ケトジェニックダイエットって?効果と食事法を徹底解説
2023年12月26日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

ケトジェニックとは?

ダイエットを行うにあたり、どのように食事管理を行うべきかを考えることは非常に重要です。その際の選択肢として「ケトジェニック」という食事法を紹介しましょう。

カロリー制限や糖質制限、脂質制限など、ダイエットにおいては総カロリーや特定の栄養素を制限する方法がよく知られています。ケトジェニックダイエットもそのひとつですが、糖質以外の栄養素も厳密に調整する必要があるなど、糖質制限よりもやや難易度が高くなっています。

しかし、継続できれば体脂肪燃焼効果や食欲抑制効果など、糖質制限からでは得られにくい、ダイエットに嬉しい作用が期待できることもまた事実。
まずはケトジェニックがどのような仕組みでダイエットに繋がるのかについて、糖質制限との違いに注目しつつ解説していきましょう。

糖質量を減らし、脂質量を増やした食事法

ケトジェニックにおいて、意識するのは「糖質を極端に減らし、脂質を増やす」ということです。

糖質制限ダイエットにおいては、糖質を減らして、たんぱく質や脂質でエネルギー補給を行います。一方のケトジェニックにおいては、糖質、たんぱく質、脂質の摂取バランスを厳密に定める必要があります。

糖質制限ダイエットの継続が難しいと感じている場合には、このケトジェニックダイエットを取り入れ、糖質以外の栄養素の管理にも挑戦してみましょう。脂質やたんぱく質を含めた、三大栄養素のバランスをより厳密に管理することで、ダイエットの継続が容易になり、成果も出やすくなるでしょう。

 

普段の食事からどのくらい変わる?エネルギー産生栄養素バランスの比較

日本人の食事摂取基準において、糖質、たんぱく質、脂質のエネルギー産生栄養素の摂取割合が目標量として設定されています。これによると、それぞれ糖質50~65%、たんぱく質13~20%、脂質20~30%となっています出典[1]

1日2000kcalの食事を想定する場合、糖質を250~345gほど食べてよいことになります。ご飯100gの糖質が35gほどであるため、通常であれば200gのご飯を朝昼晩と食べ、さらにイモ類や果物を摂取しても、この範囲に収めることが可能です。

一方、ケトジェニックにおけるエネルギー産生栄養素バランスの目安は、糖質5~10%、たんぱく質30~35%、脂質55~60%ほどとなっています出典[2]
1日2000kcalの食事では、摂取できる糖質は25~50gほど。お米やパンなどの糖質食品を摂取していてはあっという間に50gを超えてしまうため、基本的に穀類やイモ類は厳禁です。

主食やイモ類を完全に絶ち、脂質量を普段の3倍ほどに増やして食べる。脂っこく、かつ甘味のない料理を毎日食べることになる、というのは想像しやすいのではないでしょうか。

 

ケトジェニックでなぜ痩せる?

糖質ほぼゼロ、脂質たっぷりの食事で、どうして痩せるのでしょう。

たとえば糖質制限ダイエットにおいて糖質を制限する一番の理由は、血糖値が上がることにより分泌される「インスリン」というホルモンを減らし、体脂肪の合成を抑えるためです。

ケトジェニックダイエットにおいても糖質を制限するため、インスリンの分泌は押さえられ、体脂肪を増やしにくくする効果が期待できます。しかしもう一つの重大な効果として「ケトーシス」により体脂肪を燃焼しやすくする、というものがあるのです。

私たちの体は通常、糖質からエネルギーを作り出しています。しかし糖質が極端に不足した状況では、体の代謝が「ケトーシス」と呼ばれる状態に切り替わります。

ケトーシスにおいて、使われるのは糖質ではなく脂質です。脂質から「ケトン体」と呼ばれるアセト酢酸やβ-ヒドロキシ酪酸といった物質を作り出し、これらによってエネルギーが生成されるのです出典[3]なお、この脂質には食事由来のものだけでなく、体脂肪も含まれます。

ケトーシス状態に体を切り替えることで、摂取した脂質だけでなく、体脂肪の燃焼も促し、痩せやすい体を作る。これがケトジェニックダイエットの仕組みです。

 

