執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
EPAとは
魚類の油に豊富なEPAやDHAの重要性は広く知られているところですが、実際にどのような健康効果をもたらすのかについては詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。この記事ではEPAに焦点を置き、DHAとの共通点や違い、体に及ぼす効果や効率の良い摂取方法などについて紹介します。
1.どんな栄養素?
EPAは「エイコサペンタエン酸」と呼び、DHAと呼ばれる「ドコサヘキサエン酸」と並んで、ω-3系脂肪酸の代表格とも呼べる脂肪酸の一種です。ω-3系脂肪酸は体内で合成することがほとんどできない必須脂肪酸であるため、魚類などの食品から摂取する必要があります。
ω-3系脂肪酸とは「n-3系の多価不飽和脂肪酸」という意味であり、EPA、DHA、α-リノレン酸がこれに分類されます。多価不飽和脂肪酸は、その脂肪酸の構造上、二重結合がどこにあるかによって「n-3」「n-6」「n-9」と数字を付けて区別しています。n-3系脂肪酸とは「二重結合が3番目の位置にある多価不飽和脂肪酸」ということです。
EPAやDHAは元々、藻類などの水生植物によって生成された脂肪酸であり、海洋動物に広く存在していると言われています。ω-3系脂肪酸を豊富に含む食品としてはサバやイワシなどの青魚が有名ですが、あまのりなどの海藻類からも摂取することができます。
2.体の中でどんな働きをする?
EPAなどのω-3系脂肪酸は必須脂肪酸に該当します。様々な働きを持ちますが、体内での働き方は以下のように大別されます。
- 脂質代謝の調節作用
EPAは善玉と呼ばれるHDLコレステロールを増やし、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールを減らすよう調節します。更に肝臓での中性脂肪の合成および分泌を防ぐ効果もあるため、血中脂質を良好な状態に保ちやすくなります。 - 細胞膜の構成成分として機能
赤血球や血管壁、脳におけるシナプスなどの細胞膜の構成成分として機能し、細胞の弾力性を上げ、細胞を保護するよう働きます。この役割により、脳においては認知機能の維持・向上効果を発揮します。赤血球においてはその変形を柔軟にするため、末梢の血管において赤血球の通過を容易にするために活躍しています。血管壁においても柔軟性を増すように働くため、血圧調節を良好にし、血流の改善に役立ちます%%%出典1%%%。 - 血小板の凝固作用
血小板の膜にもEPAが作用しており、血小板の凝集作用を抑制する効果を発揮します。血液の流動性低下を防ぐほか、動脈硬化を防止する効果を発揮します。 - 炎症の抑制
EPAやDHAなどのω‐3系脂肪酸の一部はエイコサノイドという生理活性物質へと変化します。リノール酸やアラキドン酸などのω‐6系脂肪酸もエイコサノイドを産生しますが、この2つは同じ名前でありながら真逆の活性を持ちます。ω‐6系脂肪酸は炎症反応を強め、ω‐3系脂肪酸はそれを抑制するように働きます。ω‐3系脂肪酸が体内に一定量存在することで、体内の炎症反応がコントロールされていると考えられています。
3.DHAとの違いは?
EPAとDHAは共に魚油に豊富な脂肪酸であり、近い分子構造をしています。血中脂質の改善、血管の状態改善、抗酸化作用、抗炎症作用、などの役割についても共通しています。
EPAは主に血液中で効果を発揮する脂肪酸です。一方DHAはヒトの細胞膜、特に脳や網膜の脂質成分として豊富に存在しており、脳への血流の入り口である「血液脳関門」を通過できる点が大きな特徴となります。
EPAは血液脳関門をほとんど通過できないため、脳には僅かしか存在していません。しかし脳への健康効果を全くもたらさないかと言われればそうではなく、EPAがDHAの効果を増強し、よりよい脳への効果をもたらすことが明らかになっています。
その他の細かな特徴について、中性脂肪を低下させる作用や、血小板凝集を抑制して血管を柔らかく保つ作用、気分障害の改善作用などにおいては、EPAの方がDHAよりも優れていると考えられています。一方、コレステロールを低下させる作用や、アルツハイマー病などの神経変性疾患を改善させる作用についてはDHAの方が効果が高いと言われています出典[2]。
このように、血液や血管の状態を改善するといった主な役割は同じですが、その得意分野はEPAとDHAでやや異なることが判明しています。脳での働きのように、EPAとDHAの両方を摂取することで相乗効果を発揮する場合もあるため、この2つの栄養素についてはどちらかに偏ることなく、日々の食事で摂取する習慣を付けておくべきでしょう。
4.どんな食材に含まれている?
