監修者
上級睡眠健康指導士 /NR・サプリメントアドバイザー
関川裕大
睡眠と運動と栄養の3つ面から皆様の健康的なライフスタイルをサポートします。睡眠と運動は特に男性のQoLにおいて非常に重要な役割を果たします。睡眠が不足すると筋肉が付きにくく太りやすくなりますし、運動が十分でない男性は睡眠の質も低下し易いと言われております。そして栄養が不足すると運動効率も睡眠の質も悪化してしまいます。医療に頼らない心と体の健康促進を目指します。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
寝つきが悪いなら知っておきたいお風呂の入眠効果
心身のリラックスに効果的なお風呂。実は寝つきをよくする作用があることも近年明らかになっています。ここではお風呂が入眠を改善するメカニズムについてご紹介します。
深部体温を下げて入眠スイッチON
深部体温が低下する時、眠気が生じると言われています。
深部体温とは脳や臓器などの体の内部の温度。内臓の働きを守るため外環境の影響を受けにくく一定に保たれており、そう簡単には変動しません。
そこで入浴が深部体温の変化に有効な方法です。入浴時、深部体温は一時的に上がりますが、上がった後は反動で上がった分だけ大きく下がります。そして深部体温の急激な低下が眠気を引き起こします。
睡眠には深部体温を「上げる」「下げる」のメリハリがとても重要で、これを効果的に行うことができるのが入浴というわけです。
自律神経を整えて気持ちを落ち着かせる
自律神経は心臓をはじめとした内臓、体温、代謝などを24時間自動でコントロールしています。「活動モード」の交感神経と「お休みモード」の副交感神経があり、私たちが自分の意志で動かすことはできません。
そして睡眠には、自律神経を整えて気持ちを落ち着かせることが必要です。
お風呂にはリラックス作用があり、副交感神経が優位になります。またお風呂に入ることで血圧が下がり、心臓の動きや呼吸も穏やかになります。このように副交感神経が優位で、落ち着いた状態になるとスムーズに入眠できます。
特にストレスが溜まっている時は自律神経が乱れがちなため、入浴は効果的です。仕事での心配事や人間関係における不安が原因でよく寝付けない時は一度湯船に浸かってみてはいかがでしょうか。
身体疲労を和らげる
湯船に浸かって体が温まると血流が良くなります。
血液が運んでいるものは栄養や酸素であり、これらが行き渡ることがとても大切です。また血流が良くなると新陳代謝も活発になり、体内の老廃物や疲労物質を取り除いてくれる効果が期待できます。
その他、お風呂は水圧や浮力などによってもリンパや血の巡りが良くなります。そのため筋肉や関節の痛みを和らげ、コリをほぐしてくれます。
入浴で体の緊張がほぐれ心身ともにリラックスすることで、心地よく眠りにつけるでしょう。
入浴で大切なポイント10個
入浴が睡眠の質に与える効果についてはご理解いただけましたでしょうか?ここからはぐっすり眠る上でのお風呂の活用方法についてご紹介します。
40~42.5℃のお湯で10分間浸かる
お風呂が深部体温の上げ下げに有効なのは前述の通り。では深部体温を上げるためにどのくらいの温度のお湯に浸かればいいのでしょうか?
現代の科学では40〜42.5℃のお湯に浸かることが最適ではないかと考えられています。
42.5℃よりも高いと交感神経が活発になりすぎて、入眠に悪影響を及ぼします。一方で40℃未満のぬるい場合は深部体温が十分上がりきらず、深部体温の急低下が期待できません。
40〜42.5℃のお風呂に10〜15分程度浸かれば、深部体温の上げ下げが期待でき、スムーズな入眠につながるでしょう。
入浴は就寝の1-2時間前に済ませる
また入浴は必ず就寝の1-2時間前に済ませましょう。
入浴により一時的に上がった深部体温は徐々に時間をかけて下がっていきます。そのため就寝直前の入浴では、ベッドに入った時に深部体温が十分に低下しません。
とはいえ仕事等の関係で、早くに入浴できない日もあるかと思います。そのような場合は扇風機の力を借りて体温を低下させることもおすすめです。また冬の場合は、入浴直後に着込みすぎないことも有効です。
あくまで寝る時に深部体温を下げるために入浴するということを忘れずに。
帰りが遅い日はシャワーでさっと
帰りが遅い日は、シャワーでさっとすませた方がよいでしょう。
お湯に浸かって上がった深部体温が反動で下がるには一定の時間がかかります。そして深部体温が下がりきらないと眠りの妨げになってしまいます。
シャワーであれば、深部体温は大きく上がりません出典[1]。無理をしてお風呂に入るよりも臨機応変に。
入浴剤を使ってみる
入浴剤はお風呂タイムを充実させ、睡眠の質を向上させる可能性があります。
入浴剤にも様々な種類があり、目的に応じて使い分けることができます。
例えば、炭酸系の入浴剤は血管拡張効果があり、深部体温の上昇をサポートしてくれます。その他、アロマ系にはリラックス効果が、生薬系には疲労回復効果があり、睡眠の質を高めるのを手助けしてくれます。
気分や体調によって入浴剤を使い分けて、ぐっすり眠りましょう。
マッサージも一緒に
入浴時にマッサージも一緒にすれば、より効果的です。
お風呂の水圧によるマッサージ効果に加え、さらに手でふくらはぎや太ももをほぐすことで、さらなる血流改善が期待できます。
血流やリンパの流れが促進されることで、疲労回復につながることでしょう。
またマッサージにはリラックス効果もあり、実際、血圧や心拍数の低下が研究で確認されています出典[2]。
面倒な場合はシャワーを充てるだけでもマッサージになりますのでお試しください。
交代浴をためしてみる
温冷交代浴とは暖かいお湯と冷たい水に交互に入る入浴法。
これは短時間で血管の収縮と拡張が繰り返され、自律神経を整えるのに役立ちます。
温冷交代浴の効果としては、血行の改善、血流量の増加、筋肉の緊張緩和、疲労感の減少する効果が実証されています出典[3]。
交代浴は短い時間でも疲労回復に効果的であり、安眠効果が期待できます。
家のお風呂でも、湯船で熱いお湯に浸かり、シャワーで冷たい水を浴びることで、温冷交代浴を再現できます。
一度試してみてはいかかでしょう。
足湯だけも効果あり?
