寝る前の納豆は痩せる!?健康効果やおすすめの食べ方を紹介
2023年12月26日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

寝る前に納豆を食べるメリット5選

優れた発酵食品である大豆製品、納豆には、健康効果をもたらす成分が数多く含まれています。

たとえば大豆固有の成分である大豆レシチンや大豆サポニンには、血管へのコレステロールの吸着を防ぎ、コレステロール値を調節する効果が確認されています。また発酵により生じるナットウキナーゼには血液をサラサラにして、動脈硬化を予防したり血流を改善したりする効果が期待できます。

そうした納豆の健康効果を高めるため、食べるタイミングに一工夫してみましょう。朝に食べるイメージのある納豆ですが、夜間、寝る前に食べることで納豆の健康効果をより高く得られる可能性があることが分かっているのです。

では、寝る前に納豆を食べることで強化されるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

メリット1.ナットウキナーゼによる血流改善効果UP

納豆は、大豆が納豆菌による発酵を起こすことでできる食品です。この発酵過程で生じるのが、ナットウキナーゼという酵素です。

このナットウキナーゼには、血栓のもととなるたんぱく質であるフィブリンを分解し、血栓を溶かす作用が確認されています。血液をサラサラにすることにより、動脈硬化の防止に役立つのはもちろんのこと、血行不良を改善して冷えを解消したり、肩こりを解消したり、筋肉痛からの回復を早めたりといった効果が得られます。

ではなぜ、寝る前の納豆によりこの効果を高く得られるのでしょう? その理由はズバリ、寝ているときの姿勢にあります。

血液の流れは、体を動かしていない夜、寝ているときに滞りやすくなります。4時間以上座ったままの状態を維持することにより「エコノミークラス症候群」のリスクが高まるように、体を動かさない時間には血栓ができやすくなるのです。

血栓を溶解し、血液をサラサラにする効果を十分に得るには、睡眠前のナットウキナーゼが最適。日常において血栓が出来やすいタイミングである睡眠中に備え、夜寝る前にナットウキナーゼを摂取しておきましょう。睡眠中に血流を改善することで、酸素や栄養が全身に行きわたりやすくなり、疲労や筋肉痛の回復にも役立ちます。

 

メリット2.ビタミンB群による脂質代謝UP

納豆にはビタミンB1やB2、ビオチンなどのビタミンB群が豊富に含まれています。栄養素の代謝にかかわるビタミンB群ですが、特に夜に摂取するにおいては、糖質や脂質を代謝する役割に注目したいところです。

ビタミンB1には、摂取した糖質をエネルギーに変える働きがあります。またビタミンB2は脂質代謝に優れ、脂質を分解する働きを担っています。

1日の中で、最も「食べすぎ」が起こりやすいのが夕食。お酒を飲む習慣がある場合、合わせてたべるおつまみのカロリーを消費できないまま眠ってしまい、体脂肪増加の原因となることも。

納豆の摂取により、体内で余りがちな糖質や脂質といった栄養素を、エネルギーに変えて消費しやすくする効果が期待できます。体脂肪の蓄積を防ぐことで、ダイエットや生活習慣病の予防にも繋がるでしょう。

 

メリット3.良質なたんぱく質の補給による筋肥大の効率UP

大豆はたんぱく質を豊富に含む食品です。量だけでなく、大豆のたんぱく質は質にも優れています。

筋肉や皮膚など、体組織のたんぱく質を合成するためには、20種類のアミノ酸が必要です。このうち特に重要となるのが、私たちヒトの体内で合成できない9種類の必須アミノ酸。この必須アミノ酸のバランスが整っている動物性食品の方が、一般にたんぱく質合成効果が高いと言われています。

しかし納豆など、大豆製品の必須アミノ酸バランスは、肉や魚、卵などの動物性食品に匹敵するレベルで整っています。良質なたんぱく質の供給源として、納豆は非常に優れていることが分かりますね。

夜間に良質なたんぱく質食品を摂取する一番のメリットは、筋肥大の効率を高めることにあります。

トレーニングにより筋肉を鍛えようとしている場合、トレーニング後の24時間にわたり、たんぱく質の供給を均一かつ持続的に行うのが効果的であることが分かっています出典[1]

