監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
腹筋を割るための食生活におけるポイント3選
筋力トレーニングの目標として「割れた腹筋」を掲げる方は多いのではないでしょうか。
筋肉量を増やし、脂肪を燃やすためにトレーニングは欠かせませんが、引き締まった体づくりのためには食生活への注意も必要です。
たんぱく質の十分な摂取、トレーニング前後の糖質補給、などの一般的なルールに加え、腹筋を割るためにはさらに気を付けるべき点があります。
腹筋を割るために意識したいポイントについて解説しましょう。
ポイント1.体脂肪率15%以下を目指してカロリー調整を
腹筋を割りたい場合、筋肉を鍛えることに加え、体全体をある程度引き締める必要があります。
体脂肪が多い状態では、筋肉量を増やしても腹筋は割れて見えません。
一般に、腹筋が割れて見える体脂肪率は、男性では15%前後とされています。健康的な男性の体脂肪率は10~19%程度です。
体脂肪率が20%を超えると肥満気味になり、標準体重であっても腹筋を割ることは難しくなります。
体脂肪率の減少には、筋力トレーニングに加えて食事での調整が欠かせません。
1日の摂取カロリーが過剰でないか、毎日の食事量を見直すところから始めましょう。
高脂質食品のようなエネルギー密度の高いものをよく食べている場合には、カロリーカットのため食生活を変える必要があります。
そもそもの食事量が多い場合にも調整が必要です。体脂肪合成を抑えるため、適切なカロリーカットをおこないましょう。
ポイント2.悪質な脂質は食べない
摂取カロリーを押し上げやすいのは脂質です。1gあたり4kcalのたんぱく質や炭水化物とは異なり、脂質は1gで9kcalものエネルギーを生成します。
エネルギー密度の高い栄養素は、量を控えることはもちろん、その質にも注意する必要があるでしょう。
脂質を構成する脂肪酸にはエネルギーとして使われやすいものと、体脂肪として蓄えられやすいものがあります。
肉類や乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸、とくに長鎖脂肪酸は体脂肪になりやすいため、摂取を控えたほうがよいでしょう。
一方、ごま油やサラダ油などに含まれる不飽和脂肪酸は、比較的エネルギーとして使われやすい性質があります。
しかし不飽和脂肪酸は高温加熱により酸化されやすく、過酸化脂質を生じる場合があります。
過剰な過酸化脂質は酸化ストレスとして体にダメージを与えます。筋細胞の機能が低下したり、筋肉の合成と分解のバランスが悪化したりするため出典[2]、過酸化脂質の摂りすぎは筋肉にとってもよくありません。
また、マーガリンやショートニングなど、植物油脂を固形に加工したタイプの油脂にはトランス脂肪酸が多く含まれています。
加工により発生したトランス脂肪酸の摂取は体重増加と強い相関があるため出典[1]、腹筋を割りたい場合には避けるべきです。
飽和脂肪酸や高温加熱された不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の摂取に注意することで、脂質による体への悪影響を最小限に抑えることができるでしょう。
ポイント3.血糖値を急激に上げるものを控える
筋肉量を増やしつつ体脂肪の合成を抑えたい場合には、エネルギー源となる糖質の種類や摂り方にも注意する必要があります。
警戒すべきは血糖値を急激に上げる食品。糖質のみを大量に含む、白米や精製された白い小麦食品、菓子類の大量摂取は太るもとと考えるべきでしょう。
一度に大量の糖質を摂取すると、血糖値が急激に上がり、インスリンが過剰に分泌されます。
インスリンは血中の余分な糖を、脂肪として体に蓄えるよう促す性質を持っています。インスリンの分泌量が増えるほど、体脂肪が合成されやすくなるということですね。
体脂肪合成を抑えて引き締まった体を作るため、血糖値を急激に上げる食品の食べ過ぎにはとくに注意しましょう。
腹筋を割るために食べてはいけないもの10選
腹筋を割るため避けるべき食品の性質は、おおむね次のようにまとめられます。
- エネルギー密度の高い高脂質食品
- 血糖値を急激に上げる食品
- 筋肉の合成を妨げる食品
- 酸化ストレスを増やしやすい食品
