アスタキサンチンとは?10つの効果と適切な摂取方法
2023年1月30日更新

執筆者

管理栄養士

鈴木 亜子

大学卒業後、主に医療機関に勤務。チーム医療の一端を担い、生活習慣病や腎疾患(透析療法や腎移植後)などさまざまな疾患の栄養管理に取り組む。得意分野は糖尿病で、糖尿病透析予防や特定保健指導(糖尿病重症化予防)なども担当。現在は豊富な栄養相談経験を活かし、健康に関わる分野のライターとして活動中。「なるほど!」と思っていただける、分かりやすい記事執筆を心がけている。

アスタキサンチンとは

化粧品やサプリメントなどの成分として「アスタキサンチン」の名称を耳にしたことがある方も多いでしょう。
ここではまず、アスタキサンチンとはどういった成分なのか、どんな働きをするのかなどについて解説します。

1.どんな栄養素?

黄色~赤色を示す色素であり抗酸化物質でもある「カロテノイド」の一種がアスタキサンチン。抗酸化物質とは「活性酸素」の発生や働きを抑えることで、細胞の老化防止に働く物質です。

活性酸素は、私たちが呼吸によって体内に取り込む酸素が通常よりも活性化されたもので、増え過ぎると体内の酸化につながり、がんや生活習慣病などを引き起こす要因となることで知られています。

アスタキサンチンは、活性酸素の中でも特に強い酸化力を持つ「一重項酸素」を取り除く力や脂質の酸化防止力に優れています。

このような作用を持つアスタキサンチンに確認されている生理機能は多岐にわたります。主なものでは美肌効果をはじめ、脳機能の改善、視力に関する作用などです。

サプリメントとしても取り入れられているアスタキサンチンは鮭やエビ・カニなどの魚介類に多く含まれています。しかしこれらの海洋生物からのアスタキサンチンの抽出は非常に困難。そのため、現在使用されているアスタキサンチンの多くが「ヘマトコッカス藻」という植物から抽出されたものです。


2.体の中でどんな働きをする?

アスタキサンチンは抗酸化作用を持つ物質ですが、同じく生体内で抗酸化物質としてはたらくビタミンEやビタミンC、β-カロテンとは少し違った働きをしています。

まずはビタミンE、ビタミンC、β-カロテンの働き方を見てみましょう。
ビタミンEは細胞膜の内側に存在し、自らを酸化させることで酸化反応を阻止します。酸化したビタミンEに再び抗酸化作用を与えるのが、細胞外にあるビタミンCの役目です。
一方、β-カロテンは細胞膜の中心部分に存在し、直接活性酸素を消去する働きがあります。

これに対しアスタキサンチンは、細胞膜の内側および中心部の両方において抗酸化作用を発揮します。つまりビタミンEとビタミンC、β-カロテンの3つの物質に匹敵する強力な抗酸化作用を持ち、細胞の健康に役立っているといえるのです。


3.どんな食材に含まれている?

アスタキサンチンが多く含まれているのは、赤色系の色素を持つ魚介類の身や皮、殻などです。
主な食品のアスタキサンチン含有量は以下のとおりです(1kg当たり)出典[1]

食品名アスタキサンチン含有量
イクラ0~14mg
3~40mg
ニジマス1~13mg
オキアミ45~130mg
エビ・カニ~400mg

 

アスタキサンチンに確認されている作用や効果

強力な抗酸化作用を持つというアスタキサンチンにはどのような効果が期待されているのでしょうか。ここでは、アスタキサンチンに確認されている主な効果についてご紹介します。

1.美肌効果

アスタキサンチンには肌の弾力やシミ・シワなどを改善する作用が期待できます。

健康な女性30名を対象とし、8週間アスタキサンチンの経口摂取(1日当たり6mg)と2ml(78.9μM溶液)のアスタキサンチンを皮膚に塗布することを組み合わせた結果、1週間で頬の質感が改善したほか、8週間目には目尻のシワおよび弾力性、頬のシミが有意に改善しました。
また、健康な男性36名を対象として6週間アスタキサンチンを6mg毎日補給したところ、目尻のシワと弾力性、肌からの水分の損失が改善されました。男性を被験者とした試験では、特に頬の水分量と皮脂量の改善傾向が強いという結果が出ています出典[2]

肌トラブルの原因はさまざまですが、そのうちの一つに紫外線があります。紫外線を浴びることで活性酸素の過剰発生が起こるといわれているため、屋外にいる時間の長い方など紫外線による肌トラブルが気になるという方は、アスタキサンチンが役に立つといえますね。さらに、この効果が男女問わず得られる可能性があるという点もうれしいポイントです。


2.加齢による筋力低下の抑制

アスタキサンチンは、加齢に伴う筋肉量の減少および筋力が低下する現象「サルコペニア」を抑制する効果が期待されています。

アスタキサンチンのサルコペニアに対する作用メカニズムは、さまざまな研究により以下のようなことに関連する可能性があると報告されています出典[3] 出典[4]