EPAは海洋生物を由来とする成分であるため、魚介類が主な摂取源となります。特にイクラやたらこなど脂質の多い部位で豊富に摂取できます。
魚の中では、マグロやカツオなどの赤身魚よりも、サバ、さんま、イワシなどの青魚、またサーモンやぶりといった油の豊富な魚に多く含まれます。魚料理を選ぶ際には、これら魚の種類にも目を向けてみると、より効率的な摂取が可能です。
【EPA(イコサペンタエン酸)を含む食品とその含有量(100gあたり)】出典[3]
食品名 | 成分量(mg/100g) |
しろさけ(イクラ) | 1600 |
さんま(皮つき) | 1500 |
いわし缶詰(水煮) | 1200 |
あまのり(味付けのり) | 1100 |
かたくちいわし | 1100 |
たちうお | 970 |
ぶり(成魚) | 940 |
さば缶詰(水煮) | 930 |
あなご(蒸し) | 760 |
うなぎ(かば焼) | 700 |
シシャモ(生干し) | 670 |
すけとうだら(たらこ) | 510 |
しろさけ缶詰(水煮) | 500 |
DHAより効果的!?EPAの7つの作用や効果
DHAと似た脂肪酸でありながら独自の特徴を持つEPAですが、具体的にはどのような健康効果が期待できるのでしょうか。以下ではEPAにおける体への作用について解説します。
1.うつ症状の軽減
EPAは血液脳関門を通ることができないため、能への関与はできないのではないかと考えられてきました。しかしEPAは体内において、一部がDHAの前段階である「前駆体」として機能することから、EPAの摂取によりDHA量が増加する可能性があるとして期待が寄せられています。
EPAとDHAの摂取とうつ症状の変化について調べたメタ分析においては、EPAとDHAの配合で、EPAが60%以上の割合で含まれるサプリメントを供給した場合に、より大きなうつ病スコアの改善があったという結果が確認できています出典[4]。
EPAやDHAの効果としては、脳における抗酸化作用、および神経伝達を支える作用が考えられます。炎症性サイトカインの増加により酸化ストレスが増大し、これが抑うつや意欲低下などのうつ症状を発生させる可能性があるため、脳へのダメージを軽減させるω-3系脂肪酸は有効に働くと考えられます。またDHAは中枢神経系の神経伝達機能を支えていることから、十分な摂取により認知症やうつ病などの精神神経疾患の発症防止、および進行抑制に役立つ可能性があります出典[1]。
一連の研究結果を踏まえると、EPAは脳に届かないから摂取しなくてもよい、というわけではないと言えそうです。EPAがDHAの作用を増強する効果が期待できるため、EPAもDHAと同様に十分量摂取することが重要となるでしょう。
2.認知機能の改善
EPAやDHAの摂取は気分の改善のみならず、集中力や認知機能の向上に役立つとされています。
脳はその6割近くが脂質で構成されているとも言われており、特にDHAが豊富に含まれます。DHAは細胞膜の構成成分としても存在しており、神経伝達に関わるシナプス細胞膜の流動性を向上させる効果を持ちます。EPAはDHAの役割や効果を増強する効果を発揮するように働くと考えられています。
また、脂質の酸化は脳へのダメージに大きく関わります。抗酸化物質としてのω‐3系脂肪酸は、大脳皮質や海馬といった領域での酸化ストレスの要因である「過酸化脂質」を軽減する効果を持ち、神経細胞の保護作用も確認されています。
更に血漿中のEPAやDHAの濃度が上昇することで、脳の酸素化ヘモグロビンという、酸素と結合したヘモグロビンの量が上昇し、脳細胞を活性化する作用も示されています。
EPA、DHA、プラセボをそれぞれ豊富に含むオイルを摂取した摂取群にて、認知機能と記憶力について調査したランダム化比較試験によると、プラセボおよびDHAが豊富なオイルと比較して、EPA が豊富なオイルを使用した後の方が、知能テストにおける速度、正確性、記憶の正確性が改善されていました出典[5]。
このように、認知機能の改善においては、DHAよりもEPAの方が優れている可能性があり、DHAだけでなくEPAを意識して摂取することで作業効率の向上に役立つ効果が期待できると言えそうです。
3.心血管系疾患リスクの低下
EPAやDHAの最も有益な作用である血流改善効果は、心血管疾患のリスクを下げることに繋がります。
