寝る前のはちみつの効果とは?摂取法や注意点について解説
2023年9月27日更新

監修者

睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級

室井優作

心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

はちみつの特徴は?

ミツバチが生成するはちみつにはさまざまな作用があることで知られています。中でも睡眠の質を高める作用が注目されており、寝る前のはちみつ摂取による快眠効果が期待されています。

睡眠とはちみつとの関連について触れる前に、まずはちみつの特徴について簡単に解説しましょう。

砂糖よりも甘さを感じやすく低エネルギー

通常の砂糖はスクロース(ショ糖)という二糖類で主に構成されています。一方、はちみつの主な構成成分はグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)です。

フルクトースの甘味はスクロースやグルコースよりも強いため、はちみつの使用により少量で強い甘さを楽しむことができます。

また、はちみつには砂糖と異なり水分が含まれています。国産基準において、はちみつに含まれる水分は22%以下でなければならないと定められているため出典[1]全体の約2割が水分と考えてよいでしょう。

水分量の多さはカロリーに影響を与えています。上白糖は100gあたり391kcalであるのに対し、はちみつは100gあたり328kcalであり、2割弱ほど低エネルギーです出典[2]

十分な甘さを感じつつ、摂取エネルギーを少なく抑えたい場合の甘味料として、はちみつは非常に適していると言えるでしょう。

 

生はちみつにはビタミンやアミノ酸が豊富

はちみつには純粋はちみつ、加糖はちみつ、精製はちみつなどさまざまな種類があります。このうち純粋はちみつは水あめや砂糖、果糖などの添加が加えられておらず、水分や糖類が一定の基準を満たしています。

さらに純粋はちみつの中でも、非加熱の製法で作られたものを「生はちみつ」と呼びます。生はちみつにはビタミンやミネラル、アミノ酸、酵素、ポリフェノール、有機酸など、さまざまな成分が含まれています。

砂糖やほかの糖類からは摂取できない、ミツバチ由来の成分を摂取できる点が、生はちみつの大きな特徴です。

 

はちみつの睡眠へのメリット4選

はちみつの中でも、とくに生はちみつは含有成分の多さから、さまざまな健康効果が期待されています。今回は寝る前のはちみつの摂取で得られる、睡眠へのメリットについて紹介しましょう。

はちみつの糖組成や豊富な成分が睡眠にもたらすよい影響について、次に解説します。

メリット1.血糖値を緩やかに上げ、空腹と低血糖を予防

空腹の状態で眠りにつくと、エネルギー不足による低血糖を引き起こす場合があります。また夕食や夜食に血糖値を急激に上げる食品を摂取した場合にも、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が促進されるため、低血糖のリスクが高まります。

空腹を我慢して眠ることも、血糖値を急激に上げるパンや菓子類などを摂取することも、低血糖の引き金になります。夜間の低血糖を繰り返すと睡眠の質が下がり、寝ても疲れが取れないといったトラブルを生じやすくなります。夜間から寝る前にかけては摂取する糖質食品の質に、とくに注意する必要があります。

はちみつを構成する糖であるフルクトースは、強い甘さを持ちながら血糖値を上げにくい性質があります。はちみつの摂取により、空腹を紛らわせる程度のエネルギーを摂取しつつ、血糖値を緩やかに上昇させられます。

適量のはちみつを夜間に摂取して空腹と低血糖を効果的に予防し、睡眠の質の低下を防ぎましょう。

 

メリット2.グルコースが睡眠ホルモンの生成をサポート

入眠をスムーズにして睡眠の質を高めるよう働く物質に、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンがあります。朝、日光を浴びることでトリプトファンという必須アミノ酸を原料にセロトニンが作られ、夕方以降、セロトニンを材料としてメラトニンが作られ始めます。

夜間に十分な量のメラトニンを合成するためには、セロトニンの原料となるトリプトファンを十分に摂取し、体内で利用できる状態にする必要があります。

トリプトファンは牛乳をはじめ、肉や魚などの動物性食品を中心に摂取できます。このトリプトファンの利用効率を高めるよう働くのが、はちみつに含まれるグルコースです。

グルコースには、トリプトファンが血液脳関門を通過するよう促進する効果が確認されており、トリプトファンとあわせて摂取することで睡眠によい影響をもたらす可能性が指摘されています出典[3]

