執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
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クエン酸とは
クエン酸とはどのような栄養素なのか見ていきましょう。
1.どんな栄養素?
クエン酸は、1784年にスウェーデンのシェーレによってレモン果汁から発見されました出典[1]。柑橘類に多く含まれる成分であり、さわやかな酸味が特徴です。酸味料や防腐剤などの添加物として使用されているのは人工クエン酸であり、その約99%はカビから作られています出典[2]。
1937年にクレブスによってクエン酸回路が発見され、エネルギー産生に重要な役割を果たしていることがわかりました出典[1]。
2.体の中でどんな働きをする?
クエン酸は、エネルギー産生に関わっています。エネルギー産生には、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系という3つの過程があります。解糖系では、糖質が分解されてアセチルCoAが作られます。
クエン酸回路では、アセチルCoAがオザキロ酢酸と結合してクエン酸になり、再びオザキロ酢酸となります。この過程が繰り返されることにより、高エネルギー物質であるNADHやFADH2が作られます。これらの高エネルギー物質が電子伝達系に入ることでエネルギーが産生されます出典[3]。
クエン酸を摂取することでクエン酸回路が活性化し、乳酸の分解が進みます。それにより疲労回復効果が現れます。
また、クエン酸はキレート作用を持っています出典[4]。キレートとは「カニのはさみ」という意味で、ミネラルを包み込み吸収しやすくする働きがあります。
ミネラルの吸収が促進されることで身体の調子や代謝が良くなり、美肌効果が現れます。
3.どんな食材に含まれている?
クエン酸は酸味のある成分であり、柑橘類や梅干しなど、酸っぱいと感じる食品に多く含まれています出典[5]。
食材名 | クエン酸含有量(100gあたり) |
梅干し 塩漬 | 3.4 g |
レモン 全果 生 | 3.0 g |
きな粉 青大豆 全粒大豆 | 1.6 g |
だいず 全粒 黄大豆 乾 | 1.5 g |
グレープフルーツ 白肉種 砂じょう 生 | 1.1 g |
キウイフルーツ 緑肉種 生 | 1.0 g |
クエン酸に確認されている作用や効果
クエン酸を摂取することで得られる効果について詳しく見ていきましょう。
1.疲労回復
クエン酸には疲労回復効果があります。
マウスを対象とした研究により、クエン酸が血糖値を維持させ、炎症を抑制することで、疲労回復効果が現れることが示唆されました。マウスにクエン酸を投与することで、対照群(水を投与した群)よりも高い血糖値を示しました。また、免疫に関連する遺伝子(インターロイキン-6)の発現レベルは、クエン酸を投与することで減少しました。これらの結果から、クエン酸が糖新生を促進することが示されました。糖新生とは、アミノ酸など糖以外の物質からエネルギーを得る反応のことです。クエン酸が血糖値を維持し炎症を抑制させることで、疲労回復が現れる可能性が示唆されました出典[6]。
別の研究では、クエン酸の摂取により、肉体疲労が減少することが明らかになっています。18人の健康な被験者に1日2,700mgのクエン酸を8日間摂取させ、自転車エルゴメーターによる運動負荷試験を2時間×2回行ってもらいました。運動後に、視覚的アナログ尺度 (VAS) というアンケートを行ってもらい、疲労のレベルを評価しました。VASとは被験者が記入するアンケートのことで、0(疲労なし)から100(完全な疲労)まで主観的に疲労のレベルを評価するものです。
クエン酸を摂取した被験者群の点数は60.6、対照群は74.6であり、クエン酸を摂取することで主観的な疲労感が改善されたことが分かりました。このことから、クエン酸が生理学的ストレスを軽減し、肉体的疲労を減少させることが示されました出典[7]。
クエン酸は筋肉の痙攣を改善する効果があります。
50歳以上で、毎晩コップ1杯の水と簡単なストレッチ運動をしても、週に2回以上夜間の筋肉痙攣がある人を対象に試験を行いました。42人の被験者に、「水とストレッチ」による自己治療を行ってもらいました。その結果、30日間あたりの痙攣頻度が21.9から13.6に減少しました。「水とストレッチ」だけでは改善しなかった被験者28人には、就寝前に1.86gのクエン酸を含む錠剤を摂取してもらいました。その結果、30日間あたりの痙攣頻度が18.1から14.5に減少しました。このことから、筋肉痙攣の改善には、クエン酸と水分補給・ストレッチの併用が効果的であることが示されました出典[8]。
これらの結果から、クエン酸には疲労回復効果があることがわかりました。トレーニング中にクエン酸の入ったドリンクやプロテインを飲むことで、疲れにくくなり運動の質が向上するでしょう。
2.運動能力の向上
クエン酸には運動能力を向上させる働きがあります。