このような性質を持つ食品の中で、とくに摂取を警戒すべきものを10個紹介します。日常的に以下の食品を食べたり飲んだりしている場合には、割れた腹筋を手に入れるため、摂取を一度見直してみましょう。
1.揚げ物
基本的に、衣をつけて油で揚げた食品は高脂質高カロリーになることを覚えておきましょう。調理法でカロリーや脂質が大きく異なる例として、2つの食品を取り上げ比較します。
【かき100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表2020年版(八訂)より)出典[3]】
カロリー(kcal) | 脂質(g) | |
かき(養殖・生) | 58 | 2.2 |
かき(水煮) | 90 | 3.6 |
かき(かきフライ) | 289 | 18.0 |
【なす100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表2020年版(八訂)より)】
カロリー(kcal) | 脂質(g) | |
なす(果実・生) | 18 | 0.1 |
なす(ゆで) | 17 | 0.1 |
なす(油炒め) | 73 | 5.8 |
なす(天ぷら) | 165 | 14.0 |
生の状態では低脂質であったはずのナスやかきも、揚げ物にすることで一気にカロリーと脂質量が増加します。
天ぷらやフライを食べる頻度が高い方は、カロリーや脂質を摂りすぎているかもしれません。
通常の食事においても揚げ物は週2~3回に抑えるべきですが、腹筋を割りたい場合にはさらに頻度を落とす必要があるでしょう。
また、揚げ物は揚げ時間が長くなるほど、また揚げてから時間が経過するほど過酸化脂質が増えやすい性質があります出典[4]。
過酸化脂質による過剰な酸化ストレスは、筋肉を鍛える上での大敵。二度揚げされたファーストフード店のフライドポテトや、スーパーやコンビニに長時間並べられた天ぷらやフライの利用は極力避けた方がよいでしょう。
2.サーロインやバラ肉
筋肉の合成のためには、必須アミノ酸のバランスがよい動物性食品の摂取が効率的。
しかし肉類の中には、たんぱく質のみならず多量の脂質が含まれているものもあります。腹筋を割るためには、食べる肉の部位や種類にも意識を向ける必要があるでしょう。
【肉類100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表2020年版(八訂)より)】
カロリー(kcal) | 脂質(g) | |
牛サーロイン | 273 | 23.7 |
牛ばら肉 | 338 | 32.9 |
牛ヒレ肉 | 123 | 4.8 |
豚ばら肉 | 366 | 35.4 |
豚ヒレ肉 | 118 | 3.7 |
鶏むね肉(皮なし) | 113 | 1.9 |
牛サーロインや牛ばら肉、豚ばら肉には脂質が多量に含まれており、カロリーを押し上げる原因となっています。
焼き調理によりすべての脂を溶かし落とせるわけではないため、柔らかいサーロインやばら肉の摂取が習慣化している方は要注意。
カロリーと脂質量の調整のため、頻度をぐっと落とすか、思い切って「脂身断ち」をするのもよいでしょう。
良質なたんぱく質源として肉類の摂取を積極的におこないたい場合には、鶏むね肉や豚ヒレ肉など、低脂質なものを選ぶ癖を付けることをおすすめします。
3.インスタント食品
カップラーメンやご飯もののようなインスタント食品は、栄養価が糖質と脂質に偏りがちです。加えて、インスタント食品からは、筋肉の合成に欠かせないたんぱく質や、エネルギーの産生に必要なビタミン類などをほとんど摂取できません。
体に必要なほかの栄養素を摂れないまま、体脂肪の材料ばかりを蓄えてしまうため、習慣的な摂取はたいへん危険です。
さらに、インスタント食品のほとんどは味が濃く、高塩分。高糖質・高脂質・高塩分の食品は食欲を増進させるため、食べ過ぎてしまいやすいという危険性も・・・。
カップラーメンの中には、エネルギーや脂質を抑えて健康的であることをアピールする商品もあります。しかし低脂質な商品はしっかりとした味を出すために塩分を増やしている場合があるため、食欲が刺激されて摂取量が増えやすい点は変わりません。
腹筋を割るためには、食事量をコントロールしづらくする、いわゆる「おいしい」食品に注意すべきです。インスタント食品の利用は極力控えましょう。
