実は不眠の原因に...寝る前に食べてはいけないもの13選
2023年10月23日更新

監修者

睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級

室井優作

心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

寝る前に食べるものを間違えると?危険な4つのリスク

睡眠の質や疲労回復効果を高めるため、寝る前には少量の食べ物や飲み物が有効である場合があります。しかし食べるものや量によっては、体にさまざまな悪影響をもたらすため、食品選びには注意が必要です。

では寝る前の食べ物を間違えると、体にどのような影響が生じるのでしょう。

リスク1.熟睡できず、疲れが十分に取れない

夜ぐっすりと眠って疲れを取るためには、スムーズな入眠と深い眠り、十分な睡眠時間が欠かせません。

入眠や熟睡の妨げとなる可能性のある食品として、以下の性質を持つものに注意しましょう。

  • 覚醒作用:入眠の妨げとなり睡眠時間の短縮につながります。
  • 利尿作用:尿意から深夜や早朝の覚醒につながるほか、脱水の原因にもなります。
  • 高脂質食:消化に時間がかかるため、胃腸の酷使につながります。

覚醒作用や利尿作用は総睡眠時間を減少させ、高脂肪食による胃腸への負担は眠りを浅くします。ぐっすり眠れない状況では睡眠による疲労回復効果を十分に得られません。朝起きても体が怠く、力が出ない状態では、日中の仕事や運動などのパフォーマンスも大きく低下してしまうでしょう。

睡眠の質を維持するため、覚醒作用や利尿作用を有する食べ物や飲み物の摂取は控えましょう。

 

リスク2.体脂肪合成が促進されて肥満に

寝る前に食べると太りやすい、という話はよく耳にしますよね。就寝時は日中のように体を動かさず、エネルギーの消費量が減っているため、余剰なカロリーが体脂肪として蓄えられやすいのです。

体脂肪合成を促す作用の高い食品として、以下のようなものに注意しましょう。

  • 高脂肪食:エネルギー密度が1gあたり9kcalと高いため、少量でもカロリーオーバーにつながります。
  • 高糖質食:血糖値を急激に上げる食品は、体脂肪合成を促すホルモン「インスリン」の分泌を促します。
  • 高塩分食:高脂肪食や高糖質食とあわせることで食欲を増進させる働きが強まり、食べすぎやすくなります。

夜間には余剰なカロリーの摂りすぎを防ぐことと、血糖値を急激に上げる食品を避けることが重要です。食欲のコントロールを適切におこなうため、薄味を心がけることも有効でしょう。

 

リスク3.酸化ストレスが溜まり肌荒れや抜け毛の原因に

酸化ストレスは、体内の活性酸素が過剰に蓄積することにより増大します。私たちの体は酸素の生成に伴い活性酸素を生成しています。食事もまた、活性酸素を発生させる活動のひとつです。

活性酸素が過剰になる要因として、次の2点が考えられます。

  • 食べ過ぎ:大量の食物を消化、吸収するためには多くのエネルギーが要求されます。エネルギーを生成するために消費される酸素に伴い、活性酸素の発生量も増加します。
  • 超加工食品:スナック菓子やインスタントラーメンは酸化されやすい脂質を多く含んでいます。

酸化ストレスは血液成分や血管、皮膚や髪など、体のあらゆる組織にダメージを与えます。血管へのダメージはすぐには知覚できませんが、シミやくすみなどの肌トラブル、抜け毛や白髪などの髪のトラブルは比較的認識しやすいでしょう。

実際に、2014年にエジプトから発表された論文においては、円形脱毛症の患者において、血中の活性酸素の増加と脂質の過酸化が確認されています出典[1]。活性酸素を増やす食事は、脱毛症のリスクを高める可能性があるのです。

夜食にスナック菓子やインスタントラーメンを食べる行為は、就寝中に活性酸素で体を痛めつける行為そのものと考えるべきでしょう。

 

リスク4.胃酸の増えすぎで逆流性食道炎のリスク増大

高頻度で飲み会に参加する方、夜間の暴飲暴食を繰り返している方は、翌朝の吐き気や胸焼け、喉の痛みを感じたことがあるのではないでしょうか。これは就寝中に大量に分泌された胃酸が、食道に上がってくることで起こる現象です。

強い胃酸により食道がダメージを受け続けると逆流性食道炎となり、胃痛や胃もたれ、咳、喉の違和感などが生じます。放置すると食道がんのリスク因子にもなるため、早急な改善と予防が必要です。

