執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
うどんってどんな食べ物?
日本食として馴染み深い麺類のひとつとして数えられるうどんは、長く多くの人に愛されています。蕎麦やラーメン、パスタよりも手軽で食べやすいうどんには、どのような特徴があるのでしょう。
うどんの特徴と種類
うどんは小麦粉と水と食塩を混ぜ、よくこねたものを茹でることで出来上がります。非常にシンプルな材料で作られているため、小麦粉や水、食塩の味をダイレクトに楽しむことができます。
栄養素のほとんどが糖質で構成されているため、日本では主食として用いられます。味付けは主にだし汁で行われ、トッピングはネギやワカメ、天ぷらに牛肉など、多岐に渡ります。
ゆでうどん100gあたりのカロリーは95kcal、糖質量は21.4gです。うどん1食分はおよそ180~250gであり、200gのうどんであれば190kcal、250gのうどんであれば約238kcalとなります。
また、うどんよりも麺が細くなったものをひやむぎ、さらに細くなったものをそうめんと呼びます。いずれも原料は同じですが、そうめんは薄く油を塗った上で、長く伸ばして成形されています。
他の麺類や米との違いは?
日本でよく食べられているである米や麺類と、うどんの成分を比較してみましょう。
【主な穀類100gあたり(茹で・炊飯後)の栄養素(日本食品標準成分表2020年版)】出典[1]
エネルギー | 水分 | 糖質 | |
うどん | 95kcal | 75.0g | 21.4g |
こめ | 156kcal | 60.0g | 38.1g |
パスタ | 150kcal | 60.0g | 31.3g |
中華めん | 133kcal | 65.0g | 27.7g |
そば | 130kcal | 68.0g | 27.0g |
うどんは水分量が75%と高く、70%に満たないほかの麺類や米と比較すると糖質の密度が低いため、100gあたりのエネルギーは少なめです。そば1食分、茹でた状態250gのカロリーは325kcalですが、同じく1食分250gのうどんでは238kcalであり、同じ食べ応えでエネルギーを抑えたい際の主食に適しています。
【主な穀類100gあたり(茹で・炊飯後)の栄養素(日本食品標準成分表2020年版)】出典[1]
たんぱく質 | 食物繊維 | 食塩 | |
うどん | 2.6g | 1.3g | 0.3g |
こめ | 4.8g | 1.5g | 0g |
パスタ | 5.8g | 3.0g | 1.2g |
中華めん | 4.9g | 1.3g | 0.2g |
そば | 4.8g | 2.9g | 0g |
次にたんぱく質や食物繊維の量に注目してみましょう。
うどんは精製された小麦粉を主原料としています。そのため蕎麦粉を使用したソバや、デュラム小麦粉を使用したパスタよりも、たんぱく質や食物繊維量が控えめです。
また、中華めんは小麦粉の中でも、たんぱく質含有量の高いグルテンを使用しているため、中力粉を使用したうどんよりもたんぱく質量が多いという特徴があります。
さらに、うどんにはラーメンのようにだし汁の味付けに脂質が入る余地がないため、高糖質かつ低脂質の食品として活用できます。
なお、製造の過程で食塩が使われているため、茹でた状態のうどんにも食塩がわずかに含まれています。
うどんは水分量が多いため、他の主食と比べるとやや低カロリーですが、たんぱく質や食物繊維の量が少ないため糖質の割合が高く、血糖値を上げやすい食品でもあります。
消化吸収抜群!うどんが筋トレにもたらすメリット3選
うどんは茹でてだし汁を加えるだけで簡単に食べられ、外出先のコンビニやスーパー、外食店でも食べやすい食品です。
手軽に食べられる主食であるうどんを活用することで、どのようなメリットが得られるのでしょう。以下ではうどんがトレーニングや筋肉の合成に及ぼす良い影響について解説します。
メリット1.エネルギーチャージや筋肥大を効率化
うどんには精製小麦が使用されており、たんぱく質や食物繊維の含有量が低く、また味付けに脂質が使われることもないため、糖質の割合が高いという特徴があります。糖質の割合が高い食事を摂ることで、血糖値を急激に上げることができます。
オーストラリアのシドニー大学より2008年に発表された論文においては、スパゲッティと比較するとうどんの方が12%ほど血糖値の上がり方を示す数値であるグリセミック・インデックス(GI値)が高いと報告されていました出典[2]。
血糖値の上がり方が急激であると、余分な血中のグルコースを肝臓や筋肉、脂肪組織へと蓄えるためのホルモン、インスリンがより多く分泌されます。インスリンの分泌を促す食事により、筋肉へより効率的にグリコーゲンを蓄積できるようになります。
トレーニング前のエネルギーチャージを効率化したい、トレーニング後の筋肉を速やかに回復させたいという場合には、GI値が高めの糖質食品であるうどんの摂取が役立つでしょう。
