和

注意欠陥・多動性障害(ADHD)不注意、多動性、衝動性などの特徴を持ち、行動を制御することの困難さを伴います。このADHDの傾向を持つ小児がバコパモニエラを摂取することで、認知機能や行動が改善する効果が得られる可能性があるとして期待が寄せられています。

インドの医療センターで行われた臨床試験においては、ADHDの傾向を持つ小児へバコパモニエラ抽出液225mg/日の投与を6週間続けることにより、落ち着きのなさの改善、自制心の改善、注意欠陥の症状の改善、などが80~90%の小児において確認されました。学習障害、衝動性、および精神医学的問題の症状スコアの減少も過半数の小児において確認され、バコパモニエラの摂取がADHDの症状の改善に効果的であると結論付けられています出典[9]

ADHDの薬に対する平均反応率は70%ほどであり、30%の小児については薬に対して反応しないか、吐き気や不眠、体重減少などの副作用のため継続的な服用が困難な状況です。この試験においては投与による小児の忍容性が良好であったとも報告されており、副作用の少ない治療方法として役立つ可能性があると言えそうです。

 

バコパモニエラの摂取方法や注意点

バコパモニエラはゴマノハグサ科の多年草であり、ハーブとして摂取するほかに有効成分を体内へ取り込む方法がありません。そのため摂取のためにはサプリメントを利用する必要があるでしょう。以下ではバコパモニエラを含むサプリメントの利用における注意点などについて説明します。

1.摂取量と副作用について

バコパモニエラの摂取により認知機能や抗ストレス機能の向上、精神症状の改善など、何らかの健康効果を得られた試験の多くにおいては、バコパモニエラ抽出液の摂取量は200~300mg/日ほどでした。バコパモニエラを配合したサプリメントも、1日の摂取目安量を300mg程度としているものが多いため、健康効果を期待してサプリメントの摂取を行う場合は、300mgを1日量の目安とするとよいと考えられます。

バコパモニエラを過剰摂取した場合、下痢症状や吐き気といった消化器症状、腹部のけいれんなどが現れることがあります。体質によっては適量の摂取であっても影響が強く出る場合があるため、サプリメントの摂取後にこれらの症状を確認した場合にはただちに摂取を中止しましょう。


2.相性の悪い薬はある?

バコパモニエラを始めとしたハーブ類と薬物との相互作用により、ハーブ、もしくは薬物の効果が想定以上に増大する場合があります。

一例として、アミトリプリチンと呼ばれる抗うつ薬とバコパモニエラ抽出物とを同時摂取した際の効果を観察した動物実験において、アミトリブリチンの薬物代謝速度が延長される可能性が示唆されました出典[10]

薬物の代謝時間が他の薬物や食品、ハーブなどにより延長されると、薬物が効能を持ったまま想定以上に長く体内に留まることになり、薬物誘発毒性の発生率が上がるなど、副作用のリスク向上に関わるため注意が必要です。

バコパモニエラはそれ自体が認知機能向上作用や抗うつ作用をもたらす薬用植物であるため、薬を服用している場合にはバコパモニエラの摂取を予め薬剤師や医師に相談しておく必要があるでしょう。

 

3.理想の摂取方法やタイミングはある?

抗ストレス効果や認知機能向上効果においては、摂取後1時間や2時間で目的の健康効果がもたらされているという試験結果が出ています出典[3]。そのため摂取のタイミングとしては、目的の健康効果を得たい1~2時間前の摂取が効果的であると考えられます。

ただし、認知機能の低下防止や抗うつ効果、ADHDの行動変化などを目的として摂取する場合、試験においては12週間や6週間といった継続摂取において有益な効果が確認されているものが多いようです。そのため期待する健康効果によっては、毎日の摂取を長期にわたり継続する方がよいことも知っておきましょう。
 

まとめ

認知機能や精神状態の改善など、多くの健康効果をもたらすバコパモニエラですが、薬用植物としての意味合いが強いため、体質と相談しながら、過剰摂取を起こさないよう正しく利用することが重要です。現在病院に掛かっている場合には専門家と相談の上、適量を摂取して効率よく安全に健康効果を得られるようにしましょう。
 

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