逆流性食道炎と睡眠は相互に関係し合っています。逆流性食道炎の悪化は睡眠の質を低下させ、睡眠不足により食道の炎症に伴う痛みを過敏に感じやすくなることが分かっています出典[2]。良質な睡眠の確保のためにも、夜間の胃酸分泌を抑えることは非常に重要です。

胃酸の分泌を増やす要因には次のようなものがあります。

  • 食べ過ぎ:大量の食物の消化には、やはり大量の胃酸が必要です。胃のぜん動運動が活発になることで、胃液が逆流しやすくなります。
  • 高脂肪食:脂質は消化に時間がかかるため、胃酸の分泌も多くなりがちです。
  • 刺激物、酸性が強い食品、アルコールなど:胃酸の分泌を増やす作用があります。

夜は体を横たえているため、胃酸が逆流して食道に向かいやすくなっています。逆流性食道炎のリスクが高いため、とくに注意すべきでしょう。

 

危険!寝る前に避けたい食べ物・飲み物13選

寝る前の食事においては、食べ過ぎを避けることが最も重要です。加えて良好な体調を維持するために、注意すべき食べ物がいくつかあることも理解できたのではないでしょうか。

ここからは、注意すべき性質を持つ食べ物や飲み物の中で、摂取を避けたい具体的なものを13種紹介します。寝る前の飲食が習慣になっている方は、ぜひこの章に目を通して、体調を崩すリスクのある食品を摂っていないかチェックしてみましょう。

1.揚げ物やスナック菓子

夜食に天ぷらやコロッケのような揚げ物や、フライされたスナック菓子は厳禁です。高脂質食は消化に時間がかかるため睡眠の質を落としやすく、カロリーオーバーにもつながるため避けるべきでしょう。胃酸の分泌を促す食品でもあるため、逆流性食道炎のリスクも無視できません。

また、高温に加熱された油は酸化に伴い過酸化脂質を発生しています。揚げ物は揚げ時間が長くなるほど過酸化脂質が増加するため、ファーストフード店などでよくある二度揚げされたフライ類にはとくに注意が必要です。

揚げてから長時間経過した食品も過酸化脂質が増えやすいため出典[3]、スーパーやコンビニに並ぶ天ぷらやフライも、酸化ストレスをより増大させる食品と言えるでしょう。

夜の揚げ物やスナック菓子を避けることで、次のような効果が期待できます。

  • 消化に負担がかからないため内臓が休まり、深く眠れるようになる
  • 余分なカロリー摂取を避け、体脂肪合成のリスクを下げられる
  • 過酸化脂質の摂取を避け、酸化ストレスから体を守る
  • 胃酸の分泌を抑え、逆流性食道炎のリスクを低下させる

どうしても揚げ物を楽しみたい場合は、週に2~3回までを目安に、昼食や早めの夕食での摂取を心掛けましょう。スナック菓子も頻度を落として、日中のおやつとして少量楽しむことをおすすめします。

 

2.するめや塩辛などの高塩分食品

するめや塩辛などは、揚げ物に比べて低カロリーです。高脂質食品は寝る前によくないという判断から「しょっぱいもの」を好んで食べる方も多いのではないでしょうか。

しかし、寝る前にこのような高塩分食品を食べることはおすすめできません。高塩分食品の摂取は口渇感を招くため、一緒に飲む水分の量が増えやすくなるのです。

寝る前の水分補給は睡眠中の脱水を防ぐために欠かせませんが、飲みすぎは中途覚醒の原因になります。深夜や早朝に尿意から目覚めてしまい、深い眠りが妨げられるおそれがあります。

また、高塩分食は高血圧のリスクを上げます。睡眠不足も高血圧のリスク因子となるため、高塩分食と睡眠の質の低下が重なると、血圧の管理がより難しくなってしまいます出典[4]。高血圧は動脈硬化など、重篤な生活習慣病の引き金にもなるため、夜間の「しょっぱいもの」が習慣化している人は要注意です。

寝る前に食べるものにおいては、とくに薄味を心掛けましょう。

 

3.ラーメンや菓子パンなどの高糖質食品

ラーメンや菓子パンといった食品は、寝る前に食べると太る食品の典型例としてイメージしやすいのではないでしょうか。

実際、ラーメンや菓子パンは、寝る前のタイミングで食べるにはカロリーが多すぎる食品です。カルボナーラやきつねうどん、牛丼など、いわゆる食事として食べる「一品もの」の摂取も、寝る前にはとくに危険です。

麺類、丼、菓子パンなどのカロリーを上げている原因は、豊富な糖質にあります。小麦や米、砂糖などは血糖値を急激に上げやすい食品です。血糖値を下げるために大量に分泌されたインスリンが、血中の余った糖を脂肪として蓄えるように働くため、高糖質食品は太りやすいのです。

