筋トレ中のパンは選び方が肝心!おすすめの種類と活用方法
2023年12月26日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

パンの特徴とは?

小麦粉を原料とした主食は、食パンやバゲットのようなシンプルなものから、惣菜パンや菓子パンに至るまで、多くの種類があり、多くの人に親しまれています。ふっくらとしていたり、硬めであったり、もちもちとしていたりと、様々な食感が楽しめるのもパンの魅力ですね。

では、筋力トレーニングとの相性に注目したとき、パンにはどのような特徴があるのかについて解説しましょう。

主な材料は?

パンの主原料となるのは小麦粉、酵母、砂糖、塩です。これらに水を加えて混ぜ合わせて発酵させ、焼くことでシンプルなパンが出来上がります。基本の主材料において、エネルギー源となるものは小麦粉だけです。高糖質かつ血糖値を上げやすい食品であると言えそうですね。

しかし、一般的に販売されているパンで、これらの材料だけで作られているものはほとんどないでしょう。ふんわりとした柔らかさや香りの良さ、甘さを出すために、牛乳やバター、生クリーム、卵、はちみつなどがよく加えられます。

カレーパンや焼きそばパンのような惣菜パン、チョココロネやクリームパンのような菓子パンであれば、さらに多くの材料が使われます。

よりパンを美味しくするための乳製品や卵、その他の材料が加わることにより、たんぱく質や脂質の量も増えているのがパンの特徴と言えるでしょう。

 

他の穀類とどう違う?

パンと同様に主食として食べられているものに、お米やうどん、蕎麦、パスタなどがあります。それぞれの主食には以下のような特徴があります。

  • お米
    高糖質かつ低脂質、塩分ゼロの主食です。和食に合わせて食べることが多いため、食事に取り入れた場合の総摂取エネルギーや脂質量が抑えやすく、健康的なダイエットに適しています。お米だけで食べた場合、血糖値を急激に上げることも特徴です。
  • うどん
    お米と同じく高糖質かつ低脂質ですが、少量の食塩が使われています。味付けにも醤油など、高塩分のものが使われることが多く、主食として継続していると塩分過多になりがちです。
  • 蕎麦
    穀類に含まれているたんぱく質の中では、体のたんぱく質合成に必要な必須アミノ酸の構成バランスがかなり良く、良質なたんぱく質の摂取源としても活用できます。うどん同様に食塩が含まれており、味付けも塩辛いものに偏りがちです。食物繊維量が多めであり、血糖値の上がり方が比較的緩やかです出典[1]
  • パスタ
    食物繊維量が多めであり、蕎麦と同じく血糖値の上がりが比較的緩やかであるという特徴があります。パスタ自体に脂質はほぼ含まれていませんが、ソースは高脂質、高塩分であることが多いため、味付けには注意する必要があります。

これらの主食とパンとの違いは、大きく以下の3点です。

  1. 砂糖が使われることが多く、血糖値を急激に上げやすい
  2. 脂質量が多いため、高カロリーになりやすい
  3. 美味しく味付けされており、単体で食べられることが多い

パンを食事に取り入れる際には、これらの違いに注意する必要がありそうですね。

 

パンと筋トレは相性が悪い?注意すべき3つのデメリット

筋力トレーニングにおいて、パンは相性があまり良くないと言われます。パンも他の穀類も、高糖質食品であることには変わりありませんが、パンには筋力トレーニングの効率を下げる要素がいくつか判明しています。

筋力トレーニング中にパンを食べることには、どのようなデメリットがあるのでしょう。

デメリット1.栄養が偏りやすい

パンはそれ単体でも美味しく食べられる食品です。そのためか、食事としてパンを食べる場合、パンと飲み物だけで済ませている、という方もかなり多いように見受けられます。

焼きそばパンと牛乳、カレーパンとコーヒー、といった組み合わせで食事を済ませた場合、野菜やたんぱく質が不足し、糖質と脂質に偏った食事になってしまいます。

惣菜パンには多少のたんぱく質や野菜が使われていますが、一食分の必要量を満たすには足りません。また、メロンパンや揚げパンといった菓子パンからは、ビタミンやミネラルといった成分をほとんど摂取できません。

