筋トレ中におすすめの飲み物4選|栄養のプロが徹底解説
2023年9月28日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

筋トレ中の水分補給にはどのようなメリットがある?

発汗により水分が失われやすいトレーニング中は、水分補給を適切におこなうことでパフォーマンスを高める効果が期待できます。

トレーニングの質を左右する水分補給について、種類や量、タイミングへの注意を払っている方も多いことでしょう。トレーニング中の水分補給を工夫することで、さまざまな効果が期待できます。

まずは、トレーニング中に水分を摂取することのメリットについて解説しましょう。

体温を下げて疲労の蓄積を防ぐ

冷たい水の摂取により、トレーニングで上昇した体温を速やかに下げる効果が期待できます。体温の過度な上昇を抑えることで疲労の蓄積を防ぎ、高レップのトレーニングメニューにおけるパフォーマンスを上げやすくなるでしょう。

また、激しいトレーニングでは発汗を伴う場合もあります。100gの発汗が皮膚から十分に蒸発すると、1℃の体温低下につながります出典[1]。発汗は皮膚表面の体温を下げる働きがあり、スムーズな発汗のためには十分な水分補給が欠かせません。

冷たい水で内側から体を冷やし、発汗を促して表面温度も下げやすくする。トレーニングによる体温の上昇を抑え、疲労の蓄積を防止する方法として、水分補給は最も効率的な手段であると言えるでしょう。

 

テストステロンの減少を防ぐ

男性ホルモンであるテストステロンは、やる気や意欲を高めてトレーニングのパフォーマンス向上に役立ちます。さらに筋肉の合成を促進し筋肥大の効率化をはかる働きもあるため、トレーニングにおいては非常に重要なホルモンです。

筋力トレーニングによりテストステロンの分泌は増加しますが、同時にテストステロンの消費も活発に起こります。いかにテストステロンの減少を防ぎつつ、筋肥大を効率化させるかがポイントとなるでしょう。

脱水状態におけるテストステロンの変動を調べた論文が、2008年にアメリカから発表されました。この研究では体重の2.5%の脱水状態により、テストステロンが10.8%、体重の5%の脱水においては16.8%もの減少が確認されています出典[2]

脱水を予防し、水分不足からの速やかな回復を徹底することで、筋力トレーニングの効果をより高められるでしょう。

 

筋力を維持する

トレーニング中に適切な水分補給をおこない脱水を防ぐことは、筋力の維持にも効果的です。

脱水状態が筋肉のパフォーマンスに与える影響を調べた論文が、2015年にカナダから発表されています。この研究では、水分不足により体内の水分損失が3~5%に達した場合、約8.3%の筋持久力低下、約5.5%の筋力低下が見られたと報告されています出典[3]

トレーニング中の水分補給は、疲労の軽減のみならず、筋力低下を防止して高いパフォーマンスを維持することにも役立ちます。発汗を伴う激しいトレーニングを取り入れる場合は、こまめな水分補給を欠かさないようにしましょう。

 

筋トレ中におすすめの飲み物3選

トレーニングの最中において、筋力や持久力の維持、疲労回復のために、こまめな水分補給は欠かせません。しかし脱水の原因となる汗には水分のみならず、ナトリウムやカリウムなどの電解質も含まれています。

発汗による電解質補給の必要性については、トレーニング時間を目安にしてみましょう。1時間以内のトレーニングであれば、電解質や糖質が大きく枯渇する心配はありません。疲労回復や体温調節のため、水のみの摂取でも問題はないでしょう。

では、1時間を超える高負荷かつ長時間のトレーニングの際には、どのような飲み物を摂取すべきなのでしょうか。
 

1.スポーツドリンク

スポーツドリンクは水分のほか、発汗に伴い失われるナトリウムなどのミネラル類エネルギーとなる糖類を適度に含んでいます。トレーニングのパフォーマンスを維持するための飲み物として、最も適していると言えるでしょう。

スポーツドリンクを選ぶ際は食塩相当量が0.1~0.2g、ナトリウム量が40~80mgのものを選びましょう

なお、経口補水液は食塩相当量が0.2g以上と高く、めまいや吐き気といった軽度の脱水症状が現れた際に、早急な回復を目的として飲むものです。トレーニング中の水分補給として摂取するには塩分が過剰であるため、常用は厳禁です。

 