睡眠の質を高めるためには、就床1時間前のトリプトファン摂取が有効であることが、1989年にカナダから発表された論文にて示されています出典[4]。同じタイミングではちみつを摂取することでトリプトファンの利用効率を高め、睡眠の質を高める効果が期待できるでしょう。

 

メリット3.オリゴ糖やグルコン酸が腸内環境を整える

はちみつには糖類の一種であるオリゴ糖や、有機酸の一種であるグルコン酸が含まれています。オリゴ糖やグルコン酸は腸内で善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やすよう働くため、腸内環境を改善する効果が期待できます。

グルコン酸はミツバチ由来の酵素と糖類が反応して発生する有機酸です。1日2g以上のグルコン酸の継続摂取により、ビフィズス菌の増加や排便回数の増加が見られ、腸内環境の改善効果が確認できたことが、1997年に日本で発表された論文にて述べられています出典[5]

オリゴ糖やビフィズス菌による腸内環境の改善は、睡眠ホルモンの合成効率にも影響を与えます。メラトニンの合成元となるセロトニンは、その多くが腸内で合成されています。腸内環境が悪化するとセロトニンの合成も滞るため、十分な量のメラトニンが得られなくなる可能性があります。

セロトニンを十分に合成できる腸内環境づくりのため、オリゴ糖やグルコン酸を含むはちみつを活用してみましょう。

 

メリット4.フェノール化合物やフラボノイドが疲労回復を促進

ミツバチ由来の成分として、フェノール化合物やフラボノイドといった抗酸化作用を持つ物質が確認されています。体の過剰な炎症反応やアレルギー反応を抑える効果をもたらし、糖尿病や心血管疾患の予防に役立つとも考えられています出典[6]

はちみつ自身が抗酸化作用を持つ一方で、体内の抗酸化物質の量や活性を上昇させる効果も確認されています。

体重あたり1.2gのはちみつを2週間摂取したことにより、血中の抗酸化物質の量や活性が増加したことが、2003年にアラブ首長国連邦から発表された論文にて報告されました出典[7]。とくに抗酸化ビタミンであるビタミンCの濃度上昇が大きく、摂取前より47%もの増加が見られています

強い身体的・精神的ストレスによって過剰に発生する活性酸素は、酸化ストレスとして体にダメージを与え、睡眠による疲労回復効率を低下させます。はちみつの利用により、抗酸化物質が十分に機能し、酸化ストレスを低減するように働くため、高い疲労回復効果が期待できるでしょう。

 

効果的なはちみつの摂り方

このように、寝る前にはちみつを摂取することで、睡眠におけるさまざまなメリットを得られる可能性があります。しかし快眠効果や疲労回復効果を十分に得るためには、 摂取するはちみつの量や種類、タイミングを工夫する必要があります。

睡眠の質を高めるために効果的なはちみつの摂り方について、ポイントを4つ解説しましょう。

毎日、就寝30分前にスプーン1杯の摂取を目安に

はちみつを構成する主な糖はグルコースやフルクトースといった単糖類であるため、速やかに吸収されます。そのため睡眠への効果を期待する場合、寝る直前である30分ほど前の摂取がおすすめです。

適量の摂取を心掛けて体脂肪合成を防ぐことも重要です。寝る前に摂取するはちみつの量として、スプーン1杯を目安にしてみましょう。

スプーン1杯のはちみつは約10gであり、エネルギー約33kcal、糖質約7gの摂取につながります。スプーン1杯までに抑えれば大きな体脂肪増加にはつながりません。また、快眠効果が得られるはちみつは高価であるため、1日あたりの摂取量は最低限に抑えた方が継続もしやすいでしょう。

はちみつは摂取を続けることで、睡眠の質の改善や疲労回復効果が確認されています。眠れない日や疲れた日にのみ摂取するのではなく、毎晩の習慣としてはちみつを用意し、継続摂取を心掛けましょう。

 

非加熱の純粋はちみつ(生はちみつ)を選ぼう

はちみつによる快眠効果を十分に得るためには、グルコースやフルクトースのみならず、グルコン酸やフラボノイド、アミノ酸や酵素といった成分が含まれたものを選びましょう。

純粋はちみつの中でも、加熱されたものと非加熱のものがあります。加熱されたはちみつからは酵素や熱に弱いビタミン類が失われているため、快眠効果を十分に得られません。

睡眠の質の向上のためには、非加熱の純粋はちみつである「生はちみつ」を選ぶことをおすすめします。

 

