執筆者
管理栄養士
西村 俊司
給食施設や食品メーカーなどを経て、現在は老人福祉施設で栄養士として勤務。専門学校卒業後18年のブランクを経て、管理栄養士国家試験に初挑戦し、一発合格。食のプロフェッショナルとしての知識と経験を生かしながら、心も体も喜ぶ「食の提案」を多くの人に届けたいと思っている。家では妻と2人の子供との4人暮らし。食べることや料理を作ることが大好き。趣味は自転車とキャンプとDIYなオジサン。
クラチャイダムって一体何?
そもそもクラチャイダムとは何か想像もつかない人も多いことでしょう。まずはクラチャイダムの基本情報についてご紹介します。
クラチャイダムの正体
クラチャイダムは、タイ・ラオスなどの東南アジアが原産の植物です。「クラチャイダム」はタイ語で「黒いガランガル」という意味。ガランガルというのは東南アジアでよく使われるショウガ科の植物の地下茎で、トムヤンクンなどの料理にスパイスとして使われている馴染み深い食材です。
日本では「黒ショウガ」や「黒ウコン」などの呼び名もあります。寒さに弱い作物であるため、国内では沖縄県の一部で育てられている程度で、ほとんどを東南アジアの各国からの輸入に頼っています。
クラチャイダムはタイでは1,000年以上前から滋養強壮に効果がある食材として食用として、また薬として愛されてきました。タイ料理はさまざまなハーブや香辛料を使いますが、クラチャイダムも同様にハーブとして使われます。
タイではクラチャイダムを煮出したお茶や、漬け込まれたお酒を薬膳飲料として飲むほか、サプリとしても人気で、薬局などで手軽に購入できます。
クラチャイダムってどんな栄養素?
クラチャイダムが人気なのは、豊富な栄養素にあると言われています。
精力増強のイメージがありますが、これはクラチャイダムに含まれるアミノ酸の一種「アルギニン」によるものです。アルギニンはヒトの体内で合成できるため「非必須アミノ酸」に分類されています。
しかし加齢とともに合成量が減る上に、ストレスによって消費されやすいため、食事によって摂取することが望ましいアミノ酸です。アルギニンは成長ホルモンの分泌促進や、代謝産物である一酸化炭素の効果による勃起不全の改善も報告されていて、それが精力増強をイメージさせるのでしょう。
そのほかにも、独特の黒色は抗酸化作用が期待されるアントシアニンや、ポリメトキシフラボンによるものです。特に、クラチャイダムに含まれているポリメトキシフラボンはアンチエイジングや体脂肪がつきにくくなるなどの、さまざまな機能性が評価されていて、男性だけではなく、女性にも嬉しい栄養素が多く含まれています。
クラチャイダムに期待される効果4つ
それでは、クラチャイダムによって期待できる効果を順に見ていきましょう。
1.運動能力の向上効果
加齢とともに、人の運動能力は徐々に低下していくもの。能力の低下にはさまざまな原因がありますが、酸化ストレスも大きな原因の一つです。クラチャイダムはこの抗酸化ストレスから身を守り、運動能力の向上に効果的かもしれません。
海外の研究によると、クラチャイダムのエキスを約2ヶ月にわたって投与されたグループは、偽薬を投与されたグループに比べて、基礎的な運動テストのパフォーマンスが向上したとされています。また、血中の脂質過酸化物価指数が低下し、抗酸化作用を持つ酵素の活性が高まったという結果も報告されました出典[1]。
いつまでも若々しくありたいビジネスパーソンにとっても、クラチャイダムのパワーはうってつけですね。
2.性欲の向上効果
セックスレスとなる原因はさまざまありますが、加齢とともに性欲が低下するのが大きな原因の一つとされています。いつまでも若々しいと思っていても、歳を重ねるごとに低下していく性欲。クラチャイダムはセックスレスに悩むパートナーにとって、非常に有効な食品かもしれません。
動物実験の結果ではありますが、海外でクラチャイダムのエキスを投与されたオスのラットは投与されていないラットと比較して、性的積極性の向上が見られたとされています。
なお、この実験では併せて運動トレーニングによる実験も行われていますが、最終的に運動トレーニングとクラチャイダムエキスの投与をされたラットが、性的積極性も、セックスパフォーマンスも向上したという結果で締めくくられています出典[2]。
いつまでも素敵なセックスライフを送りたい男性にとって、クラチャイダムは有効かもしれませんね。
3.筋力の維持、向上
加齢とともに筋力は低下します。骨格筋は運動能力に関わるほか、エネルギー代謝の器官としても非常に大切な役割を持っています。筋力の低下は運動パフォーマンスの低下を招くだけではなく、代謝機能の低下により、慢性的な疾患の原因になるとも言われます。
いつまでも健康でいるためには、筋力の維持は重要なポイントですが、クラチャイダムに含まれるメトキシフラボンは骨格筋を肥大させる効果があるかもしれません。
日本の研究者による動物実験では、クラチャイダム由来の「5-ヒドロキシ-7メトキシフラボン誘導体」を強化した餌を与えたラットは筋肉のサイズと質量が増加したという結果が報告されています出典[3]。
若々しい筋肉を維持したいビジネスパーソンは、クラチャイダムを試してみても良いかもしれません。
4.エネルギー消費促進による肥満対策
昔はスリムで引き締まっていたのに、加齢とともにお腹周りがぽっちゃりしてくる、いわゆる中年太り。
加齢とともに太る原因の一つが、褐色脂肪細胞の減少。褐色脂肪細胞とは、いわゆる脂肪細胞(白色脂肪細胞)とは異なり、体の脂肪を分解して熱に変える細胞です。
乳幼児期に最も多く、加齢とともに減少しますが、中年期に大幅に減少するとされています。褐色脂肪細胞が減少することで、脂肪が熱に変わらず、体温が低下し、脂肪が溜まりやすくなるのです。