ケトジェニックはダイエットに効果的!3つのメリット

このように、徹底した食事管理により体の代謝方法を変え、体重を落とすというのがケトジェニックダイエットの概要です。ではダイエット法としてケトジェニックを選ぶことには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょう。

ダイエット効果が出やすい

ケトジェニックダイエットの一番のメリットは、なんといっても痩せやすいことにあります。

まずケトジェニックダイエットにおいて欠かせないのは、極端な糖質制限です。1日50g以下という厳しい制限のもとでの食事を続けることで、インスリンの分泌を低く抑えることができます。これにより体脂肪が増加しにくくなり、太りにくい体になることが期待できます。

また、十分な量の脂質を摂ることで、ケトーシスによるエネルギー生成を効率よく行えるようになります。これにより1gあたり9kcalという高エネルギーの脂質が、体脂肪として体に溜まるのを防ぐことができます。また、ケトーシスにより体脂肪もエネルギーとして使いやすくなるため、脂肪燃焼効果が期待でき、痩せやすい体作りにも役立ちます。

極端な糖質制限と、十分な脂質摂取を徹底することにより、太りにくく痩せやすい体を作ることができるのです。

 

食欲のコントロールがしやすい

ケトジェニックダイエットにおいては、糖質を極端に制限しているため、血糖値が急激に上がったり、インスリンが大量に分泌されたりといったことが起こりません。

インスリンの大量分泌により血糖値が急に下がると、体はエネルギー不足と判断して空腹感を覚えます。血糖値の乱高下は、体脂肪の蓄積と同時に食欲の増加を招く、ダイエットの大敵であると言えます。

ケトジェニックダイエットにより血糖値の乱高下をなくすことで、食欲を抑える効果が期待できますね。

また、体の代謝が脂質をエネルギー源として活用する方向に切り替わる「ケトーシス」の状態では、食欲を増進させるホルモンであるグレリンの分泌量が低下することが分かっています出典[4]これにより食欲のコントロールが容易になり、空腹による心理的ストレスを和らげる効果も得やすくなります。

糖質制限もケトジェニックも、始めてすぐには体重が落ちやすく、効果を実感しやすいダイエットです。しかしケトーシスによる食欲抑制効果を取り入れれば、ストレスを抑えて、空腹に悩まされにくい状態でのダイエットを継続できる可能性がありますね。

 

エネルギー不足に陥りにくい

糖質制限ダイエットにおいては、エネルギーのもととなる糖質を制限することで、集中力の低下や気分の落ち込みを経験することがあります。しかしケトジェニックダイエットでは、こうしたエネルギー不足の問題が起こりにくいのです。その理由は、ケトン体のエネルギー効率の良さにあります。

私たちがエネルギーとして用いるのはアデノシン三リン酸(ATP)です。脂質由来のケトン体は、糖質由来のブドウ糖と比較してより多くのATPを生成するのです。

具体的には、グルコース100gが8700gのATPを生成するのに対し、ケトン体であるアセト酢酸100gから生成できるATPは9400g、β-ヒドロキシ酪酸100gからは10500gとなっています出典[3]このようにケトン体はエネルギー効率が良いため「スーパー燃料」とも呼ばれています。

ケトン体は心臓や筋肉、腎臓など、あらゆる組織において使用できます。血液脳関門を通過するため、グルコースに替わるエネルギーとして脳でも使うことができ、糖質制限において起こりがちな、集中力の低下や気分の落ち込みなどのリスクが少ないことも特徴です出典[3]

ケトーシスにおいては、体はより少ないエネルギーで活動することができるようになります。倦怠感や集中力の低下を防止し、活力を高めたまま減量するために役立ちそうですね。

 

注意!ケトジェニックにおける4つのデメリット

ダイエットの効果をより高め、心身のストレスを軽減しながら続けるにおいて、ケトジェニックは最適な選択肢であるように考えられます。
しかし、食事管理を徹底しなければケトーシスの効果が得られないことに加え、ケトジェニックダイエットには課題もいくつか存在しています。

以下ではそうした、ケトジェニックダイエットを続けるにあたって、注意しておきたいデメリットを4つ解説します。

筋力トレーニングのパフォーマンスが向上しにくい

体内で利用できる糖質が極端に制限されると、体はケトーシスに入るより前に、たんぱく質から糖質であるグルコースを作り出そうとします。この仕組みは「糖新生」と呼ばれています出典[2]

