落ち込みや不安に効く16個の食べ物と4つの食べてはいけないもの
2022年9月1日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

はじめに

気晴らしに美味しいものを食べる、大きな業務の労いとして会食に出かける、など、食事によって日々の気分を回復させている方は多いのではないでしょうか。美味しいものを食べると確かに気持ちは満たされますが、実はそうした満足感は一時的なものかもしれません。この記事では栄養素と体の関係に注目し、気分の改善に役立つ食べ物と、逆に一時的な満足と引き換えに気分の落ち込みを引き起こしてしまうような食べ物についてそれぞれ紹介します。

食事が気分を改善する理由3つ

食事が私達に与える気分の変化は、美味しいものを食べたことで得られる満足感だけではありません。食品に含まれる栄養素のうち、気分や意欲を高める方向に作用するものが幾つか明らかになっています。以下ではそのメカニズムと成分について簡単に解説します。

幸せホルモン「セロトニン」の材料になる

日光を浴びて幸せホルモンを出す、という話を聞いたことはありませんか? この幸せホルモンは「セロトニン」と呼ばれる脳内の神経伝達物質です。精神を安定させる、集中力や意欲を向上させる、ストレスを軽減させてイライラを解消する、などの働きがあり、不足すると気分が落ち込みがちになってしまいます。

セロトニンは日光を浴びるほか、深い呼吸や適度な運動、十分な睡眠によっても合成されます。合成にはセロトニンの材料や、合成をサポートする燃料が必要ですが、これらは食事によって補うことができます。

セロトニンの材料となるのは、必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンです。トリプトファンの少ない食事と多い食事を2週間食べた後に不安感や気分の落ち込みを調べたランダム化比較試験によると、より多くのトリプトファンを食事から摂取した群において、抑うつ症状が改善したことや不安が減少したことが確認されています出典[1]。セロトニンの合成を促すため、トリプトファンは食事から不足なく摂取する必要があるでしょう。

またビタミンB6やナイアシン、葉酸、鉄などは、セロトニンの合成をサポートする栄養素として活躍します。摂取したトリプトファンを効率よくセロトニン合成に回すため、これらも十分に食事から摂取したいところです。


腸を整えて気分を整える

セロトニンの材料となるトリプトファンを含め、食品から得られた栄養素のほとんどは腸で吸収されます。またセロトニンのおよそ9割は、脳ではなく腸で合成されていることが明らかになっており、腸内細菌がその合成の手助けをしているとも言われています。消化管の状態が良くないと、栄養素の消化吸収率だけでなく、セロトニンの合成効率も下がってしまうため、気分の落ち込みや不安感を引き起こしやすくなってしまうのです。

これを防ぐためには腸の状態を良好に保つ必要があるでしょう。消化器に負担をかけるような暴飲暴食を避けることはもちろんのこと、腸内環境を整えるような食事を普段から心掛けることも重要です。

腸内環境を作っているのは腸内の細菌です。発酵食品によって有益な細菌自体を摂取したり、食物繊維やオリゴ糖など有益な細菌のエサとなるような食品を摂取したりすることで環境を改善することができるでしょう。

腸内にとって有益な細菌を摂取できるような食品をプロバイオティクス、腸内の有益な細菌のエサとなり、細菌を増殖させることができる食品をプレバイオティクスと呼びます。発酵食品などのプロバイオティクスも、オリゴ糖などに代表されるプレバイオティクスも、一定のストレスを軽減させる作用や抗うつ作用をもたらすことが分かっています出典[2]。腸内環境を改善させるため、また良好な状態を維持するため、これらを積極的に摂取する必要があるでしょう。


脳をダメージから保護する

気分や意欲は脳でコントロールされているため、脳の状態が損なわれないようにすることもまた重要です。日常の生活において脳へのダメージとなる原因として、酸化ストレスに注意する必要があるでしょう。

酸化ストレスとは、私達が活動のためのエネルギーを産生する際に、エネルギーと共に発生してしまう活性酸素のことです。通常であれば体内の抗酸化物質によりこの酸化ストレスは無害化されますが、過剰な活動や強いストレスにより発生量が増えすぎると、抗酸化物質による無害化が追いつかなくなり、脳を始めとした体内の細胞がダメージを受けてしまいます。

