リコンプは不可能?脂肪を減らして筋肉を増やす方法
2023年5月7日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

リコンプとは?

リコンプは、”Body Recomposition”を日本語的に言い換えた用語です。”Recompsition”を直訳すると「再構成」や「再組み立て」のような感じになります。そこから転じて、現在では、筋肉を増やしつつ脂肪を減らすことで、体組成を効率良く理想に近づけていく手段を指すようになりました。

筋肉を増やすためには、基本的には摂取カロリーが消費カロリーを上回るようにする必要がありますが、そうすると脂肪も同時に増えてしまいます。そのため、リコンプを達成するためには、食事量やトレーニングなどの運動量を細かく設定することが重要となります。また、トレーニング歴や元々の体組成によっても、リコンプを成功させる難易度が変わってくる点も知っておくと良いでしょう。
 

リコンプを達成しやすい人

それではまず最初に、リコンプを比較的達成しやすいタイプの人を紹介します。自身がここで挙げる例に当てはまる場合は、リコンプに積極的に取り組むと、効率良くボディメイクを進められるでしょう。

トレーニング初心者

リコンプに成功しやすい人の1例目はトレーニング初心者です。そもそも筋肉を大きくするためには、体に今まで以上の強い負荷をかける必要があります。体が負荷に対して適応しようとする過程で、筋肉は少しずつ発達します。そのため、トレーニング歴が長くなればなるほど、より強い負荷をかけないと体は反応しなくなっていきます。それに対して、トレーニング初心者はまだ体が筋トレに慣れていないため、比較的簡単にトレーニングの効果を得ることができます。筋肉を大きくしつつ脂肪を減らすことは容易ではないですが、初心者の場合は、筋肉が大きくなりやすい特性を生かせるため、リコンプを達成させやすいと言えるでしょう。


太り気味の人

2例目は太り気味の人です。体脂肪率15%の人が1桁の体脂肪率を目指して減量する場合は、ハードな食事管理が必要となるのが一般的です。そのため、体脂肪を減らしつつ筋肉を発達させることは難しくなります。それに対して、体脂肪率30%の人が20%を切ることを目標に減量する場合は、それほど厳しい食事管理は必要ではないです。食事制限が緩ければ、筋肉を増やしながら減量できる可能性も生じます。そして、このことを実際に示した研究もあります。

アメリカの研究者は、過体重の男性被験者を以下のような3グループに分け、2週間の介入を行った結果を分析しました。

  1.  低カロリーの食事(必要エネルギーの80%)のみ
  2.  1と同様の食事に筋トレとカゼインプロテインの摂取を追加
  3.  1と同様の食事に筋トレとホエイプロテインの摂取を追加

実験の結果、全てのグループで体脂肪の減少が見られました。その一方で、除脂肪体重の増加は、筋トレを行った2つのグループのみで観察されました出典[1]これをまとめると、太り気味の人は、食事制限に筋トレを組み合わせれば、脂肪を減らしつつ筋肉が増やせる可能性が示されたことになります。過体重で減量を考えている方は、ぜひ食事制限に筋トレを組み合わせて、積極的に筋肥大を狙ってみると良いですね。


オフ期間を設けていた人

リコンプを達成しやすい3例目は、トレーニングにオフの期間を設けていた人です。ボディメイクを考えてトレーニングする場合は、長期的にトレーニングを休むことは考えにくいです。一方で、スポーツの補強でトレーニングをしている場合は、シーズンとの兼ね合いでオフを取ることもあるでしょう。一旦オフを取った選手が、その後に再び高強度のトレーニングを行うと、除脂肪体重を増やすと同時に脂肪を減らせる可能性が報告されています。

プロラグビー選手を対象に、シーズン前の4週間のオフ期間の後に、11週間高強度トレーニングを行わせた研究では、除脂肪体重の増加(平均1.8kg)と脂肪重量の減少(平均2.2kg)が観察されました出典[2]注意点として、オフと言っても完全なオフではなく、アクティブレストだった点が挙げられます。アクティブレストとは、日本語では積極的休養とも呼ばれ、軽い強度の運動を継続しながら体を休める状態のことです。

やや特殊な例ではありますが、自分がこのような運動パターンに当てはまる場合は、リコンプが成功しやすいと知っておくと良いのではないでしょうか。
 

トレーニング中・上級者がリコンプは不可能なのか?

