監修者
睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級
室井優作
心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。
執筆者
管理栄養士
井後結香
管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。
寝る前のトマトジュースで得られる5つのメリット
トマトジュースは健康飲料として注目されており、とくに寝る前の摂取で様々な効果が期待できます。寝る前のトマトジュースは、特に次のような方におすすめです。
- 寝付きが悪い方
- 体脂肪を落としてダイエットしたい方
- 高血圧や高脂質血症を改善したい方
- 強い疲労や筋肉痛が辛い方
寝る前にトマトジュースを飲むことで得られる具体的なメリットについて解説しましょう。
メリット1.スムーズな入眠をサポートする
トマトは神経伝達物質のひとつであるGABAを含む野菜です。GABA (Gamma-Amino Butyric Acid)はγアミノ酪酸というアミノ酸の一種であり、不安やストレスを軽減し、体内時計や睡眠を調節する効果があります。
2000年に日本食品科学工学会誌へ掲載された論文では、コメ由来のGABAを1日あたり26.4mg、8週間にわたり摂取したところ、睡眠障害のスコアが約25%、緊張やイライラを示すスコアが約45%も低下したと報告されています出典[1]。
2008年に筑波大学で行われたトマト品種の分析の結果、トマト100gあたりのGABA含有量は平均50.3mgであることが判明しました出典[2]。トマトジュースにも同様に高濃度のGABAが含まれており、睡眠の質の改善に役立つと考えられるでしょう。
緊張や苛立ちから寝付きを悪くしている方に、寝る前のトマトジュースはとくにおすすめです。
メリット2.体脂肪を落としやすくする
寝る前のトマトジュースには、体脂肪を落としやすくする効果が期待できます。
トマトの脂肪燃焼効果は、トマトに含まれる「13-oxo-ODA」という成分によるもの。13-oxo-ODAは特にトマトジュースから多く摂取できることが判明しているのです。
2012年に京都大学から発表された論文において、13-oxo-ODAを含む高脂肪食をマウスに与えた際、13-oxo-ODAを含まない高脂肪食よりも血中の中性脂肪が約50mg/dLも抑えられたと報告されています。
さらに脂肪を燃焼させる際に重要となる肝臓の遺伝子発現レベルも、高濃度の13-oxo-ODAを含む高脂肪食で約1.4~1.7倍もの増加が確認できたのです出典[3]。
このように、13-oxo-ODAは脂肪酸からエネルギーを生成するように働きかけます。脂肪酸からのエネルギー消費が増えることで、中性脂肪の低下や体脂肪の減少に役立つと考えられるでしょう。
とくに睡眠中はエネルギーの消費が起こりにくく、体脂肪合成のリスクが高い時間帯です。トマトジュースを寝る前に摂取して体脂肪の合成を防ぎ、ダイエットや生活習慣病の予防に役立てましょう。
メリット3.血圧を下げやすくする
トマトジュースに含まれるβカロテンやリコピンには血管を柔らかく保つ効果が、カリウムには血液の量を調節する効果が期待できます。
βカロテンはビタミンAのもとになる物質です。ビタミンAは抗酸化ビタミンとしても知られており、体内で発生した活性酸素の働きを抑える性質があります。トマトの赤色の色素成分であるリコピンにも強い抗酸化能力があるため、βカロテンとリコピンのダブルの作用がトマトジュースには期待できるでしょう。
過剰に蓄積した活性酸素は血管にダメージを与え、血管を硬くします。βカロテンやリコピンの持つ抗酸化能力により、血管をしなやかに保ちやすくなるでしょう。
また、カリウムは体液の調節に欠かせないミネラルです。体内の余分なナトリウムを水と共に体外へ出すよう働きかけることで、むくみや高血圧の改善に繋がります。
血管を柔らかく保つことも、血液の量を調節することも、血圧を正常に保つために非常に重要です。血圧の上昇が気になる方は、血管と血液によい効果をもたらすトマトジュースを試してみましょう。
メリット4.LDLコレステロールを減らして血液をサラサラに
リコピンの抗酸化能力は、活性酸素による脂質の過酸化を防ぐためにも役立ちます。LDLコレステロールが酸化されて酸化LDLになり、血管壁に付着すると、血管が硬くなります。
硬くなった血管は高血圧や動脈硬化の原因となるでしょう。血管の弾力性を保つため、過酸化脂質の発生を防ぐリコピンは非常に重要です。
また、リコピンには血中のLDLコレステロール自体を減らす効果も確認されています。
リコピンの血中脂質に与える影響について調査した研究12件を分析した論文では、1日25mg以上の容量でリコピンを摂取すると、LDLコレステロールを約10%低下させる効果があると結論付けられています出典[4]。
寝る前のトマトジュースでLDLコレステロールの増加を抑え、高脂質血症や高血圧のリスクを減らしましょう。