抗酸化物質は体内でも合成され、抗酸化剤としてサプリメントでも補充できますが、食事から意識して摂取することにより不足を防止することができます。医学分野での研究においては、酸化ストレスが脳に与えるダメージと、うつ病などの神経精神障害とが関連している可能性が示されています。抗酸化物質の投与を精神疾患の治療の補助療法として活用することについての議論も進んでおり出典[3]、体内での合成量を補充する意味で抗酸化物質を摂取することは気持ちの安定や不安感の解消において有意義であると言えるでしょう。

抗酸化物質として機能する栄養素は、ω-3系脂肪酸、ビタミンCやビタミンE、ミネラル類、ポリフェノールなどです。特にポリフェノールの一種であるフラボノイドの持つ強力な抗酸化作用が注目されており、様々な食品から日常的に摂取することで酸化ストレスの軽減に役立てることができるでしょう。

 

落ち込みや不安を解消する16個の食べ物

気分と食事の関係について、脳や腸に作用するホルモンや栄養素を取り上げて簡単に説明してきました。以下では具体的な食品名を挙げながら、有効となる栄養素についてより細かく解説し、摂取量の目安や調理法についても併せて紹介します。

サーモン

サーモンなどの魚に含まれるω-系脂肪酸は、抗酸化作用ならびに抗炎症作用を持つ脂質として注目されてます。また、アスタキサンチンと呼ばれる成分もサーモンには豊富であり、同じく強力な抗酸化作用を持ちます。

うつ症状や不安感などを調査した長期介入試験において、サーモンを週に3回、半年に渡り摂取した群において、摂取しなかった群よりもうつ症状の改善や不安感の軽減が見られています出典[4]。ω-3系脂肪酸やアスタキサンチンを十分に摂取して酸化ストレスの軽減をはかるため、習慣的な摂取をオススメします。

ω-3系脂肪酸もアスタキサンチンも、研究のように週3回摂取しなければ効果が得られない、というものではありません。肉類と魚類との献立が偏らないよう、日頃はバランスよく摂取することが大事です。魚類を献立に入れる際の選択肢として、優先的にサーモンを入れるような意識を持つようにしましょう。

アスタキサンチンは加熱の影響を受けにくい栄養素ですが、ω-3系脂肪酸は加熱すると効果が弱まったり、煮汁などに溶出して失われたりしてしまいます。抗酸化物質としての効果を期待する場合は、刺身やカルパッチョで食べるのがよいでしょう。

 

ヨーグルト

ヨーグルトは代表的な発酵食品であり、商品によって様々な種類の乳酸菌を含みます。腸内環境の改善に貢献するプロバイオティクスとして手軽に摂取できるため、オススメの食品です。

また、ヨーグルトにはトリプトファンも豊富に含まれています。気分の安定に関わるホルモン、セロトニンの合成材料として不足なく摂取する必要があるため、ひとつの供給源として活用するとよいでしょう。

乳酸菌に限らず、摂取により腸内に取り込まれた有益な細菌は、いつまでも滞在してくれる訳ではなく、消化の流れと共に排出されてしまいます。そのため効果を恒常的に得ようとする場合には、プロバイオティクスとなる食品を毎日食べることが重要です。

ヨーグルトを食べるタイミングですが、プロバイオティクスとしての効果を十分に得るためには食後に摂取する方がよいでしょう。それまでの食事により胃の酸性が弱まった状態にあるため、乳酸菌が生きたまま腸へと届きやすくなります。

 

鶏むね肉

鶏むね肉にもトリプトファンが豊富に含まれています。セロトニンの合成材料となるため積極的に摂取したいところですが、肉類や魚類からトリプトファンの摂取を狙う場合、食べ合わせに注意が必要です。

動物性たんぱく質からの摂取では、植物性たんぱく質からの摂取よりも、トリプトファンが脳へと届きにくいことが分かっています。これは動物性たんぱく質に含まれるBCAAというアミノ酸の脳への通り道が、トリプトファンの脳への通り道と同じであることを原因としています。肉類や魚類で摂取した豊富なBCAAで通り道がいっぱいになってしまい、セロトニンの材料であるトリプトファンが脳へ届きにくくなってしまうのです。

肉類や魚類から効率よくトリプトファンを摂取したい場合、同時に炭水化物を摂取するとよいでしょう。炭水化物の摂取により血糖値が上昇すると、インスリンというホルモンが分泌されます。インスリンはBCAAを脳ではなく筋肉へと送り込みやすくしてくれるため、トリプトファンの脳への通り道が空き、脳でセロトニンを合成しやすくしてくれます。サラダチキンなどの単独摂取は控え、献立のひとつとして穀類と一緒に食べるようにしましょう。

