脂質は太る?正しい食べ方と食品の選び方について解説
2023年12月26日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

脂質はなぜ太るのか?

体重管理やボディメイクのため、脂質たっぷりの洋菓子や揚げ物は我慢している。そんな方も多いのではないでしょうか。ダイエット中であったり、健康に気を遣っていたりする方ほど、脂質を多く使った料理を避ける傾向にありますね。

脂質を食べると太る、というのは多くの方が考えておられることでしょう。実際、脂質にはそのような側面があります。ではなぜ、脂質は太りやすいと言われるのでしょうか。

理由1.エネルギー密度が高い

脂質と糖質、たんぱく質の三大栄養素は「エネルギー産生栄養素」とも呼ばれ、私たちの体内で体を動かすエネルギーとして機能しています。

このエネルギー効率は、三大栄養素によってそれぞれ異なります。糖質とたんぱく質のカロリーは1gあたり4kcalですが、脂質は1gあたり9kcal。脂質は糖質やたんぱく質よりも、倍以上のエネルギー密度を持つことが分かります。

このエネルギー密度の差は、車のガソリンで考えると分かりやすいかもしれません。1Lで20km走行できる車と、1Lで35km走行できる車を想像してみてください。この場合、「燃費が良い」のは1Lで35km走行できる車であり、少ないガソリンでより多くの距離を走れるこちらの車の方が重宝されますよね。

しかし食事においては、この「燃費の良さ」こそが「太りやすさ」であるとも言えます。少ない摂取量でより多くのエネルギーを生み出す脂質は、エネルギーの摂りすぎを引き起こしやすいのです。

余ったエネルギーは中性脂肪になり、体脂肪に蓄えられることになります。この「燃費の良さ」こそ、脂質が太りやすいと言われる大きな理由のひとつです。

 

理由2.満足感を得るまでに時間がかかる

糖質やたんぱく質と比較すると、脂質の消化・吸収速度は遅く、エネルギーとなるまでに時間がかかります。糖質やたんぱく質よりも遅れてエネルギーになり、体内で長持ちするため、高脂質食品の方が、高糖質食品よりも一般に「腹持ちが良い」と言われますね。

そうしたメリットの半面、高脂質食品では満足感をすぐに得ることが難しいというデメリットもあります。十分なエネルギーを脂質から摂取しているにもかかわらず、そのエネルギーがなかなか体の満足感に繋がらないのです。

特に早食いの人においては、摂取したエネルギー量と体が感じる満足感とがすぐには釣り合わず、もっとエネルギーが必要だと脳が認識し、必要以上に脂質を摂りすぎてしまう、ということが起こりやすくなります。

エネルギー効率が高く、長持ちする脂質ですが、消化・吸収の遅さから食べ過ぎを起こしがちである点に注意が必要です。

 

理由3.糖質や塩分との組み合わせにより食欲を刺激する

脂質を摂りすぎる理由はもう一つあります。それは、砂糖や食塩と組み合わせることによって生まれる、強力な食欲増加の効果です。

高脂肪かつ高糖質の食品を食べると、ドーパミンなど幸福感をもたらす神経伝達物質が増加しやすいことが分かっています。その幸福感がクセになり、食欲が増し、より食べ過ぎてしまうのです。また脂質を含む食品に塩分を加えることで満足感を得る機能が鈍り、より多くの脂質やエネルギーを摂り過ぎてしまうことも判明しています。

健康な成人男女を対象に、様々な塩分濃度と脂肪濃度の食事を食べてもらったところ、1%以上の濃い塩分濃度では脂肪分が10%以上にならないと満足感を得にくくなったという結果が得られました。また、食塩濃度を上げるとエネルギー摂取量が11%増加したとも報告されています出典[1]

これら脂質、糖質、食塩の組み合わせは、私たちが日常、いたるところで目にする食べ物でもあります。フライドポテトやスナック菓子、ラーメンにチャーハンなどはこの3つの組み合わせの典型例です。

高脂肪、高糖質かつ塩分濃度の高い食品は、体脂肪を増やすリスクが非常に高いと言えるでしょう。

 

太りにくい脂質があるって本当?種類別におすすめの摂取量を解説!