この時に意識したいのが、朝昼夕と均一に十分なたんぱく質食品を摂ることに加えて、寝る前にもたんぱく質の補給を行うこと。長時間食事をしない夜間においては、たんぱく質が枯渇し、筋肉の合成効率が低下してしまいます。

また、夜は筋肉の合成を高めるための「成長ホルモン」が分泌する時間帯でもあります。比較的消化の良いたんぱく質食品である納豆を寝る前に食べることで、休息と同時に筋肉の合成を高められるようにしましょう。

 

メリット4.アルギニンによる成長ホルモン分泌UP

大豆にはアルギニンというアミノ酸が含まれています。体内でも合成が確認されている非必須アミノ酸ではありますが、合成量は少ないため、不足分は食事で補う必要があります。

アルギニンには成長ホルモンの分泌を高める効果が確認されています。疲労回復効果や活力を高める効果があるほか、筋肉の合成効率を高めるためにも作用します。

成長ホルモンの分泌は、眠りに入って初めて発生するノンレム睡眠のタイミングで最も盛んになることが分かっています出典[2]。寝る前に納豆を食べることで、ベストなタイミングでのアルギニン補給が可能になり、成長ホルモンの分泌をより効率化できる効果が期待できるでしょう。

 

メリット5.トリプトファンが快眠をもたらす

寝る前の納豆摂取を継続することで、睡眠をサポートするホルモンの生成を促し、入眠しやすくする効果が期待できます。

必須アミノ酸のバランスを示す「アミノ酸スコア」において、納豆は肉や魚に匹敵する100近い値を取っています。中でも豊富に含まれるのが、トリプトファンというアミノ酸です。

トリプトファンは必須アミノ酸であるため、体のたんぱく質合成に欠かせません。一方で、トリプトファンには「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの材料として使われるという側面もあります。

セロトニンは緊張や不安を和らげ、リラックス効果をもたらすホルモンです。緊張や不安により夜なかなか寝付けないという場合には、セロトニンが役立つ可能性がありますね。

また、セロトニン以上に重要なのが「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンです。セロトニンは朝に合成されますが、このセロトニンが夕方から夜にかけて、メラトニンに変化し分泌されます。このメラトニンにより覚醒度が低下することで、入眠しやすくなると言われています。

寝つきを良くするためにはメラトニンが必要。メラトニンの合成のためには朝のセロトニン合成が必要。そしてセロトニンの材料として欠かせないのがトリプトファンです。快眠効果を得るため、トリプトファンを含む納豆を取り入れてみてはいかがでしょう。

 

納豆を食べる際に気を付けたい4つのポイント

このように、納豆には様々な健康効果が確認されています。では夜寝る前に納豆を食べるにおいて、どのようなことに注意すべきなのでしょう。

以下では納豆の健康効果を十分に得るための工夫点や注意点について5つほど紹介します。これらのポイントを意識して、納豆を効果的に食べてみましょう。

ポイント1.寝る前は1パックまで

良質なたんぱく質や、様々な成分の供給源として優れている納豆ですが、食べすぎには注意が必要です。

納豆1パック当たりのエネルギーは80~100kcalほど。寝る前に3パックも4パックも食べてしまうと、カロリーオーバーにより体重増加の原因になってしまいます。また、多量に摂取するとそれだけ消化管にも負担がかかるため、睡眠の質を下げる原因になります。

寝る前の納豆は1パックまでにしておき、もう少し食べたい場合には朝食など別のタイミングに回しましょう。

 

ポイント2.1日2パックまでを目安に

寝る前以外に納豆を摂取したい場合にも、量は1日2パックまでとしておきましょう。

食品に含まれている必須アミノ酸を効率的に活用するには、様々な食品からたんぱく質を摂取して、不足している必須アミノ酸を補い合うことが重要です。納豆に偏らず、肉や魚、卵など、その他の良質なたんぱく質食品を摂取する機会を作っておきましょう。

また、男性の場合、大豆に含まれる「イソフラボン」の過剰摂取が、男性ホルモンであるテストステロンに影響を及ぼす可能性があります。テストステロンは、筋肉の合成効率を上げるのみならず、活力や精力を高め、男性力を維持するために欠かせないホルモンです。男性にとっては、なるべく減らしたくありませんよね。