 

牛肉

牛肉も鶏むね肉と同様に、トリプトファンを豊富に含んでいます。セロトニンの材料として使うため、食事の場で炭水化物と併せて摂取するとよいでしょう。

牛肉にはトリプトファンのほか、ビタミンB1やB12も含まれています。栄養補助食品の有用性を確かめる二重盲検ランダム化比較試験では、ビタミンB群の栄養補助食品を摂取した治療群においてうつ症状や不安状態の改善が確認されており出典[5]、セロトニン合成やエネルギー合成をサポートする栄養素として、ビタミンB群が重要な役割を果たすことが分かっています。

また、亜鉛や鉄も牛肉には豊富です。これらミネラル類の不足によっても酸化ストレスは発生しやすくなるほか、鉄はセロトニンを合成する際のサポートとしても活躍するため、日頃から摂取を習慣付けておきましょう。

肉類を摂取する際、脂肪分の量に注意する必要があります。肉類の脂身に多く含まれる飽和脂肪酸は血液中に悪玉と呼ばれるLDLコレステロールを増やし、これにより酸化ストレスを発生しやすくしてしまいます。脳などへのダメージを防ぐため、脂身の少ない肩ロース、モモ、ヒレなどの部位を選ぶことをオススメします。

 

卵はビタミンC以外の栄養素を全て含んでいます。たんぱく質の豊富さはもちろんですが、ビタミン・ミネラル類の含有量も優秀であり、完全栄養食とも呼ばれています。

また、セロトニンが脳で機能するためには、体内のコレステロール濃度が一定以上必要です。コレステロールを適度に保つための供給源としても、良質なコレステロールを含んだ卵は摂取に適していると言えるでしょう。

以前は「卵は1日1個まで」と言われていましたが、近年では卵のコレステロールは血中の、いわゆる悪玉と呼ばれるコレステロールの増加にはほとんど影響を与えないことが分かっています。過剰に制限しすぎず、あらゆる栄養素の供給源として上手に活用しましょう。

 

1日7種類の野菜

野菜や果物の摂取量と心理状態を調査した研究では、1日に7~8品目の野菜や果物を毎日摂取した群において、感情が良い状態で保たれたという結果が出ています出典[6]。気分の落ち込みや不安感を防ぐ方法として、野菜を摂取することには様々なメリットがあります。以下を参考に複数の野菜を毎日食べるようにしましょう。

  • ほうれん草や小松菜:これら葉物野菜には、セロトニンの合成を助ける栄養素である葉酸や鉄が豊富に含まれています。ビタミンやミネラルの供給源として優秀な食品です。
  • にんじんなどの緑黄色野菜:色の濃い野菜に多く含まれるフラボノイドは強い抗酸化作用を持ち、酸化ストレスの軽減に役立ちます。脳をダメージから保護するため、不足なく食べることをオススメします。
  • その他野菜全般:発酵食品には及びませんが、野菜全般には乳酸菌も含まれています。また食物繊維も豊富であり、これらは腸内細菌を増殖させるためのエサとして活躍します。有益なプレバイオティクスとして活用しましょう。

 

トマト

野菜の中でも、トマトに含まれている成分の有効性は注目すべきところです。ビタミンやミネラルが豊富であることはもちろんですが、トマトにはリコピンと呼ばれるポリフェノールの一種が豊富に含まれています。植物に含まれる黄色や赤色の色素であるカロテノイドの中でも、リコピンは特に強い抗酸化作用を持つことで知られています。

トマトはそのままで食べることができるため、サラダやトマトジュースで手軽に摂取を継続できる点が魅力です。ただ、加熱して食べることでリコピンの吸収率をより高めることができるため、トマトスープなども献立に取り入れるとよいでしょう。更にリコピンは油に溶けやすい性質を持つため、パスタソースに使ったり、ドリアに加えたりするのもオススメです。

 

納豆

納豆は言わずと知れた発酵食品です。発酵食品に含まれる有益な細菌が腸内環境を整え、これによりセロトニンの合成に必要なトリプトファンやビタミンB6、ナイアシンといった栄養素を吸収しやすい状態に保つことができます。