メリット2.消化が良く運動のパフォーマンスを妨げにくい
うどんはたんぱく質や食物繊維、脂質の含有量が低く、また比較的やわらかい食品でもあるため、消化が妨げられず、速やかに吸収されます。
運動前のエネルギーチャージにおいて、消化に時間のかかる糖質食品を食べると、トレーニング中にわき腹が痛くなり、パフォーマンスが低下することがあります。
消化への負担をかけたくない場合には、じっくり茹でたうどんを取り入れてみましょう。
メリット3.トッピングで他の栄養素を強化しやすい
高糖質かつ低脂質なうどんを主食とする際には、他の食品と組み合わせて栄養素を強化することが重要です。
たんぱく質や食物繊維が少ないことに加え、精製された小麦粉であるうどんはビタミンやミネラルも不足しています。特にビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える働きを持つ栄養素であるため、エネルギーチャージや疲労回復には欠かせません。
不足しているたんぱく質、ビタミンやミネラル、食物繊維を補うことで、トレーニングの効果をより発揮できるようになります。
うどんは様々な具材をトッピングできるため、たんぱく質やビタミンなどの強化がしやすいというメリットがあります。たとえばわかめを加えるだけで、食物繊維やビタミン、ミネラルが補強でき、かまぼこをさらに足すことでたんぱく質も増やせます。
高糖質かつ低脂質であるうどんの特徴を活かしつつ、トッピングにより栄養素を強化して、トレーニングの効率UPにつなげましょう。
筋トレ前後に活用可!摂取のポイント4つ
消化が良く、高糖質かつ低脂質なうどんをトレーニングに活用する際には、どのようなことに気を付ければよいのでしょう。以下ではうどんを摂取する際に注意したい点として、タイミングや種類、組み合わせや食べ方などのポイントを4つ紹介します。
ポイント1.トレーニング前には素うどんを
うどんをトレーニング前の糖質補給として活用する場合には、かけうどんやざるうどん、醤油うどんなど、だしのみで食べる「素うどん」にしましょう。醬油うどんやざるうどんは冷たくのど越しも良いため、素早く食べられるのも魅力ですね。
速やかに糖質を補給し、筋肉にグリコーゲンを貯蔵するためには、インスリンの分泌量を高める高糖質の状態で摂取する必要があります。
肉や野菜などをトッピングとして加えると栄養価は大幅に上がり、腹持ちも良くなります。しかし消化に時間がかかり、血糖値の上がりも緩やかになるため、インスリンを分泌するにはやや非効率です。
トレーニング前には醤油うどんやかけうどんを活用して、純度の高い糖質の摂取を心掛けましょう。
ポイント2.トレーニング後にはたんぱく質食品と組み合わせて
トレーニング後には筋肉のグリコーゲンが使い果たされており、グリコーゲンを再補充するために糖質が必要となります。疲労からの回復や、筋肉痛の軽減のためにも糖質補給は欠かせません。
また、筋肉の合成効率を高めるため、このタイミングでたんぱく質食品を併せて摂取すると良いでしょう。筋肉の合成効率が高い動物性たんぱく質を取り入れることで、筋肥大の効率化に繋がります。
たんぱく質食品にとっても、糖質食品であるうどんを合わせて食べることにはメリットがあります。糖質が不足した状態において、ヒトの体は摂取したたんぱく質を分解してエネルギーを得ようとします。たんぱく質は、十分な糖質供給が行われてこそ、筋肉の合成に正しく使われるのです出典[3]。
肉や魚、卵などでたんぱく質を強化したうどんを食べて、糖質による疲労回復と、たんぱく質による筋肥大の効率化、両方のメリットを得られるようにしましょう。
ポイント3.揚げ物との組み合わせは避ける
うどんのトッピングの定番といえば天ぷらです。外食先でうどんを食べる際には、ナスやエビ、大葉などの天ぷらを必ずトッピングに選ぶという方もいるのではないでしょうか。
かけうどんのだしとの相性もよく、非常に美味しくいただける天ぷらですが、高糖質かつ低脂質であるといううどんのメリットが損なわれるため、筋力トレーニング中のトッピングとしては避けた方が無難です。
また、高脂質の天ぷらと、高塩分のだし汁、高糖質の麺の組み合わせにより、天ぷらうどんは高糖質、高脂質、高塩分の食品となってしまいます。
糖質、脂質、食塩の多い食べ物は食欲を刺激しやすく、食べ過ぎによるカロリーオーバーのリスクが高まります。体脂肪の増加によりトレーニングのパフォーマンスが著しく低下することにもなりかねないため、天ぷらをうどんにトッピングするのが習慣になっている場合は意識して避けた方がよいでしょう。
ポイント4.汁は飲み干さない
うどんの麺に含まれている食塩は僅かですが、だし汁は比較的食塩が多く使われ、濃い味付けとなっています。
麺類の汁は、ラーメンだけでなくうどんや蕎麦においても飲み干さず、残す癖を付けておきましょう。
もちろん、激しいトレーニングで汗をかいた場合には、発汗量に応じた塩分補給が必要です。ただしこれらは経口補水液など、適切な濃度の飲料で行うべきです。
