執筆者
NSCA-CPT/調理師
舟橋位於
東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。
ナロープッシュアップとは
はじめに、ナロープッシュアップの概要を説明します。
いわゆる腕立て伏せはプッシュアップと呼ばれることをご存じの方は多いと思います。ナロープッシュアップは、腕立て伏せの動作を、手幅を狭く(ナロー)した状態で行う種目です。
手幅を変化させることで、同じような動作でも、通常のプッシュアップとは刺激の入る筋肉を変えることができます。
主に鍛えられる部位
ナロープッシュアップでは、主に以下のような筋肉に刺激を入れることができます。
・上腕三頭筋
いわゆる二の腕と呼ばれる部分で、ナロープッシュアップで一番強い負荷のかかる筋肉です。通常のプッシュアップでも負荷はかかりますが、手幅を狭くすることで、より集中して刺激を与えることができます。主に肘を曲げ伸ばしする動作に関わります。
・大胸筋
胸にある大きな筋肉で強い力を発揮します。手幅を広くしたプッシュアップで主に働きますが、ナロープッシュアップにも関与します。床を押して体を持ち上げる時に収縮し、逆に床に向かって体を下ろしていく際にストレッチされます。
・三角筋
肩に存在し、腕を前後・上下・左右に動かす際に働く筋肉です。ナロープッシュアップの動作では、大胸筋同様に、床を押す際に強く収縮します。
期待できる効果
続いて、ナロープッシュアップに期待できる効果を紹介します。手幅を狭くすることで、通常のプッシュアップとは異なる効果が得られる点に注意してみましょう。
・上腕三頭筋を集中的に鍛えられる
手幅を狭くすることで、大胸筋や三角筋の関与を減らし、上腕三頭筋に強い負荷をかけることができるようになります。通常のプッシュアップでは、手幅は肩幅からその1.5倍程度の範囲に設定します。この手幅では、特に大胸筋の力が発揮しやすく、負荷も大胸筋にかかりやすいです。一方で、両手が触れるくらいまで手幅を狭くするナロープッシュアップでは、大胸筋の収縮による力発揮が行われにくくなり、その分を上腕三頭筋で補うことになります。その結果、自分の体重という同じ負荷を扱っているにも関わらず、上腕三頭筋を特に狙って鍛えられるようになります。
・体幹部を強化することができる
ナロープッシュアップは、体幹部の強化にも役立ちます。手幅の広いプッシュアップでは、バランスを取ることが比較的容易になるため、体幹部が弱くても動作をすることが可能です。しかしながらナロープッシュアップでは、両方の手のひらが近い位置になってバランスが取りにくくなるため、動作中に体がふらつきやすくなります。バランスが崩れないようにするためには、腹筋周りにしっかりと力を入れて、体幹部を固定することが重要になります。すなわち、ナロープッシュアップを正しい姿勢で行えるように練習することで、自然と体幹部を強化することにつながるというわけです。
・器具がなくても高い負荷をかけられる
自宅でトレーニングしていて、器具の種類やウエイトの量に限界がある場合には、特にナロープッシュアップが勧められます。通常のプッシュアップでは、大胸筋、三角筋、上腕三頭筋の3種類の筋肉が動作に関与します。一方でナロープッシュアップでは、同じ3種類の筋肉の中でも、上腕三頭筋に一番大きな負荷がかかります。それまでは3種類の筋肉で支えていた負荷の大部分が上腕三頭筋のみにかかるため、初めてこのトレーニングを行う方は、強い刺激を感じると思います。
ナロープッシュアップの正しいフォーム
次に、ナロープッシュアップの正しいフォームについて解説します。難しい動作は比較的少ないですが、注意すべきポイントもありますので、頭の中で動作をイメージしながら確認してみてください。
開始姿勢
- 床にうつ伏せの状態で寝ます。
- 肩幅より拳1つ分ほど狭い位置に手をつきます。この時、肘を伸ばした際に手のひらが肩の真下のラインに来るようにします。
- 体が一直線になるように意識しながら、肘を伸ばして体を持ち上げます。
※筋力が足りない場合は、膝をついた状態で行っても良いです。
やり方
- 肘を曲げながら、体全体を下ろしていきます。
- 胸が床につく直前まで体を下ろしたら、逆の動作で体を持ち上げます。
注意点や意識すべきポイント
- 体幹部の筋力が足りていない場合は、腰が過度に反ったり、逆に背中が丸まったりします。このような場合は、無理をせずに膝をついて負荷を軽くした段階から始めると良いです。
- 動作中は、体を下ろす際に息を吸って、体を持ち上げる際に吐くようにしましょう。また、息を止めて力を入れることは血圧の観点で危険なので行わないようにしてください。
- 動作に慣れてきたら、手幅をさらに狭くしたり、下ろす時に5秒ほど時間をかけたりすると、より負荷を高めることができます。
ナロープッシュアップのよくある誤り
ナロープッシュアップに起こりがちな誤りについても解説します。正しいフォームを身につけることで、怪我を予防できるだけでなく、よりトレーニングの効果を高めることもできます。自分のフォームをスマホ等で撮影して、確認してみると良いでしょう。
