そもそも人々はなぜ高級ブランドを好むのでしょうか？

理由は、社会的地位を高めるためです。

多くの生物にとって社会的地位を高めることは、交配の機会が増える、資源(食べ物など)を得やすくなる、社会的影響力が増えるなどの様々な利点があります。そのため、生物は社会的地位を高めるのに多大な努力を払うのです。

人間の場合、その手段の1つが高級ブランドを所持することなどによる富の誇示。つまり、地位財への浪費です。

地位財とは、自動車や服などの高級ブランド品・家・子どもの教育のように、「持ち主」の社会的な地位の表現に深く結びついている財になります。

金銭面などの様々な理由により「持てる者」と「持てない者」がいるため、地位財は他者に対して自分の見かけの資源を誇示するものとして考えられているのです。

人々は高級品のような地位財を得ること(財の消費)を通じて、自分の社会的地位を示そうするので、人々は高級ブランド品を好むのです。
 

テストステロンは勃起や精子形成などの男性機能、筋肉の肥大などの身体面だけでなく、性欲やモチベーションなどの精神面にも影響を与えるホルモンです。そのため男性が健康的な心身を保つ上で欠かせません。

テストステロンによる精神面への影響の一つが社会的地位を高めるように働きかけることです。

一例を挙げるとスポーツカーの運転はファミリーセダンの運転の際よりもテストステロンが高まります。スポーツカーは目立つ高級車であるため、周囲に知財の消費(社会的地位の高さ)をアピールできるためです。

では、地位財への消費行動への影響はどうでしょうか？

2018年にアメリカのペニンシュラ大学で行なわれた研究で、テストステロンと地位財への嗜好性の関係が調べられました^出典[1]。

18-55歳の243人の男性を対象にテストステロン投与が商品の選択に与える影響が2つの実験で検討されています。

1つ目の実験では、参加者に商品の品質はあまり変わらないが、ブランドの知名度が異なる2つペアを見せ、どちらのブランドを好むか評価しました。

その結果、テストステロン投与群は知名度の高いブランドを好むことが明らかとなりました。つまり、ブランドの異なる商品を選択する場面において、テストステロンは商品の品質ではなく、販売するブランドの知名度の高さ(社会的地位の高さ)への嗜好性を高めることを示しています。

2つ目の実験では、商品に対して異なる説明文を付与し、テストステロン投与でどの説明文の時に購買意欲が高まるか検討しました。商品には、「地位(ステータス)を高める」、「実用性を高める」、「高品質である」ことを連想させるいずれかの説明を付与しています。

その結果、テストステロンは「地位を高める」と説明された商品に対する購買意欲を高めることが明らかとなりました。テストステロンは商品の質ではなく、自らのステータスを高めてくれるものに対して嗜好性を発揮することを示しているのです。

以上のことから、テストステロンは高級ブランド品のような自らの社会的地位を高めてくれるもの、つまり、地位財への嗜好性を高めると言えるのです。
 

今回はテストステロンと地位財の関係について解説しました。

テストステロンは肉体的だけでなく性格面にも影響を与えるホルモンです。

テストステロンが多いと社会的地位を高めようとする精神状態が強まり、購買の場面において自らのステータスを高めてくれるような高級ブランドを好むようになる傾向があります。

高級ブランドが必ずしも機能性や品質に優れているわけではないので、テストステロンの高い方は購買の際には少し慎重になるのが良いかもしれませんね。