2.リンゴジュース

リンゴはグルコース(ブドウ糖)に加え、フルクトース(果糖)ソルビトールといった複数の糖類を含んでいます。疲労の回復を促しトレーニングのパフォーマンスを高めるため、ジュースの形で摂取すると効果的です。

異なる糖類を摂取するメリットとして、異なる糖輸送体の活用により速やかな糖質補給をおこなえる点があります。

グルコースやフルクトースといった糖類は、体内に吸収される際、細胞にある輸送体の力を必要とします。グルコースの輸送体はSGLT1ですが、フルクトースは別の輸送体であるGLUT5の働きにより吸収されます。1種類ではなく複数の輸送体を活用することで糖吸収の効率を上げるやり方は、マルチトランスポーター法と呼ばれています。

2008年にイギリスから発表された論文において、ブドウ糖と果糖の混合飲料を摂取すると、ブドウ糖のみを飲料した場合と比較して、サイクリングのタイムトライアル完了までの時間が8%短縮されたと報告されています出典[4]。また、同じくイギリスから2010年に発表された論文においても、グルコースとフルクトースの混合摂取によってエネルギー産生効率が65%増加したことが確認されています出典[5]

マルチトランスポーター法を活用した糖質補給は、とくに長時間のトレーニングにおいて有効です。トレーニング時間が2~3時間以上に及ぶ場合には、リンゴジュースのような、グルコースとフルクトースを同時摂取できる飲料を活用してみましょう。

 

3.麦茶

手軽に入手でき、自宅での作成も容易である麦茶からは、発汗時に失われるミネラル類を摂取できます。カロリーゼロであり糖質は含まれていないため、短時間、かつ発汗量がそれほど多くないトレーニング中の摂取に向いています

緑茶や紅茶ではなく麦茶を推奨する理由は、カフェインが含まれていないためです。カフェインの血管収縮作用により、酸素や栄養素の通り道である血管が狭まると、筋肉に十分な酸素や栄養を届けることができません。さらにカフェインには利尿作用があるため、摂取した水分を体内に留めることが難しくなってしまいます。

トレーニングの最中に摂取するとパフォーマンスを低下させる恐れがあるため、カフェイン入りのお茶は控えたほうがよいでしょう。

 

筋トレ中の飲み物を自分で作るなら

味の調整や栄養素の強化、コストパフォーマンスの向上などを目的に、飲み物を自作したいと考える方もいるのではないでしょうか。この章ではトレーニング中の飲み物を自作する際のポイントについて解説します。

糖質は4~6%・塩分は0.1~0.2%

脱水の防止には、私たちの体液の浸透圧に等しい飲料の摂取が有効であることが分かっています出典[6]糖質4~6%、塩分0.1~0.2%の濃度になるよう、糖類や食塩を加えるとよいでしょう。1Lの水に加える場合には、食塩1~2g、糖類40~60gが適切です。

なお、糖類を効率よく吸収できる比率として、グルコース:フルクトース=2:1が推奨されています出典[5]。フルクトースを摂取できるフルーツジュースなどを加えることで、より高い疲労回復効果やパフォーマンス向上効果が期待できるでしょう。

 

ナトリウム以外のミネラルが豊富な塩を選ぶ

発汗ではナトリウムのほか、カリウムやカルシウム、マグネシウムなども失われます。さまざまなミネラルを補給する手段として、天然塩の活用をおすすめします。

食塩はほぼ塩化ナトリウムのみで構成されている精製塩と、海水を濃縮した天然塩に大別されます。天然塩にはカリウムやマグネシウムなど、様々なミネラルが含まれており、ナトリウム以外のミネラル補給にも役立ちます

ナトリウム以外の電解質の補給により、トレーニングのパフォーマンスを維持しやすくなる可能性があります。たとえばカリウムには筋収縮を助ける効果が、マグネシウムには抗酸化作用により筋疲労や筋肉痛を抑える効果が期待できます。

天然塩はスーパーにも売られており、高価なものではないため取り入れやすいのもメリットのひとつです。さまざまなミネラルが含まれた天然塩で、効率よくミネラル補給をおこないましょう。
 

少しでも効率を求める人はBCAAを加える

筋力トレーニングにおすすめのアミノ酸として、BCAAを加えるのもよい方法です。BCAAは必須アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシンの総称であり、筋肉へのエネルギー補給に役立ちます。

運動時のエネルギーとして、体は筋肉に蓄えられたグリコーゲンを消費します。しかし長時間のトレーニングによりグリコーゲンが使い果たされると、血液中の糖、脂肪、アミノ酸を利用したり、筋肉を分解したりしてエネルギーを生成します。

