プロテインを飲むとテストステロンが増えるって本当?知っておくべき5つの事実
2023年11月20日更新

執筆者

薬剤師

塩見 友香

大学卒業後、総合病院に勤務し、内科・泌尿器科・透析科・循環器科での服薬指導を経験。日本糖尿病指導療法士、栄養サポートチーム専門療法士、心不全指導療法士の資格を有する。現在は未就学児2人を子育てしながら病院薬剤師として従事、現場経験をもとに医療ライターを行う。

「プロテインを飲むとテストステロンが増える」は誤解

早速結論ですが……近年の研究では、プロテインとテストステロンの直接的な関連性はなく、残念ながらプロテインにテストステロンを増やす効果はないことがわかっています。

2007年にニュージャージー大学が実証実験を行っています。出典[1]

経験豊富なアスリート21人を対象に、片方のグループはプロテイン(タンパク質42g、炭水化物18g、脂肪3g)を、もう一方はプラセボ(タンパク質2g、炭水化物63g、脂肪2g)を朝とトレーニング後に摂ってもらいました。

両グループに対して、週4回レジスタンストレーニングプログラムを12週間行い、体内のテストステロンの変化量を評価しています。

結果、どちらのグループでもテストステロン値の変化は見られなかったのです。

したがって、プロテインとテストステロンに直接的な関連性は認められず、飲むだけで誰もがテストステロンを増やせるわけではないといえます。

 

プロテインでテストステロンを増やしたい人が知っておくべき5つのこと

先ほど、プロテインにテストステロンを増やす直接的な効果がないことを示しましたが、実はプロテインの間接的な効果の可能性が示唆されています。またその一方で、プロテインの間違った摂り方でテストステロンを低下させることもあるのです。

ここでは、プロテインの新たな可能性と、適切な摂り方を解説します。また、いま注目の「テストステロンブースター」についても説明しますので、テストステロンを増やしたい方は是非最後まで読んでください。

 

1.ストレス耐性が低い人にはプロテインは効果的かも?

ストレスを感じやすい人はホエイプロテインを摂ることで、間接的にテストステロンを高めることができるかもしれません。

プロテインは、原料によってさまざまな種類があります。そのなかで、牛乳を原料とするのがホエイプロテインです。ホエイプロテインはストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを低下させる効果が示唆されています。コルチゾールが高まると、テストステロンは低下する関係があり、したがってコルチゾールが低下するとテストステロンが高まる可能性があるのです。

2000年のオランダのTNO 栄養食品研究所の実験では、ホエイプロテインとコルチゾールの関係が実証されています。出典[2]
58人のストレス耐性が低い被験者に対して、ホエイプロテインに含まれるα-ラクトアルブミン摂取群とプラセボ群にわけ、ストレスを人工的に与えました。

結果、α-ラクトアルブミン摂取群はコルチゾールの減少が見られています。

プロテインでテストステロンを増やしたい方は、ホエイプロテインを取り入れてみるのはいかがでしょう。

 

2.食事で摂取できていればプロテインパウダーの必要性は薄い

プロテインとはタンパク質を強化した食品で、その意義は食事では足りないタンパク質を手軽に補うこと。つまり、食事で十分なタンパク質量が摂取できている場合には、プロテインを飲んでも筋トレの効率を上げる効果はあまり期待できません。

たしかに、筋肉質な身体を目指す人は、筋肉を作るために通常より多めのタンパク質が必要ですが、実際にどのくらい必要かはご存じですか?実は、これまでの研究で筋肉増強効果に適切なタンパク質量がわかっています。

2022年に株式会社 明治と早稲田大学スポーツ科学学術院が共同発表した論文を紹介します。出典[3]

2022年3月までに発表された、筋トレによる筋力の変化率とタンパク質摂取量の関係性について研究した82件の論文をメタ解析しました。*メタ解析とは、条件が似ているいくつかの論文の結果を統合し、より信頼性の高い結果を求める統計的手法のこと。

その結果では、筋力はタンパク質の摂取量が1日あたり0.1 g/kg増加するごとに0.72%増加しました。ですが、1.5 g/kgでピークとなり、それ以降は筋力の増加は認められませんでした。

したがって、筋肉増強のためには毎日体重1kgあたり1.5gのタンパク質を摂るのが最も効果的です。食事で必要量を摂れないときは上手にプロテインを活用するといいですね。

 

3.タンパク質の摂りすぎはかえってテストステロンを低下させる

トレーニングをストイックに取り組まれる方は、とにかくたんぱく質をたくさん摂って糖質と脂質はカット……なんて食生活を送っていませんか?