肘の角度が狭すぎる/広すぎる
ナロープッシュアップでは、肘の曲げ伸ばしがメインの動作となります。この動作を行う際に、肘が内側に入りすぎてしまったり、逆に肘が外側に広がりすぎてしまったりする誤りがあります。
肘が内側に入りすぎると、腕が邪魔になって体を床まで下ろすことが難しくなります。また、肘が広がりすぎると、場合によっては通常のプッシュアップに動作が近くなってしまうことがあります。
ナロープッシュアップを行う際は、基本的には脇を閉じて、両腕が体の真横にある状態を維持しながら動作すると良いです。
身体が一直線になっていない
体が一直線にならないミステイクは、筋力の低い方に起こりがちな現象です。また、セットの後半で疲労が溜まってきた場合にも見られます。
腰の部分が落ちてしまったり、逆にお尻を上方に突き出すようなフォームになっていたりする場合は、正しいフォームとは言えません。常に、頭から足の先までが一直線になるようにイメージしましょう。この姿勢を維持するためには、腹筋に力を入れることと、臀部を締めるように意識することが大切です。腕だけの種目と思いがちですが、実は体全体の協調も重要となります。
ナロープッシュアップのバリエーション
ここに書かれているバリエーションを取り入れることで、筋力の低い初心者から、ある程度筋力が伸びてきた方まで、自身にあった強度のナロープッシュアップを行うことができると思います。ぜひ自分のレベルに合わせて試してみてください。
ナロー膝つきプッシュアップ
膝つきプッシュアップは、通常のナロープッシュアップよりも負荷を下げた状態で行うことができるプッシュアップです。トレーニング初心者の方は、まずはこれから取り組むのがおすすめです。
開始姿勢
- 床にうつ伏せの状態で寝ます。
- 肩幅より拳1つ分ほど狭い位置に手をつきます。この時、肘を伸ばした際に手のひらが肩の真下のラインに来るようにします。
- 膝を床につけたまま、上半身を持ち上げます。
やり方
- 肘を曲げながら、体全体を下ろしていきます。この時、膝の位置が動かないようにします。
- 胸が床につく直前まで体を下ろしたら、逆の動作で体を持ち上げます。
注意点や意識すべきポイント
- 床に直接膝をつくと痛みが出ることもありますので、タオルやストレッチマットを敷くことをおすすめします。
- 膝をついていても負荷が大きい場合は、体を沈める範囲を浅くすることで、負荷の量を減らすことができます。
ナローインクラインプッシュアップ
ナローインクラインプッシュアップは、上半身を立てる方向に傾斜をつけて行うプッシュアップです。膝つきプッシュアップ同様に、負荷の量を減らす効果があります。
開始姿勢
- しっかりと固定されている椅子やソファーを用意します。
- 用意した台に、肩幅より拳1つ分ほど狭くなるようにして手をつきます。この時、肘を伸ばした際に手のひらが肩の真下のラインに来るようにします。
- 手で上半身を支えながら体を一直線に伸ばします。
- 手で台を押すようにして、上半身を持ち上げます。
やり方
- 肘を曲げながら、体全体を下ろしていきます。
- 顔あるいは胸が用意した台につく直前まで体を下ろしたら、逆の動作で体を持ち上げます。
注意点や意識すべきポイント
手をつく台は必ず安定したものを使用してください。動作中に台が動くと危険です。
ナローデクラインプッシュアップ
デクラインプッシュアップは、膝つきやインクラインとは異なり、負荷を増やす方向に働く種目です。上半身が下に向かって傾斜する姿勢を作ることで、上腕三頭筋により強い力をかけることができます。
開始姿勢
- 足を乗せることのできる丈夫な台を用意します。高さが上がるほど負荷の量も上がります。
- 床にうつ伏せの状態で寝ます。
- 肩幅より拳1つ分ほど狭い位置に手をつきます。この時、肘を伸ばした際に手のひらが肩の真下のラインに来るようにします。
- バランスを崩さないように注意しながら、片足ずつ台に足を乗せます。
- 体が一直線になるように意識しながら、肘を伸ばして体を持ち上げます。
やり方
- 肘を曲げながら、体全体を下ろしていきます。
- 胸が床につく直前まで体を下ろしたら、逆の動作で体を持ち上げます。
注意点や意識すべきポイント
傾斜をつけることで、下半身の重量が上半身にかかりやすくなります。そのため、同じ自重のトレーニングですが、通常のナロープッシュアップよりもかなりきついものとなります。トレーニングに慣れてきたら取り入れてみましょう。
まとめ
ナロープッシュアップの解説はいかがだったでしょうか。
使用できる器具が限られている場合は、上腕三頭筋を鍛える種目としてナロープッシュアップは選択肢の一つとなるでしょう。自身の筋力に応じて、比較的簡単に負荷を調節することができる点も、ナロープッシュアップの特徴でした。
男性はたくましい腕、女性は引き締まった二の腕を目指して、ぜひナロープッシュアップを普段のトレーニングに取り入れてみてくださいね。
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