【寝不足で太る人・痩せる人】睡眠と体型の変化の謎に迫る!!
2023年10月23日更新

執筆者

上級睡眠健康指導士

室井 優作

(株)アルファメイルに入社後、食事や運動、睡眠の観点からヘルスケアについて学んでいます。お客様と対話をする中で特に睡眠の重要性を感じ、上級睡眠指導士を取得しました。寝ることは、食事や運動に比べ軽視されやすい傾向があります。身体的疲労の回復だけでなく、ホルモンバランスを整える時間帯でもあります。主に睡眠の観点から皆様のヘルスケアにお役立ちできるよう有益な情報をお届けしていきます。

そもそも体型が変化する仕組みとは?

突然ですが、本記事をご覧の方は、寝不足になると太りやすいですか?または痩せやすいですか?

SNSでは寝不足になると下腹が出てきたというコメントもあれば、逆に頬がコケてげっそりしてきたというコメントもあります。同じ寝不足でも、なぜこうも真逆の結果になるのでしょうか。

体型の変化は「消費カロリー」と「摂取カロリー」のバランスが崩れた際におきます。太る場合は、消費カロリーよりも摂取カロリーが多い状態。逆に、痩せる場合は摂取カロリーよりも消費カロリーが多い状態です。

 

 

つまり、体型が変化する仕組みは、寝不足かどうかに関わらず消費カロリーと摂取カロリーの関係性にあることが言えるのです。

では、消費カロリーと摂取カロリーとは具体的に何を指しているのでしょうか?

消費カロリーは大きく「基礎代謝」「身体活動」の2つに分けることができます。基礎代謝とは、生命維持に必要な最低限の代謝を意味します。例えば、心臓を動かす際のエネルギー消費を基礎代謝と呼びます。身体活動とは簡単に言えば運動です。通勤のために最寄り駅まで歩いたり、ジムで筋トレをしたりすることが身体活動と言えます。また摂取カロリーは、「食事」を指しています。

上記のことから寝不足で体型が変化する原因は、「基礎代謝・食事・身体活動」の3つが睡眠時間からの影響を受けているためなのです。

 

知られざる睡眠の効果とは? 基礎代謝・食事・運動との関係性

では、「基礎代謝・食事・身体活動」と睡眠はどのような関係性があるのでしょうか?ここからは各要素と睡眠との関係性を探ってみましょう。

 

寝不足だと400kcalも基礎代謝が下がる!?

寝不足の方は、もしかしたら毎日ケーキ1個を食べてしまっている状態と言えるかもしれません…。

太り気味で悩んでいる方にとって、これほどまで恐ろしいことはありません。なぜ、そのようなことが言えるのか説明していきます。

実は寝ることで基礎代謝が高い状態を保つことが可能です。なぜなら、基礎代謝に関与する成長ホルモンとテストステロンの分泌量が睡眠時間によって変動するためです。


出典[1]から作成】

出典[2]から作成】

成長ホルモンとテストステロンには、主に2つの効果があります。1つ目は、脂肪細胞からエネルギーを合成する働き、つまり脂肪を燃焼する効果です。

2つ目は、筋肉の成長を促進する効果です。筋肉を大きくするには、トレーニングで筋繊維を損傷させ、それを修復する必要があります。成長ホルモンとテストステロンは、この修復プロセスで必要な筋たんぱく質の合成を促進する作用があるのです。脂肪燃焼作用と筋肥大を促す作用によって、基礎代謝が高い状態に繋がるのです。

つまり、寝ることで基礎代謝が高い体質に変わり、消費カロリーを上昇できるのです。

一方、寝不足の場合は成長ホルモンとテストステロンの分泌量が不十分になるため、基礎代謝が低い状態になってしまいます。

実際に、同じ食事内容と運動量で短時間睡眠(5.5時間)のグループと十分な睡眠時間(8.5時間)を確保したグループの脂肪量の減少割合を比較したところ、短時間睡眠の方が脂肪量の減少率が大幅に低かったことが報告されています。
 

出典[3]から作成】
 

また、十分な睡眠時間を確保した被験者の消費カロリーが約920kcal/日なのに対し、短時間睡眠の場合は約520kcal/日と、400kcalもの差があることが明らかにされました。

400kcalとはショートケーキ1個分に相当します。つまり、極端な話ですが継続的に寝不足状態だと、毎日ケーキ1個食べてしまっていると言えるかもしれません。

このことから、寝不足の場合は基礎代謝において重要なホルモン分泌が活性化せず、消費カロリーが低下してしまうのです。

 

夜中に爆食いしてしまうのはホルモンのせい!?

夜中にお腹が空いて、つい高カロリーのお菓子やカップラーメンを食べてしまい、翌日後悔したことはありませんか?

実は夜中に食欲が湧いてくるのは、ホルモンバランスの乱れが影響しているのかもしれません。食欲を刺激する「グレリン」と、食欲を抑制する「レプチン」というホルモンの分泌量は、睡眠時間によって変動することがわかっています。

 

出典[4]から作成】
 

上記のグラフからは、2つのホルモンの分泌量が睡眠時間に影響を受けることがわかります。グレリンの分泌量は、睡眠時間と反比例の関係にあります。睡眠時間が長くなるにつれてグレリン濃度は減少し、睡眠時間が短くなるとグレリン濃度が上昇していきます。対して、レプチンの濃度は睡眠時間と正比例の関係であることが分かります。

寝不足の場合はグレリンの分泌量が上昇し、レプチンの分泌量が低下してしまうため、食欲が増え過食になる傾向にあるのです。

実際の臨床試験でも睡眠時間が短い場合、食欲が増加することが確認されています。12人の被験者を対象とした研究では、最初の2日間は4時間しか睡眠をとらせず、その後の2日間は10時間の睡眠を確保しました。その結果、4時間しか睡眠をとっていない場合、10時間の睡眠と比較して食欲が23%も高まったことが明らかになっています。

 

出典[5]から作成】
 

さらに、被験者はケーキやお菓子などの高炭水化物食を好んで食べることも報告されています。夜更かしすると、いつもは我慢できるようなお菓子やカップラーメンを無性に食べたくなってしまうのは、寝不足によるホルモンバランスの乱れが原因かもしれませんね。

 

運動へのモチベーションが湧かない原因は睡眠不足かも!?