4.スナック菓子
スナック菓子もまた、カップラーメンと同様に高糖質・高脂質・高塩分の食品です。しょっぱい味付けや甘辛い味付けは食欲を増進させる性質が強いため、つい食べ過ぎてしまいがち・・・。
大きな袋で購入したポテトチップスが、ながら食べをしているといつの間にか空になっていた、という経験がある方も多いのではないでしょうか。
一般的な「間食」に適したカロリーは200kcalほど。スーパーやコンビニで購入できるサイズのスナック菓子のカロリーは1袋で300~500kcalほど。食事以外の間食やおつまみとしては明らかに過剰摂取と考えましょう。
また、スナック菓子に含まれる脂質が消化に負荷をかけるほか、塩分の高さが喉の乾きにもつながるため、トレーニング前のエネルギー補給としても適していません。腹筋を割るための食生活に毎日のスナック菓子は厳禁と覚えておきましょう。
5.ラーメンやパスタなどの麺類
ラーメンやパスタ、うどんなどは、外食時の食事としてよく選ばれやすいメニューです。毎日の昼食を外で済ませている方の中には、ほぼ毎日ラーメンのような麺類を食べている場合もあるかもしれませんね。
ラーメンやパスタ、うどんなどの一品注文で食事の満足感を得ようとした場合、どうしても麺の量が多くなります。ラーメンやうどんの大盛の場合には明らかな糖質過剰となり、血糖値を急激に上げてしまいます。
また、ラーメンやうどんのお店では、血糖値の上昇を緩やかにするための、野菜を使った副菜を入手しづらいという難点も・・・。
おひたしやサラダのような野菜の小鉢の摂取がない状況では、血糖値がより急激に上がりやすくなります。インスリンの大量分泌により体脂肪合成が促されるため、麺類の摂取頻度は落とした方がよいでしょう。
外出先での昼食は、主食に加え、たんぱく質食品である肉や魚、副菜となる野菜類などを摂取できる、定食形式の食事がおすすめ。焼き魚定食や生姜焼き定食などを食べられるお店が近くにないか、一度チェックしてみましょう。
6.朝食やおやつの菓子パン
朝食やおやつに菓子パンを食べることが習慣になっていませんか? 菓子パンはほとんどの場合、精製された小麦粉と砂糖が大量に含まれているため、ラーメンやうどんと同様に注意すべきです。
とくに、朝食に菓子パンのみを食べる生活は非常に危険です。夜間は食物の摂取がないため、朝の体は栄養の吸収を待ち望んでいる状態にあります。
ただでさえ血糖値が上がりやすい時間帯に、高糖質な菓子パンを食べてしまうと、血糖値の上がりは凄まじいものになってしまうでしょう。
また、おやつとして菓子パンを食べる場合にも、1個あたりのカロリーに注意すべきです。メロンパンやチョココロネのカロリーはおおむね300~400kcalほどであり、スナック菓子と同様に1回の間食量としては過剰となります。
余分な摂取カロリーは当然ながら体脂肪合成に直結するため、腹筋を割ることが難しくなるでしょう。
ただし菓子パンの中でも、クリームを使っていないあんパンやジャムパンのような食品であれば、トレーニング前のエネルギー補給として活用できます。
朝食やおやつとして菓子パンを食べている方は、種類とタイミングを変えられるよう検討してみましょう。
7.洋菓子やアイスクリーム
ショートケーキやドーナツのような洋菓子は、高糖質かつ高脂質な食品。アイスクリームも同様に、1個あたり300kcal弱の摂取につながります。腹筋を割りたい場合の間食としては、やはり避けるべきでしょう。
また、洋菓子はトレーニング前のエネルギー補給としても使いづらい食品です。食品中の脂質は糖質を巻き込んで消化スピードを遅くする性質があるため、洋菓子の糖質をすぐにエネルギーとして使うことができないのです。
トレーニング前には、速やかにエネルギーを供給できる、低脂質かつ高糖質な和菓子やお米などの摂取が理想的です。
8.高脂質ドレッシングやマヨネーズ
食事全体のカロリーを調整するため、サラダを意識的に用意している方も多いのではないでしょうか。しかし毎日サラダを食べている場合、使用するドレッシングの質にも注意する必要があります。
たとえばマヨネーズは大さじ1杯(12g)で約80kcal、胡麻ドレッシングは大さじ1杯(約15g)で約60kcal。キュウリやトマト、レタスなどを用いたサラダ200gは、野菜の比率にもよりますがおおむね50kcal前後です。
