ストレスで入眠時間が2倍?リラックスして寝る方法15選
2023年11月21日更新

監修者

睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級

室井優作

心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。

執筆者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識できるよう日々邁進中。

ストレスは入眠までの時間を2倍にする!?

競争社会や不安定な社会情勢、新種の感染症などが原因でストレスが蔓延している現代社会。ストレスは自律神経やホルモンを介して、気分や認知機能に悪影響を及ぼし、うつや集中力の低下を引き起こします。

ストレスの悪影響は精神面だけに留まらず、睡眠にも及びます。人は副交感神経が優位になり、リラックスした状態になると眠気が生じます。しかし、ストレスに対処する時は、交感神経が優位になり脳や身体をフル活動させます

2019年にチューリッヒ大学で行われた研究では、眠る前に心理的にストレスのかかる認知課題を行うと入眠までの時間が2倍長くなることが報告されています出典[1]。また、この研究では、深い睡眠を示す脳波も減少していました。

短時間のストレスであっても、睡眠の質を大きく悪化させるのです。仕事や家庭で慢性的にストレスを感じているなら、なおさら眠れないことでしょう。不眠を感じている方は、ストレスに適切に対処して、リラックス状態を作ることを心がけましょう。

 

今日から取り組める!リラックスして寝る方法15選

ストレスがいかに睡眠にとって悪いかご理解いただけたでしょうか。ここからは夜にリラックスした状態を作り出し、心地よく眠るためのヒントをいくつかご説明します。すぐにできるものを中心に紹介しているので、是非できるものから取り組んでみてくださいね。

1.就寝1~2時間前にお風呂に浸かる

お風呂に入ると、身体の芯から温まり、心身がリラックスできますよね。また、入浴は深部体温(脳や内臓など身体の中心の温度)を調節し、眠気を誘発してくれます

運動してるときや興奮している時は、身体が熱を帯びます。対照的に睡眠中などの休息時は体温が低下します。

お風呂に入ると一時的に体温は上昇しますが、上がった後に急速に体温が低下し休息に適した状態になります。

つまりお風呂は心と身体の両面をリラックスした状態にしてくれるのです。

ちなみに、お風呂と睡眠の質の関係について調べた17件の研究を精査した調査では、就寝の1-2時間前までに40-42.5℃のお湯に10分間浸かる、もしくはシャワーを浴びることが寝つきの改善に有効であると結論づけられています出典[2]

就寝直前の入浴は身体の興奮や熱が冷めきらないため、少し時間を空けるのが良いようですね。

 

2.ゆったりとした音楽を聴く

音楽は多くの人に愛されるリラックス方法です。651人の一般人を対象にしたアンケート調査では、62%が寝つきを良くするために一度は音楽を利用したことがあると回答しています出典[3]

2019年のチューリッヒ大学の研究では、就寝前にゆったりとしたメロディの「Drifting into Delta」という曲を聴いた女性は、浅い眠りが少なくなり、深い睡眠の量が46%増加したことが報告されています出典[4]

音楽を聴くことで、ストレスの原因やネガティブな事象に考えを巡らせることがなくなり、リラックスできるのではないかと考えられています出典[5]

音楽を選ぶ際のポイントは次の3つ出典[6]

  • ゆっくりとしたテンポ
  • 控えめなボリューム
  • 滑らかなメロディ

逆にアップテンポで、激しい曲は要注意。耳にの頃、頭の中で延々とリピートされ、眠れなくなる恐れがあるので、ヒット曲は就寝前は避けるのがおすすめです出典[7]

 

3.漸進筋弛緩法を実施する

漸進筋弛緩法とは、「力を入れて、抜く」を繰り返すことで、力が抜ける感覚を掴む方法です。肩の力を抜くことが苦手な人は、逆に力を入れることでリラックスできるかもしれません。

特殊な器具や専門家の指導も必要もなく、誰でも簡単に行えるため、不眠患者の治療に人気があります。

新型コロナウイルス患者51名を対象に、1日30分漸進筋弛緩法をしてもらった研究では感染症に対する不安が軽減し対象グループと比べて深い睡眠が25%増加したことが報告されています出典[8]