脂質にはこのような性質があるため、摂りすぎにより体脂肪が増加することは間違いありません。4万人以上の女性を対象とした追跡調査においても、脂質の摂取量が多いほど体重も増加する、という結果が得られています出典[2]

しかし一方で、脂質にもいくつか種類があり、摂取する脂質の種類を選ぶことで体重増加を起こしにくくできることが分かっています。また食欲を抑制したり、生活習慣病の予防に繋がったりと、体重管理や健康維持に嬉しい効果も確認されています。

このように、体重を左右する脂質の要素は「量より質」であることが分かっています。以下では脂質の種類と太りやすさ、太りにくさを解説した上で、それぞれの脂質をどの程度摂ればよいのかについて説明しましょう。

脂質の種類について

私たちが普段「脂質」として摂取した栄養素は、ほとんどがトリアシルグリセロール(TG)の形を取っています。
トリアシルグリセロールは、グリセロールというアルコール部分と、3つ(トリ)の脂肪酸から成り立っており、消化酵素の働きによってグリセロールと脂肪酸に分解されます。

この脂肪酸の長さや性質によって、脂質は以下のように分類されています。

飽和脂肪酸

脂肪酸の中に存在する炭素(C)の繋ぎ合わせに、二重結合が使われていない脂肪酸です。脂肪酸の長さによって、「長鎖脂肪酸」「中鎖脂肪酸」「短鎖脂肪酸」にそれぞれ分類されます。

  • 長鎖脂肪酸(炭素数12以上)
    牛肉や豚肉に含まれるパルミチン酸などが長鎖脂肪酸に分類されます。肉類やバターなどが主な摂取源となります。
  • 中鎖脂肪酸(炭素数8~12)
    ココナッツオイルに含まれるラウリン酸などが中鎖脂肪酸に分類されます。牛乳などの乳製品からも摂取できます。
  • 短鎖脂肪酸(炭素数6以下)
    酢酸や酪酸、プロピオン酸などが短鎖脂肪酸に分類されます。中鎖脂肪酸と同じく、牛乳などの乳製品から摂取できるほか、腸内において生成されることもあります。


不飽和脂肪酸

脂肪酸の中の炭素(C)が二重結合で繋がっている脂肪酸です。二重結合の数によって「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」にそれぞれ分類されます。

  • 一価不飽和脂肪酸
    二重結合を1つ持つ脂肪酸であり、オリーブオイルに含まれるオレイン酸がこれに分類されます。
  • 多価不飽和脂肪酸
    二重結合を複数持つ脂肪酸であり、二重結合の位置によって、さらに「n-3系」「n-6系」に分類されます。これらはω-3系脂肪酸、ω‐6系脂肪酸とも呼ばれています。
    ω-3系脂肪酸
    α-リノレン酸、DHA、EPAがω-3系脂肪酸に分類されます。α-リノレン酸はえごま油やアマニ油に、DHAやEPAは魚の油に豊富に含まれています。いずれも必須脂肪酸であり、体内で合成ができないため、食事からの摂取が不可欠です。
    ω-6系脂肪酸
    リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸がω-6系脂肪酸に分類されます。このうちリノール酸が必須脂肪酸であり、大豆油やコーン油といった植物油が主な摂取源となります。

トランス脂肪酸

天然の不飽和脂肪酸とは二重結合の「位置」が異なる脂肪酸を指し、天然の「シス型」に対して「トランス型」の脂肪酸と呼ばれています。通常であれば常温で液体である植物油脂を、常温で固体の油脂に加工する際に生じます。

 

体脂肪になりやすい脂肪、なりにくい脂肪、どう違う?

