たんぱく質とは?7つの効果と適切な摂取方法
2022年8月26日更新

執筆者

NSCA-CPT/調理師

舟橋位於

東京大学理学部卒、東京大学大学院総合文化研究科修士課程終了。大学入学後に筋肉に興味を持ち、自分の体で学んだ理論を体現してきた。日本の筋肉研究で有名な石井直方教授のもとで学び、ティーチングアシスタントとして、学生へのトレーニング指導を行った経験も。自分が学んだ知識を伝えることで、一人でも多くの方の健康をサポートしたいと考えている。

たんぱく質とは

まずはたんぱく質の基本情報についてご紹介します。

1.どんな栄養素?

たんぱく質はヒトの体の20%を構成する栄養素です。英語では”protein”(プロテイン)と呼ばれ、語源はギリシャ語の”proteios”(プロティオス)で「最も大切なもの」を意味します。

私たちの体は、古くなった組織や壊れた細胞などを作り替えて、常に一定の状態を保つように機能しています。そして、その際の材料のひとつとして使われるのがたんぱく質です。

 

2.体の中でどんな働きをする?

たんぱく質には多くの働きがあります。

もっとも分かりやすいのは、組織を作る際の材料になる役割です。筋トレをした後にプロテインを飲むと、筋肉の発達の助けになることを知っている方もいるかと思います。筋トレ後には、体の中で壊れた組織を修復する反応が起こるため、その際に筋肉の材料となるたんぱく質を摂取しておくと、効率よく筋肉を発達させられます。もちろん、筋肉以外のさまざまな組織の材料としてもたんぱく質は重要です。

たんぱく質は酵素の材料にもなります。酵素とは、体の中のさまざまな化学反応に関わる物質で、食べ物の消化に関わるアミラーゼやペプシンはその一例です。酵素が存在することで、酵素がない場合と比べてはるかに効率よく化学反応が行えるようになります。

これ以外にも、ホルモンの材料になったり、体内での物質の輸送に関わったりと、複数の働きを持つのがたんぱく質の特徴です。
 

3.必須アミノ酸と非必須アミノ酸

たんぱく質は、アミノ酸と呼ばれる小さな分子が結合してできています。たんぱく質と一口に言っても実際は、構成するアミノ酸の種類によって、たんぱく質の種類は無数にあります。

たんぱく質を構成するアミノ酸には、必須アミノ酸と非必須アミノ酸があります。必須アミノ酸は、ヒトの体の中で作ることができないため、必ず食べ物から摂取しないといけないアミノ酸です。一方の非必須アミノ酸は、体の中にあるアミノ酸などを材料とすることで、自ら作ることが可能なアミノ酸のことです。

食事制限をしている場合は必須アミノ酸が不足する可能性がありますので、たんぱく質の量や質を意識したメニューを考えることが大切です。
 

4.動物性たんぱく質と植物性たんぱく質

冒頭で、ヒトの体の20%はたんぱく質でできていると紹介しました。私たちが普段の食生活で摂取している肉類や魚類についても同じことが言え、動物食品のたんぱく質含有量はおよそ20%となっています。一方で、植物の中に存在するたんぱく質は全体の2%ほどとされています。大豆のようにたんぱく質が豊富な食品もありますが、基本的には、植物から大量のたんぱく質を摂取することは難しいと言えるでしょう。

動物食品から摂取できる動物性たんぱく質と、植物食品から摂取できる植物性たんぱく質の間には、消化吸収にも差があることが分かっています。動物性たんぱく質が比較的消化吸収されやすいのに対し、植物性たんぱく質は消化吸収が遅めです。

また、動物性たんぱく質は基本的には必須アミノ酸を多く含んでいるのに対し、植物性たんぱく質の中には、必須アミノ酸の含有量が少ないものもあります。

病気のために食事制限をしている方やビーガンの方は、うまく食材を選ぶことで、たんぱく質や必須アミノ酸が不足しないようにすることを意識すると良いでしょう。
 

5.アミノ酸の補足効果

一口にたんぱく質と言っても、それらが含むアミノ酸の種類は、食品によって異なります。そのため、食品数の少ない偏った食生活をしていると、慢性的に特定のアミノ酸が足りなくなる可能性があると言えます。