ここでは漸進筋弛緩法のやり方を1つご紹介します。

  1. 腰を痛めないように椅子に深く腰掛ける
  2. 拳を握り、腕をグッと曲げて脇を閉め、肩を上げて、膝をくっつけて脚を伸ばす(5秒程度)
  3. 全ての糸が切れたようにストンと力を抜く
  4. 力を抜いた後の時間を1分間とり、全身をリラックスさせる

最初は力が抜ける感覚がよくわからないかもしれませんが、続けていくうちに少しずつリラックスできる感覚が掴めていきます。まずは1週間、日中や就寝前の気持ちが落ち着かない時に試してみてください。


4.山の写真を部屋に飾る

人は楽しかった出来事を無意識的に思い返すことは少ないにも関わらず、自分の欠点や過去の失敗などのネガティブな事ほど、何度も考え落ち込んでしまいます。失敗を省みることは重要ですが、考えすぎは不眠をもたらすため、健康によくありません。

2015年にスタンフォード大学が発表した研究では、うつ病の人に90分間、自然の中を散歩してもらった結果、ネガティブな事を反芻する回数が減少していたことが報告されています出典[9]

また別の研究では、自然の写真を見るだけでも副交感神経が活発になり、心拍数が低下していたことが示されています出典[10]

失敗を引きずってしまいがちな人は、出来る限り自然を見る生活を心がけましょう。
 

5.耳栓とアイマスクをつけて寝る

最近は快眠グッズがたくさん溢れていますね。高価なマットレスから、最新技術を駆使したものまで様々です。しかし、リラックスして眠る上で、高い費用をかける必要性も、最新の技術も取り入れる必要はありません。

2015年にコクラン共同計画がICUで治療を受けている1569人の患者を対象に、薬以外に睡眠改善に有効な方法を調査した研究ではアイマスクと耳栓が有効であることが示されています出典[11]

また2010年に福建医科大学がICUで治療を受けている14人の患者を対象に実施した調査でも、アイマスクと耳栓と使用することで睡眠ホルモンのメラトニンが45%多くなりストレスホルモンのコルチゾールが25%低下していたことが報告されています出典[12]

アイマスクと耳栓を合わせても数千円で手に入れることができます。騒音や光は、例え中途覚醒していなくとも、知らずの内に眠りの質を低下させている可能性があります。遮光カーテンを取り入れてなかったり、交通量の多い地域に住んでいる人は、一度試してみるのもよいでしょう。


6.夜間は照明を控えめにする

リラックスする上では、落ち着く空間作りも非常に重要です。例えば激しい光は網膜を通して脳に作用し、入眠ホルモンのメラトニンの分泌を妨げます。その他、赤やオレンジなどの明るい色の壁紙は過度な覚醒状態を招きます。

大阪市立大学が実施した研究では、間接照明と木の内装を組み合わせた寝室は、通常の照明の寝室や間接照明のみの寝室と比べて、副交感神経が優位であったことが報告されています出典[13]

また学生寮の壁紙を様々な色に変更した別の研究では、青色の壁紙にした時に脳波が最も落ち着いていたことがわかっています出典[14]

もし刺激的な色や光が目に入る寝室の場合は、落ち着ける寝室作りを心がけるとよいでしょう。


7.ベッドに入る30分前からスマホの使用を控える

強い光が自然な入眠を妨げるのは前述の通り。スマートフォンやPCから発されるブルーライトも例外ではありません。ただし、スマートフォンの睡眠に対する害はブルーライトだけに留まりません。

アメリカのブリガムヤング大学は、167人の成人を対象に、就寝1時間前のスマートフォンの使用と睡眠の質の関係について調査しました。

こちらの研究では、通常通りスマートフォンを使用したグループとナイトモードをオンにしてスマートフォンを使用したグループに分けられましたが、両グループで睡眠の質に違いはありませんでした出典[15]

