筋肥大にはクレアチン一択!! 7つの効果と適切な摂取方法
2023年8月4日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

クレアチンとは

まずはクレアチンの基本情報についてご紹介します。

クレアチンはどんな栄養素?

ヒトを含む生物はATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる物質を消費することで活動するためのエネルギーを得ています。そして、クレアチンはATPを生成するはたらきをもつアミノ酸です。

クレアチンはアルギニン、グリシン、メチオニンの3つのアミノ酸を材料として腎臓や肝臓で合成されます。またこれらのアミノ酸から合成する以外にも、食品から直接摂取することもできます。

そして生体内にあるクレアチンの95%は、骨格筋の中に存在します出典[1]。前述したように、クレアチンは活動のためのエネルギー源であるため、運動の中心となる骨格筋に多く存在することは想像しやすいでしょう。また、骨格筋以外では、脳にもいくらか存在することが分かっています。
 

体の中でどんな働きをする?

クレアチンは瞬発的な力を発揮するために必要なエネルギーを供給する上で重要な役割を果たしています。 人体にはエネルギー源のATPを生み出す経路は「ATP-クレアチンリン酸系」、「解糖系」、「有酸素系」の3つがあります。その中でクレアチンは「ATP-クレアチンリン酸系」を通じて、ATPを生成します。

そして3つの経路のうち、「ATP-クレアチンリン酸系」は、最も早くエネルギーを供給できる点が大きな特徴です。事実、「解糖系」や「有酸素系」が多種多様なプロセスを経てATPを生成するのに対し、「ATP-クレアチンリン酸系」はたった1つのプロセスでATPを生成することができます。

そのため、強く瞬間的な力の発揮が必要となる運動では、まず最初に、「ATP-クレアチンリン酸系」が動員されます。実際に重量挙げや100m走のような瞬発力やパワーが重要な短時間高強度の運動時は「ATP-クレアチンリン酸系」からほとんどエネルギーを得ています。
 

どんな食材に含まれている?

クレアチンは肉類や魚類に多く含まれる成分です。クレアチンの95%が骨格筋の中に存在することを考えると、動物性の食品が候補に挙がってくるのは自然ですね。

【クレアチンを豊富に含む食品とその含有量(100gあたり)】出典[2]
 

食品名

含有量(100gあたり)

タラ

0.30g

牛肉

0.45g

ニシン

0.65-1.00g

牛乳

0.01g

豚肉

00.5g

サケ

0.45g

マグロ

0.4g

カレイ

0.2g

クレアチンに確認されている作用や効果

クレアチンが、体内でのエネルギー産生に重要な役割を持っていることがお分かりいただけたかと思います。続いては、より具体的に、クレアチンの摂取により得られる作用や、体に現れる効果について解説いたします。
 

1.筋力向上

多くのアスリートがクレアチンを摂取する理由は、筋力の向上が見込まれるためです。

体内のクレアチンの95%は骨格筋に存在することと、クレアチンはエネルギーの産生において重要であることはすでに解説しました。この2点をあわせて考えると、骨格筋内のクレアチン量を増やすことができれば、よりたくさんのエネルギーを供給できるようになると想像できます。そして、エネルギーがたくさん生み出されれば、それだけ強い力が発揮できるようになります。

アメリカの研究者が複数の論文の内容をまとめた記事では、クレアチンの摂取により、筋力、トレーニングでの反復回数、筋持久力、運動速度などが向上したことが示されています出典[3]

スポーツのパフォーマンスを高めたいと考えるアスリートの方や、筋力トレーニングの効果を増やしたいと考えている方には、クレアチンはとても有用なサプリメントであると言えるでしょう。ぜひクレアチンをうまく使って、今までよりも筋力を高めてみてください。
 

2.筋肉量の増加

クレアチンの摂取により、筋肉量の増加が引き起こされることも分かっています。これは主に、クレアチンの摂取によって筋力や筋持久力が向上することに由来します。

クレアチンを摂取すると筋力や筋持久力が高まり、より強度の高い筋力トレーニングが実施できるようになります。トレーニングの強度が高まれば、体にかかる負荷も大きくなり、その負荷に反応するように筋肉量が増えていきます。これが、クレアチンの摂取によって筋肉量が増加する理由です。