余分なカロリーと、血糖値を急激に上げる糖質。この二つのコンボは非常に危険です。高糖質食品は量を調整しながら日中に楽しみ、夜間にお腹いっぱい食べることのないよう注意しましょう。

 

4.生ハムやチーズ

生ハムやチーズといった食品もまた、するめや塩辛のように高塩分です。とくに生ハムの塩分濃度は高く、水分の過剰摂取を誘発するため、夜間の摂取はとくに控えた方がよいでしょう。

また、生ハムやチーズには、チラミンと呼ばれる化合物が含まれています。チラミンはアドレナリンやノルアドレナリンなど、興奮性の神経伝達物質の生成を促す働きがあります。

寝る前のチラミン摂取により入眠が妨げられる可能性があるため出典[2]、睡眠の質を落としたくない場合にはとくに注意しなければいけません。

 

5.高カカオチョコレート

カカオポリフェノールには、抗酸化作用や脂肪燃焼作用など、さまざまな効果が確認されています。また、チョコレートに含まれるGABAやテオブロミンといった物質は、リラックス効果をもたらし入眠をスムーズにする働きがあります。

そのため、寝る前に高カカオチョコレートを食べれば快眠効果が期待できるのでは、と考える方も多いかもしれませんね。

しかし高カカオチョコレートには、カカオ由来のカフェインも含まれています。覚醒作用をもたらすカフェインは、摂取後30分ほどで速やかに吸収される成分です。寝る前に摂取すると、ちょうど眠りたいタイミングで覚醒作用が強く出てしまうのです。

また、高カカオチョコレートは甘さが控えめであるとはいえ、糖質や脂質がある程度含まれています。毎晩の摂取を習慣化すると体脂肪合成のリスクも高まるため、体重管理のためにも控えた方がよいでしょう。

チョコレートによる快眠効果を期待したい場合には、朝に食べるようにしましょう。快眠効果をもたらすGABAは日中の摂取においても有効であることが、2017年にGABAストレス研究センターから発表されています出典[5]

夜の高カカオチョコレートの摂取は、睡眠のためにも体重管理のためにもよくありません。適量を朝に摂取して、睡眠の質の向上に役立てましょう。

 

6.赤身肉

肉類からはセロトニンやメラトニンの材料となるトリプトファンを摂取できますが、寝る前の摂取には不向きです。

肉類は消化に負担のかかる食品であり、睡眠中に胃腸を酷使することにつながります。体を十分に休めることができずにいると、疲労回復の効率も落ちてしまいます。

また、牛肉や豚肉を食べる際には、脂質量にも注意が必要です。やわらかく食べやすいバラ肉は全体の3~4割が脂質であり、カロリーオーバーを招きやすい食品です。

一方で、高たんぱく質食品である肉類には、満腹感を高めやすいというメリットもあります。寝る前の空腹が辛くて眠れない場合には、低脂質な鶏むね肉やささみ肉を少量食べるようにしましょう。消化によい卵と合わせることで、食事への満足感をより高められます。

 

7.トマトを使った料理

βカロテンやビタミンCなどの抗酸化物質を含むトマトは、体の活性酸素を減らしたい場合の食品として適しているように見えます。しかし寝る前のトマトの摂取は胃酸の分泌を促進し、逆流性食道炎のリスクを高めてしまうのです出典[6]

トマトを食べてから横になると、増えた胃酸が食道へと逆流しやすくなります。生のトマトはもちろんのこと、トマトジュースやトマトを用いたスープの摂取も、夜は控えた方がよいでしょう。

トマトは抗酸化効果や脂肪燃焼効果などが期待できる優秀な食品です。逆流性食道炎の心配がない場合には、寝る前以外のタイミングで、積極的に料理へ取り入れてみましょう。

 

8.スイカやみかんなどの水分が多い果物

果物は低脂質であり、血糖値を急激に上げにくい食品です。ビタミン類の供給源としても適しており、活性酸素の働きを抑える効果が期待できます。しかしスイカやみかんなど、水分の多い果物は避けるべきでしょう。

寝る前の水分の過剰摂取は、深夜や早朝の尿意につながります。加えて果物には利尿作用のあるカリウムが豊富に含まれているため、より強く尿意を感じやすい特徴があります。

カリウムの利尿作用は見落とされがちですが、果物からの摂取が睡眠の妨げとなる場合があるため注意が必要です。スイカやみかんは日中に摂取し、夜のデザートや夜食には控えましょう。