しかしこの代謝によって作られるのはあくまでもグルコースであるため、脂質をエネルギーとして使ったり、体脂肪を燃えやすくしたりといった効果は得られません。

このように、糖新生でエネルギー生成が盛んに行われる状況では、脂質によりエネルギーを生み出す「ケトーシス」が働きにくくなるのです。

しかし筋力トレーニングによる筋肥大には、十分な糖質とたんぱく質の摂取が不可欠です。パフォーマンス向上のために必要な栄養素と、ケトーシスのために必要とする栄養素が異なるため、両方を並行して進めるのは効率が悪いと言えるでしょう。

ケトジェニックの食事を4日間取り入れた後にサイクリング運動や走行運動を行ったところ、通常食での運動時と比較して、サイクリング時の筋力が7%、走行距離が15%ほど減少したという研究結果も報告されています出典[5]

このように、短期間のケトジェニックでも運動効率を損なう場合があります。トレーニングのパフォーマンスを重視する場合には、ケトジェニックダイエットは避けた方が良いでしょう。

 

ケトーシス入りのタイミングで不調をきたしやすい

糖質を極端に減らした生活を数日続けることで、体は糖質ではなく脂質をエネルギーとして使うよう切り替わります。この「ケトーシス入り」のタイミングで、倦怠感や吐き気、下痢など、複数の症状が生じる場合があります。

これらのうち、吐き気や下痢は体内の糖質が枯渇したことにより、糖質の持つ保水能力が弱まり、体から水分が多めに失われることが原因のひとつであると考えられています出典[3]

ケトーシスにより水分が一気に失われると、体重も数値の上では一気に落ちたように見えます。しかしここで失われているのは脂肪ではなく水分がほとんどであり、そのために生じた不調は、ミネラルを含んだ水分の補給により回復できます。ナトリウムやカリウム、マグネシウムといった、体内の多量ミネラルを積極的に摂取するようにしましょう。

また、倦怠感については単純なエネルギー不足が挙げられます。ケトーシスに切り替わったばかりの頃は、まだエネルギーを十分に精製できていません。これはケトン体からのエネルギー生成が潤滑に行われるようになることで改善されます。根気よくケトジェニックダイエットを続けることが重要です。


長期の継続で、アシドーシスや体臭、脂肪肝などの副作用も

ケトジェニックダイエットを長期にわたり継続していると、蓄積したケトン体により、様々な副作用が現れる場合があります。

たとえばケトン体は酸性の物質であり、蓄積すると体内のpHが低下してしまいます。体内のpHは精密にコントロールされていますが、このコントロール機能に追い付かないほどのケトン体が高濃度で蓄積すると、アシドーシスと呼ばれる状態を引き起こすことがあります。

ケトン体によるアシドーシスは「ケトアシドーシス」と呼ばれます。ケトアシドーシスにおいては、口渇、多飲、多尿、体重減少、全身倦怠感などが引き起こされます。悪化すると呼吸困難や嘔吐、意識障害などが生じることもある危険な状態です。

また、ケトン体が血中において蓄積されることにより、汗や息などに独特のにおいが生じる場合があります。高濃度のケトン体による体臭は甘酸っぱく、果物の熟しすぎた、腐りかけのにおいと言われることもあります。

他にも、高脂質食を続けることによる脂肪肝やLDLコレステロール値の上昇、食物繊維の摂取源である穀類不足による便秘、また尿結石や腎結石のリスクの上昇、といった悪影響が確認されています出典[3]

 

1年以上の継続には向かない

ケトジェニックダイエットの継続によるケトン体の蓄積については、重篤な症状を生じることはなく安全である、という意見もあります。

臨床上、問題となるアシドーシスは、糖尿病による「糖尿病性ケトアシドーシス」がほとんどです。ケトジェニックダイエットにおけるケトーシスでは、ケトン体は血液のpHを変化させることなく低濃度で生成されるため、安全であるとも報告されているのです出典[3]

しかし一般的に、ケトジェニックダイエットは長期にわたり継続するものではなく、半年から1年程度で通常の食事に戻すことが適切であると言われています。そのため、想定以上の長期間、ケトジェニックダイエットを行うと、体内のpHバランスを崩すおそれがあると考えられます。