タンパク質を上手に摂ると筋肉質な身体に近づける一方で、過剰摂取は逆効果。タンパク質の摂りすぎと糖質の過剰な制限は、男性ホルモンであるテストステロンの分泌を減らしてしまうのです。

高タンパク食とテストステロンの関連を、1987年アメリカのロックフェラー大学病院が示しています。

7人の健康な男性に対して、高タンパク食と高炭水化物食をそれぞれ10日間摂ってもらったあとに、体内のテストステロンの量を評価しました。

高たんぱく食の場合、体内のテストステロンの量が3.71±23 ng/dlに対して、高炭水化物食は468±34ng/dlと圧倒的なちがいを認めました。出典[4]

また、2018年にアメリカが発表した別の研究でも同様の結果が得られています。レジスタンストレーニングを行う男性10名(平均年齢 22.6±4.12 歳)の食事に含まれるタンパク質を20%から50%へ増やしたところ、体内のテストステロンが17%減少しています。出典[5]

過剰なプロテインの摂取や糖質制限をすると、テストステロンを増やすどころか裏目に出るため注意が必要です。

 

4.ソイプロテインの摂りすぎにも注意が必要

ソイプロテインとは、大豆を原料とした植物性のプロテイン。

脂肪分が少なく、イソフラボンも含まれていることからアスリートだけでなく、女性からも注目されています。

そんなソイプロテインですが、高用量で摂取するとテストステロンに影響が出る可能性があるのです。

2003年イギリスのウェールズ大学病院医学部が、イソフラボンの摂取量とテストステロンについての研究を発表しています。出典[6]

20名の男性ボランティアに、1日3個の大豆粉入りスコーン(イソフラボン120mg)を6週間食べさせたところ、体内のテストステロン量が5.7%減少しました。

では、テストステロンに影響なく摂れる、イソフラボンの量はどれくらいなのでしょうか?

2021年イギリスのエセックス大学の研究では、イソフラボン1日75mgまではテストステロンの分泌に影響しないことが示されています。出典[7]

国立健康・栄養研究所情報センターが行った分析では、市販の大豆プロテインパウダー1食分(20g)にはイソフラボン23〜44mgが含まれています。出典[8] 

また筆者が調査したところ、現在市販されているソイプロテインは1食あたりのイソフラボンが60mg程度であるため、1杯までなら問題なく摂ることができそうです。

 

5.テストステロンを増加させるには基礎栄養素では不十分

生体内でテストステロンが作られる過程において、さまざまな栄養素が関わっています。そのため、テストステロンを増やしたいのであれば、まず栄養バランスのとれた食事を意識することが大切です。出典[9]

ただ、それでは物足りない人は「テストステロンブースター」と呼ばれる素材を取り入れてはいかがでしょう。

2020年にオーストラリアで発表された論文では、2001〜2019 年にテストステロンを増やす素材について研究された32 件の文献で、13種類のハーブが効果的であったとされています。出典[10]そのハーブの中にフェヌグリークというマメ科の植物があります。

フェヌグリークには、ジオスゲニンという天然のステロイド化合物が豊富に含まれています。ジオスゲニンはテストステロンの前駆体であり、つまりジオスゲニンを摂ることでテストステロンをより生成できると考えられています。

テストステロンを増やしたい方は、基礎栄養素であるプロテインではなく、テストステロンブースターを検討されるとより効果的かもしれません。

 

テストステロンを増やしたいならプロテイン+テストステロンブースターがおすすめ

プロテインにはテストステロンを直接増やす効果はありません。

ただし、プロテインの一部の種類には、テストステロンを間接的に増やす可能性があることがわかっています。

テストステロンを増やすには、まず栄養バランスのとれた食事を意識すること。ほかには、「テストステロンブースター」と呼ばれる成分を取り入れるのも一手です。

特にテストステロンブースターのひとつであるフェヌグリークは、実際に臨床研究でメカニズムが実証されているためおすすめです。

テストステロンを増やしたい方は、データに基づいて有効な取り組みを行いましょう。

 

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