だし汁を飲み干す習慣が付くと、塩分の喪失がない場合にも汁から過剰に塩分を摂取することになります。塩分の過剰摂取は腹部の膨満感やむくみの原因となり、トレーニングのパフォーマンスや体調にも影響を及ぼす可能性があります。
筋力トレーニング中に限らず、濃い味付けのものは摂り過ぎないよう注意しましょう。
筋トレの効率を高めるおすすめのうどんレシピ3選
トレーニング後には、様々なたんぱく質食品と組み合わせてうどんを食べることで、筋肥大の効率化や疲労回復の促進に役立ちます。
以下では特に筋肥大に役立つ、たんぱく質食品と組み合わせたうどんのレシピを3つ紹介します。うどんの味付けやトッピングに迷っているという方は、是非参考にしてみてください。
レシピ1.かま玉うどん
主な材料(一人分)
- 茹でうどん 1袋(200g)
- 卵 1個
- めんつゆ2倍濃縮 大さじ2
- かつお節 適量
卵を加えてたんぱく質を強化した簡単なレシピです。熱々の状態のうどんに卵を落とすことで、火が通った半熟の状態で卵を食べることができます。
卵のたんぱく質の吸収効率を高めるためには、生での摂取を避けることが重要です。たんぱく質の消化酵素であるトリプシンの働きを、生卵に含まれるオボムコイドが阻害し、たんぱく質の吸収効率が落ちてしまうためです出典[4]。
卵は少し加熱して温泉卵の状態にするだけでも、たんぱく質の吸収率は十分に上がります。あらかじめ温泉卵を作っておくと、うどんと混ぜたときにより半熟の状態を作りやすくなるため、おすすめです。
お湯を沸騰させた鍋に卵を殻ごと入れ、火を止めて10分前後放置しておけば温泉卵が出来上がります。卵の良質なたんぱく質を無駄なく活かすため、このひと手間を是非加えてみてください。
レシピ2.肉うどん
主な材料(一人分)
- 茹でうどん 1袋(200g)
- 薄切り肉 100g
(肉の煮汁)
- 水 200mL
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 砂糖 大さじ1
- 醤油 大さじ1
- 和風顆粒だし 小さじ1
(だし汁)
- 水 300mL
- 醤油 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 和風顆粒だし 小さじ1
かけうどんの上に煮込んだ薄切り肉を乗せたレシピです。肉とだし汁、両方にそれぞれ調味が必要ですが、肉の味付けはめんつゆと和風顆粒だしでも代用できます。
肉は牛肉と豚肉を、期待する効果に応じて使い分けましょう。
牛肉からは、脂質からのエネルギー生成を効率化するL-カルニチンや、筋肉の成長効率を高めるクレアチン、貧血予防に欠かせないヘム鉄などを効率的に摂取できます出典[5]出典[6]。
豚肉は牛肉よりも脂質を抑えやすく、また糖質のエネルギー代謝に欠かせないビタミンB1を豊富に含むため、より高い疲労回復効果が期待できます。
脂肪燃焼効果や筋肥大の効率化、貧血防止効果をより期待したい場合は牛肉を、疲労回復効果を期待しつつカロリーを低く抑えたい場合には豚肉を、それぞれ選んでみましょう。
さらにボリュームアップさせたい場合には、抗酸化作用を持つケルセチンが豊富な玉ネギや、食物繊維が豊富なキノコ類を併せて煮込んでみましょう。栄養素の強化だけでなく、抗酸化作用による筋肉痛の緩和も期待できます。
レシピ3.鮭入り海鮮焼きうどん
主な材料(一人分)
- 茹でうどん 200g
- シーフードミックス 50g
- 鮭 1切れ
- めんつゆストレート 大さじ1
- 料理酒 大さじ1
- 和風顆粒だし 小さじ1
- サラダ油 適量
- 小ネギ お好みで
鮭やシーフードミックスによる、疲労回復効果が高く期待できるレシピです。一口大の具材を油で炒め、めんつゆなどで調味した上で茹でうどんを合わせて炒めましょう。
鮭は高たんぱく質食品であると同時に、抗酸化物質として機能するω‐3系脂肪酸やアスタキサンチンを豊富に含んでいます。ω‐3系脂肪酸は熱に弱いため、加熱調理により効果が減少しますが、アスタキサンチンは熱に強いため、加熱しても十分な抗酸化作用を発揮します。
シーフードミックスに含まれるイカやタコ、エビなどからは、タウリンというアミノ酸を効率的に摂取できます。東京大学が発表した2020年の論文においては、様々な論文から情報を集めたメタ解析により、運動後のタウリン摂取が、骨格筋へのグリコーゲン貯蔵を効率化し、疲労回復に効果を及ぼした可能性について言及されています出典[7]。
彩りのため、あるいは食物繊維の補給のため、キャベツや玉ネギ、キノコ類を加えてアレンジをしてみてもよいでしょう。野菜の量を増やせばボリュームアップに繋がり、これだけで1食分の栄養素を十分に摂取できます。
まとめ
シンプルな味わいのうどんは、様々なトッピングと相性がよく、味付けを変えて飽きずに楽しむことができます。トレーニング後にはたんぱく質食品との組み合わせを意識して、栄養価を高めた食事づくりを心掛けましょう。
出典
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