短期的な食事によるケトーシスであれば、体へのダメージは生じないと報告されています出典[6]ダイエットにより健康を害さないためにも、最長で1年を目途に通常の食事へと切り替える必要があるでしょう。

仮にケトジェニックダイエットをストレスなく続けられたとしても、「ずっと」続けられるものではないという点は注意が必要ですね。

 

何をどれだけ食べればいい?栄養素の計算方法について解説

ケトジェニックダイエットを成功させるためには、ケトーシスを引き起こすように栄養バランスを調節しなければなりません。ケトジェニックダイエットのメリットとデメリットを理解した上で、効率的な減量のために挑戦したいと考える場合には、糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素の配分、全てに気を配る必要があります。

以下では、三大栄養素を摂取するにおいて、注意すべきポイントを解説します。

糖質

ケトジェニックダイエットにおいては、糖質を1日50g以下に留めることが必要です。1日50g以下にまで糖質を制限しないと、体は代謝をケトーシスに切り替えることができないのです出典[7]

1日100~150g程度の緩い糖質制限では、インスリンの分泌量を抑える効果しか得られません。この状態で脂質を増やした食事をしても、体脂肪として蓄積されるだけになってしまうため、主食は徹底して制限するようにしましょう。

なお、野菜や調味料からも、私たちは糖質を摂取しているのです。たとえばキャベツ100gには3.5g、大根100gには2.9g、にんじん100gには5.8g、味噌大さじ1杯には1.5~1.8gの糖質が含まれています。

これらからの糖質を合計するだけで、50gギリギリに達してしまいます。糖質食品を摂る余裕はないため、穀類、イモ類、砂糖類は厳禁、との意識を保ちましょう。

なお、一度糖質を極端に制限することで切り替わったケトーシスは、再び糖質を摂取するとすぐに糖質を代謝するエネルギー生成方法に戻ります。そのため、減量の停滞期に推奨されることがある「チートデイ」の活用も、ケトジェニックダイエットにおいては特に慎重になるべきと言えるでしょう。

 

脂質

極端に制限した糖質の分、不足したエネルギーは基本的に脂質で補います。

脂質の供給源としては、脂身の多い肉類、ブリや秋穫りのカツオなどの高脂質な魚類、チーズやバター、植物油脂などが挙げられます。

現代の食生活において、脂質を摂取することはさほど難しくありません。しかしコンビニやスーパー、外食で口にする高脂質な食事には、脂質と同時に糖質も大量に含まれています。そのため、甘いホイップクリームやチョコレートクリームを使った、ショートケーキやドーナツ、菓子パンなどはもちろん厳禁です。とんかつなどの揚げ物の衣にもパン粉が使われているため、多量の摂取は避けるべきです。

糖質を制限しつつ脂質の量を増やすには、高脂質食品を活用しつつ、糖質を摂らないようなメニューを考え、自炊する必要があります。

 

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂り過ぎに注意

また、ただ脂質ばかりを摂るというのではなく、その質にも注意したいところです。

たとえば牛肉や豚肉、パーム油などの植物油脂に含まれる飽和脂肪酸は、多量に摂取することでLDLコレステロールを増加させます。過剰なLDLコレステロールが酸化すると酸化ストレスとなり、血管など体の組織にダメージを与えることも。脂肪肝や脂質異常症のリスクを減らすため、これらの脂質ばかりに偏らないようにしましょう。

さらに、バターの代用品として用いられている安価なマーガリンにおいては、トランス脂肪酸の摂取に注意が必要です。トランス脂肪酸は海外で既に規制が始まっている脂肪酸であり、多量摂取により心血管疾患のリスクが上昇することが知られています。

ちなみにバターや牛肉など、天然の食品にもトランス脂肪酸は含まれていますが、こうした天然由来のものは心血管疾患に影響を与えにくいと報告されています。
人工的に生じるトランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどに含まれています。近年では企業努力により、トランス脂肪酸の配合量が少ないものも売られているため、そうした食品を選ぶようにすると良いでしょう。

 