  • 酸化ストレスの防止
  • ミトコンドリアの機能維持およびエネルギー産生の増加
  • 骨格筋の同化(再生)および異化(タンパク質分解)の調節
  • 筋細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)の抑制
  • 血管新生の活性化

サルコペニアは25~30歳頃から始まるといわれています出典[5]。日頃から積極的にトレーニングをすることで予防が可能ですが、同時にアスタキサンチンを摂取することも意識してみると良さそうですね。


3.筋持久力の向上

アスタキサンチンには筋肉の持久力をアップさせる効果が報告されています。

健康な男子学生40名を2つのグループに分け、4mgのアスタキサンチンを摂取できるカプセルとプラセボカプセルを6ヶ月摂取させたところ、アスタキサンチン摂取グループはプラセボグループと比較して、スクワットの平均回数は3倍の増加率となりました出典[5]

また別の研究では、アスタキサンチン入りの食事と通常の食事を4週間にわたりマウスに与え、それぞれを運動の有無によりさらにグループ分けをしエネルギー基質について調査しました。その結果、アスタキサンチン投与グループでは通常の食事グループより運動時の体脂肪の減少が促進されること、糖よりも脂質の利用を高めることで持久力の向上効果が得られることが示唆されました出典[6]

持久力を必要とするスポーツをしている方などは、アスタキサンチンが良い影響を与えてくれる可能性がありますね。

 

4.筋疲労の緩和

アスタキサンチンの抗酸化作用により、筋肉疲労を緩和させる効果が期待されています。激しい運動は活性酸素の過剰発生を促します。

32名の男子サッカー選手にアスタキサンチンを90日間摂取させたところ、アスタキサンチンを摂取しなかったグループと比較して運動後の炎症反応(血清CK、AST濃度)が有意に抑えられました出典[7]

筋肉の損傷を表すCK(クレアチニンキナーゼ)が抑えられるということは、筋疲労の蓄積が軽減されたということを意味しています。スポーツやトレーニングをする方はもちろん、体力勝負の仕事をしている方にとっては、アスタキサンチンが救世主となりそうですね。


5.精子の質改善

アスタキサンチンの男性不妊に対する効果も報告されています。

2ヶ月以上の不妊である男性30名と、明らかに不妊の原因のない女性パートナーがWHOのガイドラインに沿って従来の治療を受けると同時にアスタキサンチンを1日当たり16mg摂取するという研究が行われました。その結果、アスタキサンチンを摂取したグループはプラセボグループと比較して精子の速度が増加し、妊娠率も高いといった結果が得られました出典[8]

アスタキサンチンは不妊に悩む男性には良い効果がありそうですね。より大規模な試験など、今後の研究に期待しましょう。


6.精神的疲労の緩和

アスタキサンチンには精神的疲労、つまり脳の疲労を軽減させる効果が期待できると報告されています。

24名の健康な方を対象に、アスタキサンチンおよびプラセボをそれぞれ4週間補給し、各補給期間の後、精神的および肉体的疲労を誘発する作業を行いました。精神的・身体的作業中および作業後の主観的疲労は視覚アナログスケールを使用し、日常の主観的疲労はアンケートによって評価されました。この試験の結果、アスタキサンチンの補給はプラセボと比較して精神的疲労からの回復を有意に改善しました出典[9]

体を動かしたわけではなくても、仕事や勉強でたくさん頭を使った後は疲労を感じることもありますよね。アスタキサンチンは、そのようなときに役立つ成分であるといえます。


7.記憶力の向上

アスタキサンチンの記憶能力向上効果は、さまざまな研究により報告されています。これは記憶を司る、脳の海馬機能を高めることで得られる効果であると考えられています。

44名の被験者を対象に、アスタキサンチンカプセルおよびプラセボを12週間、朝食の前後に1日1回服用させる試験が行われました。その結果アスタキサンチン摂取グループはプラセボグループと比較して、総合的な記憶力および言葉の記憶の有意な改善を示しました。さらにアスタキサンチングループは「この1週間で人の名前や物の名前を思い出すのに苦労したか」という問いに関する自覚症状に有意な改善が見られました出典[10]

もの忘れの自覚症状がある方や認知症が心配という方は、試して見る価値はありそうです。


8.加齢に伴う視力低下の抑制

アスタキサンチンは、加齢性黄斑変性症など眼疾患の治療に応用できる可能性が示唆されています。

イタリアでの研究によると、加齢黄斑変性症27名を2つのグループに分け、そのうち15名がビタミン C(180mg)ビタミン E(30mg)、亜鉛(22.5mg)、銅(1mg)、ルテイン(10mg)、ゼアキサンチン(1mg)、およびアスタキサンチン(4mg)の抗酸化物質を12ヶ月間毎日摂取したところ、網膜中心部における機能障害が改善されました出典[11]