初心者や太り気味な人は、筋肉を増やしながら体脂肪を減らせることをいくつかの研究で確認しました。それでは、トレーニング経験を積み、ある程度体が出来上がった中級者や上級者とリコンプの関係はどうでしょうか。トレーニング中級者や上級者は、初心者と比べると筋肉が発達しにくくなっていることが多く、その点では、筋肉を増やすと同時に体脂肪を落とすことは難しいと言えます。しかしながら、トレーニング中級者や上級者でも、リコンプに成功したことを示す研究も存在します。

ある研究では、トレーニング経験のある男性被験者を対象に、2種類のトレーニングプログラムの効果が調べられました。それぞれのトレーニングは、重量、セット数、種目数は同じで、インターバルのみが35秒以内か3分かで区別されました。実験の結果、双方のトレーニングプログラムに筋量増加効果があったことと、35秒のインターバルでのみ、体脂肪の有意な減少があったことが分かりました出典[3]。このことは、トレーニング経験があっても、インターバルを工夫することで、筋量増加と体脂肪の減少を両立できる可能性を示しています。

栄養摂取を工夫することで、リコンプを達成できる可能性を示した研究もあります。アメリカの研究者は、女性アスリートを対象に、高たんぱく質食と低たんぱく質食が体組成に与える影響を調べました。被験者は8週間にわたって筋力トレーニングを実施し、その間、高たんぱく質食(1日に体重1kgあたり2.5g)もしくは低たんぱく質食(1日に体重1kgあたり0.9g)を摂取し続けました。実験の結果、高たんぱく質食のグループでは、除脂肪体重の有意な増加と、体脂肪の有意な減少が見られました出典[4]

ここまでをまとめると、トレーニング中級者や上級者であっても、トレーニングや食事の内容を工夫することで、ボディメイクを効率良く進められる可能性があると言えるでしょう。

 

ボディメイクを効率的に!リコンプの具体的なやり方

最後に、リコンプを達成するためには、実際にどのようなポイントを意識する必要があるかを解説します。トレーニング、栄養、休養の3つの観点から、合計で5個のポイントを紹介しますので、ぜひ今後のトレーニングに活かして見てくださいね。

週に最低3回の筋トレ

まずは筋トレの頻度からです。仕事との兼ね合いや、疲労の度合いなどによってジムに行かれる回数が限られている方もいると思います。そのような方でも、リコンプを成功させるためには、最低でも週に3回はトレーニングすることをお勧めします。特に、トレーニング中級者や上級者は、トレーニングの刺激に対する反応が初心者よりも鈍くなるため、積極的に刺激を与える必要があります。

トレーニング経験者のリコンプについてまとめられた学術誌では、毎回強度を高めていくことを意識しながら、最低週3回のトレーニングを行うことが重要とされています出典[5]週に3回しかジムに行けない場合は、毎回全身を鍛えるプログラムにすると、刺激の頻度を高めることができるのでお勧めです。逆に、全身を細かく分割するプログラムは、トレーニングできる回数の少ない方には不向きだと言えます。


筋トレ前後の有酸素運動は控える

続いては有酸素運動の実施についてです。筋トレ前や筋トレが終わった後に、トレッドミルやエルゴメーターを使った有酸素運動を行うことを習慣にしている場合は、一旦それを中止してみましょう。と言うのも、有酸素運動は、心肺機能の向上や脂肪燃焼には有効なエクササイズである一方、筋肉の発達という観点では、良い影響が少ないとされているためです。

実際に、筋トレと有酸素運動を組み合わせた際の効果について調べたメタ解析論文では、以下のようなことが分かっています出典[6]

  • 筋肥大の効果は、筋トレ単体よりも、筋トレと有酸素運動を組み合わせた場合の方が劣っていた。
  • 筋力の増加は、筋トレ単体よりも、筋トレと有酸素運動を組み合わせた場合の方が劣っていた。
  • ランニングを筋トレと組み合わせると、サイクリングを組み合わせた場合と比べて有意に筋肥大や筋力向上の効果が減少した。

これらをまとめると、筋肉量を増やしつつ体脂肪を減らすリコンプを狙うならば、積極的に有酸素運動を取り入れることは控えた方が良いと言えます。ジムにいる間は筋肉を大きくすることを考え、有酸素運動は起床後などの別のタイミングで実施すると良いでしょう。

 

