デスクワーカーに必須?ビタミンDに期待する6つの効果
2022年11月25日更新

執筆者

管理栄養士

柴田 満里子

歯科医院や特定保健指導で管理栄養士として生活習慣病の予防に従事。家族の健康を支える人のために、わかりやすく実践しやすい調理や、健康に関する知識を伝える活動を行っている。

ビタミンDの特徴

ビタミンDとはどんな成分なのでしょうか?ここではビタミンDの特徴や働き、豊富に含まれる食材をご紹介します。

コロナ禍で在宅ワークが増えた方は非常に多く、今まで外に出向く仕事の多くがオンラインでも対応可能に変わりました。便利になった反面、健康面での代償が多く見られています。多くの在宅ワーカー、デスクワーカーは外出する機会が減り、日光に当たる時間が大幅に減少した方も多いのではないでしょうか。

意識的に身体を動かし、食事量を調整できた人は、大きな身体の変化はないかもしれません。しかし「最近体重が増えてきた」と感じている方は、要注意です。原因は、ただの運動不足や食べ過ぎだけではないかもしれません。実は、ビタミンD不足による健康被害が生じている可能性もあるのです。

そもそも、ビタミンとは、身体を整える役割のある有機化合物で、水溶性と脂溶性の2種類が存在しています。脂溶性ビタミンは、A,D,E,Kの4種類、水溶性ビタミンは、B群とCに分けられています。その名の通り、脂に溶けるビタミンと水に溶けるビタミンに分けられるのです。

本記事でご紹介するビタミンDは、脂溶性ビタミンの一つで、カルシウムの吸収を助け、骨や歯を丈夫にするビタミンとしても良く知られています。また、日光に当たると皮膚で生成されるという特徴があります。

ビタミンンDは、D2〜D7の6種類あります。D2は植物に、D3は動物に含まれます。D4〜D7は働きが弱く、また食品に含まれる量が少ないことから、私たちが口にするビタミンDは、D2かD3がほとんどだと考えてよいでしょう。ビタミンD2はきのこ、特にきくらげ、舞茸、エリンギに豊富であることがわかっています。野菜や豆類にはビタミンD2が含まれているものの、その含有量は多くありません。ビタミンD3の主な供給源は魚です。肉や乳製品のビタミンD3含有量は微量なので、魚を意識的に食べることでビタミンD3を補うことが出来ます。

ビタミンDは、紫外線量の多い春から夏にかけては不足しにくく、秋、冬には不足しやすい栄養素です。日光にあたる時間が短くなる秋、冬には、積極的に魚やきのこ類を摂り、ビタミンD不足を食事から補うことが推奨されます。そして季節に関わらず外出不足の方は、より積極的に外出し、日光に当たる時間を確保することでビタミンDを体内に補う必要があります。
 

ビタミンD不足によるデメリットや摂りすぎによる注意点

ビタミンDは、カルシウムの吸収を助ける働きがあります。そのため不足すると、骨粗鬆症のリスクが高まります。発生率が高まるという関連性も指摘されています。また、前立腺がんや乳がんを予防する可能性も示唆されています。一方で、すい臓がんのリスクが高まるとの関連も指摘されています。ガン細胞に対する影響は研究段階と言えるでしょう。

ビタミンDは水には溶けない性質から排泄されにくく、摂りすぎによるデメリットも報告されています。吐き気、食欲不振、便秘、脱力感、体重減少などがその症状で、サプリメント等により過剰な摂取にならないよう注意が必要です出典[1]

 

ビタミンDの利用目的なメリット

ここからはビタミンDに期待できる作用や効果についてご紹介します。

1.ダイエットのサポート

ビタミンDは、カロリー調整によるダイエットや運動強化によるダイエットをサポートする効果が期待されています。インスリンという体内の血糖値を低下させるホルモンや、中性脂肪の合成や分解にも影響を与える可能性が示されているのです。

2019年1月に行われたオックスフォード大学の研究では、ビタミンD欠乏症44名の肥満被験者を対象に50000IUのビタミンDを添加した低エネルギー食事とプラセボ群注釈[1]に分け、12週間後の体重、体脂肪、血中ビタミンD濃度、メタボリックシンドロームによる全身の炎症レベル(メタ炎症)の変化を研究しています。その結果、ビタミンD添加群のほうが体重や体脂肪量が有意に減少し、メタ炎症レベルが低い事が示唆されています出典[2]

また、2009年にケンブリッジ大学で行われた研究では、65人の肥満女性(BMI32 平均43歳)を対象にビタミンDとカルシウムを摂取させ、15週間の適度な運動を行い、体重と体脂肪の変化について研究しています。その結果、カルシウムが不足している場合、カルシウムとビタミンDを一緒に摂る事で脂質の摂取量が減少し、更に有意に体重と体脂肪が減少したとの報告があります出典[3]

つまり、肥満の方の場合、ビタミンDを補うことでダイエットに成功する可能性があると言えるでしょう。

 