細胞膜の構成成分として機能するEPAは、血小板で作用することで凝集作用を抑制します。また赤血球で作用することで赤血球の変形作用を強めます。また脂質代謝のバランスを整えて血中脂質や血中コレステロール値を低下させる働きもあります。これらにより血液を滑らかな状態に保つことができます。また、EPAは血管壁の細胞にも存在しており、血管壁の柔軟性を上げることにも役立ちます。
このω-3系脂肪酸の摂取により心血管疾患のリスクが下がることは多数の研究により判明しています。集団研究では、ω-3系脂肪酸を十分に摂取している人ほど、心血管疾患への罹患者が少ないことが示されています。また予防効果についても、心血管疾患のリスクが高い患者へのω-3系脂肪酸の補給を1g/日以上行った研究により、心臓死のリスクが9%、心血管死のリスクが10%、心筋梗塞のリスクが17%減少したことが分かっています出典[6]。
ω‐3系脂肪酸の摂取により血液の状態と血管の状態が保たれることで血流が改善し、動脈硬化の予防効果をもたらし、心血管疾患のリスク低減に役立つと考えられています。
4.脂肪肝の改善
EPAやDHAにはコレステロールのみならず、中性脂肪を減らし血中脂質のバランスを改善する効果があります。脂肪肝は血中の中性脂肪が増大し、肝臓で処理しきれなくなった分が肝臓の表面に付着することで生じるため、中性脂肪に作用するEPAやDHAを摂取することは効果があると言えそうです。
非アルコール性脂肪肝のモデルラットにEPAを投与させた場合の脂質代謝について調べた研究においては、EPAが多く含まれる食事を3週間与えたラットの方が、同じ脂質量、同じエネルギーを摂取したラットと比較して肝臓での中性脂肪の蓄積が抑制されたという結果が得られています出典[7]。
なお、脂質であるEPAやDHAを摂取することで脂肪はむしろ増大するのでは、と懸念される方がいるかもしれません。しかし私達の脂肪の量は、脂肪酸だけでなくグルコースの飽和によっても増大します。消費されなかった脂肪酸やグルコースが中性脂肪の形を取り、肝臓や他の組織に蓄えられることになるのです。
以上のことから、脂肪肝を改善するためには脂質だけでなく、炭水化物を含めた総摂取エネルギーを調整する必要があります。EPAやDHAの摂取は脂肪を増やすものではないため、これらをサプリメントで摂取することにおける脂質の過剰摂取の問題は発生しないと考えてよいでしょう。
また、これらEPAやDHAは体内の脂質代謝を改善してくれるものではありますが、脂肪蓄積を防ぐためには何よりもまず摂取エネルギーの調整を行うことが重要です。EPAやDHAの摂取は、より効率的に脂肪肝を改善させたい場合に行うものと考えた方がよいでしょう。
5.炎症反応の緩和
ω-3系脂肪酸は抗酸化作用ならびに抗炎症作用を持ちます。これらは活性酸素を無害化させ酸化ストレスを低減させることに繋がるほか、炎症性疾患の予防や免疫の調節に役立つ効果が期待できます。
慢性炎症を有する50~75歳の男女が、3g/日のEPAおよびDHAを10週間補充することによる効果を調べた研究において、これらω-3系脂肪酸の補給によりインターロイキン10やTNFαといった、いくつかの炎症性サイトカインの減少が確認されました出典[8]。これらは炎症を抑制する機能を持つPPAPγという受容体を、EPAやDHAが活性化することによるものと考えられています。
また、EPAやDHAは炎症を抑制する効果を強く持つ、抗炎症性脂質メディエーター(SPM)というものに変換されることが明らかになっています。SPMは感染症により生じる炎症が引き起こす機能障害を最小限に止める役割を持つため、炎症の管理においてとても重要な物質です。SPMは前述したPPAPγよりも少ない量のEPAやDHAによって強い効果を発揮すること、また非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とは異なるメカニズムで炎症を抑える方向に働くことを特徴としています出典[9]。
SPMはNSAIDsに代わる新しい疼痛緩和の治療薬に繋がる可能性があるとされており、その作用を増大させる効果が期待できるEPAやDHAの重要性も増していると言えるでしょう。
6.アレルギー症状の緩和
