執筆者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識できるよう日々邁進中。
1回の食事におけるたんぱく質の吸収は20gが限界?
筋トレは運動後の筋たんぱくの合成を高める一方で、同時に筋たんぱくの分解も進めます。
運動後に十分なたんぱく質が体内にあると、筋たんぱくの合成反応が優位になり、筋肉が大きくなります。
逆にたんぱく質の摂取量が十分でないと筋たんぱくが分解され、筋肉が小さくなってしまいます。
そのため、たんぱく質はトレーニーにとって命の栄養素とも言えるでしょう。
普段からトレーニングをしている人であれば、こんなことを聞いたことがあるかもしれません。
「1回の食事で体内に吸収できるたんぱく質は20~30g程度で、それ以上摂っても筋肉にプラスの影響をもたらさない」
実際に6人の若い男性がトレーニング後に0g、5g、10g、20g、40gの全卵タンパク質を摂取した研究では、筋たんぱくの合成反応は20gでプラトーに達したことが報告されています出典[1]。
必要以上にたんぱく質を摂ってもエネルギーとして使用されてしまうため、1回のたんぱく質の摂取量は20~30gに抑え、食事の頻度を高めることが重要だと信じられてきました。
1度に大量にたんぱく質を摂っても無駄にはならない!
しかし、人間以外の動物では一度にたんぱく質を大量に摂取しても十分に吸収できるものもいます。
例えばヘビは体重の25%以上の量の食事を食べた場合、10日程度たんぱく質やアミノ酸の吸収が続きます。
そしてたんぱく質がエネルギーとして利用されるのはたったの5%なんです。
人間も同様にもっと長い時間たんぱく質を消化吸収できる可能性は十分に考えられます。
また、たんぱく質の摂取と筋たんぱく質の合成反応の関係について調べたこれまでの研究は、たんぱく質を摂取した後、比較的短時間(6時間以内)しか合成反応を確認していません。
そこでオランダのマーストリヒトのマーストリヒト大学医療センターのJornらは、より長い時間、たんぱく質の摂取後の筋たんぱく合成反応を確認することにしました出典[2]。
具体的には36人の若い男性にウエイトトレーニングを実施してもらい、0g、25g、100gのたんぱく質を摂取してもらい、摂取後12時間の血中アミノ酸濃度や筋たんぱく合成反応を測定しました。
その結果、たんぱく質を25gを摂取した場合は血中アミノ酸濃度は摂取後5時間で落ち着いたのに対し、100gを摂取した場合は摂取後7時間でも高い状態を維持していました。
また筋原線維のたんぱく質合成反応は摂取後12時間で、25g摂取した時よりも100g摂取した時の方が約30%高いことが明らかになりました。
したがって、大量のたんぱく質を摂取しても人間の身体を十分に消化吸収でき、筋たんぱくの合成に使える可能性が示唆されました。
一般的にトレーニーは、「たんぱく質吸収量に上限がある」という言説から1日4~6回程度の食事を摂ることが勧められることがあります。
しかし今回の研究結果から無理に複数回食事を摂る必要性が低い可能性が示されました。
ビジネスマンであれば、1日に5回も6回も食事を摂ることは難しいかと思います。
1日の総摂取量を意識して、1回に大量のたんぱく質を摂ることも1つでしょう。
出典
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