海外の動物実験では、クラチャイダム抽出物を投与されたラットは偽薬を投与されたラットに比べて、エネルギー消費量が大幅に向上したと報告されています出典[4]。この研究では、クラチャイダム抽出物によって、褐色脂肪細胞の活性化が期待できる可能性があるとされています。
クラチャイダムには肥満になりにくい体を維持するパワーが秘められているかもしれません。
クラチャイダムの使用方法
クラチャイダムは東南アジア原産の食品で、日本ではまだまだ馴染みのある食品ではないため、文部科学省の日本食品標準成分表にも成分が掲載されていませんが、民間企業の成分分析によると、タンパク質や食物繊維等が多く含まれていることが明らかになっています。
効能については、研究ごとに異なる摂取量であるため、「推奨されている摂取量」というものは存在しません。一方で、過剰摂取に伴う副作用についても報告がなく、海外のクラチャイダム研究の系統的なレビューによると、1日に1,350mgを摂取した研究においても副作用は確認されていません出典[5]。
日本ではクラチャイダムは乾燥されたものかパウダー状のもの、エキスとしてサプリメント等で摂取することがほとんどなので、メーカーが推奨している用法と用量をしっかりと確認して摂取しましょう。
ただし、サプリメントではクラチャイダム以外にも強化された栄養素が含まれていることがあります。強化された栄養素が過剰摂取となる場合も考えられますので、注意が必要です。
まとめ
スーパーフードとして注目されているクラチャイダムは、加齢によるパフォーマンス低下が気になるビジネスパーソンにとっても嬉しい効能がありそうです。
これから研究がさらに進むことで、ますます人気が高くなるかもしれません。気になるという方は、試してみてはいかがでしょうか。
また、以下の記事ではクラチャイダムの有用成分であるジメトキシンフラボンを5%以上で規格化した成分「ブラックVキューブ」の解説をしています。
ブラックVキューブは勃起機能の向上や陰茎の増大など、男性機能を向上させる効果が期待されている原料です。
男性のパフォーマンスでお悩みの方はぜひ参照してみましょう。
【悩める男性必見!】ブラックVキューブとは?6つの効果と適切な摂取方法
出典
- 1.
Wattanathorn J, Muchimapura S, Tong-Un T, Saenghong N, Thukhum-Mee W, Sripanidkulchai B. Positive Modulation Effect of 8-Week Consumption of Kaempferia parviflora on Health-Related Physical Fitness and Oxidative Status in Healthy Elderly Volunteers. Evid Based Complement Alternat Med. 2012;2012:732816.
- 2.
Chaturapanich G, Chaiyakul S, Verawatnapakul V, Yimlamai T, Pholpramool C. Enhancement of aphrodisiac activity in male rats by ethanol extract of Kaempferia parviflora and exercise training. Andrologia. 2012 May;44 Suppl 1:323-8.
- 3.
Ono S, Yoshida N, Maekawa D, Kitakaze T, Kobayashi Y, Kitano T, Fujita T, Okuwa-Hayashi H, Harada N, Nakano Y, Yamaji R. 5-Hydroxy-7-methoxyflavone derivatives from Kaempferia parviflora induce skeletal muscle hypertrophy. Food Sci Nutr. 2018 Nov 20;7(1):312-321.
- 4.
Matsushita M, Yoneshiro T, Aita S, Kamiya T, Kusaba N, Yamaguchi K, Takagaki K, Kameya T, Sugie H, Saito M. Kaempferia parviflora extract increases whole-body energy expenditure in humans: roles of brown adipose tissue. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2015;61(1):79-83.
- 5.
Saokaew S, Wilairat P, Raktanyakan P, Dilokthornsakul P, Dhippayom T, Kongkaew C, Sruamsiri R, Chuthaputti A, Chaiyakunapruk N. Clinical Effects of Krachaidum ( Kaempferia parviflora): A Systematic Review. J Evid Based Complementary Altern Med. 2017 Jul;22(3):413-428.
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