パンを中心とした食事においては糖質と脂質で構成された高カロリーな食事が続くため、栄養が偏りやすい。これは筋力トレーニングのみならず、健康管理においても大きなデメリットであると言えるでしょう。

 

デメリット2.満足感を得にくく、食べ過ぎてしまう

フランスパンやベーグルなど、硬いパンもありますが、コンビニやスーパーで売られているパンはふわふわで柔らかく、よく噛まずに飲み込めてしまうものがほとんどです。パン単体で食事を済ませる場合には、噛むという動作をほとんどせずに食事を終えてしまう、ということもあるのではないでしょうか。

噛む、という動作は食事の満足感を高めるにおいて非常に重要です。よく噛むことで脳内にヒスタミンが分泌され、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎの抑制に繋がることが分かっています。パンを中心とした食事では噛むことによるヒスタミン分泌が起こりにくいため、物足りなさを感じやすく、つい食べ過ぎてしまいがちになります。

また、デニッシュパンや揚げパン、塩バターメロンパンなどには特に注意が必要です。元々パンに含まれる糖質と塩分に、たっぷりの脂質が加わることで、より一層食欲を増進させてしまうのです。

エネルギーとしては十分に摂取しているにもかかわらず「もっと食べたい」という意欲を刺激するため、必要以上に食べ過ぎてしまう。バターや揚げ油をたっぷり使ったパンにおいては特にこの傾向があります。

満腹中枢を刺激しにくいだけでなく、たくさん食べたいと思わせる糖質・脂質・食塩の組み合わせで成り立つパンは、ダイエット目的で筋力トレーニングをしている方にとって特に注意すべき食品です。

 

デメリット3.体脂肪合成が高まる

コンビニやスーパーで売られているパンには、ほとんどの場合、生成された白い小麦粉や砂糖が使われています。これらは速やかに分解、吸収され、血糖値を急激に上昇させます。血糖値の上昇に伴い分泌されるのが、余った血中の糖を肝臓や筋肉、脂肪組織に蓄えるためのホルモン、インスリンです。

血糖値の上昇が急激であればあるほど、インスリンは大量に分泌されます。インスリンの分泌量が増えると、余った糖が体脂肪合成に使われやすくなるため、肥満のリスクが高まるのです。

また、パンは単体で食べることが多く、食物繊維が豊富な野菜や果物を食べるタイミングがあまり重なりません。そのため血糖値を緩やかにする食物繊維の効果が得られず、ますますインスリンの分泌が増えやすい食品であると言えるでしょう。

もちろん、お米や運動時のエネルギー補給のため、十分な糖質を摂取することは重要です。しかしパンは血糖値を急激に上げやすいという点において、食べる量やタイミングに注意する必要がある食品と言えるでしょう。
 

パンにはこんな効果も!筋トレへのメリット2選

このように、パンには注意すべきデメリットも多くある一方で、筋力トレーニングに役立つ点も存在しています。以下ではパンの持つメリットについて、筋力トレーニングにもたらす良い効果と合わせて解説します。

メリット1.手軽な糖質の供給源

コンビニやスーパーで購入できるパンは、パスタや蕎麦のように、温めたり食器を使ったりして食べる必要がありません。袋を開けるだけという手軽さがあり、汁やソースを伴わないため持ち運びにも優れています。

保存性も高く、常温や冷蔵庫で1~2日、ものにとってはそれ以上の期間、保存しておくことができます。冷凍保存ができるタイプもあり、食べたいタイミングでトースターにかければ、質をほとんど落とさずに美味しいパンを食べることができます。

簡便性、運搬性、保存性において、パンほど優れた糖質食品はないと言っても良いでしょう。

いつでもどこでも美味しく食べられる、というメリットは、裏を返せばどのタイミングにおいても食べ過ぎてしまう、というリスクにも繋がりますが、種類を選んで適量を守れば、パンは非常に便利な糖質食品であると言えるでしょう。