摂取カロリーを増やしすぎない/減らしすぎない

筋肉の発達を考える場合も脂肪の減少を考える場合も、摂取カロリーを計算することが大切です。食べ物からのエネルギー摂取が1日の活動に必要なエネルギーの総量を上回っていれば体重は増え、下回っていれば体重は減っていきます。リコンプを考える際には、この原則を踏まえつつ、大幅にカロリーを増減させないことが重要です。

多すぎるカロリーの摂取は必要以上の脂肪の蓄積を促しますし、逆にカロリーが足りていなければ、筋肉も発達しないことが多いです。1日あたり500キロカロリーの制限をすると、それだけで筋肥大の効果がなくなってしまうという研究も中にはあります出典[7]。一方で、必要なエネルギー摂取量の40%程度をカットするような食事制限をした場合でも、体重1kgあたり2.4gのたんぱく質摂取を行った場合は、除脂肪体重の増加が見られたとする研究もあります出典[8]

必要なエネルギー摂取量は、個人ごとの代謝の違いもあるため、厳密に数値として設定することは難しいです。それでも、基本的にはカロリーの余剰がある状態で筋肉が増え、カロリーが不足するにつれて脂肪は減るが筋肉は増えにくくなることを押さえておくことは大切です。まずは、一定の摂取カロリーを継続して、体に変化がなければ調整を加えていくようなやり方を試してみると良いかもしれないですね。

 

1日に体重1kgあたり2.4-3.5gのたんぱく質を摂取する

筋肉の主な材料はたんぱく質です。そのため、食事から摂取するたんぱく質が不足している場合は、いくらトレーニングを頑張ってもなかなか筋肉が増えません。また、たんぱく質は他の栄養素と比べた場合に、消化に多くのエネルギーを必要とします。これにより、カロリーが同程度ならば、たんぱく質量が多い食事は間接的に脂肪の蓄積を防ぐとも言い換えることができます。

食事制限によりカロリーを低く保った状態で、高たんぱく質食(1日に体重1kgあたり2.4g)と低たんぱく質食(1日に体重1kgあたり1.2g)が筋肥大に与える影響を調べた研究では、高たんぱく質食は低たんぱく質食よりも有意な筋肉量の増加を引き起こしたことが分かりました。また、体脂肪の減少量は、高たんぱく質食の方が多かったことも分かりました出典[8]

別の研究では、1日に体重1kgあたり2.3gのたんぱく質を摂取するグループと、3.4g摂取するグループにおける筋トレ効果の違いが調べられました。その結果、除脂肪体重の増加に関しては群間で差がなかったものの、体脂肪の減少は、3.4gの摂取をしたグループで有意だったことが分かりました。

これらの研究を踏まえると、食事制限でカロリーを減らす場合でも、たんぱく質の摂取量は減らしすぎないように意識することが大切と言えます。


十分な睡眠をとる

トレーニングと栄養の次は休養です。休養を正しく取ることはボディメイクにおいて重要ですが、リコンプを目指す場合でもこれは変わりません。眠っている間に成長ホルモンが分泌され、たんぱく質の合成等によって壊れた組織の修復が行われます。また、睡眠と脂肪の減少についても報告があります出典[9]。必要な睡眠時間は人によってさまざまですが、目安となる研究結果を1つ紹介します。

肥満男性を対象に、睡眠時間を制限した際の体重減少効果を調べた研究では、睡眠時間が不足すると、体脂肪の減少量が少なくなることが分かりました出典[9]実験は、睡眠時間を1時間短くする日を、1週間のうち5日間設ける設定で行われました。このことより、仕事が忙しくて睡眠時間が取れなくなったり、慢性的に睡眠の不足を感じたりしてる場合は、ボディメイクに悪影響が出ると言えます。疲れが取れなかったり、トレーニングを行っているにもかかわらず満足できる効果が得られなかったりする場合は、睡眠を見直してみることが大切です。
 

まとめ

今回は、リコンプについて解説しました。

筋肉を増やしながら脂肪を減らすというのは、一番理想的なボディメイクの方法です。トレーニング初心者や太り気味の方は、リコンプを成功させるチャンスがありますので、ぜひ積極的に狙ってみましょう。

ある程度のトレーニング経験のある方でも、トレーニングや食事の内容を見直すことで、リコンプを行える可能性があることも紹介しました。ずっと同じ方法でボディメイクを続けている方は、一度数値を計算しながら、今までのやり方を見直す機会を設けられると良いですね。

一度で正解に辿り着けることはなかなか簡単ではないので、何度も試行錯誤して、自分にあったリコンプの方法を見つけてみてください。

 

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