このように、脂質には様々な種類があり、摂取源や体内での代謝のされ方、性質などが異なります。
これらの脂質のうち、体脂肪になりやすいものとなりにくいものがあることが分かっています。以下ではこれらの脂質による太りやすさ、太りにくさについて解説します。

不飽和脂肪酸はエネルギーとして使われやすい

不飽和脂肪酸は脂質の代謝経路であるβ酸化を増加させるため、エネルギーとして使われやすいという特徴があります。また、不飽和脂肪酸のうち、多価不飽和脂肪酸は特に化学的に不安定で、過酸化物質をつくりやすいため貯蔵に向いておらず、体脂肪になりにくいことが分かっています。

脂質の種類と体重増加との関連を調べた研究において、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸の摂取量が増えると体重は増加しましたが、一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の摂取量が増えても、体重は増加しなかったことが明らかになっています出典[2]

不飽和脂肪酸のうち、多価不飽和脂肪酸のω-3系脂肪酸やω-6系脂肪酸は、細胞膜を構成するリン脂質や生理活性物質の材料としても使われます。一価不飽和脂肪酸のオレイン酸は動物性食品にも含まれていますが、オリーブオイルやアボカドなど、植物由来のものの方が体重増加に繋がりにくいことが分かっています。

必須脂肪酸である多価不飽和脂肪酸はもちろんのこと、一価不飽和脂肪酸のオレイン酸も植物由来のものを選び、食事に取り入れるようにしてみましょう。


多価不飽和脂肪酸であるω-3系脂肪酸には食欲抑制効果も

特に太りにくい脂質として知られているのが、ω-3系脂肪酸です。

ω-3系脂肪酸が豊富な食事を摂ることで、食欲を増進させるグレリンというホルモンの分泌が抑制され、逆に満足感を生じさせるコレシストキニン(CCK)という消化管ホルモンの分泌が増加することが分かっています出典[4]

また、ラットを用いた実験では、ω-3系脂肪酸の摂取により、空腹をもたらすホルモンであるメラニン凝集ホルモン(MCH)の分泌が低下したことも確認されています出典[3]

このように、ω-3系脂肪酸にはその生理作用の他にも、食欲を調節し食べ過ぎを防ぐための効果が複数確認されています。良質な脂質の摂取源として、ω-3系脂肪酸を豊富に含む魚類やナッツ類といった食品を積極的に活用すると良いでしょう。

 

飽和脂肪酸のうち、長鎖脂肪酸が貯蔵されやすい

脂質のうち、貯蔵に向いており体脂肪を合成しやすいのは飽和脂肪酸です。この飽和脂肪酸のうち、長鎖脂肪酸と、短鎖・中鎖脂肪酸では、体内での代謝のされ方が異なります。

全ての脂質、トリアシルグリセロールは、消化酵素の働きにより、脂肪酸とグリセロールに分解されます。

長鎖脂肪酸から分解された脂肪酸は再びトリアシルグリセロールに再合成され、脂質とたんぱく質の複合体であるリポタンパク質を形成します。リポタンパク質は全身の血管を巡りながら、脂肪酸を脂肪組織へと送り込みます。これにより脂肪組織が肥大し、体脂肪の増加に繋がるのです。

一方、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸から分解された脂肪酸は、すぐにトリアシルグリセロールへと再合成されるわけではありません。脂肪酸のまま肝臓に送られて、エネルギー源として利用されるのです。ここで使いきれなかった分がようやくトリアシルグリセロールになり、脂肪酸を脂肪組織へ分配する働きを持ちます。

貯蔵されやすい長鎖脂肪酸を控え、優先的にエネルギーとして使われる短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸を選ぶ。飽和脂肪酸を摂る際には、こうした工夫により体脂肪の蓄積を抑えることができそうですね。

 

トランス脂肪酸は体重増加だけでなく、心血管疾患のリスクも

マーガリンやショートニングなど、植物油脂を固形化した食品には、製造の過程でトランス脂肪酸が生成されています。トランス脂肪酸は牛肉や乳製品など、天然の食品にも微量ながら存在していますが、体重増加や動脈硬化など、健康への悪影響が大きく確認されているのは主に人工的に生じたトランス脂肪酸の方です。

女性を対象としたトランス脂肪酸の摂取量と体重増加の関係を調べたところ、総摂取カロリーに占めるトランス脂肪酸の割合が1%増加するごとに、体重が1kgほど増加したという結果が得られています出典[2]