そして、必須アミノ酸の摂取が足りていないと、十分摂取できている他のアミノ酸を体内でうまく利用することができません。食材がバランスよく必須アミノ酸を含んでいるかどうかを示す指標として、アミノ酸スコアと呼ばれるものがあります。ある食品に必須アミノ酸が全て十分に含まれている場合は、アミノ酸スコアは100になります。肉類や魚類のアミノ酸スコアは100ですが、野菜等の植物性食品では、それに届かないものが多いです。

必須アミノ酸の欠乏を防ぐためには、アミノ酸スコアの高い食品をメニューに加えたり、複数の食品を組み合わせることで、不足するアミノ酸を補い合ったりすることが重要です。簡単な例としては、ご飯に味噌汁を組み合わせることで、コメに足りないアミノ酸を大豆から補うことができます。コメ単体ではアミノ酸スコアは60程度ですが、味噌汁からアミノ酸スコア100の大豆を摂取することで、食事全体として栄養価を高めることができます。
 

6.どんな食材に含まれている?

続いて、たんぱく質が多く含まれる食品について見てみましょう。アミノ酸スコアも合わせて記載しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね出典[1], 出典[2], 出典[3], 出典[4], 出典[5], 出典[6], 出典[7], 出典[8]
 

食品名

たんぱく質(100gあたり)

アミノ酸スコア

12.2g

100

牛乳

3.3g

100

牛肉(もも、脂なし)

21.3g

100

大豆(乾燥)

33.8g

94

えんどう豆(乾燥)

21.7g

78

レンズ豆(乾燥)

23.3g

51

らっかせい(乾燥)

25.2g

46

小麦(強力粉)

11.8g

40

たんぱく質に確認されている作用や効果

続いて、たんぱく質の持つ作用や効果について解説します。たんぱく質は比較的身近な栄養素ですが、その働きには、意外と一般の方には知られていないものもあります。ぜひこの機会に確認してみてくださいね。
 

1.身体の構造を作る

たんぱく質は、身体のさまざまな構造の材料となります。分かりやすい部分では、髪の毛や爪、皮膚などの目に見えるものがあり、それ以外では、内臓や血液などもたんぱく質から作られています。

食事から摂取されたたんぱく質は消化器官で分解され、アミノ酸の形で体内へと吸収されます。吸収されたアミノ酸は身体の中の組織へと運ばれ、新たにたんぱく質を作るための材料となります。細胞の中では、常に新しいたんぱく質の合成と、古くなったたんぱく質の分解が行われているため、毎日一定量のたんぱく質を摂取することが重要です。

肌荒れが気になったり、爪や髪の毛につやがなかったりする場合は、自分が十分にたんぱく質を摂取できているかを見直してみると良いでしょう。
 

2.エネルギーを供給する

たんぱく質は、身体を動かすためのエネルギー源にもなります。

安静時には、ヒトは身体に蓄えられた炭水化物と脂質を半分ずつの割合で消費して、活動のためのエネルギーを得ています。ところが、飢餓状態によって炭水化物や脂質の量が十分でなくなったり、激しい運動でエネルギーの要求量が増大したりした場合には、たんぱく質もエネルギーを作るために消費されます。この際、筋肉を構成するたんぱく質が分解されてエネルギー源となるのが一般的です。

筋肉をできるだけ維持したいと考える方は、普段から栄養バランスに気をつけると同時に、運動の前後でたんぱく質を豊富に含む食材やサプリメントを摂取すると良いでしょう。
 

3.生体内での反応を助ける

冒頭の「たんぱく質とは」の章で、酵素がたんぱく質からできていることを解説しました。ここでは、もう少し詳しく、酵素について紹介します。

酵素は、生体内の化学反応の触媒として働くたんぱく質です。触媒とは、それが存在することで、化学反応の速度を高める物質全般のことを指します。酵素はそれぞれに固有の立体的な構造を持っているため、それぞれが独自の働きを持っています。生体内の反応はほぼ全てが酵素によって調整されており、酵素なしでは生命を維持することは難しいとも言えるでしょう。
 