アメリカの大学が1999年に行った研究では、クレアチンを摂取したグループと摂取しないグループを対象に、筋力トレーニングの効果に違いがあるかが調べられました。その結果、クレアチンを摂取したグループは、摂取しないグループと比べて筋力が大きく向上しただけでなく、骨格筋の増加率も約3倍程度高いことが分かりました出典[4]

クレアチンの摂取による筋肉量の増加は、アスリートだけではなく、ボディメイクを考えている一般の方にも恩恵のある情報なのではないでしょうか。より早く目的の体に達したいと考える人は、クレアチンの使用も考えてみると良いかもしれませんね。
 

3.持久力の向上

クレアチンはエネルギーの産生に関わる物質なので、その量が増えれば、それだけ持久力も向上します。

ATP-クレアチンリン酸系によるエネルギーの産生は、通常は8秒から10秒程度しか持続しません。しかしながら、クレアチンの積極的な摂取により、骨格筋中のクレアチン量を増やせば、この持続時間を伸ばすことができます。

ボート競技者を対象に行われた2003年の実験では、クレアチンの摂取により、無酸素運動をより長時間継続できるようになったことが示されています出典[5]。7日間のトレーニングの後、摂取を行わなかったグループは、平均で2.4秒しか運動継続時間が伸びなかったのに対し、クレアチンを摂取したグループでは、平均12.1秒の運動時間の増加が見られました。

クレアチンの摂取によって持久力が上がれば、サッカーにおけるダッシュ頻度の増加や、筋力トレーニングの反復回数の増加が狙えます。その結果として、より高いパフォーマンスの獲得に繋げられるでしょう。
 

4.筋疲労の回復

クレアチンには、強度の高い運動による筋疲労からの回復を早める効果もあります。

筋疲労が早まるメカニズムとしては、以下のようなものが考えられています出典[6]

  • 筋肉中のグリコーゲン量が増加してエネルギー源が充実する
  • 炎症の発生が抑えられる
  • 細胞からの酵素の流出(筋肉の破壊の目安)が抑えられる

これまでに行われた研究には、クレアチンの摂取により、筋疲労状態での筋力の上昇が見られたとする報告や、痛みや炎症の原因となる複数の物質の分泌量が低下したとする報告があります出典[7],出典[8]

クレアチンを摂取することで、強度の高い運動による疲労の影響が少なくなれば、さらに練習量を増やせる可能性があります。このことは、より高いレベルを目指すアスリートにとっては有用な情報だと言えるでしょう。また、疲労によって思うようにリハビリの回数が確保できないような場合にも、クレアチンの摂取が役に立つ可能性がありそうです。
 

5.認知機能の改善

クレアチンは、筋力や筋肉量の増加といった運動に関する指標の向上だけでなく、脳機能にも良い影響を与える可能性のあることが分かっています。

クレアチンの摂取により、低酸素や睡眠不足といったストレスのもとでの認知機能の向上が認められたとする報告があります出典[9],出典[10]

また、肉類を摂取しないため、体内のクレアチン量が少ないと思われるベジタリアンに関しては、クレアチンサプリメントが認知機能に及ぼす効果がより大きいとする報告もあります出典[11]

研究でまだ明らかになっていない部分として、クレアチンがどのようにして認知機能を改善させるかや、脳内のクレアチン量を正確に調べる方法がない点があります。運動機能の向上のためにクレアチンを摂取する中で、副次的に脳機能への効果も得られるくらいに考えておくと良いかもしれませんね。
 

6.精子の運動率向上

続いては、まだはっきりとしたデータが集約されているわけではないですが、クレアチンによって精子の運動率が向上する可能性があることを解説します。

クレアチンと精子の運動について書かれた2022年のレビューでは、クレアチンの不足により、精子の総数や運動量が低下すると報告されています出典[12]。筆者たちは、クレアチンの効果を認めた上で、摂取したクレアチンが精子に影響を与えるまでにはかなりの段階があることについても述べています。

今回取り上げたレビューは2022年と比較的新しいものです。そのため、クレアチンと精子の運動率の関係については、ポジティブな結果を予想しつつも、断定するためには更なる研究を待つ必要があると言えるでしょう。
 

7.血糖値の低下

クレアチンが血糖の取り込みに作用する可能性も示唆されています。

血液中の糖質(血糖)は、細胞表面にある糖取り込みタンパク質によって、必要に応じて細胞内に取り込まれます。クレアチンは、糖取り込みタンパク質であるGLUT4の発現量を増やすことで、血糖の吸収に役立つのではないかと言われています。