加齢に伴う眼の症状のほか、眼精疲労にも効果的であるといわれています。目の症状が気になる方は、アスタキサンチンを試してみると良いでしょう。

 

9.腎機能障害を改善する可能性

アスタキサンチンの酸化ストレスを軽減する作用(抗酸化作用)により、腎機能を維持する働きをがあることが報告されています。

腎疾患にもさまざまな病態があり治療法も多岐にわたります。そのうち腎機能が著しく低下した末期腎不全の治療法の一つが「腎移植」です。

マウスでの試験によると、アスタキサンチンを投与することで腎移植の12時間および24時間後の「虚血再灌流障害」を軽減し、腎機能を維持したという報告があります。虚血再灌流障害とは、移植の際に一旦血流が途絶えた腎臓に再び血液が流れた際に起こる障害のことです。

また腎移植前にアスタキサンチンを14日連続して経口投与すると、移植24時間後の組織学的損傷を劇的に抑制するとともに、腎臓の酸化ストレスと炎症も大幅に減少しました。

このことはアスタキサンチンを腎移植前に投与しておくことで、抗酸化作用を介し腎機能と腎組織を維持するのに効果的であることを示唆しています出典[12]

その他、アスタキサンチンには糖尿病に合併する「糖尿病性腎症」を抑制する効果なども期待されています。アスタキサンチンの作用が今後の医療に役立つときが来るかもしれませんね。


10.肝脂肪の増加による疾患の予防の可能性

「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」の予防・抑制にアスタキサンチンが有効であることが報告されています。

金沢大学医薬保健研究域附属脳・肝インターフェースメディシン研究センターの研究グループによる研究では、NASHの発症に関与する高コレステロール+アスタキサンチン食をマウスに3ヶ月間与えたところ、アスタキサンチンを混ぜなかった群と比較して生活習慣病などに関わるインスリン抵抗性が弱まり、肝臓の脂肪沈着が約50%減少し脂肪肝になりにくいことが明らかとなりました。

また、脂肪蓄積によって生じる脂質の過酸化(酸化ストレス)や炎症が抑えられ、脂肪肝からNASHの発症が抑えられることも判明しました。

さらにNASHを発症させたマウスの食餌を、アスタキサンチンを加えたものに切り替えて検討したところ、アスタキサンチンを加えなかったグループと比較して肝硬変につながる肝臓の炎症や線維化が80%近く改善しました。

NASH治療の選択肢の一つとしてビタミンEの投与があります。この研究で示されたアスタキサンチンの作用は、抗酸化ビタミンとも呼ばれるビタミンEよりも優れた物であることが明らかとなりました。

この研究では、臨床試験によってNASHの患者(ヒト)への肝臓の脂肪蓄積がアスタキサンチンによって抑制されたことも確認されています出典[13]

NASHの治療の基本は食事や運動による減量がメインとなります。薬物治療に関しては現時点ではエビデンスに乏しい現状にありますが、アスタキサンチンが選択肢の一つとなる可能性もあるかもしれません。
 

アスタキサンチンの摂取方法や注意点

アスタキサンチンを通常の食事で摂取する場合、ほとんどの方が安全に摂取できるとされています。

サプリメントで摂取する場合の安全性が確認されている量・期間は、以下のとおりです出典[14]

  • アスタキサンチン単独で1日当たり4~40mgを最長12ヶ月
  • 他の抗酸化物質との併用で1日4mgを最長12ヶ月

また欧州食品安全機関 (EFSA) によると、成人が通常の食事に加えサプリメントなどから安全に摂取できるアスタキサンチンの最大量を、1日当たり8mgとしています出典[15]

アスタキサンチンの副作用として報告されているものは、排便回数の増加や赤色便などです。また、高用量のアスタキサンチンを摂取することで胃痛が生じる可能性があるとされています出典[14]
 

まとめ

カロテノイドの一種であるアスタキサンチンには、さまざまな効果が報告されています。この効果はアスタキサンチンの強力な抗酸化作用によるもの。肌への効果や肉体的・精神的疲労の軽減のほか、腎臓や肝臓、眼科疾患など医療の分野への応用も期待されています。

アスタキサンチンは鮭やイクラなどの食品からも摂取できますが、効率よく摂取するにはサプリメントの活用がおすすめです。安全性の高い成分ではありますが、1日当たりの摂取目安量を守って、健康に役立ててくださいね。

LINEで専門家に無料相談

365日専門家が男性の気になる疑問解決します
LINEからメッセージを送るだけで薬剤師やパーソナルトレーナー、睡眠指導士やサプリメントアドバイザーなどNP所属の男性ヘルスケアの専門家があなたの疑問や質問に直接回答します!