4.栄養素を運搬する

たんぱく質には、身体の中で物質を運搬する役割を持つものもあります。酸素を運搬するヘモグロビンや、脂質を運搬するリポたんぱく質などがその一例です。

 厚生労働省が提供するe-ヘルスネットでは、ヘモグロビンは、鉄とたんぱく質が結びついた赤色素たんぱく質で赤血球に含まれると解説されています出典[9]

 内部に鉄を含んだ特殊な立体構造を持つことで、ヘモグロビンは酸素や二酸化炭素の運搬を行うことができるようになっています。

 リポたんぱく質は、血液中でコレステロールのような脂質と一部のたんぱく質が結合して作られます。脂質はそのままでは水分とは馴染まない性質を持つため、血液中で安定して運べるようにするためには、仲介するたんぱく質が必要となります出典[10]。リポたんぱく質という言葉はあまり馴染みがないですが、健康診断で見られるLDLコレステロールやHDLコレステロールという用語は、このリポたんぱく質のことを指しています。

 この他にも、鉄や銅などの金属を運搬するたんぱく質や、ホルモンを運搬するたんぱく質も存在します。摂取した栄養素を全身に届ける上でもたんぱく質は重要です。

 

5.病原菌から身体を守る

生物の身体の中には、免疫機能等の身体を防衛する働きを持つたんぱく質も存在します。

免疫機能を持つたんぱく質は、抗体という呼び名が一般的です。抗体は免疫グロブリンというたんぱく質からできており、身体の外から異物が入ってきた場合に、それを取り除く働きを持ちます。免疫グロブリンは、さまざまな構造を取ることが分かっており、それにより、どのようなタイプの異物が入ってきた場合でも、的確に対応することができます出典[11]

その他、止血機能により身体を守るたんぱく質としてフィブリノーゲンがあります。出血が起こった場合には、血液中の血小板やフィブリノーゲンが協調することで、迅速な止血が行われます。

日頃からたんぱく質を豊富に含む食事の摂取を欠かさないことで、免疫を一定の状態に保つことを意識できると良いでしょう。免疫に関わるアミノ酸であるグルタミンをサプリメントして摂取することも効果があります。

 

6.遺伝情報を調節する

たんぱく質は、遺伝情報を司るDNAとも密接な関係を持ちます。

ヒトの細胞ひとつが持つDNAの長さは約2メートルにもなりますが、それに対して、細胞自体の平均的な大きさはわずか0.02ミリメートルです。細胞の中にうまくDNAを収納するためには、ヒストンというたんぱく質が役に立っています。複数のヒストンにDNAが巻き付くようにして染色体という構造を作ることで、細胞の中で絡まることなくDNAが保存できるようになります。

遺伝情報を運ぶ物質である精子にもたんぱく質が含まれます。精子の末端に存在するべん毛は、ダイニンと呼ばれるモーターたんぱく質から構成されています。このモーターたんぱく質が機能することで、べん毛が波打つように運動し、精子が移動することを可能としています。

 

7.代謝を調節する

たんぱく質の中には、ホルモンとして機能するものがあります。

ホルモンとは、身体の中の組織から分泌されることで、特定の機能を調整する働きを持つ物質の総称です。ホルモンを介すことで、反応の速度を早めたり、逆に遅くしたりすることが可能となります。

よく耳にするホルモンとしては、インスリンがあります。インスリンは膵臓のベータ細胞から分泌されるホルモンで、その働きにより、糖をはじめとするさまざまな栄養素の吸収を促します。インスリンが十分に放出されなくなったり、その働きに異常が生じたりした状態が糖尿病です。糖尿病になると、血液中の糖が速やかに細胞に吸収されなくなり、結果として血糖値が高い状態が続くようになります。

同じように膵臓から分泌されるホルモンとして、グルカゴンがあります。インスリンが、糖を取り込んで血糖値を下げる働きを持つホルモンであるのに対して、グルカゴンは、体内に保存されたグリコーゲンを分解して、血糖値を上げる働きを持つホルモンです。絶食等により血糖値が下がると、グルカゴンが分泌され、それによって血糖値が一定のレベルより下がることが防がれます。
 

たんぱく質の摂取方法や注意点

たんぱく質は科学的に作られる合成物質ではなく、自然に含まれるものなので、それ自体には害はありません。しかしながら、大量に摂取すると肝臓や腎臓に負担をかけることにつながるため、医師からの指示がある場合は、それに従って摂取するようにしましょう。

1.どのくらい摂取すればいい?