BCAAは消化の必要がなく、速やかに吸収されるため、トレーニング中の摂取にとくにおすすめです出典[7]。筋肉の分解を防ぎ、エネルギー補給を効率化させたい場合には、BCAAを飲料に加えてみましょう。

 

筋トレ効率を高める水分補給方法

トレーニング中の飲み物を用意できたら、いよいよ適切なタイミングで飲む段階です。飲み物の摂取方法を工夫することで、トレーニングの効率をより高められます。水分補給のタイミングやコツについて、簡単に紹介しましょう。

冷蔵庫に4~5時間入れておく

水分補給による脱水防止と、体温を下げることによる疲労の防止には、常温よりも冷やした水が効果的です。液体は低温であるほど吸収率が高まるため、速やかな脱水防止に役立ちます。また冷たい水の摂取により、トレーニングで上がった体温を下げる効果も得やすくなります。

2008年にイギリスから発表された論文においては、4℃の水を摂取すると、37℃の水を摂取したときよりも運動継続時間が約1.2倍に増加したと報告されています出典[8]

飲み物は冷蔵庫であらかじめ冷やしておき、冷たい状態で飲めるようにしておきましょう。

 

喉が渇いたと感じる前にこまめに摂取する

喉の渇きは「体重の2%以上の脱水」のサインであり、すでにパフォーマンスの低下が始まっています。喉が渇いたと感じる前の水分補給を徹底すれば、高いパフォーマンスを長時間維持できるでしょう。

また、一度に大量の水分摂取をおこなっても十分に吸収されないため、脱水予防としては非効率です。

空調が十分に効いておらず、気温が高めの場所でトレーニングや運動に取り組む場合には、15~20分ごとにコップ1杯の水分補給を心掛けましょう。

 

筋トレ中はダメ!注意すべき飲み物2選

筋力トレーニングの期間中、パフォーマンス向上や筋肥大の効率化を目的に、さまざまな飲み物を飲む方も多いのではないでしょうか。しかし一般によいとされている飲み物の中には、トレーニング中の摂取に向かないものも存在します。

トレーニングの中に摂取を控えるべき飲み物について、2つ解説しましょう。

1.プロテイン飲料

筋肥大の効率を高めたり、筋肉の分解を防いだりする効果がプロテイン飲料には期待できます。たんぱく質はトレーニーにとって欠かせない栄養素であるため、いつ摂っても問題はないように考えられがちですが、トレーニングの最中の摂取はおすすめできません。

消化の必要がなく、そのまま腸内に吸収されるアミノ酸とは異なり、プロテインは消化を必要とします。消化器系の活動を強いることになるため、トレーニングの最中に摂取すると胃腸に負担がかかり、トレーニングの質を低下させる可能性があるのです。

トレーニングの最中に摂取する場合には、消化器系に負担をかけないアミノ酸を含んだ飲料がおすすめです。プロテイン飲料は、筋肥大を効率化できるトレーニング後や、筋肉の分解を防止できる就寝前に飲むようにしましょう。

 

2.エナジードリンク

エナジードリンクはカフェインおよび糖類の摂取源として活用できる飲み物です。アミノ酸やビタミン類が含まれているものも多いため、筋トレ前の摂取によりエネルギー代謝が活性化し、パフォーマンスの向上が期待できます。

しかしトレーニングの最中においては、カフェインによる血管収縮作用や利尿作用が反対にパフォーマンスを低下させる可能性があります。筋力を思うように高められない、疲労が蓄積しやすい、といったトラブルのもとになりかねないため、トレーニング中のカフェイン摂取は避けるようにしましょう。

また、エナジードリンクには多量の糖類が含まれており、トレーニング中に摂取したい糖濃度である4~6%を大きく上回ります。過剰な糖類の摂取により逆に喉が渇いてしまうため、トレーニング中の摂取は厳禁です。

 

まとめ

筋力トレーニング中の水分補給には、脱水予防や疲労回復の効果が期待できます。発汗により失われる水分や電解質の補給に加え、糖類やアミノ酸の添加をおこなうことで、トレーニングのパフォーマンスをより高められるでしょう。

飲み物の成分はもちろん、温度や摂取のタイミングもパフォーマンス向上のためには意識すべきです。よく冷やした水を用意して、こまめな摂取を心掛けましょう。

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