このように、トランス脂肪酸の摂取量と体重との間には強い関連があることが分かります。

また、トランス脂肪酸自体もこのように太りやすい食品ですが、トランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングが使用されている食品が、そもそも食べ過ぎを誘発しやすいという特徴を持っています。

菓子パンやクッキー、ケーキにポテトチップスなどは、これらのトランス脂肪酸が使われていることが多い点に加え、高糖質かつ高脂質です。食塩が添加されていることも多いため、必要以上に食欲を刺激し、食べ過ぎてしまいがちです。

トランス脂肪酸が多く含まれるマーガリンの使用を控えるのみならず、こうした菓子パンやスナック菓子の摂取にも注意する必要がありそうですね。

 

それぞれの脂質はどのくらい摂ればいい?

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」において、脂質をどれだけ摂ればよいか、おおよその目安が示されています。

脂質の目標量は、1日の摂取エネルギーに対する脂質の割合で設定されています。

たとえば30~49歳で活動量が「ふつう」の男性の場合、1日の推定エネルギー必要量は2700kcalです。そして脂質のエネルギー比率の目標値は20~30%となっています出典[5]

この場合、540~810kcalほど、グラム換算にして60~90gほどの脂質を摂取するのが望ましい、と計算できます。

また、脂質の種類によっても目標量や目安量が定められています。

  • 飽和脂肪酸 
    飽和脂肪酸は現代の食生活において不足することはほとんどありません。逆に過剰摂取により心血管疾患のリスクを高めることが分かっているなど、摂りすぎが問題となっています。 
    そのため総摂取エネルギーにおける飽和脂肪酸の比率は、18歳以上の男女ともに7%以下の摂取が望ましい、と示されています。
  • 不飽和脂肪酸
    不飽和脂肪酸のうち、ω-3系脂肪酸とω-6系脂肪酸は体内での合成ができないため、それぞれ目安量が示されています。先程の条件に当てはまる男性であれば、ω-3系脂肪酸は1日2.0g、ω-6系脂肪酸は1日10gの摂取が必要と示されています。
  • コレステロール
    目標量や目安量は定められていませんが、脂質異常症の重症化予防のため、200mg/日に収めるのが望ましいと示されています。
  • トランス脂肪酸
    コレステロールと同じく、目標量や目安量は定められていません。しかし冠動脈疾患のリスク低減のため、総摂取エネルギーの1%未満に留め、できるだけ少なくすることを推奨しています。

このように、脂質はその質に気を付けながら、摂りすぎを防ぎつつ摂取することが推奨されているのです。

 

太らないための高脂質食品や調味料の選び方

私たちは肉類や乳製品、調理油など、様々な食品から脂質を摂取しています。これらの食品の選び方を工夫することで、十分量の脂質を摂取しても太りにくく、また必要以上に食欲を増進させない食べ方をすることができるでしょう。

以下では各食品における脂質の摂り方や選び方、おすすめの食品について紹介します。

肉類

主な肉類に含まれる脂質、および脂肪酸の量は以下のようになっています。

【肉類に含まれる脂質量および飽和脂肪酸量(g/100g)(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より】出典[6]
 

食品脂質量飽和脂肪酸
牛肩ロース(脂身つき)17.47.54
牛サーロイン(脂身つき)23.710.85
牛もも4.31.48
牛ヒレ4.81.99
豚バラ35.414.6
豚ヒレ3.71.29
鶏むね1.90.45
鶏ささみ0.80.17
鶏もも(皮なし)5.01.38
鶏もも(皮あり)14.24.37

脂身つきの牛肉や豚肉、皮つきの鶏肉には、脂質および飽和脂肪酸が豊富に含まれています。飽和脂肪酸は人体に必要な栄養素ではありますが、脂身の多いこれらの食品を多めに食べていると、過剰摂取によるカロリーオーバーを引き起こしてしまいます。

余った飽和脂肪酸は中性脂肪として体に蓄えられてしまうため、飽和脂肪酸の摂取は最小限に留める必要があるでしょう。

しかし、肉類は良質なたんぱく質食品であり、ビタミンやミネラルの摂取源としても重要です。そのため牛肉や豚肉を徹底的に避けるのではなく、部位や調理法を工夫して、脂質とのバランスを摂るようにしましょう。