 

9.カフェイン飲料

寝る前のコーヒーやエナジードリンクが入眠の妨げとなることは、想像しやすいのではないでしょうか。

コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインには強い覚醒作用があるため、入眠の妨げとなります。またカフェインには利尿作用もあるため、深夜や早朝の覚醒が起こりやすくなり、眠りが浅くなりやすい点も問題となります。

2013年にアメリカから発表された論文においては、就寝6時間前のカフェイン摂取においても、睡眠時間の短縮や中途覚醒などの睡眠阻害効果が確認されたと報告されています出典[7]

カフェインの感受性には個人差がありますが、一般的には覚醒作用の効果は6時間ほど続くと推測されます。寝る前はもちろん、夕食時のコーヒー摂取も控えた方がよいでしょう。

良質な睡眠を確保するためには、夕方までにカフェイン飲料を飲み終えておくことをおすすめします。

 

10.濃い緑茶

緑茶に含まれる成分「テアニン」にはリラックス効果が期待できますが、寝る前の摂取はおすすめできません。濃く煮出された緑茶にはカフェインが多く含まれるため、睡眠の妨げとなる可能性があるのです。

カフェインの覚醒作用はテアニンとの共存により軽減されるため出典[8]、緑茶の摂取によりコーヒーほどの強い入眠阻害は発生しないと考えられています。しかし利尿作用により深夜や早朝の覚醒が起こりやすくなるため、やはり寝る前の摂取は避けるべきでしょう。

緑茶のテアニンによるリラックス効果を期待したい場合には、カフェインレス緑茶の活用がおすすめです。温めたカフェインレス緑茶を寝る30分前に飲むことで、入眠をスムーズにする効果が期待できるでしょう。

 

11.清涼飲料水

炭酸ガスが含まれる飲料は、私たちが舌で感じる甘さ以上の糖類が含まれています。炭酸ガスが抜けたジュースを飲んだ際、舌に貼り付くような強い甘さを感じた経験のある方も多いのではないでしょうか。

多量の糖類が含まれる清涼飲料水は、血糖値を急激に上昇させます。飲み物であるため、カロリーとしてはスナック菓子や揚げ物に及ばないものの、インスリンを分泌させる力が強い点に注意が必要です。

寝る前に甘いものを味わいたい場合には、スプーン1杯のはちみつを試してみましょう。はちみつは砂糖よりも低エネルギーでありながら、砂糖よりも甘みが強い食品です。ホットミルクやカフェインレスのお茶とも相性がよいため、溶かして味わうとリラックス効果も同時に得られるでしょう。

 

12.オレンジジュース

果汁100%ジュースであれば、血糖値を上げにくいのではと考える方もいるかもしれません。確かに果物由来の果糖は、砂糖に比べて血糖値の上がりが緩やかであるため、体脂肪合成のリスクは比較的低めです。

しかしオレンジジュースやグレープフルーツジュースなど、柑橘系のジュースは胃酸の分泌を増やす性質があります出典[6]。逆流性食道炎のリスク因子となるため、寝る前の摂取は避けた方がよいでしょう。

 

13.アルコール飲料

眠れない夜に「寝酒」として、アルコールを飲む人もいるかもしれません。確かにアルコールには眠気を強めて寝付きをよくする作用があるため、眠りやすくなったと感じる場合もあるでしょう。しかしアルコールの摂取により、睡眠の質は確実に下がっているのです。

アルコールが体内で代謝される際に生じるアセトアルデヒドには、交感神経を活発にする働きがあります。またアセトアルデヒドの代謝のために発汗も活発になり、寝苦しさを感じる場合も多いようです。

さらに、アルコールにはカフェインに劣らない強力な利尿作用があります。深夜や早朝の覚醒が起きやすく、一度目覚めるとアセトアルデヒドの影響により再度の睡眠が難しくなってしまうのです。

就寝の1時間前に飲んだアルコールは、たとえ少量でも、就寝から数時間後の睡眠を阻害します出典[9]。良質な睡眠の確保のため、アルコール摂取は1回1合を寝る4時間前までに済ませるよう心掛けましょう

 

まとめ

寝る前に食べるものを間違えると、睡眠の質の低下や体脂肪増加など、さまざまな影響が現れます。良好な体調管理のため、本記事で紹介した食べ物や飲み物には十分注意しましょう。

また、トマトや果物、緑茶や高カカオチョコレートなどは、食べるタイミングや量を工夫することでさまざまな健康効果を発揮します。適量の摂取を心がけ、体調管理や睡眠の質の向上、疲労回復に役立てましょう。

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