温かい液体に溶かして食べやすく

スプーン1杯のはちみつをそのまま食べる際、舌触りや味の濃さが気になる方もいるかもしれません。食べやすく調整したい方は、温かい液体に溶かすとよいでしょう。

はちみつは14~15度で結晶化が始まる食品であるため、冷たい飲み物に溶かすと沈殿し、十分に摂取できません。温かい飲み物に混ぜて、ゆっくりと飲むようにしてみましょう。リラックス効果が得られるほか、眠る際に熱の放出が起こり手足が温かくなるため、より入眠しやすくなります。

 

牛乳との組み合わせでより高い快眠効果を

はちみつを溶かす温かい液体として、ホットミルクをおすすめします。牛乳とはちみつの相性は睡眠の質を高めるにおいて非常に良好です。

2018年にイランから発表された論文において、牛乳とはちみつの混合物を冠動脈疾患の患者が摂取した際、摂取3日目で睡眠スコアに優位な改善が見られたことが報告されています出典[8]

牛乳のトリプトファンとはちみつのグルコースを同時に摂取すれば、トリプトファンの脳における利用効率が高まり、より高い快眠効果が期待できる可能性があります。

また、牛乳はトリプトファンを含む食品の中でも、肉や魚より消化に優れており、消化器官に大きな負担がかかりません。また適度なたんぱく質と脂質を含むため、満足感も得やすく、空腹によるストレスを和らげる効果も期待できます。

さらに牛乳には、グルタチオンやビタミンA、ビタミンEなどの抗酸化物質や、抗炎症作用のあるラクトフェリンなどが含まれています出典[9]。抗酸化物質を含むはちみつとあわせて摂取すれば、疲労回復効果もより高まるでしょう。

 

寝る前のはちみつ摂取における注意点

寝る前にはちみつを食べる、というのは実に手軽な取り組みであり、取り入れやすそうだと感じた方も多いのではないでしょうか。しかし夜間のはちみつ摂取には、睡眠の質との関係以外にもいくつか注意点があります。

睡眠とは直接関わらないように思える部分でも、体調を整えることで快眠のサポートにつながります。毎日継続するにおいて、次の点に注意を払っておきましょう。

スプーン1杯以上の摂取は太るもと

空腹感の緩和のため、少量の糖類摂取は有効ですが、摂りすぎはもちろん体脂肪増加の原因となります。

たとえば大さじ1杯のはちみつは約21g、エネルギーは69kcalです。大さじ2杯に増やせば138kcalにまで増加し、小さなプリンやドーナツと大差ないエネルギー摂取となってしまいます

はちみつは砂糖よりも強い甘さがあるため、飲み物に溶かす際にもスプーン1杯で十分においしく仕上がります。10gのはちみつの甘さに慣れ、量を増やさないよう注意して体脂肪増加を防ぎましょう。

 

摂取後は歯磨きを忘れずに

グルコースやフルクトースを含むはちみつは、虫歯のリスクを高めます。摂取後に歯磨きをせずに眠ると、口内に留まった糖類が虫歯菌により分解されて酸となり、歯のエナメル質を溶かしてしまうのです。

また、ホットミルクに溶かして飲む場合にも注意が必要です。牛乳には少量ながら、ラクトースという糖類が含まれているため、虫歯の発生につながります。

なお、はちみつの抗菌作用により虫歯菌の活動が抑えられるため、はちみつは虫歯になりにくいと言われることもあります。しかし歯磨きが一切不要である、という意味ではないため、摂取後の歯磨きは必須と考えておきましょう。

 

まとめ:寝る前のはちみつで快眠を手に入れよう!

寝る前のはちみつには、睡眠の質を改善する効果や、眠りによる疲労回復を高める効果などが確認されています。スプーン1杯の摂取を毎日継続することで、快眠のサポートが期待できるでしょう。

快眠に効果のある成分を摂取するためには、非加熱の純粋はちみつである「生はちみつ」を選びましょう。スプーン1杯のはちみつをホットミルクに溶かして摂取すれば、さらなる快眠効果が期待できます。

量を増やしすぎないよう注意し、摂取後の歯磨きを欠かさずおこなうことも重要です。睡眠の質を高めるための食品として、ぜひはちみつを効果的に利用してみてくださいね。

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