最も分かりやすいのは、脂身を取り除く方法です。鶏肉を調理する際には皮を取り除く、豚肉の大きな脂身部位は切り取っておく、などの工夫により脂質量をぐっと減らせます。脂質が細かく入り込んでいる、いわゆる「霜降り肉」の摂取はほどほどにしておきましょう。

また、焼き調理によって脂を溶かし落とすことができます。野菜など、他の食材も含めた炒め物では、加熱により肉類から落ちた脂を野菜が吸ってしまうため、肉類単体で食べられる焼肉やステーキなどがよりおすすめです。

 

魚類

脂質の多いさんまやブリ、サバなどの赤身魚には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)というω-3系脂肪酸が豊富に含まれています。
それぞれの脂質含有量およびω-3系脂肪酸の量は以下のようになっています。

【魚類に含まれる脂質量およびω-3系脂肪酸量(g/100g)(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より】出典[6]

食品脂質量ω-3系脂肪酸
さんま25.65.59
ぶり17.63.35
はまち(養殖皮つき)17.21.88
まさば16.82.12
さけ(養殖皮つき)16.51.94
まいわし9.22.1
めかじき7.60.92
かつお(秋獲り)6.21.57

魚類由来のEPAやDHAは多価不飽和脂肪酸であり、脂肪として蓄えられにくく、食欲を抑制しやすいという性質を持ちます。また、LDLコレステロールや中性脂肪を低下させる、血液をサラサラにして血流を改善する、といった健康効果も期待できます。

さらにω-3系脂肪酸には抗酸化物質としての効果も期待できます。体内で発生した活性酸素を除去することで、酸化ストレスによる血管や脳へのダメージを防ぎ、心血管疾患のリスクを下げるよう機能することが分かっているのです。

魚類は質の良いたんぱく質および脂質を含む、非常に優れた食品です。ただしω-3系脂肪酸は加熱に弱いという特徴があるため、魚油の恩恵を効率的に得たい場合には、刺身など生の状態で摂取するようにしましょう。

 

乳製品

カルシウムの供給源として重宝される牛乳やヨーグルト、おつまみとして食べられがちなチーズなどの乳製品にも脂質が含まれています。

【乳類に含まれる脂質量および飽和脂肪酸量(g/100g)(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より】出典[6]

食品脂質量飽和脂肪酸
普通牛乳3.82.33
ヨーグルト(全脂無糖)3.01.83
プロセスチーズ26.016.0
クリームチーズ33.020.26
乳脂肪クリーム43.026.28

乳製品に含まれる飽和脂肪酸は、エネルギーとして優先的に使われやすい短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸が多くを占めています。体脂肪になりにくい脂質であるため、体重増加にはあまり関係がないと考えられます。

米国を対象とした調査においては、牛乳の摂取量と体重増加との間には関連が見られなかったことが分かっています出典[7]。一方、ヨーグルトを積極的に摂取する人は、体重が減少しやすいという関連も報告されています。たんぱく質と良質な脂質を豊富に含む食品として、牛乳やヨーグルトを上手に活用してみましょう。

ただし、クリームチーズや生クリームは脂質含有量が高く、摂りすぎることで体重増加と強く関連することも分かっています。短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸であっても、エネルギーの余剰を引き起こせばその分は体脂肪として合成されてしまうため、適量を心掛けましょう。

 

加工油脂

バターやマーガリン、ショートニングなどの加工油脂を使われる方も多いことでしょう。

いずれもカロリーは同じですが、マーガリンやショートニングは植物油脂を加工したものであり、加工の過程でトランス脂肪酸が発生していることに注意する必要があります。

バターなど、天然由来の脂質の中にもトランス脂肪酸は含まれていますが、体重増加や心血管疾患のリスクの増加と関連があるのは、植物油脂由来の人工的に生じたトランス脂肪酸の方です。

