執筆者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識できるよう日々邁進中。
テストステロン濃度が低いと関節炎のリスクが高まる
関節炎は関節部が変形したり、腫れや痛みが生じたりする疾患です。
リウマチや痛風、変形性関節炎など様々な種類がありますが、いずれも関節に痛みが生じることで日常生活が困難になります。
加齢により発生する確率が高くなり、高齢男性の40%は変形性関節炎に悩んでいるといったデータもあります出典[1]。
しかし関節炎の原因についてはまだまだ明らかになっていない部分も多いです。
そこで2023年の11月に安徽中医薬大学は、10,439人を対象に血清テストステロン値と関節炎リスクの増加の関係性について調査しました出典[2]。
その結果、テストステロンレベルと関節炎の発症には負の相関関係があり、テストステロンレベルが低いほど関節炎を発症するリスクが高まることが判明しました。
また、テストステロンレベルに基づいて研究対象者を4つのグループに分けると、テストステロンレベルが最も高いグループはテストステロンレベルが最も低いグループよりも関節炎のリスクが51%も少ないことが明らかに。
さらに解析を進めると、BMIが高い人と女性において、テストステロンレベルと関節炎リスクの増加の関連性が高いことがわかりました。
以上よりテストステロンレベルが高い状態を保つことで関節炎の発症リスクを下げることができる可能性があります。
テストステロンが高い人ほど関節炎が発症しにくい理由
今回の研究では、テストステロンレベルと関節炎の発症数の関係性のみ調査しているため、テストステロンが関節炎の発症リスクを下げる明確なメカニズムについては以前として不明な状況です。
その上で、今回の結果が得られた理由として下記のようなメカニズムが考えられています。
まずテストステロンには骨を強くする作用があります。
テストステロンは骨に存在するアンドロゲン受容体を活性化します。アンドロゲン受容体が活性化すると骨の生成をサポートする骨芽細胞は増える一方で、骨を壊す破骨細胞のはたらきは低下します。
テストステロンの作用により関節の骨が強くなることで、関節炎のリスクが小さくなるということです。
また一般的に肥満の人はテストステロンが低い傾向にあります。実際にあるデータではBMIが25以上の人は正常体型の人と比べてテストステロンが40%も低いと報告されています出典[3]。
これは体脂肪に含まれるアロマターゼという酵素が関わっています。アロマターゼはテストステロンを女性ホルモンに変換するはたらきがあります。
つまり体脂肪が多いと女性ホルモンが増え、テストステロンが減ってしまうのです。
テストステロンが低い人は肥満の傾向にあり、膝に大きな負担をかけやすいため、関節炎が発症しやすい可能性があります。
いずれにせよ正常なテストステロン値を保つことや正常な体重を保つことは関節のみならず全体の健康に有益です。
ホルモンバランスや代謝が衰える40代以降はとくに生活習慣をケアする必要がありますね。
出典
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