メリット5.抗疲労効果を高める
寝る前のトマトジュースは疲労にも効果的です。カギとなる成分は先程のリコピンと、疲労回復物質としてよく知られているクエン酸です。
クエン酸はエネルギーを作るための「クエン酸回路」に欠かせない栄養素です。疲労の回復には十分なエネルギーの生成が欠かせません。寝る前のトマトジュースでクエン酸を効率よく摂取すれば、睡眠中の疲労回復効率も高まるでしょう。
また、過剰な活性酸素は疲労の原因にもなり、体のパフォーマンスを落としてしまいます。とくに筋肉痛が悪化したり回復が遅れたりする背景には、過剰な活性酸素の働きがあると考えられています。リコピンにより活性酸素の働きが抑えられれば、筋肉の炎症も抑えられ、筋肉痛からの回復も早まるでしょう。
眠っても疲れを取り切れない、筋肉痛が長引きやすいといった悩みがある方にも、寝る前のトマトジュースはおすすめです。
寝る前にトマトジュースを飲む際のポイント4選
このように、寝る前のトマトジュースには快眠効果やダイエット効果、抗疲労効果など、さまざまな作用が期待できます。
ではトマトジュースの効果をより高めるためには、どのような点に注意すればよいのでしょう。
ポイント1.就寝30分~1時間前を目安に飲む
夜間にトマトジュースを飲む場合は、寝る直前ではなく、少し前の段階で飲んでおくことをおすすめします。
京都大学が2008年にGABAの摂取と自律神経系の活動の変化を調べたところ、休息や睡眠と関係の深い副交感神経は、摂取後30分後に約2倍と最も高くなり、60分後にも約1.8倍の活動が確認されていました出典[5]。
就寝のタイミングでGABAの血中濃度を高めて快眠効果を発揮するため、トマトジュースは就寝の30分~1時間前を目安に飲むようにしましょう。
ポイント2.高リコピンのトマトジュースをコップ1杯
次に、寝る前のトマトジュースはどの程度飲むのが適切であるかについて考えてみましょう。
脂肪燃焼効果が確認されたトマト由来の13-oxo-ODAの研究において、実際にマウスに投与した13-oxo-ODAは、ヒトの体重に換算すると毎食トマトジュース1杯分(200mL)でした出典[3]。そのためダイエット効果を期待する場合には、1回分の摂取量はコップ1杯が適切と考えられるでしょう。
一方、LDLコレステロールの低下が確認できるリコピンの摂取量は25mgと報告されています出典[4]。一般的なトマトジュースコップ1杯分のリコピン含有量は15~20mgであるため、コップ1杯ではやや不十分です。
しかしコップ1杯以上のトマトジュースを寝る前に飲むことはおすすめできません。トマトジュースにはカリウムが多く含まれており、飲みすぎるとカリウムの利尿作用によりトイレが近くなる可能性があります。夜中や早朝に尿意から目を覚ましやすくなるため、寝る前の摂取はコップ1杯までに留めるべきでしょう。
そこでおすすめしたいのが、リコピンを高濃度に含むトマトで作られた高リコピンのトマトジュースです。コップ1杯(200mL)あたり25mg程度のリコピンが含まれるものもあるため、血中脂質のバランスや血圧を整える効果がより期待できるでしょう。
ポイント3.食塩・砂糖不使用のものを選ぼう
健康効果がより期待できるトマトジュースは「食塩や砂糖、人工甘味料などが使用されていないもの」です。
食塩や砂糖、人工甘味料などは飲みやすさの向上のために加えられます。まろやかな甘さやスッキリとした味わいを楽しめますが、塩分や糖分を余計に摂取することになるため注意が必要です。
血圧を下げることを目的に飲んでいたトマトジュースに、血圧を上げる要因である食塩が含まれていては本末転倒です。ダイエット効果を期待して飲む場合にも、砂糖が加えられたものでは逆効果となってしまうでしょう。
人工甘味料で味付けされたトマトジュースもおすすめできません。人工甘味料の継続使用は甘いものへの欲求を強めて肥満のリスクとなる可能性があるほか、腸内環境の悪化に繋がることも判明しています。
トマトジュースを購入する際にはパッケージの原材料欄をよく見て、食塩や砂糖、人工甘味料の添加がないものを選びましょう。
ポイント4.野菜ジュースよりも純粋なトマトジュースを
トマトしか入っていないトマトジュースよりも、様々な野菜のビタミンを摂取できる野菜ジュースの方がよいのでは、と考える方もいるかもしれません。
しかし野菜ジュースには飲みやすさの向上のため、リンゴやオレンジのようなフルーツの割合を増やしていることが多いのです。果物の果糖などの余分なエネルギーは、寝る前に摂取すれば太るもととなります。
また、果物や他の野菜の割合が増えれば、トマト由来のGABAやリコピンのような成分の含有量も減ります。GABAやリコピンの量が少ない野菜ジュースでは、快眠効果やダイエット効果を十分に得られません。
トマトジュースの健康効果を期待する場合には、トマトのみが使用された純粋なトマトジュースを選びましょう。
トマトとトマトジュース、どちらが効果的?
