【最強の炭水化物源】干し芋の筋トレ効果5選
2024年2月23日更新

監修者

NP+編集長/NESTA-PFT

大森 新

筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識を発信できるよう日々邁進中。

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

トレーニーが干し芋を食べるメリット5選

干し芋はさつまいもを蒸してから乾燥させた食品です。噛み応えのある味わいと自然な甘さが特徴的であり、栄養面では糖質と食物繊維を豊富に摂取できる特徴があります。

干し芋はトレーニーとの相性がよく、トレーニングの質を高め、体づくりのサポートに役立つポテンシャルを秘めています。トレーニーに嬉しい干し芋のメリットについて、5つ解説しましょう。

メリット1.携帯性・保存性の高い糖質食品

干し芋は水分量の少ない乾燥食品であり、常温で長期保存できます。市販の干し芋は1か月以上の賞味期限を設けているものが多いため、自宅へもストックしやすいでしょう。

また、食べる際に食器が不要で、かつ手を汚さないため外出先での糖質補給にも便利です。うどんやパスタ、餅は食事に多少の準備が必要であり、おにぎりは長時間の常温保存には適していません。

筋力トレーニングの直後にすぐ食べられる手軽な糖質補給として、携帯性と保存性の高い干し芋は重宝するでしょう。

 

メリット2.低脂質で体脂肪合成のリスクが低い

干し芋はさつまいもを原料としているため、脂質含有量が100gあたり0.6gとごく僅かです出典[1]。過剰な脂質は体脂肪合成のリスクを高めるため、体を引き締めたいトレーニーにおいては控えたいところです。

常温での保存に比較的適した食品としてパンがありますが、コンビニやスーパーで購入できるパンは高脂質なものが多めです。長期保存が可能な高糖質食品であるカップ麺も高脂質であるため、体脂肪合成のリスクに注意すべきです。

また、菓子パンやカップ麺のような糖質食品は飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含んでいます。トランス脂肪酸の摂取量と体重増加との間には高い相関があるため、摂取量が増えるほど体重のコントロールが難しくなるでしょう出典[2]

高糖質かつ低脂質な干し芋は、体脂肪合成を抑えつつ糖質を補給できる優秀な食品です。

 

メリット3.ビタミンB群でエネルギー生成を効率化

さつまいもからはビタミンB1やビタミンB2などのビタミンB群を摂取できます。とくに糖質代謝に関わるビタミンB1は、摂取した糖質をエネルギーに変えるために欠かせない栄養素です。疲労回復を促したり、疲労までの時間を延ばしたりする効果が期待できるでしょう。

2023年に国立台湾体育大学から発表された論文においては、男女32名のアスリートにトレッドミルで疲労困憊まで走ってもらいました。その結果、事前にビタミンB群を補給したグループは、補給しなかったグループと比べて、走行時間が1.26倍増加したと報告されています出典[3]

糖質補給の王道といえば白米ですが、白米は米の胚芽やぬかの部分を取り除いているため、ビタミンB群が大きく減少しています。ビタミンB1が不足しているとエネルギー生成の効率も落ちてしまうため、白米での糖質補給の際にはビタミンB1を含む他の食品を合わせるべきでしょう。

疲労回復効果をより期待したい場合には、糖質とビタミンB1を同時に摂取できる干し芋を活用してみましょう。

 

メリット4.食べ応えがあり食欲をコントロールしやすい

水を飛ばして硬く仕上がった干し芋はよく噛んで食べる必要があり、またエネルギー密度も高いため食べ応えがあります。

噛むことで満腹感を得やすくなる、とはよく聞く話ですね。噛むという行為が脳に刺激を与えて神経ヒスタミンを分泌させ、満腹中枢を刺激するように働くのです。干し芋をよく噛んで食べることで、食欲を抑えて食べ過ぎを防ぐ効果が期待できるでしょう。

また、ヒスタミンは食欲抑制ホルモンであるレプチンとも相互作用することが確認されています。ヒスタミンとレプチン、ダブルの効果でより食欲のコントロールがしやすくなるでしょう。

さらにレプチンにはエネルギー代謝を活発にする作用も確認されているため出典[4]、体脂肪合成のリスクを下げる効果も期待できそうです。

トレーニーにとって糖質補給は欠かせませんが、食べ過ぎや過剰なエネルギーの蓄積は避けたいところ。食欲のコントロールやエネルギー消費の増加に、よく噛んで食べられる干し芋は活躍するでしょう。

 

メリット5.豊富な食物繊維で体調管理をサポート

食物繊維は積極的にエネルギーを生成できる栄養素ではありませんが、トレーニーの体調管理には欠かせない存在です。

筋肉量を増やし維持するため、トレーニーは高たんぱく質食品の摂取量を日頃から増やしています。しかし、たんぱく質は腸内で悪玉菌のエサになりやすく、腸内環境を悪化させるリスクがあるのです。