健康な男性が大豆イソフラボンをスコーンの形で1日120mg摂取したところ、摂取していないグループと比較して総テストステロンが5%ほど減少したという結果が得られています出典[3]。他にも1日100mg以上のイソフラボンの摂取で、総テストステロンが減少したという報告も寄せられています出典[4]

ただしこれら試験において低下したのは総テストステロンであり、筋肥大を促進したり活力や精力を高めたりする効果を持つ「遊離型」のテストステロンの量は変化していません。イソフラボンを多量に摂取しても、男性力が損なわれる可能性は低いと考えられますね。

とはいえ、総テストステロンの減少が試験により確認された以上、イソフラボンの摂取に抵抗を感じるという方もいらっしゃるでしょう。その場合の摂取目安として、イソフラボンの摂取量を1日100mgに留めることを意識してみましょう。1日2パックまでならこの量を上回ることがないため、総テストステロンの低下を気にせず食べられます。

 

ポイント3.毎日の継続がカギ

寝る前や朝、どのタイミングで納豆を食べるにせよ、「毎日」食べ続けることを意識する必要があります。というのも、納豆によりもたらされるいくつかの健康効果は、毎日継続して食べないと十分に得られないのです。

たとえば、腸内環境を整える効果。善玉菌である納豆菌は、一度摂取すると長らく棲みつき続けてくれる、というものではありません。そのため常に腸内環境を善玉菌が多い状態にするには、善玉菌を含む食品を毎日体に取り入れる必要があるのです。

特に筋力トレーニングをしており、プロテインや肉類でたんぱく質を豊富に摂取している方は要注意です。たんぱく質は腸内において悪玉菌のエサとなるため、毎日の高たんぱく質食により悪玉菌が増えやすい状況にあります。悪玉菌の増殖を防ぐためにも、納豆を毎日摂取して腸内環境の悪化を防ぎましょう。

また、快眠効果についても、毎日続けることで眠りの改善を実感しやすくなります。

納豆にはセロトニンやメラトニンの材料となるトリプトファンが豊富に含まれます。しかし十分に摂取したトリプトファンがセロトニンやメラトニンを合成し、効果を発揮するのは翌日以降のこと。そのため、寝付けないときにのみ食べるというやり方では効果を得にくくなります。

毎日ぐっすり眠り、スッキリとした目覚めを手に入れるため、納豆の摂取を習慣付けるようにしましょう。

 

ポイント4.加熱調理は避ける

納豆を美味しく食べる方法として、パスタや炒め物に納豆を合わせる調理法を試したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。納豆を飽きずに続ける方法として良い選択であるように感じるかもしれませんが、納豆の成分に注目した場合、あまり良い方法とはいえないのです。

その理由は、繊細な成分であるナットウキナーゼにあります。納豆に含まれるナットウキナーゼは酵素であり、加熱により働きが失われてしまいます。そのため、加熱調理では納豆の血流改善効果を十分に得られなくなるのです。

血液をサラサラにして動脈硬化を予防したい、血流を改善して冷えを改善したい。そうした理由で納豆を食べる場合には、加熱調理を避け、そのままの状態で食べるようにしましょう。

 

納豆との相性が良い食材と悪い食材

そのままタレや醤油だけかけて食べても美味しい納豆ですが、別の食品と組み合わせることで更なる健康効果を発揮する場合があります。
逆に、味の面では相性が良いと考えられている食品が、実は健康効果を損ねる組み合わせだった、ということもあります。

以下では、納豆によく合わせられがちな食品の、納豆との相性について、健康効果に注目しながら解説します。

腸内環境改善にはキムチ

納豆の納豆菌、食物繊維、オリゴ糖による腸内環境改善効果を期待する場合、もう一つの発酵食品としてキムチを加えることをおすすめします。

キムチには乳酸菌が含まれています。善玉菌自体を摂取することで、腸内の善玉菌を増やして善玉菌が優位な腸内環境を作る効果が期待できますね。納豆の食物繊維やオリゴ糖は、キムチの乳酸菌のエサになるように働きます。その結果、キムチ由来の乳酸菌がさらに増えやすくなり、腸内環境がますます整います。