トマトジュースは生のトマトを破砕、加熱した後に、搾汁して液体だけを取り出して作られています。
近年、野菜ジュースやフルーツジュースは生の野菜や果物の代わりにはならないとよく言われます。ジュースに加工する過程でビタミンや食物繊維が大きく減少し、野菜や果物の糖質ばかりを過剰に摂取することになるためです。
しかしトマトジュースは例外的に、ジュースにすることで栄養価が増す一面を持っているのです。トマトとトマトジュースの違いやそれぞれのメリットについて、詳しく解説しましょう。
トマトジュースはリコピンやβカロテンを効率よく補給できる
一般的に生で食べられることの多いトマトとは異なり、トマトジュースには品質の変化を防ぐための加熱処理が行われます。生のトマトにある酵素は加熱により失われてしまいますが、トマトに含まれるいくつかの栄養価は加熱により高まることが判明しています。
とくに変化が大きいのがβカロテンやリコピンです。加熱によりトマトの細胞壁が壊れることで、中のβカロテンやリコピンがトマトジュースに吸収性の高い形で溶け出します出典[6]。さらにトマトジュースでは粉砕により細胞壁が細かく砕かれるため、吸収率はさらに高まると考えられるでしょう。
脂肪燃焼効果がある13-oxo-ODAも、トマトよりもトマトジュースに多く含まれる成分であることが判明しています。またカリウムは熱に強いミネラルであるため、加熱しても大きく減少することがありません。
このように、トマトジュースへの加工により、トマト特有の栄養素の吸収率が高まり、ほかの栄養素も減少にも繋がらないことから、トマトジュースには栄養面でのメリットが非常に高いと考えられているのです。
トマトジュースはビタミンCや食物繊維は少ない
一方で、トマトジュースにすることで失われる栄養素もあります。その代表例がビタミンCおよび食物繊維です。
トマトおよびトマトジュース(食塩無添加)のビタミンCと食物繊維の量を比較してみましょう。
【食品100gあたりの栄養素(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より出典[7]】
ビタミンC | 水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 | |
赤色トマト | 15mg | 0.3g | 0.7g |
トマトジュース | 6mg | 0.3g | 0.4g |
ビタミンCは破砕や加熱に弱い栄養素であるため、トマトジュースにするとビタミンCは大きく減少します。
食物繊維もまた、搾汁の段階で取り除かれる栄養素です。ペクチンのような水溶性食物繊維は保たれやすいものの、不溶性食物繊維の量は大きく減少することが分かります。
ただしトマト自身、そもそもビタミンCや食物繊維が多い食品とは言えません。そのため生での摂取にこだわるよりは、他の野菜や果物でビタミンCや食物繊維を摂る方が効率的と言えるでしょう。
寝る前のトマトジュースで良い夜を!
トマトジュースからは、トマト由来のβカロテンやリコピン、GABAなどの成分を効率よく摂取できます。寝る前の摂取を習慣づけることで快眠効果やダイエット効果、生活習慣病予防効果などが期待できるでしょう。
トマトジュースのメリットを最大限に活かすには、食塩や砂糖の加えられていない、純粋なトマトジュースを選ぶ必要があります。寝る前の30分~1時間前を目安に、コップ1杯程度の摂取を続けるのがおすすめです。
生のトマトにも同様の健康効果が期待できますが、トマトジュースとして飲むことでより高い効果が期待できます。手軽に飲めて継続しやすいトマトジュースを、ぜひ積極的に活用してみましょう。
出典
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