大学生ランナーに0.5g/kgのクエン酸ナトリウムを摂取させ、その2時間後に5kmランニングをしてもらいました。その結果、クエン酸ナトリウムを摂取することでランニングタイムが約30秒短くなりました。
また、血液中の乳酸濃度は、クエン酸ナトリウム摂取群で11.9mmol/lと高く、対照群は9.8mmol/lでした。このことから、クエン酸を摂取することで、乳酸が筋肉から血液中へ流れ、エネルギー源に変換されることが示唆されます。これらの結果から、クエン酸が運動能力の向上に効果的であることが示されました出典[9]。
クエン酸は、疲労回復に加えて運動のパフォーマンスを向上させる効果もあるため、筋トレやスポーツをしている方が摂取すべき成分と言えます。クエン酸が配合されているサプリメントやプロテインを活用すると良いでしょう。
3.ミネラルの吸収効率を高める
クエン酸はミネラルの吸収効率を高める効果があります。
クエン酸にはキレート作用があり、ミネラルを包み込んで吸収を促進します。クエン酸はマグネシウムの吸収を促進します。 アミノ酸キレートのマグネシウム、クエン酸マグネシウム、酸化マグネシウムの3つの製剤を用いて、マグネシウムの吸収率を比較しました。吸収率は、短期投与(24時間後)および長期投与(60日後)で評価しました。
血清中マグネシウム濃度は、短期投与と長期投与の両方において、クエン酸マグネシウムで高い値を示しました。唾液中のマグネシウム濃度は、長期投与において、クエン酸マグネシウムで高い値を示しました。これらの結果より、クエン酸の摂取を続けることで、マグネシウムの吸収率が高まることが示されました出典[10]。
健康な男性に、すだちジュースにしらす干し粉末を入れた飲み物を摂取してもらいました。この試験では、しらす干し粉末に含まれるカルシウム、マグネシウム、リンの吸収率がクエン酸によりどう変化するかが評価されました。すだちジュース+しらす干し粉末の場合の吸収率はカルシウム84.2%、マグネシウム81.8%、リン93.1%であり、水+しらす干し粉末の場合の吸収率はカルシウム61.9%、マグネシウム67.6%、リン87.5%でした。このことから、クエン酸を含むすだちジュースが、ミネラルの吸収率を上昇させた可能性が示唆されます出典[11]。
カルシウムやマグネシウムは骨や筋肉の形成に関わる成分です出典[12]出典[13]。その他のミネラルも、組織の形成や体調維持に関わる重要な成分であり、適切に摂取し吸収されなければなりません。日々の食事にクエン酸を取り入れ、ミネラルが欠乏しないようにしましょう。
4.美肌効果
クエン酸は抗酸化物質であり、酸化しやすい食品を保持するための添加物として使用されています。肌の酸化も抑えることから、美肌効果が期待されています。
クエン酸は、皮膚においてコラーゲン合成を増加させます。また、角質層を滑らかにしながら表皮の厚さを増加させることにより、好ましい皮膚表面効果を提供することも示されています。クエン酸を含む製品を塗布することで、アンチエイジングや肌の平滑化効果がもたらされます。
この機能に着目した商品が多く販売されており、美容の面からも注目されている成分です出典[14]。また、クエン酸は日焼けした肌の改善にも効果的です。20%クエン酸ローションを皮膚に塗布したところ、日焼けした皮膚の表皮の厚さが増し、グリコサミノグリカンが増加しました。グリコサミノグリカンとはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などのことです。カルボキシル基や硫酸基を多く含む構造をしているため、水に馴染みやすく、高い保水性を示します出典[15]。
クエン酸は抗酸化作用を示し、肌をきれいにする効果があります。また、グルコサミノグリカンを増加させることで、皮膚の保水力を高め、みずみずしい肌にします出典[16]。若く健康な見た目を保つためにも、クエン酸を摂取するようにしましょう。
クエン酸の摂取方法や注意点
クエン酸の効果を得るためには1日どのくらいの量を摂取すればいいのでしょうか。必要な摂取量や効果的な摂取のタイミングについて見ていきましょう。
1.どのくらい摂取すればいい?
クエン酸の摂取量は、2~3gがおすすめです。またクエン酸にナトリウムが添加されたクエン酸ナトリウムの場合は、0.5g/kg摂取するとよいでしょう出典[17]。
2.いつ摂取すると効果的?
運動パフォーマンスの向上効果を期待する場合は、運動前の180分前までの摂取がおすすめ出典[18]。一方で疲労回復のために使用する場合は、運動直後に摂取するとよいでしょう。
まとめ
クエン酸は、柑橘類や梅干しに多く含まれている酸味のある成分です。クエン酸回路というエネルギー産生経路にかかわっており、乳酸を分解します。それにより、疲労回復や運動パフォーマンスの向上をもたらします。また、ミネラルの吸収を促進することで身体の調子を整え、肌をきれいにします。運動開始の3時間前に0.5g/kgのクエン酸を摂取することで、しっかりと効果が得られます。サプリメントなどを利用して必要量摂取するように心掛けましょう。
出典
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