納豆の原料となる大豆には、たんぱく質や良質な脂質のほか、ビタミンB群やマグネシウム、亜鉛も豊富に含まれています。大豆を発酵させることでたんぱく質の品質が向上したり、ビタミンB群をはじめとする栄養素の利用効率が上がったりといった効果も得られます。

調理の必要がなく手軽に摂取でき、ある程度の保存も効くため、プロバイオティクスとして毎日摂取しておきたいところです。

 

そば

気分を安定させたり意欲を高めたりするためには、脳に十分なエネルギーが供給されている必要があります。そのために炭水化物の摂取は欠かせませんが、その摂取源となる穀類の選び方には気を付ける必要があります。

炭水化物は最も血糖値を上げやすい栄養素であり、炭水化物としての純度が高ければ高いほど、血糖値は勢いよく上がります。この急上昇に反応して、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが大量に分泌され、結果として血液からグルコースが一気に失われることになります。これにより、グルコースを燃料としている脳はエネルギー不足状態となり、気分の落ち込みや意欲・集中力の低下、抑うつ状態などを招きがちになってしまいます。

血糖値の上がりやすさを示す指数として「グリセミック指数(GI値)」というものがあります。白米や白いパンなどはGI値が高く、単体で食べると血糖値の乱高下を招きやすいため、習慣的に摂取する場合には野菜や肉類などと合わせるなど、工夫が必要です。おにぎりや菓子パンなどを単体で大量に食べるような食生活は控えるべきでしょう。

オススメはGI値の低い、蕎麦や玄米などです。食物繊維やミネラルが含まれているため炭水化物としての純度が低く、血糖値を緩やかに上げてくれます。一般に色の付いた茶色い炭水化物はGI値が低い傾向にあるため、穀類を選ぶ目安にするとよいでしょう。

 

アーモンド

セロトニンの材料となるトリプトファンですが、アーモンドなどのナッツ類にも豊富です。セロトニンを合成するためのビタミンB6や鉄も含まれているため、気分の落ち込みを防ぐための食材として適していると言えます。

またアーモンドにはビタミンEやω-3系脂肪酸などの抗酸化物質も豊富です。脂質がやや多いため大量に食べることはオススメできませんが、小腹を満たすための手段として、あるいはデザートとして、1日に10粒程度を摂取するようにするとよいでしょう。

 

柑橘系の果物

果物を食べる場合は、ビタミンCやフラボノイドが豊富なオレンジやグレープフルーツなどを選ぶとよいでしょう。どちらも抗酸化物質として優秀であるため、酸化ストレスによる脳へのダメージを防ぐことができます。またクエン酸も柑橘系の果物は豊富に含んでおり、疲労からくるストレスや倦怠感の解消に役立ちます。

酸化ストレスである活性酸素にも複数の種類があり、抗酸化物質の種類によって、どの活性酸素を消去できるかは決まっています。そのため様々な種類の抗酸化物質を摂取することで、効果的に酸化ストレスを無害化できるということになります。

同じ柑橘系の果物でも、オレンジとレモンではビタミンCの含有量やフラボノイドの種類が異なります。一種類の果物に拘らず、様々なものを少しずつ食べる習慣を身に付けるとよいでしょう。

 

ブルーベリー

ブルーベリーもまた、柑橘系の果物とは異なるフラボノイドを豊富に含んでいます。そのうちのひとつ、アントシアニンは目に良いことで有名ですが、優秀な抗酸化物質でもあります。その他、ビタミンCやビタミンE、β-カロテンなども豊富であり、様々な種類の抗酸化物質を摂取できるという点でも是非オススメしたい食材です。

また、ブルーベリーは皮ごと食べられる果物であるため、食物繊維も豊富です。腸内環境を整えるためのプレバイオティクスとしての効果も期待できます。

ブルーベリーは冷凍することで細胞の膜が壊れ、抗酸化物質を吸収しやすくなります。そのため冷凍ブルーベリーを常備し、そのまま少量をおやつとして食べたり、デザートのヨーグルトにかけたりして溶かしつつ味わったりする方法が理に適っているでしょう。

 

ダークチョコレート

カカオに含まれるポリフェノールは強い抗酸化作用を持ち、酸化ストレスを低減させる効果があります。またカカオポリフェノールには血管拡張を起こす効果もあるため、脳の血流が良くなり、エネルギーを効率的に脳へと運ぶことができるようになります。エネルギー不足から気分の落ち込みや倦怠感などが引き起こされることもあるため、これらを防ぐ手段としても期待できるでしょう。

