カフェインで勃起はしない?7つの事実を学術的に解説
2023年11月20日更新

執筆者

管理栄養士/分子栄養学カウンセラー

岡かな

大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。

カフェインでそもそも勃起するのか?

精力系のドリンクではお馴染みのカフェイン。

SNSなどでは「カフェインで勃起力が高まった」とつぶやく方も見かけますよね。

しかし、本当にカフェインには勃起力を高める作用があるのでしょうか?

残念。実はカフェインが直接的に男性機能を高めることは考えにくいんです・・。

そもそも勃起とは、性的興奮をトリガーに陰茎に血流を送りこむことで生じる現象。そのため、性欲に関わるホルモンである「テストステロン」と「血流」が重要な要素になります出典[1]

ですが、カフェインにはテストステロンや血流に直接働く作用機序は存在しないんです。

では、一体なぜ勃起力の向上を感じている方がいるのでしょうか?

今回はカフェインと男性機能の関係について紐解いていきましょう。
 

カフェイン製品の利用者が勃起力向上を実感する理由とは

カフェイン製品の利用者がなぜ男性機能の向上を実感しているのでしょうか?

考えられる4つの理由を解説しましょう。

 

理由1.他の成分による影響が強い

カフェインが含まれている製品には他の成分も多く含まれていますよね。実はカフェインではなく、他の成分が勃起力に作用している可能性が高いんです。

例えば、精力系ドリンクによく含まれているアルギニンやシトルリン。これらの成分は体内で一酸化窒素(NO)を増やす作用があります。NOは血管を拡張する作用があるため、血流が良くなることで勃起力の向上が期待できるのです。

また、カフェイン製品の代表であるコーヒーに含まれているのは、クロロゲン酸などの抗酸化物質。これらは、酸化ストレスで減少するNOを保護することで相対的にNOを増加させる作用が示唆されています出典[2]

実際に、カフェインの摂取量が多いほどEDの発症率が低いという報告もありますが、コーヒーなどの食品から摂取している研究が大半であり、カフェインそのものの効果であるとは結論づけられていません出典[3]

カフェイン以外の成分が作用している可能性は十分に考えられるのです。

 

理由2.覚醒作用を性的興奮と勘違いしている

そもそもカフェインの主な効果は覚醒作用。この覚醒作用による高揚感を性的興奮と勘違いしている可能性も十分考えられるんです。

カフェインはアデノシンと呼ばれる、”神経を落ち着かせて眠気を高める物質”の働きを妨げることで神経を興奮させます出典[4]

さらにアデノシンは興奮作用のあるドーパミンの分泌を抑制する働きがあります。

逆に言えば、カフェインの摂取によりアデノシンの働きが阻害されると、ドーパミンの力も発揮され覚醒作用や興奮作用が助長されるわけですね。

このようなカフェインの興奮作用を性的興奮と誤解してしまう可能性があるんです。

 

理由3.ギラギラとしたパッケージのプラシーボ効果もある

ギラギラした精力系ドリンクやエナジードリンクのパッケージ。飲めば元気が出そうですよね。

実はこのギラギラパッケージのおかげで勃起力が向上している可能性も考えられるんです。

「効果がありそう」と期待して飲めば、ダミーのドリンクであっても効果を感じるという現象が実際に存在することを知っていますか?これをプラシーボ効果と言います出典[5]

例えば、本当は効果をもたないダミーを飲んで「気分が良くなる」と思い込むと、気持ちが落ち着く可能性があり、アドレナリンなどのストレス化学物質のレベルも低下することが知られているのです出典[5]

ギラギラした精力系ドリンクのパッケージによって効能を期待することにより、プラシーボ効果が起こっている可能性も十分に考えられます。

 

理由4.疲れているタイミングだから勃つ

疲れマラ」というインパクトのある言葉をご存知でしょうか?