入浴が面倒!という方には足湯がおすすめです。
入眠に重要な深部体温の低下は手や足から熱を放散することによって生じます。
そこで足を温め、末梢血管を拡張させ、足から熱が逃げやすくすることで、間接的に深部体温を低下させることができます。
実際、2013年にイランで高齢者を対象に行われた研究では、20分の足湯を6週間続けた結果、睡眠の質が向上したことが報告されています出典[4]。
テレビやスマホを見ながら気軽にでき入浴ほど時間もかかりませんので、体力が落ちている時や疲れた時におすすめです。
なんならハンドバスでも
ハンドバスはその名の通り、手のお風呂。手首または肘までをお湯につける温浴法です。足湯と同じように、体の抹消を温めることで、深部体温が下がり入眠しやすくなります。
また手にはたくさんのツボがあるため、マッサージしながら行うことで、さらなる入眠効果が期待できます。事実、睡眠障害のある高齢女性が対象とした研究では、ハンドバスとハンドマッサージの併用は主観的な睡眠の質を改善することが確認されています出典[5]。
その他、ハンドバスは上半身の緊張を和らげる効果もあり、首こりや肩こりの解消に有効です。
まずは深めの洗面器にお湯を注ぎ、アロマオイルを垂らし、15分ほど手をつけてみましょう。心身ともにリラックスし、スムーズに入眠できることでしょう。
会社終わりにサウナに行ってみる
家で入浴の習慣がないひとは会社終わりにサウナに行ってみるのはいかがでしょうか。
サウナに行くと、リフレッシュするのはもちろん、発汗により皮膚表面の血液循環が強化され、代謝が促進されることが知られていますね。
そして実は睡眠にとってもサウナならではの体温変化が良い影響をもたらします。
サウナは100℃近い高温なので、効率よく体の中心まで温めることができます。その反動で体温が下がって入眠しやすくなります。
また汗を大量にかくことで、たっぷり運動したときのように熟睡できるのでは、という説もあります。
実際に、サウナの睡眠への効果を検討した研究では、被験者の75%がサウナに入ることで、睡眠が深くなり、日中の眠気が減少したことが報告されています。
ただし寝る直前にサウナに入ると、脳の興奮が冷めきらず、逆効果になりますのでご注意ください。またくれぐれも水分補給はお忘れなく。
朝シャワーで体内時計をリセット
朝風呂派の人には断然シャワーがおすすめです。朝シャワーで体温を上げて体内時計をリセットしましょう。
体温は体内時計のリセットに重要な要素です。熱いお湯で体内時計がリセットされて交感神経が優位になると、脳と身体がバチっと覚醒します。しかし肩までどっぷりと浸かってしまうと、リラックスしてしまい、副交感神経が優位になるため、朝は逆効果です
仕事や前夜の夜更かしで寝起きが悪く、すっきり目が覚めない時もぜひ試してみてください。
シャワーを浴びるなら40℃以上のお湯で脇の下や脚の付け根の鼠径部など動脈やリンパ節が集まっている部位を集中的に温めると効果的です。朝シャワーで「活動モード」に。朝から一日が充実することで良い眠りを迎えられるでしょう。
まとめ
疲れているのに寝付けない、そのようなことも多いのではないでしょうか?
現代は心身ともにストレスの多い社会です。そこで入浴は、心と身体の両方の疲れを和らげ、睡眠をサポートします。
シャワーで済ませがちな人は、一度就寝の1時間前までに40℃のお風呂に浸かってみてください。スムーズに入眠でき、明日の活力のチャージにつながることでしょう。今回10個の入浴方法をご紹介しましたので、その中でご自身に合うものから試してみてください。
出典
- 1.
Whitworth-Turner C, Di Michele R, Muir I, Gregson W, Drust B. A shower before bedtime may improve the sleep onset latency of youth soccer players. Eur J Sport Sci. 2017 Oct;17(9):1119-1128.
- 2.
Kudo Y, Sasaki M. Effect of a hand massage with a warm hand bath on sleep and relaxation in elderly women with disturbance of sleep: A crossover trial. Jpn J Nurs Sci. 2020 Jul;17(3):e12327.
- 3.
清水祐樹 「温冷交代浴を利用したドライバ肉体疲労軽減手法の開発」自動車技術論文集 vol52,No3,May 2021 595-600
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaeronbun/52/3/52_20214244/_pdf
- 4.
Seyyedrasooli A, Valizadeh L, Zamanzadeh V, Nasiri K, Kalantri H. The effect of footbath on sleep quality of the elderly: a blinded randomized clinical trial. J Caring Sci. 2013 Nov 30;2(4):305-11.
- 5.
Kudo Y, Sasaki M, Kikuchi Y, Sugiyama R, Hasebe M, Ishii N. Effects of a warm hand bath on the blood flow in the shoulder, skin and deep body temperature, autonomic nervous activity, and subjective comfort in healthy women: An experimental cross-over trial. Jpn J Nurs Sci. 2019 Jan;16(1):88-100.
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