これらは安価な菓子パンやファーストフードなどに使われることが多く、いわゆるジャンクフード系をよく食べている方は、知らないうちにこれらのトランス脂肪酸を多量摂取している可能性があります。ダイエット中はこれらの食品をできるだけ避けるようにしましょう。

最近では企業努力により、トランス脂肪酸の量をかなり減らしたマーガリンも販売されています。こうした加工油脂を選んだり、バターなど天然の固形油脂を使ったりすることで、トランス脂肪酸の摂取を防ぐ工夫が必要ですね。

 

その他オイル

オリーブオイルに含まれるオレイン酸は、一価不飽和脂肪酸に分類されます。オリーブ由来のポリフェノールが豊富であるため、加熱に強く、比較的酸化されにくいという特徴があります。

太りにくい油であり、必須脂肪酸であるω-3系脂肪酸の供給源として、アマニ油やえごま油もおすすめです。加熱に弱いため、ドレッシングとして使うなど、生での摂取を心掛けましょう。

糖質を極端に制限したケトジェニックダイエットを行っている場合には、エネルギー源となる脂質摂取としてMCTオイルを活用してみるのも良いでしょう。MCTオイルは中鎖脂肪酸だけを抽出したオイルであり、エネルギーとして素早く利用されるという特性をより高く得ることができます。

 

その他高脂質食品

洋菓子は脂質と糖質の組み合わせであり、血糖値を上げるだけでなく、余分なエネルギーを脂肪として蓄えやすくしてしまいます。脂質と糖質の組み合わせはダイエットの大敵であると言えるでしょう。

おすすめしたい高脂質食品の間食として、ナッツ類やアボカドを紹介します。ナッツにはω-3系脂肪酸が豊富であり、血液をサラサラにして心血管疾患を予防する効果が期待できます。また噛み応えのあるナッツを間食にすることで、脳内にヒスタミンが効率よく分泌され、より高い満足感を得ることができます。食欲のコントロールがしやすくなるため、食べすぎの防止に繋がりますね。

またアボカドに含まれているのは、オリーブオイルの主成分であるオレイン酸です。こちらも一価不飽和脂肪酸であり、エネルギーとして使われやすく、またLDLコレステロールを減らす効果も期待できます。

 

太らない脂質を意識して摂取!献立例を紹介

脂質は、ダイエット中であっても総摂取エネルギーの20%は摂取しておきたい栄養素です。太らないように摂取するには、太りにくい脂質を選んで効果的に調理することが重要です。

以下では良質な脂質の摂取源としておすすめしたい献立をいくつか紹介します。ダイエット中の食事に、是非ご活用ください。

(主菜)サーモンソテーのトマトソースかけ

ω-3系脂肪酸であるDHAやEPAを効率的に摂取できるサーモンを使ったレシピです。

EPAは抗酸化物質として機能しますが、EPA自体も熱などにより酸化されやすいという特徴を持っています。そのため食事でEPAを摂取する際には、EPAを守るための抗酸化物質を同じタイミングで摂取するようにするとよいでしょう。

また、ω-3系脂肪酸は加熱に弱いため、魚類は刺身での摂取がおすすめですが、サーモンにはアスタキサンチンという、赤色の色素成分が含まれています。このアスタキサンチンが抗酸化物質として機能し、ω-3系脂肪酸を保護するように働いてくれるため、加熱してもω-3系脂肪酸の効果を得ることができるのです。

トマトにもリコピンという抗酸化物質が含まれますが、こちらは油での加熱調理により吸収率が増すことが分かっています。オリーブオイルと組み合わせることで、トマトの成分を効率よく摂取することができますね。

 

(主菜)牛肉と野菜のガーリックグリル

牛肉を選ぶ際には、脂質の少ないヒレ肉やモモ肉を選んだり、肩ロースの脂身部分を切り取ったりして食べることをおすすめします。
しかし脂身がきめ細やかに入っている肉の場合には、オーブンで焼き調理を行うことで余分な脂質をカットすることができます。柔らかい肉を、出来るだけ低脂質に調理したいという場合には、是非焼き調理を検討してみてください。