チョコレートは抗酸化作用、および血管拡張作用を発揮する優秀な食品ですが、選び方には気を付けましょう。甘いミルクチョコレートの摂取ではポリフェノールの恩恵よりも、糖質や脂質の摂取による酸化ストレスのリスクの方が高くついてしまいます。

様々な研究において、効果を発揮したとされているチョコレートには、カカオが70%以上の割合で含まれています。カカオ70%の表示を目安に、板チョコ半分程度を1日の目安として食べてみましょう。

 

緑茶

普段の飲み物の選択肢には、緑茶を入れてみましょう。緑茶にはテアニンと呼ばれるアミノ酸が豊富であり、気分の落ち込みや不安感を低減する効果があることが分かっています。

また、摂りすぎにより動悸や不安感を引き起こすことがあるカフェインですが、これはテアニンと同時に摂取することでリスクが低減され、スッキリした気分を維持しやすくなることが分かっています。コーヒーなど、カフェイン含有量の多い飲料を飲みすぎて気分が悪くなることが多い場合には、一部を緑茶に切り替えることで体調や気分の改善が期待できます。

 

カモミールティー

ハーブティーには気持ちを落ち着かせたり眠りに付きやすくしたりする効果がある、というのは有名な情報です。中でも特に気分の落ち込みや不安感を防ぐための手段として、カモミールティーが有益であることが分かっています。

カモミールは、セロトニンやドーパミンに加え、気分に関連する神経伝達物質であるGABAの調節にも役立つと考えられています。GABAは脳の興奮状態を抑え、リラックス状態を作りやすくします。GABAの欠如した状態により不安や不眠を招きやすくなるため、気持ちが落ち着かないと感じる時に飲むことで、気分の落ち着きなどの良い効果を得られるでしょう。

また、カモミールには抗酸化物質も豊富に含まれています。酸化ストレスを低減する効果も期待できるため、こちらを目的とする場合には1日1杯を常飲するとよいでしょう。

 

コーヒー

コーヒーはカフェインを豊富に含む飲料であり、このカフェインの作用によって、意欲が向上したり気分が良くなったりといった効果が得られます。また抗酸化物質として機能するポリフェノールもコーヒーには豊富であるため、酸化ストレスの軽減に役立ちます。

ポリフェノールは摂取後数時間で代謝されてしまうため、1日に2~3杯のコーヒーを、数時間おきに飲むようにすると、抗酸化物質の恩恵を長く得られます。またスッキリした気分で大事な作業に挑みたい場合には、カフェインの吸収にかかる時間を見越して、30分前にコーヒーを飲むようにするとよいでしょう。

無糖・無脂肪であるため、嗜好飲料としても適しているコーヒーですが、飲み過ぎには注意が必要です。海外で設定されている1日のカフェイン摂取許容量は400mg、マグカップ換算で3杯程度であり、これを超える摂取ではカフェインの覚醒作用が過剰に働き、動悸や眩暈、吐き気などを引き起こすことがあります。気持ちを落ち着かせるためにと飲んだコーヒーで、逆に不安や苛立ちに悩まされることにもなりかねません。1日にマグカップ3杯を目安とし、この範囲で飲むようにしましょう。
 

食べてはいけない4つのもの

このように、気分の落ち込みや不安感を解消するための栄養素、およびそれを効率的に摂取できる食べ物や食べ方が明らかになっている一方で、気分を不安定にしたり苛立ちや不安感を引き起こしたりする栄養素も判明しつつあります。以下ではそうした栄養素を特に多く含んだ食べ物について紹介します。どれも日頃の食事から完全に取り除くことは難しい食品ですが、気分への悪い影響をもたらさないよう、摂取頻度や食べ過ぎに注意する必要があるでしょう。

揚げ物

天ぷらやフライには多量の油が使われています。特に食用油に代表される、不飽和脂肪酸を含んだ油は「酸化しやすい」という特徴を持っているため、できるだけ摂取を避けたいところです。揚げ調理などで加熱され、酸化した油を摂取すると体内で活性酸素が多量に発生してしまい、酸化ストレスとして脳を含めた体全体にダメージを与えることになります。

日本人を対象とした横断研究において、揚げ物の摂取頻度が高い人ほど、うつ症状など気分の落ち込んだ状態からの回復が難しいことが判明しています出典[7]。揚げ物を毎日食べる習慣があるような場合には、週3回以下を目安に頻度を落としてみましょう。代わりに魚料理など、ω‐3系脂肪酸を摂取できる食事に置き換えると酸化ストレスの低減に役立ちます。