前述したSPMについては関節リウマチなどの自己免疫疾患を対象とした疼痛緩和が期待されており、同じ免疫反応を理由とするアレルギー症状についても効果を発揮する可能性があります。
気管支喘息の子供に魚油を10か月間摂取させたランダム化比較試験において、EPAとDHAを含む魚油カプセルを摂取した群では、オリーブ油を摂取した対照群と比較して、気管収縮を誘発する神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌が減少し、喘息症状のスコアが有意に改善したことが判明しています出典[10]。
EPAやDHAに代表されるω-3系脂肪酸は、アラキドン酸などに代表されるω-6系脂肪酸と、炎症反応の面で拮抗関係にあります。ω-3系脂肪酸の摂取量が増えることで、シクロオキシゲナーゼ、あるいはリポキシゲナーゼなど、炎症に関わる酵素の活性を抑える効果が期待できます。
7.ほてりの改善
女性だけでなく、男性のQOLを大きく低下させる更年期障害、その症状のひとつに「ほてり(ホットフラッシュ)」があります。EPAの摂取がこのほてり症状を改善させる可能性があり、期待が寄せられています。
ほてり症状を抱える心不全の女性にEPAまたはプラセボ製剤を摂取し、その後の経過を調べたランダム化比較試験においては、8週間の継続摂取により、EPA摂取群はプラセボ群と比較して、心不全の頻度と状態が大きく改善されたという結果が得られています出典[11]。
更年期障害を引き金として引き起こされる状態に「自律神経失調症」があります。脳の神経細胞は多量のω-3系脂肪酸を含み、ω-3系脂肪酸の供給が脳の神経細胞における情報伝達能力を支えていると考えられています。ω-3系脂肪酸が不足することで情報伝達能力が低下し、自律神経の機能にも影響を及ぼすため、こうしたほてりなどの症状改善のためにもω-3系脂肪酸は不足なく摂取する必要がありそうです。
EPAの摂取方法や注意点
様々な健康効果をもたらすEPAは、DHAと合わせて摂取することにより相乗効果でよりよい作用を発揮します。ではこれらの脂肪酸はどのような形で摂取するのが効率的なのでしょうか。以下ではEPAの摂取における工夫できる点や注意点について解説します。
1.どのくらい摂取すればいい?
ω-3系脂肪酸には必須脂肪酸であり、不足すると創傷治癒不全などの欠乏症を生じることが分かっています。そのため厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」には、EPAを含めた「n-3系脂肪酸」の摂取目安量が記載されています。
目安量については性別および月齢、年齢ごとに異なりますが、成人の大半を占める区間では以下のようになっています。
【n-3系脂肪酸の必要量(「日本人の食事摂取基準】2020年度版のデータより引用】出典[12]
目安量(g/日) | ||
年齢 | 男性 | 女性 |
18~49歳 | 2.0 | 1.6 |
50~64歳 | 2.2 | 1.9 |
なお、令和元年度に行われた国民健康・栄養調査によると、男女別、年齢別のω-3系脂肪酸の摂取量は以下のようになっています。
【令和元年度国民健康・栄養調査におけるω-3系脂肪酸の摂取量】出典[13]
摂取量(g/日) | ||
年齢 | 男性 | 女性 |
20~29歳 | 2.45 | 1.82 |
30~39歳 | 2.35 | 2.01 |
40~49歳 | 2.44 | 2.05 |
50~59歳 | 2.60 | 2.11 |
これによると、男女ともに目安量を超えた量を摂取しているため、ω-3系脂肪酸全体の摂取量としては概ね問題がないと言えそうです。ただしこのω-3系脂肪酸は、EPAやDHAの他に、エゴマ油やアマニ油など植物由来の脂肪酸であるαーリノレン酸を含んでいます。そのため魚介類由来のEPAおよびDHAをどの程度摂取すべきか、また実際にどの程度摂取しているのかについては特定が困難であるようです。
幸いにも日本人の多くには魚介類を摂取する習慣があるため、一定量のEPAおよびDHAは確保できていると考えられます。そのためサプリメントだけでEPAを十分に摂取しようという考えではなく、あくまでも食事のサポートとして活用するのがよいでしょう。
2.健康に摂取できる量は?