ベルギーの大学が2001年に発表した研究では、不活動状態が引き起こすGLUT4発現量の低下を、クレアチンが妨げたことが報告されています。プラセボ群では不活動後に20%のGLUT4低下が見られたのに対し、クレアチン摂取群では9%の増加が見られました出典[13]

また、ブラジルの大学は、クレアチンの摂取と有酸素運動を組み合わせることで、糖を吸収する力を改善させられることを2008年に発表しています出典[14]

まだ明確に効果を断定できるほどのデータは集まっていませんが、今後、研究が蓄積していけば、血糖量を低下させる効果を狙ってのクレアチン摂取が推奨されるようになるかもしれませんね。
 

クレアチンの飲み方や注意点

クレアチンは天然に存在し、販売されるサプリメントも食品として認められているため、基本的には安全な物質だと思っていただいて大丈夫です。クレアチンには副作用がないとする報告も複数あります出典[15], 出典[16]。しかしながら、あまりにも過剰な量を摂取した場合は、予期せぬ影響が生じる可能性もありますので、その点は注意するようにしてください。
 

どのくらい摂取すればいい?安全に摂取できる上限摂取量について

骨格筋の総量によって変化はありますが、ヒトは1日のうちに約2gのクレアチンを失っています。クレアチンは体の中でも合成できるため、必ずしも2g全てを食品から摂取する必要はないですが、食事が野菜中心になりがちな方は、意識してクレアチンを多く含む食材を摂取する日を設けると良いかもしれません。

また、運動でさらにパフォーマンスを向上させたいと考える場合は、1日あたり3gから5gを摂取してみると良いでしょう出典[17], 出典[18]。これにより、骨格筋内のクレアチン量を増やす効果が望めます。

摂取量の上限はどうでしょうか。体重1kgあたり0.3gから0.8g(体重70kgならば、21gから56g)のクレアチン摂取を数年にわたって続けた集団において、臨床的に重大または深刻な副作用は見られなかったとする報告があります出典[18]。このことより、推奨量の摂取をしている限りは、健康上の問題は現れないと思っておいて良さそうですね。
 

理想の摂取方法やタイミングはある?

クレアチンを効率よく摂取するために、知っておいた方が良い知識が2つあります。1つは、「ローディング」というクレアチンに特有の考え方で、もう1つは、他の栄養成分と同時に摂取すると吸収効率が上がるというものです。

まずクレアチンローディングとは、クレアチンを多量に摂取する期間を設けて、骨格筋内のクレアチン量を一気に高める飲み方のことです。クレアチンの推奨摂取量は1日3gから5gと説明しましたが、ローディングを狙う場合は、最初に1日20gの摂取を1週間程度続けます。こうして骨格筋内のクレアチン量が十分に増えた後は、その総量を維持するために、1日3gから5gの摂取を継続するという方法です。

クレアチンは、炭水化物やタンパク質と同時に摂取すると、より筋肉に取り込まれる可能性も示唆されています。筋力トレーニングを熱心に行っている人ならば、クレアチンをジュースに溶かして飲むと良いと聞いたことがあるのではないでしょうか。

カナダの大学は、プロテインを単体で摂取した場合と、プロテインとクレアチンを混ぜて摂取した場合において、筋量や筋力の変化に違いがみられるかを2001年に調べています。その結果、プロテインとクレアチンを混ぜたものを摂取したグループでは、除脂肪体重の増加や、トレーニングで発揮される筋力の増加が認められました出典[19]

粉末タイプのクレアチンを飲む場合は、ジュースやプロテインに混ぜて飲むと、よりその効果を得られるのではないでしょうか。また、タブレットタイプのものを使っている場合は、食事と同じタイミングで摂取するようにすると、同じような効果が期待できるでしょう。
 

まとめ

今回はクレアチンについて解説しました。体内のエネルギー産生に関わる物質であることと、それゆえに総量が増えればさまざまな良い影響があることがお分かりいただけたかと思います。

筋力や筋持久力の向上といった、アスリートや筋トレ愛好家に有用な効果もあれば、脳機能の改善や血糖値の調整のような、一般の方の参考になる効能もありましたね。

この記事を読んでクレアチンを飲んでみたいと思った方は、ぜひ効果的な飲み方の項を参照していただければと思います。

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