良質な脂質の摂取で血中脂質を良好に

ケトジェニックダイエット中に摂りたい脂質として、MCTオイルをおすすめします。

MCTオイルとは、ココナッツオイルなどから中鎖脂肪酸(MCT)だけを抽出したオイルのことです。この中鎖脂肪酸はエネルギーに変換されやすいという性質を持つため、体脂肪として蓄積されにくく、ケトン体の生成を促すよう作用します。ケトーシスの効率を高めるため、是非このMCTオイルを活用してみてください。

また、MCTを豊富に含むココナッツオイルも同様に、エネルギー源として活用しやすい脂質です。常温で固体であるため、バターのような感覚で用いることができます。

さらに、抗酸化作用を持つω-3系脂肪酸を摂取できるアマニ油やエゴマ油もおすすめしたい脂質です。赤身魚にもω‐3系脂肪酸であるEPAやDHAが含まれています。
ω‐3系脂肪酸は加熱に弱いため、食べる際には生でサラダにかける、刺身で食べる、など工夫してみましょう。

便秘解消効果があり、LDLコレステロールを減らす効果のあるオリーブオイルなどもおすすめの脂質です。酸化されにくいため、加熱調理にも向いているのも嬉しいポイントですね。

これらの脂質を活用し、血中脂質を良好に保ちましょう。

 

たんぱく質量

糖質を減らし、脂質を増やすことが基本となるケトジェニックダイエットですが、その中でもたんぱく質の扱いには、ダイエットの状況によって、摂取量の目安が少々異なります。

たとえば筋力トレーニングを行っている場合、たんぱく質の摂取量を減らす必要はなく、トレーニングの強度に応じて体重1kgあたり最大3gまで増やすことができる、と言われています。

一方、運動を積極的に行わない場合には、たんぱく質摂取量は体重1kgあたり2g未満、具体的には1.6~2.0gほどに適度に制限するのが望ましいと考えられています出典[3]出典[8]

たんぱく質にある程度の制限が必要な理由は、たんぱく質からグルコースを作る機能「糖新生」にあります。糖新生が活性化するとケトーシスによる脂質の消費が行われにくくなるため、たんぱく質を「エネルギー源」として大量に摂取することは控えなければいけません。

もちろん、ダイエット中に失われがちな基礎代謝や免疫力を維持し、健康的な減量を行うためには、たんぱく質の摂取は欠かせません。しかし、あくまで糖質の代わりに摂取するのは「脂質」であり、たんぱく質で減らした糖質分を補おうとはしないことが重要です。

 

こう食べよう!食事管理のコツ5選

以上、三大栄養素のバランスについて、どの程度制限しどのような形で食べるべきかを簡単に紹介しました。
極端な糖質制限と、良質な脂質の確保、適度なたんぱく質。これらを実現した食事を続けるには、強い根気と意思、そして様々な工夫が必要です。

以下ではそんなケトジェニックダイエットの実践を少しでも容易にするため、日々の食事に取り入れやすい工夫や注意点について5点ほど紹介します。
三大栄養素のバランスは分かったけれど、具体的にどんな食べ物を選べばいいのか迷ってしまう、という場合に、是非参考にしてみてください。

野菜やきのこ、海藻から食物繊維を摂取する

糖質食品をゼロにする生活を続けていると、不足をきたすのが意外にも食物繊維です。
白米やパスタなどの穀類、サツマイモや里芋などのイモ類から食物繊維を供給できなくなるため、ケトジェニックダイエットにおいては食物繊維が不足しがちです。

食物繊維が不足し、かつたんぱく質や脂質を豊富に摂取する状態では、腸内の悪玉菌が増えやすくなり、腸内環境の悪化を招いてしまいます。その結果、一部のビタミンやミネラル類の吸収率が低下したり、便秘や肌荒れを引き起こしたりすることも。

そのため、野菜や豆類、きのこや海藻などを食事に取り入れ、食物繊維の不足を防ぐことが重要です。

大豆などの豆類には、良質なたんぱく質と脂質が豊富です。野菜は食物繊維の他にも、ビタミンやミネラルの供給源として優秀です。またきのこや海藻は糖質がほぼ含まれていないため、ケトジェニックダイエット中でも安心して食べることができますね。