また、生きて腸に届きやすいとされている納豆菌の増殖にも、キムチに使われている白菜や大根などの食物繊維がエサとして役立ちます。
納豆とキムチは、互いの菌を互いの成分が補強し合う、腸内環境改善においては非常に好相性な組み合わせであると言えそうですね。

 

アツアツのご飯は避けて

夜食や朝食として、炊きたてのご飯に納豆をかけて食べる方も多いのではないでしょうか。ご飯と納豆は多くの人に愛されている組み合わせですが、組み合わせる場合、ご飯の温度に注意する必要があります。

ナットウキナーゼの血栓溶解作用を期待する場合、加熱は厳禁ですが、熱いご飯の上にのせても同様に効果が失われることがあります。酵素であるナットウキナーゼは、70度以上で失活してしまいます。炊きたてのご飯の温度は80度以上になることもあるため、ナットウキナーゼが損なわれやすい状態にあると言えますね。

納豆ご飯として食べたい場合、納豆をのせてから食べ頃の温度まで冷ますのはやめておきましょう。ご飯を盛り付けてからしばらく待ち、食べられる適温になってから納豆と組み合わせれば、ナットウキナーゼの活性を損なうことなく食べられます。

 

生卵による栄養吸収阻害に注意

納豆に醤油と生卵、ネギを加えて食べる、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。朝食の定番とも言える組み合わせですが、生卵は生卵自身の栄養や、納豆に含まれる一部の栄養の吸収を阻害することが分かっています。

注意すべきは、生卵に含まれるアビジンというたんぱく質です。このアビジンは、ビタミンの一種であるビオチンと結合し、吸収阻害を起こすことで知られています。

ビオチンは納豆、そして卵にも含まれるビタミンB群の栄養素です。糖質やアミノ酸、脂質の代謝をサポートするほか、皮膚、爪、髪の健康を維持する働きも担っています。

不足すると皮膚炎や脱毛などの症状を引き起こし、食欲不振やうつ状態を招くことも。

生卵の摂取によりすぐさまビオチン不足になる、というわけではありませんが、折角のビオチンの供給源として優秀な納豆と卵のメリットが、生卵の状態で合わせることにより失われるのは惜しいですよね。

また、生卵にはたんぱく質の消化酵素である「トリプシン」の活性を阻害するように働く成分、オボムコイドが含まれています。生卵の状態で摂取することにより、卵自身のたんぱく質の吸収率が大きく低下することが報告されています出典[5]。このオボムコイドのトリプシン阻害により、納豆のたんぱく質の吸収率にも影響を与える場合があります。

良質なたんぱく質の供給源として、納豆や卵の摂取を考えている場合にも、生卵と合わせるのは避けた方が良さそうです。

 

飲み合わせに注意!飲んでいる薬をチェックしよう

最後に、薬との飲み合わせについて一点、注意しておくべきことがあります。薬の中には、食べ物の栄養成分の影響を受け、効果が減弱したり、逆に強まりすぎたりするものが存在します。

納豆との組み合わせにおいては「ワーファリン」という薬に注意しましょう。

ワーファリンは血栓を溶解するための薬です。納豆には血栓溶解効果のある「ナットウキナーゼ」が含まれていますが、一方でビタミンKも豊富に含まれています。ビタミンKはワーファリンの血栓溶解作用を減弱させ、薬の効きを弱くしてしまいます。

加えて、納豆に含まれる納豆菌が、大腸でビタミンKを産生するように働いているため、大量のビタミンKによるワーファリンへの影響は避けられません。

ワーファリン系の薬を飲んでいる場合には、摂取を避け、薬や他の食品での健康管理を行うようにしましょう。

 

まとめ

ナットウキナーゼや納豆菌など、様々な有効成分を含む納豆は、毎日の摂取を継続することで血流改善や脂肪燃焼、快眠など、あらゆる健康効果が得られます。

これらの効果を得るために、摂取のタイミングとして、寝る前の納豆を習慣付けてみてはいかがでしょう?1パックの納豆を継続することで、より高い血流改善効果や、睡眠の質を改善する効果が期待できます。

安価で調理も不要であり、継続しやすい納豆を、是非取り入れてみてください。

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