【筋トレに有効!?】HMBとは?4つの効果と適切な摂取方法
2023年11月21日更新

執筆者

管理栄養士

鈴木 亜子

大学卒業後、主に医療機関に勤務。チーム医療の一端を担い、生活習慣病や腎疾患(透析療法や腎移植後)などさまざまな疾患の栄養管理に取り組む。得意分野は糖尿病で、糖尿病透析予防や特定保健指導(糖尿病重症化予防)なども担当。現在は豊富な栄養相談経験を活かし、健康に関わる分野のライターとして活動中。「なるほど!」と思っていただける、分かりやすい記事執筆を心がけている。

HMBとは

筋肉に良い影響をもたらすHMBの正式名称は「β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸」。現在利用しているプロテイン飲料にHMBが配合されているという方もいらっしゃるかもしれませんね。ここではHMBの特徴や体内での働き、HMB同様筋肉づくりに役立つとされる成分「クレアチン」との違いについて見ていきましょう。

1.どんな栄養素?

HMBは分岐鎖アミノ酸(BCAA)のひとつ「ロイシン」が体内で代謝されつくられる物質です。分岐鎖アミノ酸といえば「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の3つのアミノ酸を指し、運動時に重要な役割を果たすことでご存じの方も多い成分ですよね。そんなHMBは「合成促進」「分解抑制」という2つの方法で筋肉にアプローチし、筋肥大に大きく貢献します。

また筋肉の損傷を防いだり損傷した筋肉の修復を促進したりする作用により、筋肉痛や筋肉疲労が軽減するといった効果も報告されています。

さらにHMBは、加齢による筋肉量の減少などが原因となり立ったり座ったり歩いたりといった機能が低下する「ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)」や「サルコペニア」の予防効果が期待されている成分でもあるのです。


2.体の中でどんな働きをする?

HMBに期待できる効果は、たんぱく質の合成促進と分解抑制による筋肥大の効果や筋肉損傷の修復促進などの効果です。このような効果は、以下のようなメカニズムによると考えられています。

  • たんぱく質の合成促進
    HMBは、細胞の成長や増殖に関与する酵素(mTOR)の働きを活発化させることにより、たんぱく質の合成を促進すると考えられています。
  • たんぱく質の分解抑制
    HMBが細胞膜を構成するコレステロールに代謝され、筋繊維を包む細胞膜「筋鞘(きんしょう)」を安定化させることでたんぱく質の分解を抑制すると考えられています。
    また、たんぱく質の分解経路「ユビキチン-プロテアソーム系」の発現・活性や筋たんぱく質分解酵素「カスパーゼ」の活性を抑制することなども関与していると考えられています。

 

HMBとクレアチンの違いは?

HMBと同様、筋肉量や筋力アップに効果の高い成分が「クレアチン」です。この2つの成分には筋肉に対する作用の違いがあります。

クレアチンはアミノ酸の一種で、体内では大部分が「クレアチンリン酸」として筋肉に蓄えられています。蓄え(クレアチン)を増やすことで期待できるのが短時間で高強度の運動、つまり無酸素運動時のパフォーマンスの向上です。このような効果が得られることで結果的にトレーニングの質の向上につながり、筋肥大が期待できます。

一方、HMBは筋たんぱく質に対して分解を抑制したり合成を促進したりする作用により、筋肉を肥大させます。
 

HMBに確認されている作用や効果

HMBは筋肥大および筋力や運動パフォーマンスの向上などに関する効果が期待されている成分です。具体的にどのような効果があるのか、研究論文の結果などを元に詳しく見ていきましょう。

1.筋力の向上

HMBを摂取することで除脂肪体重(体脂肪を除く筋肉や骨、内臓などの重量)と筋力アップに役立つことが報告されています。

1967年から2001年の間に行われた研究のうち、週に2回以上の筋力トレーニングを少なくとも3週間行った研究結果について解析したところ、クレアチンとHMBの2つのサプリメントは、筋力トレーニングによる除脂肪体重と筋力を増加させることに役立つと言えるデータであったことが分かりました出典[1]