研究者たちは、ブルーライトよりも、スマートフォンを使用するという行為そのものが脳を興奮させ、眠りを妨げるのではないかと考えています。

脳を覚醒させるような動画やSNSは就寝前は禁物。ベッドに入る30分前からスマートフォンの使用は控えるのがよいでしょう。


8.1日10分瞑想する

一流のビジネスパーソンに人気の瞑想。雑念を飛ばし、今ここに集中することで、精神をリラックスさせる作用があります。

2020年にオレゴン州立大学は、起業家105名を対象に、瞑想の実施状況と疲労具合や睡眠の質の関係について調査しました。その結果、毎日のようにマインドフルネス瞑想を実施している人は、睡眠不足による疲労感が低い傾向にあることが分かりました出典[16]

研究者らは、週に70分(1日あたり10分)のマインドフルネス瞑想を行うと、1日44分追加で寝たことと同じくらいの疲労感の軽減に効果があると述べています。一方で十分に睡眠時間をとれている人が瞑想を実施しても疲労感の軽減に効果はなかったようです出典[16]

仕事のストレスであまり眠れていないという方は、1日10分だけ瞑想する時間をとってみてもよいかもしれませんね。


9.ヨガに取り組む

ヨガは呼吸や身体の変化に意識を集中させることで、ネガティブな考えから頭を解放してくれます。また適度に汗をかくことで、ドーパミンやセロトニンなどの幸せホルモンが分泌され気分が改善されます。

2014年にカリフォルニア大学が実施した研究では、ヨガなどのマインドフルネスエクササイズは有酸素運動よりも精神的健康や睡眠の改善において優れていることが示されています出典[17]

ヨガは心肺や筋肉にかかる負担も小さく、高齢の方でも取り組みやすい運動です。家で手軽にできるポーズがほとんどですので、運動不足の方は是非取り組んでみてくださいね。


10.1分間に10回のペースで呼吸する

緊張していたり、興奮している時は心臓の鼓動が聞こえるくらい、心拍数が高まります。人前でスピーチする前や好きな人を前にした時のドキドキをイメージするとわかりやすいですね。

一方で落ち着いている時は、心拍数もゆっくりになります。深呼吸は心拍数を物理的に落ち着かせることができ、心身をリラックスさせることができます。

目安としては1分間に10回以下のペースで呼吸を行うこと出典[18]。深く息を吸って、吐いてからベッドに入ることで、リラックスして入眠することができるでしょう。


11.寝室にアロマを焚く

いい匂いで落ち着いた経験のある人はアロマを焚いてみるのもよいでしょう。匂いは鼻から吸入された後、直接的に脳に作用するため、即効性が期待できます

また肺や皮膚から吸収されることで、全身にもじわじわと広がり、心身を穏やかにしてくれます。

リラックス作用が期待されている成分としては下記のようなものがございます。

  • ラベンダー:甘いフローラルの香りに加えてハーブのさわやかさが特徴。2020年にトルコで実施された研究では、更年期障害の女性の睡眠の質と生活の質を改善することが報告されている出典[19]
  • ローズ:甘く優雅な香りをもつ。鎮静作用や抗不安作用、抗うつ作用が期待されている出典[20]
  • セドロール:スギ科やヒノキ科の樹木に含まれる香り成分。セドロールを投与した実験では、入眠までの時間が短く、入眠後の深い睡眠が長く続いたとの結果が出ている出典[21]
  • イランイラン:甘くエキゾチックな香りで官能的な香りと言われる。2008年にノーザンブリア大学で行われた研究ではイランイランは平穏な気持ちを増加させることが分かった出典[22]

 

12.物事の捉え方を変える

ストレスと聞くと悪いイメージがありますが、捉え方を変えるだけで、いい刺激に変えることもできます

例えば、「仕事をやらされている」と思うのではなく、「仕事をさせてもらっている」を考える。「三日坊主だ」と落ち込むのではなく、「三日も続いた」とポジティブに捉える、といった具合です。