 

メリット2.バルクアップの効率UP

筋肉を増やし鍛える、いわゆるバルクアップを目的とした筋力トレーニングの場合には、筋肉の合成効率を高めたり、トレーニングからの回復を早めたりといった、筋肉への栄養的アプローチが特に重要です。

筋肉の合成にはたんぱく質が欠かせません。そしてたんぱく質が正しく筋肉の合成に使われるためには、運動後のタイミングで、十分に糖質を補給しておく必要があります。糖質が枯渇した状態では、体は食事由来のたんぱく質を糖質に変えて、エネルギーを作ろうとするためです。たんぱく質の利用効率を高めるためには、十分な糖質摂取が欠かせません。

筋肉への糖質補給にパンが優れている理由は、パンの持つ、血糖値を急激に上げやすいという性質にあります。精製された小麦粉や砂糖で構成されていることが多いパンは、血糖値を急激に上げ、インスリンというホルモンを大量に分泌させます。インスリンの働きにより、血中の糖は筋肉や肝臓、脂肪組織へと蓄えられるのです。

血糖値を急激に上げるというパンの性質は、脂肪への蓄えを増やすリスクもあるものの、タイミングよく摂取することで筋肉への蓄えを最大限に高めることができます。バルクアップのための素早い糖質補給として、上手にパンを活用してみましょう。

 

筋トレの効果を最大化するパンの食べ方

パンを中心とした食事には、栄養バランスが偏るリスクや、体脂肪の合成が高まるという危険があります。しかしパンの種類とタイミングを見極めて食べれば、筋力トレーニングの効率を高める優秀な食品として活躍してくれるのです。

では、筋力トレーニングの効率を高めたい場合、またデメリットを回避してパンを楽しみたい場合、どのような種類のパンをどのように食べるのが良いのでしょう。以下では、筋力、トレーニングの目的別に、おすすめのパンの種類やタイミングについて紹介します。

バルクアップ中の活用法

まずは、筋肉を増やして体を大きくすることを目的に、筋力トレーニングをしている場合を考えてみましょう。バルクアップ中においては、パンの「血糖値を急激に上げる」という性質を活かした食べ方が重要になります。

あんパンやジャムパンなど、高糖質かつ低脂質なパンを

一昔前は、筋肉を増やすためには食事量を増やすことが重要で、その過程である程度、体脂肪が増えることも許容されてきました。しかしここ最近では、なるべく体脂肪を付けずに筋肉を増やしていくという鍛え方が主流になりつつあります。

体脂肪の蓄積を防ぎつつ、筋肉の合成量を高めるには、高糖質かつ低脂質の食品の活用が不可欠です。そのため、筋肉へのエネルギー補給のためにパンを活用したい場合、バターの使用量が少なく、揚げ調理がされていないものを選ぶようにしましょう。

特におすすめしたいのが、小豆と砂糖で作られたあんこが入った「あんパン」や、果物と砂糖で作られたジャムが入った「ジャムパン」です。シンプルな材料で作られているパンとして、バターの入っていない「フランスパン」も活用しやすい部類に入るでしょう。

特にあんパンに使われている小豆からは、抗酸化作用を発揮し筋肉へのダメージを軽減するポリフェノールや、必須アミノ酸のバランスが比較的整ったたんぱく質を同時に摂取できます。甘いものが苦手でなければ、あんこを使ったパンを意識して選んでみるのも良いですね。

トレーニング前後の糖質補給に最適

血糖値を急激に上げるパンを単体で摂取していると、体脂肪の蓄積量が増えてしまいます。体脂肪の合成を抑えるポイントは、血中に急速に取り込まれた糖の使い道がすぐに訪れるタイミングでパンを食べること。