私たちの身体は、古くなった組織を絶えず作り替えているため、その際に失われるたんぱく質を補う必要があります。それでは、健康な成人は、一日にどの程度のたんぱく質を摂取することが必要なのでしょうか。

たんぱく質の必要量にはさまざまな意見がありますが、厚生労働省によると、健康な成人は、体重1kgあたり0.65gの摂取が勧められています出典[12]。また、高齢者のたんぱく質必要摂取量は、成人と変わらないとする報告があります出典[13]

上記は、健康な状態を維持するために必要とされるたんぱく質量ですが、積極的に筋肉を増やすことを考えている場合は、これよりも多くのたんぱく質を摂取することが勧められます。ACSM(アメリカスポーツ医学会)によると、筋トレをしている人は、体重1kgあたり1.2gから2.0gのたんぱく質を摂取するべきとされています出典[14]

自分の状況や目的に応じて、必要なたんぱく質量を計算してみると良いでしょう。

 

2.健康上限摂取量は?

1日のたんぱく質の必要量に対して、摂取の上限量はどうでしょうか。必要量同様に、上限量に関しても複数の報告がありますので、その一部を交えながら解説します。

厚生労働省が2020年に発表した「日本人の食事摂取基準」の中では、摂取の上限量は定めないとされています出典[15]。この摂取基準の中では、たんぱく質の総摂取量が、1日のエネルギー摂取量の35%を超えなければ腎機能の低下には関与しないという論文や、1日のエネルギー摂取量の20%を超える摂取でも影響がなかったとする論文を紹介しています出典[16], 出典[17]。しかしながら、実験手法等に課題があるため、明確な摂取量の上限は示さないと結論づけています。

健康な人が普通の食生活をしている分には問題ないと言えそうですが、腎臓の病気等で医師から指示を受けている場合や、健康診断で注意が出ている場合は、たんぱく質の摂りすぎには気をつけておくと良いでしょう。

 

3.理想の摂取方法やタイミングはある?

筋肉を発達させたい場合は、毎食のたんぱく質量にも気をつけると良いでしょう。忙しい生活を送っていると、つい朝ご飯は簡単に済ませてしまいがちですが、これは筋肉の成長という点では好ましくありません。筋肉を効率よく発達させるためには、一定の間隔で十分なたんぱく質を摂取することが大切です。

2014年に行われた研究では、朝昼晩の3食で均等に30gずつのたんぱく質を摂取した場合と、それぞれ10.7g、16.0g、63.4g(いずれも平均値)と摂取した場合で、たんぱく質の合成量に差があるかが調べられました。その結果、3食で均等にたんぱく質を摂取したグループは、ばらばらのグループよりも、25%高いたんぱく質合成量を示すことが分かりました出典[18]

別の研究では、3食のうち1食でもたんぱく質が不足している人は、毎回十分な摂取ができている人と比べて、除脂肪体重量が少ないことも示されています出典[19]

スポーツのために筋肉をつけたいと考えているアスリートの方や、かっこいい肉体を目指して肉体改造をしている方は、3食全てでたんぱく質を豊富に含んだ食事を摂ることを意識してみると良いでしょう。忙しくて食事のための時間が取れない場合は、プロテインシェイクなども活用できると、手軽に必要なたんぱく質を摂取できるかもしれないですね。
 

まとめ

たんぱく質にはさまざまな働きがあることを紹介しました。

読者の中には、身体作りを行っている人が積極的に取るべき栄養素だと思っていた方もいるかもしれませんが、特別な運動を行っていない場合でも、毎日一定量の摂取が必要だということがお分かりいただけたかと思います。

また、糖質や脂質と比べると、たんぱく質は意識しないと不足しがちな栄養素です。特に、何らかの理由で食事制限をしている場合は、医師や担当のトレーナー等の意見をよく聞いて、バランスの良い食事ができるように心がけてみてください。たんぱく質の摂取を見直せば、これまで以上に健康な生活が送れるようになるかもしれませんね。

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