食べやすくするために加えたドレッシングの方が、サラダ自体よりも高カロリーになるケースがあるのです。
高脂質なマヨネーズやドレッシングを常食している場合は、一度サラダの味付けを再検討してみるとよいでしょう。
和風ドレッシングなど、ノンオイルのものを使えばカロリーや脂質量は大幅に抑えられます。しかしノンオイルドレッシングは高塩分であるため、こちらも使いすぎはよくありません。
おすすめは、お酢とメインにした味付けをおこなうこと。良質な油であるアマニ油やえごま油、酸化しづらいオリーブオイルなどをお酢と合わせ、少量の塩やスパイスを加えて風味豊かな味付けを楽しみましょう。
お酢に含まれるクエン酸には疲労回復を促進する効果もあるため、トレーニングのパフォーマンスを維持する効果も期待できます。
9.清涼飲料水
清涼飲料水は、言ってしまえば糖質の塊。スッキリとした甘さと炭酸ガスの爽快感でゴクゴクと飲めてしまいますが、清涼飲料水には私たちが舌で感じる甘さ以上の糖類が含まれているのです。
また、液体としての糖類は消化に時間がかからないため、飲んですぐに血糖値を急激に上昇させます。
インスリンの大量分泌を招くため体脂肪合成のリスクが高く、体脂肪率や体重の管理をおこないたい場合には厳禁とも言える飲料です。嗜好飲料はお茶やコーヒー、炭酸水など、無糖・無脂肪のものへ切り替えましょう。
清涼飲料水の爽快感が癖になっておりやめづらいという場合には、一時的にゼロカロリーの清涼飲料水へ切り替える方法もあります。
ただしダイエット飲料に含まれるアスパルテームのような人工甘味料は、習慣的な摂取により腸内環境を悪化させて耐糖能異常を引き起こし、肥満や糖尿病のリスクを高める可能性があると指摘されています出典[5]。
人工甘味料でカロリーを抑えた清涼飲料水は、最終的に無糖のお茶や炭酸水に切り替えるための、一時的なものとして活用しましょう。
10.アルコール飲料
アルコール飲料のうち、ビールや日本酒のような醸造酒は糖質を含みます。アルコール自体のカロリーとあわせて体脂肪合成を促進する要因となるため、過剰摂取は禁物。
また、アルコールはストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌量を増加させる性質があります。
運動後のアルコール摂取により、運動により上昇したコルチゾール濃度が下がりにくくなることが、2019年にイタリアから発表された論文において示されています。さらに同論文においては、筋肉の合成効率を高めるために欠かせないテストステロンの減少も、アルコール摂取において確認されていました出典[6]。
このように、筋力トレーニングとアルコール摂取の相性は非常に悪いため、腹筋を割りたい場合にはアルコール飲料にとくに注意する必要があります。
寝る直前の飲酒も避けるべきです。アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドは交感神経を活発にするため、眠りが浅くなってしまいます。
また、アルコールの利尿作用により夜中や早朝に目が覚めやすくなるため、睡眠時間を十分に取りづらくなることも問題です。睡眠の質の低下は筋肉の合成や疲労回復の効率を大きく落とすため、良質な睡眠の確保のためにも「寝酒」は厳禁です。
どうしてもアルコール飲料を飲みたい場合には、糖質が含まれないウイスキーや焼酎を選びましょう。タイミングは就寝4時間前までを目安として、1日1合程度をたまに飲む程度に控えることをおすすめします。
まとめ
割れた腹筋を手に入れるための食生活として、意識的に避けた方がよいものを紹介しました。今回紹介した食品を習慣的に摂取している場合は、ぜひこの機会に食事や嗜好品の見直しをおこないましょう。
全てを完全に断つという意識はストレスを招く場合もあるため、できるだけボディメイクに悪影響の出ない摂り方を心掛けることも重要です。菓子パンであればトレーニング前のエネルギー補給に、アルコールであれば蒸留酒を就寝4時間前までに1合だけ、というように、量やタイミングを工夫してみましょう。
出典
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