糖質が十分に消費できる、あるいは糖質が他の場所に十分に蓄えられる余地がある時であれば、パンを食べても体脂肪増加のリスクを上げずに済みますよね。

おすすめのタイミングは、やはりトレーニングの前後です。トレーニング前にはパフォーマンス向上のため、速やかなエネルギー補給を行い、筋肉にグリコーゲンを蓄えておく必要があります。トレーニング後においても、疲労、損傷した筋肉を回復させて筋肥大の効率を上げるため、十分な糖質補給が欠かせません。

これらのタイミングで、玄米やオートミールなどの、血糖値を緩やかに上げる食品を摂取するのは、トレーニングのパフォーマンス向上においても、バルクアップにおいてもやや効率が悪いと言えます。

逆に言えば、トレーニングの前後こそ、血糖値を急激に上げやすいパンの最適な活用タイミングであるということ。高糖質かつ低脂質なパンを選んで、美味しく効率よく糖質補給を行いましょう。

 

ダイエット中の活用法

ダイエット目的で筋力トレーニングをしているという方もいらっしゃるでしょう。この場合、血糖値を急激に上げやすいパンの食べ方には特に注意すべきです。

そのため、ダイエット中にパンを食べる際は、「満足感を得にくい」「血糖値を急激に上げやすく、体脂肪合成のリスクが高い」といった性質を持たないものを意識して選び、満足感を高められるような食べ方を心掛けることが重要です。

白いパンより全粒粉パンを

パンは精製された白い小麦粉や砂糖で作られているものがほとんどですが、中には全粒粉パンという、未精製の小麦粉を使用したものも売られています。見た目は茶色く、焼くと香ばしい味わいになることが特徴です。

全粒粉パンと精製小麦のパンとの違いは、玄米と白米の違いによく似ています。玄米を精米して胚芽とぬかを取り除いたものが白米ですが、全粒小麦粉から表皮や胚芽を取り除いたものが、薄力粉や強力粉と呼ばれる一般的な小麦粉なのです。

白い小麦粉にて取り除かれている表皮や胚芽の中には、ビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれています。これらを同時に摂取できる全粒粉パンを選ぶことで、栄養価の高いパンを食べられるのはもちろん、食物繊維の効果により、血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できます。

全粒粉パンと小麦粉パンにおいて、血糖値の上がりやすさを示す「グリセミックインデックス(GI値)」の調査が行われました。これによると、グルコース溶液のGI値を100とした場合、全粒粉パンのGI値は65.2、小麦粉パンのGI値は73.0であることが分かりました。また、血糖値の最大上昇値についても、全粒粉パンが43.9mg/dL、小麦粉パンが50.6mg/dLと、全粒粉パンの方が低く抑えられたと報告されています出典[2]

血糖値の上昇を緩やかにして、体脂肪合成を促すインスリンの分泌を抑えることで、ダイエットの妨げにならずにパンを楽しむことができるでしょう。

サラダやたんぱく質食品と合わせて

パンを食べることによるもう一つの問題として、パンだけで食事を完結させることによる栄養素の偏りが挙げられます。

サンドイッチやカレーパンなどの総菜パンも売られていますが、これらから摂取できるたんぱく質食品や野菜の量は微々たるもの。あくまでパンは「主食」であるということを念頭に置き、他の主菜や副菜を同時に摂取できるよう、食卓を整えることが重要です。

朝食にパンを食べる場合には、全粒小麦の食パンやバゲットなど、甘くないパンを選んで、オムレツやサラダなどと合わせるようにしましょう。他の食品と組み合わせて食べることでさらに血糖値の上昇を緩やかにできるため、体脂肪合成を抑えやすくなります。

 

まとめ

精製された小麦粉と砂糖で作られたパンは血糖値を急激に上げやすく、体脂肪合成のリスクの高い食品です。また、菓子パンや惣菜パンには脂質や食塩が多めに使われているものも多く、糖質・脂質・食塩の組み合わせにより食欲が増大し、食べ過ぎを引き起こしやすい点にも注意すべきです。

しかし、食べるパンの種類とタイミングを選べば、筋力トレーニングへの活用も十分に可能です。筋力トレーニングの目的に合わせた選び方を徹底して、適切なタイミングで美味しくパンを食べてみましょう。

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