 

ファストフード

ハンバーガーやピザ、牛丼などに代表されるファストフードを中心とした生活を続けていると、炭水化物と脂質の摂取が過剰になりがちです。

炭水化物の摂取は高血糖状態を招き、脂質の摂取は中性脂肪やコレステロールを血中に増加させます。これらの状態が長く続かないように体はインスリンを分泌し、血糖や中性脂肪などを筋肉や脂肪に分配します。そのため、通常であれば血中の糖や中性脂肪の濃度は一定に保たれています。

しかし炭水化物や脂質の過剰摂取が習慣化していると、インスリンによる調整が追いつかなくなります。加えて日頃からインスリンを大量に必要とする食生活を続けることで、インスリンの分泌自体が上手くいかなくなってしまうのです。その結果、血中に留まり続けた糖などが酸化ストレスを発生させ、体へのダメージとして蓄積されてしまいます。

ファストフードは食べれば食べる程、常食が癖になってしまうため、量を減らしたい場合には強い意識での制限が必要です。1週間に1度にする、週末のみの摂取にする、など一定のルールを決める必要があるでしょう。

 

スナック菓子

スナック菓子もまた、炭水化物と脂質を多く含む食品です。加えてスナック菓子の場合は、使用されている脂質にも注意が必要です。スナック菓子は食用油で揚げられているため、酸化した油を摂取することになり、発生した酸化ストレスによって脳へのダメージが蓄積され、気分の落ち込みや不安感を引き起こしてしまいます。

更にスナック菓子に使われるショートニングという油脂にも気を付けなければいけません。ショートニングに含まれるトランス脂肪酸は、悪玉と呼ばれるLDLコレステロールを増やして、善玉と呼ばれる善玉コレステロールを増やすため、酸化ストレスを多く発生させてしまうのです。

油脂は抗酸化作用を持つω-3系脂肪酸などで摂取するように心掛け、酸化された油脂やトランス脂肪酸の摂取はできるだけ控えるのが理想です。

油で揚げられ、食塩あるいは砂糖で美味しく味付けされたスナック菓子は、ジャンクフード同様に適量でやめることが困難です。しかし食べない期間がある程度続けば「食べたい」という気持ちも起こりにくくなるため、ナッツ類や果物、ヨーグルトなどに置き換えるなどで摂取の頻度を調節することから始めてみてください。

 

清涼飲料水

甘い清涼飲料水を嗜好飲料として飲むことはオススメできません。清涼飲料水、特に炭酸飲料には、その味から想像する以上の砂糖が使われています。砂糖で味付けされた液体はすぐに吸収され、血糖値を急激に上げてしまいます。そして分泌されたインスリンにより血液中からグルコースが一気に失われ、脳のエネルギー不足を引き起こしてしまうのです。

また、血糖値を急上昇させない人工甘味料についてですが、こちらも気分の落ち込みなどを防ぎたい場合、控えるべきです。人工甘味料であるアスパルテームの量を調整した食事を8日間続けた介入試験において、アスパルテームの量が多い食事を摂取した群において、少ない食事を摂取した群よりも、気分の落ち込みや苛立ち、抑うつ状態などが多く確認されています出典[8]。アスパルテームはストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌を促進し、酸化ストレスを発生しやすくしてしまう可能性があることが指摘されています。

砂糖を用いた飲料も、人工甘味料を用いた飲料も、それぞれ気分の落ち込みや苛立ち、抑うつ状態を引き起こしてしまいます。甘い炭酸飲料などの常飲は避けて、緑茶など、無糖・無脂肪のものを選ぶようにしましょう。
 

まとめ

気分の落ち込みや不安感を改善する食べ物や飲み物、逆に気分を不安定にするリスクがあるため避けるべき食品について、それぞれ紹介してきました。気分を改善させる食品については、これら全てを実行する必要はありません。日頃の食生活の中で取り入れられそうなものを選んで、摂取を習慣化していくことをオススメします。一方、気分を不安定にする食品については常に注意が必要です。折角摂取した良い食品の効果を減らさないようにするためにも、ファストフードや人工甘味料などの摂取は意識して制限し、減らした分は気分を改善させる食品へ置き換えるようにしましょう。

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