「日本人の食事摂取基準」において、EPAを含む「n-3系脂肪酸」には耐容上限量が設けられていません。また、DHAやEPAをサプリメントで摂取することによる「脂質」の過剰摂取についても、ほとんど問題にならないと考えられます。
脂質の目標量は日本人の食事摂取基準において「総摂取エネルギーの20~30%」と設定されています。たとえば30~49歳で活動量が「ふつう」である男性の場合、総摂取エネルギーの推定エネルギー必要量は2700kcalとなります。このうち脂質を25%エネルギー比率で摂取した場合、脂質のエネルギー量は675kcal、1日75gの脂質摂取が推奨されます。
ω-3系脂肪酸のサプリメントに含まれるEPAやDHAは300~600mg程度であることが多く、多いものでも1日1gの摂取に留まっています。この摂取では脂質の1日量を上回る要因になるとは考えにくいため、サプリメントの分量を守って摂取する場合には特にリスクはないと言えそうです。
サプリメント全般に言えることではありますが、こうした健康効果をもたらす成分は、大量に摂取することでより大きな健康利益を得られるというものではありません。サプリメントとして販売されているものは1日の目安量を守り摂取するようにしましょう。
3.効果的な飲み方
EPAを魚介類から摂取したい場合のポイントは3つあります。
- 熱を通さない形で食べること
EPAは熱に弱く、焼いたり揚げたりすることでEPAが減少したり、機能が損なわれたりしてしまいます。そのためEPAの摂取を目的とする場合、魚類は熱を通さない刺身の形で摂取することをオススメします。 - 抗酸化物質と同時に摂取する
EPAは抗酸化物質として機能しますが、EPA自体も熱などにより酸化されやすいという特徴を持っています。そのため食事でEPAを摂取する際には、EPAを守るための抗酸化物質を同じタイミングで摂取するようにするとよいでしょう。フラボノイドなどを豊富に含む野菜類や果物類の摂取により、EPAの効果を高められる可能性があります。 - 朝の時間帯に摂取する
食品においてもサプリメントにおいても、EPAの摂取時刻によってその吸収率や利用効率が高まるという「時間栄養学」の考えが広まりつつあります。マウスやヒトの食事に魚油を付加したものを、朝食または夕食に食べたときの身体状況を調べたところ、血中のEPAやDHAの濃度、血中および肝臓の中性脂肪低減効果がいずれも朝食の群で有意に高く出ていたことが明らかになりました。更にマウスにおいては糞便を用いた解析により、朝食時には魚油の吸収効率が高くなっていることが判明しており、これにより摂取時刻の差が魚油の吸収率や機能効率に影響を及ぼす可能性が示されています出典[14]。イワシやサバなどの魚介類、EPAのサプリメントは朝食時に摂取することで吸収率が高まり、より高い健康効果が期待できそうです。
まとめ
EPAはDHAと並び、血液や血管の状態改善を始めとした様々な健康効果をもたらす、生命において必要不可欠な必須脂肪酸です。EPAとDHAは働きも特徴も似ていますが、どちらかだけではなく双方ともに不足なく摂取することで、異なる特性を生かしたより多くの健康効果を得ることができます。
医薬品のように劇的な心血管疾患の治癒効果を望むべきものではありませんが、継続して摂取することで心血管疾患のリスクを大きく下げ、予防効果も見込める優秀な成分です。肉料理中心から魚料理中心の食生活に切り替える、朝食時にサプリメントを決まった量飲むようにする、などの工夫で、EPAの健康効果を効率よく得られるようにしてみましょう。
出典
参考文献
- 上代淑人, 清水孝雄 / イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書28版 / 丸善出版 / 2011
- 武田英二 / 臨床病態栄養学 第3版 / 文光堂 / 2013年
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