糖質量に注意!控えめにしたい野菜類

野菜を食べる際には、糖質量に注目してみましょう。カボチャなどは比較的糖質が多いため、ケトジェニックダイエット中は控えるべきです。

一般によく食べられている野菜のうち、糖質量が比較的多いものを以下に紹介します。

【食品100g当たりに含まれる利用可能炭水化物(糖質)量(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)】出典[9]

食品糖質量(g/100g)
カボチャ17.0
れんこん14.2
玉ネギ7.0
ニンジン5.8
えだまめ4.7

カボチャやれんこんに含まれる糖質はかなりの量になるため、イモ類と同様に食べないよう意識した方が良いでしょう。玉ネギやニンジンなどの根菜類も糖質がやや多いため、食べすぎに注意が必要です。

 

おすすめ!取り入れたい栄養豊富な野菜類

低糖質で日々の食事に取り入れやすい野菜として、以下のものがおすすめです。

【食品100g当たりに含まれる利用可能炭水化物(糖質)量(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)】出典[9]

食品糖質量(g/100g)
小松菜0.3
緑豆もやし1.3
たけのこ1.4
レタス1.7
きゅうり2.0
はくさい2.0
アスパラガス2.1
ブロッコリー2.4
なす2.6
だいこん2.9
トマト3.1
カリフラワー3.2
キャベツ3.5

緑黄色野菜であればほうれん草に小松菜、トマトにブロッコリー、淡色野菜であれば白菜やキャベツ、レタスに大根などが糖質の少ない野菜として活用できます。

もやしなど、料理のかさを増やせるものを加えることもおすすめです。アスパラガスやタケノコなど、よく噛んで食べられる野菜を加えることで満足感を高める、などの工夫も有効でしょう。

低糖質で食物繊維が豊富なこれらの食品たちを活用し、ケトジェニックダイエットを続けやすくしましょう。

 

間食にはチーズやナッツ類を選んで

ケトジェニックは比較的食欲のコントロールがしやすいダイエット法であり、間食は必ずしも必要ではありません。しかしストレス解消や栄養補給のため、適度に取り入れることでダイエットを続けやすくなります。

もちろん、一般的な間食として食べられがちな、甘い洋菓子や揚げ物のスナック菓子、焼き芋や果物など、糖質を豊富に含むものをおやつに選ぶのは厳禁です。

ケトジェニックダイエット中の適切なおやつとして、良質なたんぱく質と脂質を摂取できる食品に注目してみましょう。良質なω-3系脂肪酸を摂取できるナッツ類、カルシウムの摂取源としても活用できるチーズや無糖ヨーグルト、その両方を摂取できる小魚アーモンドなどを活用してみましょう。

空腹感を紛らわせることを目的としたい場合には、固形物でありたんぱく質含有量の高い小魚アーモンドがおすすめです。たんぱく質食品を食べると、消化管からコレシストキニン(CCK)というホルモンが分泌され、食事に対する満足感を高めるよう働いてくれます。また、よく噛んで食べることでヒスタミンの分泌が促され、満腹中枢を刺激するため食欲の抑制に繋がりやすいと言えるでしょう。

 

果物ならアボカドを

ケトジェニックダイエット中は、一般的な「甘い」果物は厳禁です。ただし「果物の王様」と呼ばれるアボカドは、ケトジェニックにおいても摂取できる優れた果物です。

アボカドの糖質は100gあたりわずか0.9g。一方の脂質は26.3gも含まれています。また、アボカドの脂質の大半はオレイン酸という一価不飽和脂肪酸であり、飽和脂肪酸はほとんど含まれていないことも魅力の一つです。

オレイン酸はオリーブオイルに含まれている脂肪酸です。過剰に増えたLDLコレステロールを減らす働きがあることで知られています。肉類や乳製品などから飽和脂肪酸を摂取する機会がどうしても増えるケトジェニックダイエットにおいては、オレイン酸を含むアボカドは非常に相性の良い食品であると言えるでしょう。

脂質量を増やすための取り組みとして、間食として、是非アボカドを取り入れてみてください。


ドレッシングに注意

サラダ類を食べるにおいて、気を付けたいのがマヨネーズやドレッシングなどに含まれる糖質です。

大さじ1杯のドレッシングにつき、胡麻ドレッシングやフレンチドレッシグであれば1.4~1.7gほど、ノンオイルタイプの和風ドレッシングであれば2.4gほどの糖質が含まれています。