2.メンタル面を安定させる

ビタミンDには感情のコントロールうつ病のリスクを低減する作用もあります。

7,534名の感情を対象にしたメタアナリシスでは、うつ症状のある人のビタミンD欠乏の可能性が示唆されています。また、オックスフォード大学で2012年5月から2013年11月にかけて593人の筋繊維痛症症状(FM患者)を前向き調査した所、20.6%の患者が低ビタミンD状態であったと報告されています。さらに、ビタミンD欠乏は、FM患者において、より悪い症状の重症度、不安、およびうつ病の危険因子であり得ることが示唆されています。

つまり、体内のビタミンDの不足は、メンタル面での不安定につながる可能性があります。メンタル面に不安がある方は、まずビタミンDが不足していないかを確認すると良いでしょう出典[4]出典[5]

 

3.骨を頑丈にする

ビタミンDは、骨の材料となるカルシウムの吸収カルシウムの骨への沈着をサポートする働きがあります。ビタミンDは、肝臓、腎臓を経て、活性型ビタミンDに変換されます。この活性型ビタミンDによって小腸粘膜で骨の材料となるカルシウムの吸収を促します。

つまりビタミンDは、骨を壊す破骨細胞や骨を作り出す骨芽細胞の分解や合成に関わる重大な栄養素であるため、骨の形成と分解に大きな影響を与えています。

成長過程で生じる病気はくる病、成人では骨軟化症、骨粗しょう症予防のためにもビタミンDは十分に充足する必要がある栄養素の一つであり、骨を強くするための必要な栄養素の一つと言えるでしょう出典[6]出典[7]

 

4.免疫力の向上

糖尿病、喘息、関節リュウマチの発症は自然免疫能がその発症を左右しています。その感染に対する最初の防御因子である自然免疫は、ビタミンDによってその働きが活性化されることが明らかになっています。またビタミンDは、免疫細胞の貪食能を増加させることもわかっています。

2015年にメリーランド州で行われた研究では、ビタミンDが大腸菌を殺すマクロファージの能力を増強する事を実証したと発表されています。つまり、ビタミンDは病原体から生物を守る上で欠かせないビタミンの一つだと多くの論文で記されているのです。

つまり、ビタミンDを補うことで、体内に入り込んだウイルスと戦う免疫力を促す可能性が期待されています出典[8]出典[9]

 

5.心疾患の発生リスクの低減

2018年12月にAmerican Journal of Medicin誌に掲載された112名の心不全の患者(平均±sd年齢=70±8歳)と健常者37人との比較において行われた研究では、心不全患者のビタミンD濃度は健常者に対して明らかに低いという結果が示されています。

また90%の心不全患者のビタミンD血中濃度は20ng/mlと低下し、特に30%の心不全患者のビタミンDの血中濃度は10ng/mlであったと示されています。さらに、6分間歩行テストの結果と血中ビタミンD濃度を調査したところ、血中ビタミンD濃度が低い人ほど6分間歩行テストの結果が低いという結果が示されています。

つまり、ビタミンDには、心臓や心臓に関連する病気のリスクを減らす可能性や、運動能力を高める可能性が考えられていますが、こちらの仮説に対しては、今後さらなる研究の予知があると述べられています。今後さらなる研究が期待されています出典[10]

 

6.テストステロン量の向上

2011年3月に行われたランダム化比較試験では、165人の非糖尿病被験者を対象にした54人男性に毎日83μのビタミンDを1年間投与し、ビタミンD補給が男性のテストステロンレベルに影響を評価する実験を行いました。結果ビタミンDを与えた群で有意に血中ビタミンDの濃度が上昇し、またテストステロン値が有意に上昇しています。

また、2014年から2016年に中国東部の23施設で、4254人の男性に対して代謝性疾患及び危険因子における有病率の調査をメンデルランダム化(MR)方法論で行いました。結果、ビタミンDの低下は、総テストステロンの低下と関連が深いことを示しました

つまり、ビタミンDには男性の精力や活力の源となるテストステロン値の向上にも効果的である可能性が示されています出典[11]出典[12]

 

利用の目安量と過剰摂取のリスク

日本人の食事摂取基準(2020年版)注釈[2]では、1日の摂取量の目安量は18歳以上の男女では8.5μg生しらす120g程度に相当します。ビタミンDは脂溶性ビタミンで体外に排出されにくいため、過剰摂取には注意が必要です。

ビタミンDの過剰摂取により、高カルシウム血症が生じ、血管壁や腎臓、心筋、肺などに多数のカルシウムが沈着します。そのため、腎機能障害や食欲不振、嘔吐などの症状が現れる可能性があります。

ビタミンDの許容上限量は100μgと設定されていますが、食品から食べられる量は限られているため、食品から摂りすぎることは考えにくいでしょう。しかし、健康食品やサプリメントを多数摂取されている場合は必ず一日の目安量を守り、可能摂取にならないような注意が必要です出典[13]

 

まとめ

ビタミンDには、脂溶性ビタミンで、骨や歯へのカルシウム吸収率を高める栄養素として知られていますが、それ以外にもダイエットや精神安定、免疫力の向上、心疾患発生のリスク低下、テストステロン量の向上に効果的なデータが存在することが示されました。

しかし、水溶性ビタミンと異なり体外に排出されにくく、過剰摂取のリスクは理解しておく必要があります。1日3度の食事では過剰になることはまれですが、特にサプリメントで摂取する場合は、それぞれの商品の1日の目安量を適切に守ることを忘れないでください。

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