寝不足の場合は、だる重〜っと感じて身体を動かしたくないですよね。これは前項でもお話した成長ホルモンとテストステロンの分泌が不十分なためかもしれません。

身体が重い状態とは筋肉が疲労している状態です。成長ホルモンとテストステロンは筋疲労の原因である筋繊維の損傷を回復させる効果があるため、肉体的な疲労を緩和できるのです。

また、寝不足の場合、精神的な疲労も感じることが一般的です。そもそも、やる気が起きないという方が多いと思います。

そのやる気が起きない原因は、ドーパミンが活性化していないためかもしれません。ドーパミンはやる気を出す際に必要なホルモンなのですが、非活性化してしまうと身体活動量(運動量)が減少してしまう可能性があるのです。

実際にラットを対象にした動物実験において、ドーパミンの働きを抑制した際、自発的な運動(回し車)をしなくなる傾向があることがわかっています出典[6]

また、睡眠時間が不足している場合は、ドーパミンの作用が抑制されるとハーバード大学の研究者が報告しています出典[7]。(ドーパミン自体は分泌されるものの、睡眠時間の不足により受容体との結合が阻害されてしまうのです)

このことから、睡眠時間が短いと成長ホルモンとテストステロンの不足による身体的な疲労感や、ドーパミン作用の抑制により身体活動量が減少する傾向があるのです。その結果、消費カロリーが低下し体重増加のリスクが高まると言えるのです。

 

寝不足で痩せてしまう3つのケースとは!?

ここまでの内容から寝不足になると基礎代謝は低下し、食事量は増え、身体活動量も減少してしまう傾向にあるこから、太りやすいということが分かりまた。

「え、でも私は寝不足だと痩せるけど?」と思った方は次に紹介する3つのケースが当てはまるのではないでしょうか?それぞれ説明していきましょう。


 

◆多忙について
寝不足で痩せてしまう方の中には、仕事が忙しく食事の時間も確保できない方がいるのではないでしょうか。繁忙期ともなれば、バリバリ働いているので普段よりも軽めの昼食で済ませてしまう方がいるかもしれません。その場合は、やはり摂取カロリーが減るため痩せてしまいます。

 

◆食欲不振について
睡眠時間が足りないと、どうしてもイライラしやすくなったりしませんか?ストレスが溜まった状態が継続すると胃腸の働きが悪くなることがわかっています出典[8]そのため、食物が適切に消化吸収されず、食欲が減退し体重の低下に繋がるのです。

 

◆筋肉量の減少について
実は、慢性的な寝不足状態だと筋肉量が減少する可能性があります。寝不足の状態が続くとストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールが過剰に分泌されてしまいます。コルチゾールは筋たんぱく質を分解する働きがあるため、筋肉量が減少してしまうのです出典[9]

 

そのため、寝不足になると筋肉量が減少し筋肉の減量分の体重が落ち、痩せたと感じるケースがあるかもしれません。
 

【番外編】寝過ぎた場合は〇〇になるリスクが21%上昇!?

今までの内容で寝不足になると太りやすい体質になることや、状況によっては不健康な痩せ方をするケースもあることが分かりました。では寝過ぎた場合、体型はどう変化するでしょうか?

結論から言うと、寝過ぎた場合は太る可能性が高いです。実際に6年にも渡る長期的な調査では寝過ぎた場合、肥満になるリスクが高いことが報告されています。下記のグラフで示されている通り、8時間睡眠を境に平均9時間以上寝ている被験者はBMI値(肥満度を示す指数)が高くなりやすいことがわかっています。

 

出典[10]から作成】

さらに、平均7〜8時間寝ているグループと平均9~10時間寝ているグループを比較したところ、平均9~10時間寝ているグループは6年後の体重が5kg増加する可能性が25%高く、肥満のリスクも21%上昇してしまうのです。

寝過ぎた場合、肥満のリスクが高くなるメカニズムは明確にはされていませんが、起床時間が短いことによる消化カロリーの減少が原因と予想されています。

寝る子は育つと言いますが、成人後に必要以上に寝てしまうとウエストが成長してしまうかもしれません。

 

まとめ:モテボディ実現の一歩は、8時間睡眠にあり!!

同じ寝不足でも太りやすい場合や、身体を壊すような痩せ方をする場合があること、そして寝過ぎた場合、肥満のリスクが高まることが理解できました。寝不足の場合も寝過ぎの場合も健康的でない体型の変化が起きてしまうのです。

寝不足による体型の変化でお悩みの方に最も伝えたいことは、適切な睡眠時間を確保することです。

健康的な体型または引き締まった身体を手に入れるためには、もちろん食事管理や運動は重要ですが、同じように睡眠も意識する必要があるのです。

最適な睡眠時間は個人によって異なりますが、推奨される8時間前後の睡眠を目指しましょう。

 

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