毎食のサラダにドレッシングをたっぷりかけて食べていると、それだけで無視できない糖質量を摂取することになります。

1日50gという過酷な制限をクリアするためにも、こうした市販のドレッシングの利用には十分注意しましょう。

なお、胡麻ドレッシングやシーザーサラダドレッシングよりも、ノンオイルやカロリーカットを謳ったドレッシングの方が、味わいを良くするために多くの糖質を使う傾向にあります。そのためケトジェニックダイエット中には、こうしたノンオイルタイプやカロリーカットのものを避け、通常のドレッシングやマヨネーズを適量使うようにしましょう。

また、オリーブオイルやMCTオイル、アマニ油などに味わいのあるハーブソルトを混ぜて手作りのドレッシングを作ることも有効です。ドレッシングで糖質を摂りたくないという場合には、是非活用してみてください。

 

強い空腹が続く場合には、三大栄養素のバランスや水分量を見直そう

ケトジェニックダイエットを始めてすぐ、体の代謝がケトーシスに切り替わったばかりの頃であれば、生じる空腹感はある程度我慢すべきです。ケトーシスにより脂質から十分なエネルギーが生成できるようになれば、空腹感も次第に収まってきます。

しかし、強い空腹感が続く場合には、三大栄養素のバランスがケトーシスに適したものになっていない可能性があります。衣をたっぷりつかった揚げ物が多かったり、カボチャやゴボウなどの糖質が多めの野菜をよく使っていたりすると、1日の糖質量が50gを超えてしまうことも。

1日の糖質が50gをオーバーしていないか、脂質量は十分か、たんぱく質を必要以上に摂りすぎていないか、など、食事の見直しを行う機会を作りましょう。

また、糖質には保水効果があるため、ケトジェニックダイエットにより糖質が枯渇すると、体の水分が一気に失われます。水分不足による喉の渇きにより強い空腹感を覚えている可能性もあるため、日頃から水などで水分補給を行うようにしましょう。

ケトジェニックダイエットにおいて、水分の制限はありません。便秘を解消したり脂肪の燃焼効率を上げたりするために、十分な水分を摂れるようにしておきましょう。

 

1日の食事例

ケトジェニックダイエットの食事を実際に組み立てるにおいては、以下のことを最低限守るようにしましょう。

  • 主食にある穀類と、イモ類は厳禁
  • カボチャやニンジンなど、高糖質の野菜もできるだけ控える
  • 味付けは砂糖などの糖類からではなく、バターやオイルなどの脂質で行う
  • 主菜だけでなく、副菜にも卵や大豆製品を取り入れて脂質とたんぱく質を摂取

これらを満たす食事例として、朝食、昼食、夕食の3パターン、およびコンビニでの購入例を紹介しましょう。ケトジェニックダイエットにおけるメニューの参考として、是非ご活用ください。

朝食

・ひき肉入りオムレツ
・アボカドのチーズ焼き
・キノコとアスパラガスのバターソテー

良質なたんぱく質食品であるオムレツに、高脂質なひき肉を合わせることで、脂質の含有量を一気に引き上げます。

オレイン酸の供給源としてアボカドを使うことで、チーズやひき肉に含まれる飽和脂肪酸の悪影響を防ぎましょう。

キノコやアスバラガスは、噛み応えのある食品として、またビタミンやミネラルの供給源としても役立ちます。味付けは糖質を含んだドレッシングではなく、バターと塩などシンプルな調味料で行うのがポイントです。

 

昼食

・牛肉と小松菜のカシューナッツ炒め
・枝豆と大豆のマリネ
・クリームチーズとトマトのカプレーゼ
・ブロッコリースプラウトの和え物

ナッツ炒めは肉類と相性の良い料理です。筋力トレーニングを行っている場合には、筋肉の合成効率を高めるために牛肉がおすすめです。飽和脂肪酸の量が気になる場合には、鶏もも肉を活用しましょう。

