執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
そもそもカフェインとは?
カフェインはコーヒーに含まれる物質であり、覚醒作用や興奮作用を持つことで広く知られています。集中力や気力が回復し、パフォーマンスの向上に繋がるという経験をした方も多いのではないかと思います。
私達は疲労することで、アデノシンという物質が体内のアデノシン受容体に結合します。これにより、覚醒作用のあるヒスタミンという神経伝達物質の放出が押さえられるため眠くなります。カフェインはこのアデノシン受容体に結びつき、アデノシンとアデノシン受容体の結合を邪魔する「拮抗作用」があるため、睡眠が抑制され、覚醒効果がもたらされるのです出典[1]。
緑茶にもカフェインが多く含まれていますが、緑茶にはカフェインの興奮作用を抑制するテアニンも豊富に含まれているため、緑茶の摂取で覚醒効果を得ることは難しく、天然の飲料ではコーヒーの摂取が効率的であると言われています。
カフェインは有機化合物であるアルカロイドの一種であり、他にも様々な生理作用を持ちます。たとえば腎臓など末梢の血管を拡張させる働きにより利尿効果が生じ、むくみの改善に繋がったり、血流を改善して体を温めたりする効果が期待できます。また体内でエネルギーを熱に変える働きを促進するため、体脂肪の蓄積を抑制する可能性も注目されています出典[2]。
また、動物実験においては、アルツハイマー病の原因となるアミロイドベータの蓄積を抑制する効果が確認され出典[3]、臨床試験においてはパーキンソン病の原因となるアデノシンの蓄積を抑制する効果が確認されていたりと、脳疾患系の予防効果も期待されています。
カフェインは短期的にテストステロンを増加させる!
このように様々な効果が確認されているカフェインですが、運動パフォーマンスを向上させる効果もまた期待されています。この運動パフォーマンスの向上効果においては、テストステロン濃度の増大が関係している可能性が指摘されています。
運動の1時間前に0mg、200mg、400mg、800mgのカフェインを摂取することによる、血中テストステロン濃度の変化を調べた二重盲検ランダム化比較試験が行われました。これによると、カフェインの摂取量が多いほど、唾液中のテストステロン濃度の上昇量が増加していたことが明らかになっています出典[4]。テストステロンが増加することで、筋肉の合成を促進する効果が見込め、筋力アップの効率を高められる可能性があるとして期待が寄せられています。
また、カフェインが含有されたガムを運動前および運動の合間に摂取することによる、血中テストステロン濃度の影響を調べたランダム化比較試験が行われました。この試験によると、カフェイン入りのガムを噛んだラグビー選手は、接種後15分後の唾液中のテストステロン濃度がプラセボのガムを噛んだ選手と比較して70%も増加していたことが明らかになっています出典[5]。
このように、カフェインの摂取は直後の唾液中テストステロン濃度を上昇させるという試験結果が複数得られています。性機能の向上に役立つという研究結果はまだ得られていませんが、運動時の疲労の軽減や、筋肥大の効率化など、特に運動パフォーマンスの面において様々な恩恵が期待できるでしょう。
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適切なカフェインとの付き合い方
様々な健康効果をもたらすカフェインですが、摂取のタイミングによっては睡眠の妨げとなったり、また過剰摂取によりテストステロン量を低下させたりする可能性もあるようです。以下では体に負担のかからない、適切なカフェインの摂取量およびタイミングについて解説します。
適切な摂取量は?
カナダ保険省や米国食品医薬局の発表では、健康な成人の場合、マグカップ入りのコーヒーの摂取は1日3杯、カフェイン換算では400mg/日までを適量とし、この範囲の摂取であればカフェインによる健康への重大な悪影響は生じないとしています出典[6]。
厚生労働省および食品安全委員会の調べでは、飲料のカフェイン含有量は以下のようになっています。カフェインはコーヒー類に多く含まれる成分ですが、緑茶をはじめ紅茶やウーロン茶など、お茶類にも含まれています。
また眠気覚まし効果のあるエナジードリンク類にも、ほとんどの場合カフェインが添加されています。エナジードリンク類のカフェイン量は商品によって大きく異なるため、うっかり飲みすぎてしまっていたということがないよう、カフェイン含有量を確認する癖を付けておきましょう。57(2g使用)
食品名 | カフェイン量(mg/100ml・1杯) |
玉露 | 160 |
コーヒー | 60 |
インスタントコーヒー(顆粒) | 57(2g使用) |
抹茶 | 48(1.5g使用) |
紅茶 | 30 |
煎茶 | 20 |
ウーロン茶 | 20 |
カフェイン添加の清涼飲料水 | 32~200 |
菓子類にもチョコレートやガムなど、カフェインを含有しているものがあります。特にダークチョコレートには100gあたり60~120mgと、コーヒー1杯と同等かそれ以上にカフェインが含まれている場合があります。
ダークチョコレートに含まれるカカオポリフェノールの健康効果を期待して、日常的に摂取している人などは、これら菓子類からのカフェイン摂取量も考慮しておきましょう。
カフェインの摂りすぎはテストステロン量を減らす可能性も
カフェインの副作用としては、夜間の覚醒による睡眠不足や、過剰に摂りすぎた際のめまいや震えなどが報告されています。また、摂取直後には唾液中のテストステロン値を増大させる効果を発揮したカフェインですが、過剰摂取により逆の効果をもたらす可能性も指摘されているため注意が必要です。
成人男性の血清テストステロン値と血中カフェイン濃度とをそれぞれ調べた横断研究では、血中カフェイン濃度が高ければ高いほど、血清テストステロン値が低くなるというデータが得られています出典[8]。カフェインの摂りすぎとテストステロン量の低下との因果関係はまだ明らかになっていませんが、睡眠不足やめまいなど、その他のカフェインによる副作用を避けるためにも、仕事の休憩中に水分補給の間隔でコーヒーを4杯も5杯も飲む、というような多量の摂取は避けた方がよさそうです。
適切な摂取タイミングは?
運動パフォーマンスの向上を期待してカフェインを摂取する場合、運動開始の15~60分前に摂取すると効果的であることが複数のヒト試験により明らかになっています。
一方で、睡眠不足によりテストステロン量が減少することが分かっているため、夜間の摂取はテストステロン量の観点からも避けるべきです。健康な若い男性において、睡眠時間を1日あたり5時間に制限した生活を1週間続けたところ、日中の血清テストステロン値が10~15%ほど減少したというデータが得られています出典[9]。
カフェインの血中濃度は摂取後30分~2時間程度で最大となり、半減期(効果が半分になる時間)は2~8時間と幅があることが分かっています出典[1]。カフェインの影響が睡眠に及ばないよう、目安として就寝の6時間前からはカフェインの摂取を控えるようにするとよいでしょう。
まとめ
カフェインの継続した過剰摂取は、テストステロン量の低下を招く可能性があります。その一方で摂取直後は一時的にテストステロン量を増大させる効果を発揮するため、摂取のタイミングを工夫すれば運動パフォーマンスの向上に役立てられることも分かっています。睡眠不足を招かないよう、カフェイン飲料や食品の夜間摂取、多量摂取には注意を払った上で、適量を効果的に活用するようにしましょう。
出典
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