男性なら一度は経験したことがあるとは思いますが、徹夜明けなどで疲労がピークに達したとき、突然勃起してしまうことがありますよね。これを疲れマラと呼ぶんです。

カフェイン製品を飲んで勃起するのは、たまたま疲れマラが生じるほど疲労がピークの状態とタイミングが重なっているという可能性も考えられるわけですね。

カフェインの有無に関係なく、単純に疲れているから勃起している可能性もあるかもしれません。
 

男性機能改善におけるカフェイン摂取で意識するべき3つのこと

さて、ここまでカフェインと男性機能の関係について推測してみました。

カフェイン製品の摂取は、直接的ではないにしろ勃起力などの男性機能向上に働く場合もあるでしょう。

ただ、男性機能の改善を目的にカフェイン製品を利用するなら意識しなければならないことがあります。

ここからは、カフェイン摂取で注意するべきポイントを解説しましょう。

 

1.そもそも男性機能の改善のために飲むものではない

まずは前提の部分。

これまで解説してきたように、カフェインには直接的に男性機能を向上させる作用はありません。したがって、男性機能向上を目的としたカフェイン摂取はおすすめではありません。

一時的に眠気を改善したい場合や集中力を上げたい場合に、適量のカフェインをとることは良いでしょう。カフェインをうまく活用することで集中力やパフォーマンスが向上します。

ただし、男性機能を根本的に改善するものではないことは知っておきましょう。

 

2.飲むならエナジードリンクよりもコーヒーを選ぶ

男性機能のためにカフェイン製品を摂取するのであれば、エナジードリンクではなくコーヒーがおすすめです。

第一の理由として、カフェイン摂取量が多いほどEDの発症率が低いことを示した報告によると、カフェイン摂取のほとんどがコーヒーによるものでした。出典[3]

第二の理由は、エナジードリンクには男性機能に悪影響を及ぼす可能性のある人工甘味料が含まれているから。

近年の報告によると、人工甘味料であるアスパルテームとアセスルファムKはテストステロンを減少させることがわかっています出典[6]出典[7]

さらに2023年5月、WHOは人工甘味料には糖尿病などの様々な疾患のリスクがあると発表出典[8]。ちなみに糖尿病の人は、健康な人の2〜3倍EDを発症するリスクが高いと言われています出典[9]

とはいえ、ドリンクタイプの製品では飲みやすくするために人工甘味料や添加物が使われていることは仕方ないこと。

であるならば、男性機能の向上ではなく嗜好品として楽しむべき製品であるとも言えます。

男性機能の向上を目的に何かを飲むならば、有効成分のみを抽出したサプリメントなどが最もおすすめ。

例えば、テストステロンの分泌量を増加させることが科学的に証明された栄養素もあります。テストステロンは筋肉の合成にも重要なので、筋トレ中の方にとってもメリットがあるでしょう。

本メディアではテストステロンを増やす素材をまとめた記事もありますので、ぜひ参考にして下さい。

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3.一日3杯、寝る5時間前までに飲む

カフェインは非常に強力な作用をもたらす成分。そのため、過剰に摂取してしまうと害を引き起こすこともあるんです・・。

カフェインを安全に摂取できる量は1日400mgまで出典[10]

コーヒー1杯(240ml)には約140mgのカフェインが含まれているため、1日3杯未満に抑えると良いですね出典[9]

さらに、覚醒作用による睡眠の質の低下も考慮しなければなりません。カフェインの半減期は約5時間です出典[11]寝る5時間前までに摂取し、夕方以降のコーヒーは控えましょう。
 

男性機能にはテストステロンや血流に特化した素材の摂取がおすすめ

ここまでカフェインと男性機能の関係について解説してきました。カフェインは直接的に男性機能を高める働きはないことがお分かりいただけたかと思います。

性欲や勃起力といった男性機能の向上には、男性ホルモンであるテストステロンと血流が重要

男性機能向上を目指すのであれば、テストステロンの分泌量を増加させることが科学的に証明された食品や血流を改善する栄養素を摂取していきましょう。

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