枝豆や大豆は良質なたんぱく質と脂質の供給源としておすすめです。マリネにすることでさらに脂質を増やせます。

通常のカプレーゼに使われるモッツアレラチーズは低脂質食品のため、ケトーシスを誘導するにはやや不適切です。ケトジェニックダイエットに適したカプレーゼにするため、クリームチーズを用いて脂質量を増やしましょう。
またトマトには、活性酸素を除去する抗酸化物質の「リコピン」が豊富に含まれています。酸化ストレスを減らす効果の高いメニューであると言えますね。

ブロッコリーにも、ビタミンCやスルフォラファンなどの抗酸化物質が豊富に含まれています。これらは通常のブロッコリーよりも、新芽であるスプラウトの方が含有量が高いため、ブロッコリースプラウトの形で食べるとより抗酸化効果が期待できます。

体内で発生した活性酸素は、脂質と結びつくことで過酸化脂質という物質に変わり、体に様々な悪影響をもたらします。高脂質食による体へのダメージを防ぐため、抗酸化物質を含む野菜を積極的に取り入れてみましょう。

 

夕食

・サケのバターホイル焼き
・ニンジンしりしり
・わかめスープ
・キムチ納豆

サケからは良質な脂質であるω-3系脂肪酸と、抗酸化物質であるアスタキサンチンを摂取できます。アスタキサンチンは加熱に強い抗酸化物質であるため、ホイル焼きにしても活性酸素を除去する効果を十分に得ることができます。

ニンジンに含まれるβカロテンは、ビタミンAのもととなる物質であり、脂溶性です。油で炒めて食べることにより吸収率がぐんと高まるため、卵を加えた炒め料理であるニンジンしりしりの形で食べることで、より効率よくβカロテンを摂取できます。
ただし、ニンジンはカボチャほどではありませんが、糖質がやや多めの野菜でもあります。食べ過ぎには注意しましょう。

わかめスープにはネギやニラ、えのきなどを加えることで、ビタミンやミネラル類をさらに効率よく摂ることができます。海藻類の供給源として、手軽に容易できるのも魅力ですね。

大豆製品かつ発酵商品である納豆からは、たんぱく質と脂質、そして善玉菌である納豆菌を摂取できます。キムチにも乳酸菌などの善玉菌が含まれており、これらの発酵食品を合わせて摂取することで腸内環境を整え、便秘や肌荒れを改善する効果が期待できます。

 

スーパーやコンビニの惣菜例

・ローストビーフ
・ほっけの塩焼き
・味付きゆで卵
・カマンベールチーズ
・コールスローサラダ

スーパーやコンビニでの総菜の選び方として、シンプルな材料で調理されたものを探すようにしてみましょう。

牛もも肉を使ったローストビーフや、ほっけを塩で味付けして焼いた料理、茹で卵や温泉卵、などであれば、調味の段階で糖質が入る余地がないため、良質な脂質とたんぱく質の供給源として活用しやすく、おすすめです。

ただし、これらの食品に偏った食事では、たんぱく質の過剰摂取が起こりがちです。スーパーやコンビニで脂質のみが豊富な料理を探すのはかなり難しいため、これらの総菜を購入して持ち帰り、自宅で脂質をさらに強化することをおすすめします。MCTオイルやバターなどを加えて食べることで、糖質、脂質、たんぱく質のバランスを保ちやすくなるでしょう。

なお、スーパーやコンビニには健康志向のサラダが売られていますが、合わせて売られている1食分の個包装になったドレッシングには糖質が多めに含まれています。主菜への脂質強化と合わせて、ドレッシングも手作りすることでさらに糖質を制限できるようになるでしょう。
 

まとめ

糖質をできるだけカットするという糖質制限ダイエットとは異なり、ケトジェニックは糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素、全ての摂取にそれぞれ注意を払う必要がある、少々難易度の高い食事法です。

しかし、そうした綿密な食事への工夫に見合うだけのダイエット効果が得られ、食欲のコントロールもしやすく、継続しやすいというメリットもあります。
体の代謝を切り替えるという、大きな変化をもたらすダイエットのため、1年以上の継続は推奨されていませんが、工夫次第で糖質制限ダイエット以上の効果を出すことができるでしょう。

糖質制限ダイエットが上手くいかなかった方、食欲をコントロールしつつダイエットを成功させたい方は、是非本記事を参考に、ケトジェニックダイエットに挑戦してみてください。

 

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