どんな物事も前向きに考えるだけで、ストレスをコントロールできる可能性があります。

実際に不眠に悩む大学生に2週間ポジティブな思考ができるように指導した研究では、ネガティブな物事を反芻する回数や抑うつ傾向が減少し、不眠の重症度や日中の眠気が改善したことが報告されています出典[23]

ストレスは恐れるものではなく、コントロールできるものです。日頃からポジティブな思考や言動を意識するとよいでしょう。


13.ストレッチを実施する

ストレスや不安を抱えていると、無意識の内に全身に力が入り、筋肉が緊張してしまいます。そこでストレッチは柔軟性を高め、筋肉の過緊張を解き、心身をリラックスさせてくれます

明治安田厚生事業団体力医学研究所は、軽い睡眠障害を持つ35~59歳の女性を対象に、就寝前に10分間のストレッチを行ってもらい、睡眠中の脳波や眼球、筋肉の活動を調査しました出典[24]

その結果、ストレッチをすると慢性的なストレス時に減少する免疫グロブリンAが増加し、不快な感情を弱めるレム睡眠が増加しました。

肩や首にコリを感じている人は、慢性的にストレスを抱えているのかもしれません。1日10分お風呂上りに、コリを感じる部位を伸ばすとよいでしょう。


14.カモミールティーを飲む

古くから安眠作用が期待されているカモミールティー。神経系の興奮を鎮め、筋肉の緊張を緩和し、眠りに適した心身の形成をサポートしてくれます。

18~65歳の慢性不眠症の患者34名を対象に、カモミールの抽出物もしくはプラセボを28日間摂取してもらった研究では、カモミールを摂取したグループは入眠までの時間が平均16分短くなり、中途覚醒の回数は平均0.8回減少したことが報告されています出典[25]

また2016年に産後女性を対象に行われた別の研究では、2週間毎日カモミールティーを飲んだグループは飲まなかったグループと比べて、うつ病の傾向が減少し、深く眠れるようになったことが報告されています出典[26]

カモミールに含まれるフラボノイドの1種であるアピゲニンが、脳内のGABA受容体と結びつき、鎮静作用をもたらしてくれるようです。就寝の1時間前ほどに摂取してみるとよいでしょう。


15.サプリメントを検討する

鎮静作用やストレス軽減作用のあるサプリメントを検討するのも1つでしょう。ただし、サプリメントはあくまでサポートとなります。これまでに紹介した方法で生活習慣を整えた上で、利用することをおすすめします。

ストレスを軽減し、眠りの質を改善すると言われている成分には下記のようなものがあります。

  • バレリアン:ヨーロッパやアジアが原産の植物。不眠症に悩む男女16名を対象にバレリアンを就寝前に継続的に摂取させた結果、主観的な睡眠の質が大幅に改善したことが報告されている出典[27]
  • ホップ:ビールの原料に使われる成分の1つで鎮静作用が報告されている出典[28]。サプリメント以外にノンアルコールビールで摂取するのも1つ。
  • タルトチェリー:欧米で愛されるサクランボ。強力な抗酸化作用を持ち、入眠ホルモンのメラトニンを増加させることが示されている出典[29]
  • テアニン:緑茶に含まれるうま味成分。睡眠の前半では副交感神経を優位にし、リラックス状態を作り、睡眠の後半では交感神経の活動を低下させ、覚醒を防ぎます出典[30]
  • GABA:日常的なストレスを軽減する機能が報告されているアミノ酸。深い睡眠の合計時間の増加や入眠時間の短縮が報告されています出典[31]
     

まとめ:15個の中で自分に合った方法でリラックスしよう!

現代社会ではストレスは切っても切り離すことができません。しかし必要以上に恐れることはありません。適切に対処することで、リラックスしてぐっすり眠ることができます。

今回は15個のリラックス方法を紹介しましたが、もちろん全てを一度に取り組む必要はありません。自分に合ったものから徐々に生活に取り入れて、良い眠りを手に入れてくださいね。

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