なお、同時に野菜を調理して食べる場合には、肉を焼くことで溶けた脂が野菜類に染み込まないよう、網でのグリルで脂を全て下に落としてしまう、などの工夫をしてみましょう。ブロッコリーやレンコンなどがオーブン調理と相性が良く、おすすめです。

 

(主菜)豚肉と大根の煮物

豚肉を柔らかく食べる方法として、煮物がおすすめです。しかし煮込むと肉類は縮みやすく、満足感を感じにくいかもしれません。煮てもかさの減らない大根を加えることで、肉類の食べ過ぎを防ぐことができます。

焼き調理はもちろんですが、煮込むことでも脂質は溶け出します。調理後に冷蔵庫で冷やすことで、溶け出した煮汁の脂質が再度、白く固まります。脂身である白い部分を取り除けば、簡単に脂質カットが行えます。より多くの脂質カットを行いたい場合には、是非試してみてください。

 

(副菜)アボカドとブロッコリーのサラダ

「果物の王様」と呼ばれるアボカドですが、野菜と合わせて献立のひとつに加えることで、副菜をよりクリーミーかつ満足感の高いものに仕上げることができます。

アボカド自体に脂質が豊富であるため、味付けはノンオイルのポン酢や、ハーブソルトなどの相性が良いでしょう。砕いたナッツをトッピングすると香ばしさが増してより美味しくいただけます。

ナッツにはω-3系脂肪酸が豊富に含まれているため、食欲抑制効果も期待できます。

 

(調味料)手作りドレッシング

胡麻ドレッシングやマヨネーズにはかなりの脂質が含まれています。サラダで食事のかさを増し、食べ過ぎを防ごうとしても、使用するドレッシング類に豊富な脂質が含まれていると、カロリーカットに繋がりません。また、マヨネーズに含まれている飽和脂肪酸の摂取により、逆に食欲を増加させてしまう可能性もあります。

カロリーや食欲のコントロールのため、ドレッシングの量を増やしすぎないことはもちろん、野菜と合わせる脂質の質にもこだわってみましょう。

おすすめは、えごま油やアマニ油などのω-3系脂肪酸を豊富に含む油です。これらはオリーブオイルのように癖がないため、ハーブソルトやお酢の味付けが自在にでき、食べやすいドレッシングに仕上がります。

ω-3系脂肪酸は加熱に弱いため、えごま油やアマニ油も生で食べた方がより高い健康効果を得られます。毎日のω-3系脂肪酸の供給源として、是非これらの油で作ったドレッシングを活用してみてください。

 

(おやつ)くるみのきな粉和え

くるみはナッツ類の中でもω-3系脂肪酸の含有量が特に高く、良質な脂質の摂取減として非常に優れています。ω‐3系脂肪酸の食欲抑制効果により、少量でも満足できるため、小腹が空いたときのおやつに最適です。

そのまま食べても美味しくいただけますが、味に変化を持たせたい場合、きな粉と和えることで香ばしさを増すことができます。

きな粉は言わずと知れた大豆製品であり、良質なたんぱく質と脂質を豊富に含んでいます。大豆由来の脂質であるレシチンや、抗酸化作用を持つサポニンには、LDLコレステロールの蓄積を抑える効果も。脂質の過剰摂取による体への悪影響を防ぎ、体重管理や健康管理がしやすくなる効果が期待できますね。

 

まとめ

脂質の摂り過ぎは太る原因となりますが、健康維持や体重管理のため、脂質の量より質に注目することが重要です。

飽和脂肪酸の中でも長鎖脂肪酸、そしてマーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸の摂取は体重増加に繋がりやすく、短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸、不飽和脂肪酸はエネルギーとして使われやすい。この違いを是非意識していただければと思います。

特にω-3系脂肪酸には食欲抑制効果など、ダイエットにも嬉しい効果が期待できます。アマニ油やえごま油、ナッツ類、魚類などから効果的に取り入れて、よりスムーズに体重管理をできるようにしましょう。

やみくもに脂質をカットするのではなく、太りやすい脂質を見極めて制限し、太りにくい脂質を取り入れてストレスなく食事ができるよう工夫したいところですね。

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