この結果は、クレアチンとHMBのサプリメントを摂取しつつ定期的な筋力トレーニングを継続することで、筋肉量の増加に加え体脂肪が減少したことを示しています。

HMBは、カロリー制限下でトレーニングを行わなければいけないアスリートなどの除脂肪体重の減少を防ぐことに役立ちます。


2.無酸素運動の向上

HMBは、瞬発力を必要とする無酸素運動時のパフォーマンスを向上させることが示唆されています。

13.5~18歳(体の発育の指標となるタナー段階4~5)のナショナルチームレベルのバレーボール選手(男性14名、女性14名)を対象に、トレーニングシーズンの初期7週間にHMBを1日あたり3g補給し、身体組成や筋力に加え無酸素運動と有酸素運動への効果などへの影響を調査しました。
その結果HMBの補給は筋肉量や筋力、無酸素運動のパフォーマンスの大幅な増加と関連していることが分かりました。なお有酸素運動の能力には影響を与えませんでした出典[2]

HMBは筋肉を大きくするだけではなくアスリートにも注目の成分であることが、この研究結果からも分かりますね。


3.運動後の筋肉痛や筋疲労の低減

HMBの運動前摂取および継続的な摂取は、運動後の筋損傷を低減させる可能性があります。

筋肉トレをしている20名の男性を被験者とし、運動前に3g/日のHMB-FAまたはプラセボのいずれかを摂取させフルスクワット、ベンチプレス、デッドリフトを中心とした負荷の高いトレーニング実施させました。その結果、筋損傷の指標となる血清クレアチンキナーゼ、尿中3-メチルヒスタジン(3-MH)はHMB群で有意に減少しました出典[3]

また別の研究では、ランニングによる筋損傷へのHMBの効果について検証しています。13名の被験者をおよそ3kmの走行タイムとランニング経験に応じてペアを組ませ、各ペアにはHMB3g/日またはプラセボのいずれかを割り当て6週間毎日摂取させました。その間トレーニングも毎日行い、その後すべての被験者が長時間のランニング(20kmコース)を行い、クレアチンホスホキナーゼと乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定し、筋損傷について評価しました。

その結果、HMB群はプラセボと比較しクレアチンホスのキナーゼが有意に上昇し、LDH活性は有意に減少しました。これらの結果により、HMBサプリメントが運動による筋損傷を防ぐのに役立つということが示唆されました出典[4]

これらの研究結果から、有酸素運動か無酸素運動かにかかわらず、HMBを摂取することで筋肉痛や筋疲労を軽減できる可能性がありますね。日頃からスポーツに励む方はHMBの摂取がおすすめであると言えるでしょう。


4.脂肪の減少

HMBを摂取しつつトレーニングを行うことで体脂肪の減少が期待できます。

HMBの効果に関するメタ解析でも紹介しましたが、定期的な筋力トレーニングとHMBの摂取を継続することで、体脂肪の低下と筋力の増加に役立つ可能性のあることが分かっています出典[1]

通常体脂肪を減らすには有酸素運動が有効であるとされています。同時に筋力もアップしたいという方は有酸素運動とHMBの摂取、筋トレを併用するのも効果的かもしれませんね。

 

HMBの摂取方法や注意点

HMBに期待できる効果が分かったところで、より効果的に取り入れる方法も知りたいですよね。ここではHMBの効果的な摂取量や摂取タイミングについて解説します。

1.どのくらい摂取すればいい?

HMBはサプリメントから摂取するのが一般的です。サプリメントから摂取するHMBの効果的な摂取量は、さまざまな研究報告を踏まえるとHMB-Ca(HMBカルシウム)として1〜3gではないかと考えられます出典[5]

HMBサプリメントには「HMB-Ca」と「HMB-FA(HMB遊離酸)」の2種類があります。HMB-FAは吸収性が高く即効性もありますが、サプリメントとしての数は少なくその分高価です。そのため現在の主流はHMB-Caです。


2.最適な摂取タイミング

HMB-Caを摂取する場合はトレーニングの1~2時間前、HMB-FAであれば30〜60分前が効果的であると考えられます出典[5]

つまり摂取したHMBが吸収され、体内濃度がピークに達するタイミングを運動のタイミングに合わせることで筋肉への効果が発揮されます。
より吸収スピードの速いHMB-FAなら、トレーニング直前やトレーニング中に摂取するのも良いでしょう。
 

まとめ

プロアスリートなどにも注目されるHMBは、筋肉の合成促進と分解抑制という2つの作用を示す成分です。トレーニング時に摂取することで、筋肉痛や筋肉疲労の軽減効果も期待できます。プロテインをはじめBCAAやクレアチンなど他の成分と組み合わせるなどして、理想の筋肉づくりに役立ててみてくださいね。

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