監修者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。
執筆者
株式会社アルファメイル
NP+編集部
「オトコを科学する」をキーワードに男性の悩みや課題の解決を科学的根拠をもってサポート。運動や睡眠、栄養など、健康に関する正しい知識を提供するためにコンテンツを製作中。
テストステロンには社会的攻撃性を促進する作用がある
男性ホルモンの代表格であるテストステロンは男性が健康的な心身を保つ上で欠かせないホルモンです。
勃起や精子形成などの男性機能、筋肉の肥大などの身体面だけでなく、性欲やモチベーションなどの精神面にも影響を与えます。
テストステロンによる精神面への影響の一つとして挙げられるのが、攻撃性(支配性)の促進です。
これまでに哺乳類だけでなく、魚類や爬虫類などの様々な動物種において、テストステロンが攻撃や競争などの優位行動に関連していることが報告されています。
例えば、雄同士の競争や縄張り争いなどの時にテストステロンの分泌が促進されます出典[1]。
わかりやすい例は、交尾のために雌を取り合う時です。テストステロンが分泌されることで別の雄(競争相手)に対する攻撃性が増し、優位になろう(支配しよう)とします。
テストステロンと支配性の関係は他の動物と比べると弱いですが、ヒトにおいても同様の結果が得られています。
つまり、テストステロンが高まることで社会的攻撃性が促進されるのです。
テストステロンが高い男性は社会的地位が高い場合に支配性を強める
テストステロンが高い男性がどのような場面で支配性が強まるのかと言うと、社会的地位が高い場合です。
例えば、上司と部下、先輩と後輩などの関係性が当てはまります。
2023年に行なわれた安田女子大学の研究で、集団内での社会的地位がテストステロンによる支配性に与える影響が調べられました。
被験者は大学のラグビー部に所属する18歳から23歳の男子大学生71名です。参加者の内訳は、1年生21名、2年生18名、3年生13名、4年生19名であり、社会的地位の違い(年功序列による上下関係)が明確となっている被験者になります。
被験者間で最後通牒ゲー ム(Ultimatum Game)を行い、その時のテストステロン濃度を測定することで評価を行いました。
最後通牒ゲームは相手に対する優位性(優越性)を調べるために使われる経済ゲームの1つです。2人のプレイヤーが与えられたお金の分け方を決めるゲームになります。
1人が「提案者」で、もう1人の「応答者」に対して、金額の分け方について提案を行います。提案は一度しか(最後通牒)できません。金額の分け方は自由に設定できますが、応答者が提案を拒否すれば、どちらも金銭を受け取れず、提案を受け入れた場合に両者とも提案された内容に従って金銭を受け取れます。
相手に対して優位であると感じていれば、「このくらいの差は受け入れられるだろう」と自分の方が多く利益を得られるように提案する傾向にあると言われています。例えば、1000円を分配するとすれば、500円ずつの均等配分ではなく、自分700円、相手300円といった具合です。
論文では、提案者の学年が高いほど応答者は提案を受け入れやすく、提案者の学年が低いほど応答者は提案を断りやすいことが報告されています出典[1]。また、この傾向は応答者のテストステロンレベルが高いほどより顕著でした。
テストステロン濃度が高い人ほど、社会的地位(論文中では年功序列における地位)が上がるにつれて、下位の者に対して優位性を示そうとしているのです。
つまり、上下関係がある場合にテストステロンはその関係性を強固にするように働いていると言えます。
テストステロンが高めな人はパワハラに要注意!
今回はテストステロンと支配性の関係について解説しました。
テストステロンは肉体的だけでなく精神面にも影響を与えるホルモンです。
テストステロンによる攻撃性(支配性)は社会的地位が高い場合に高まります。
テストステロンが高いと部下や後輩との上下関係を強固にしてくれます。
一方で過度の支配を与えることでハラスメントにならないように接し方には注意することを心がけましょう。
出典
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