また、たんぱく質が代謝されて生じる様々な物質の中には、発がん性のあるものや病気のリスクを上げるものも含まれています。たとえばトリプトファンというアミノ酸からはインドール系の物質が生成され、心血管疾患の悪化や肥満の進行につながる可能性が指摘されています出典[5]

一方、食物繊維は腸内で善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やすように働きます。高たんぱく質食品による悪玉菌の増殖を防ぎ、腸内環境を良好に保つ効果が期待できます。

さらに食物繊維のうち、水溶性食物繊維は水に溶けてねば付いた状態になります。腸内の有害物質を吸着して外へ出しやすくする効果が期待できるため、体調を整えあらゆる病気のリスクを下げる効果も得られるでしょう。

干し芋は100gあたり水溶性食物繊維を2.4g、不溶性食物繊維を3.5g含みます。水溶性・不溶性のバランスが非常によいため、便秘の解消や体調管理のサポートなど、食物繊維のあらゆる健康効果が期待できるでしょう。

 

トレーニーはこう食べる!筋トレへの干し芋活用法

高糖質かつ低脂質、食物繊維も豊富な干し芋はトレーニーと相性のよい食品です。では干し芋のメリットを十分に得るためには、どのような食べ方をすればよいのでしょう。

今回はトレーニング期間中を想定し、干し芋を食べる適切なタイミングや他の食品との組み合わせについて紹介します。

間食に取り入れて食べ過ぎ防止

食べ応えがあり低脂質、かつ食物繊維が豊富な干し芋はトレーニング期間の間食に適しています。よく噛んで食べることで高い満足感を得られるため、食べ過ぎ防止に繋がります。

高脂質食品はエネルギー密度が高く、体脂肪合成のリスクを高めがちです。糖質・脂質ともに多い洋菓子やスナック菓子などは避け、低脂質かつ効率よくエネルギー補給ができる干し芋に置き換えてみましょう。

また、多量の糖質による血糖値の急上昇は、血糖値を下げるためのホルモン「インスリン」の分泌を促します。間食においてインスリン分泌が増えすぎることには、次のような問題点があります。

  • 血中の余った糖が脂肪として蓄えられやすくなる
  • 血糖値が急激に下がるため、より空腹を感じるように

インスリンは体脂肪合成を促し、その後の空腹感を増やすように働きます。血糖値を上げやすい食品はトレーニング前の速やかな栄養補給に役立ちますが、間食時には避けるべきでしょう。

干し芋に豊富な水溶性食物繊維には、食物の腸内での移動を緩やかにして血糖値の急上昇を抑える働きがあります。体脂肪合成のリスク抑制に加え、血糖値の急降下を防ぐことで高い満腹感を維持しやすくなるでしょう。

食欲のコントロールに適した干し芋は、減量期やダイエット中の間食として特におすすめです。

 

トレーニング後には高たんぱく質食品と合わせて

高糖質食品を摂取したい機会として、トレーニング前とトレーニング後があります。トレーニング前には速やかな糖質補給が推奨されるため、血糖値を急激に上げやすい白米や餅、うどんが適しているでしょう。

食物繊維が豊富な干し芋は血糖値を緩やかに上げるため、トレーニング後に取り入れましょう。トレーニング直後から筋グリコーゲンの再合成効率は非常に高まっています。30分以内の摂取で、高い貯蔵効果が期待できるでしょう。

一般に、筋グリコーゲンの貯蔵効率はインスリン分泌により高まるものです。しかしトレーニング30~60分後までにおいては、インスリンの分泌量にかかわらず貯蔵効率が上がることが判明しています出典[6]

そのため食物繊維が豊富な干し芋も、筋グリコーゲンの再合成に十分貢献できると考えられるでしょう。

また、トレーニング後には糖質とたんぱく質を同時に摂ることで、筋肉の合成効率や筋グリコーゲンの再合成効率をより高められます。

たんぱく質と糖質の摂取は、同じカロリーの糖質より筋グリコーゲンの合成量を約1.4倍に高めたとの報告が、2002年にアメリカのテキサス大学から発表された論文に寄せられています出典[7]

トレーニング後には牛乳やホエイプロテインなど、比較的消化に優れた高たんぱく質食品との組み合わせがおすすめです。

なお、非常に激しいトレーニングの直後には消化機能の低下が見られる可能性があります。この場合、すぐに干し芋を食べると消化への負担から腹痛を生じる可能性があります。

トレーニング後の食事で腹痛を生じやすい方は、より消化に優れたうどんやおにぎり、バナナなどを選びましょう。

 

焼き芋・蒸し芋・干し芋 どれが最適?

さつまいものシンプルな食べ方として、焼き芋、蒸し芋、干し芋があります。いずれも油やその他の調味料を加えないものであるにもかかわらず、調理法により栄養価が大きく変動する特徴があります。

生のさつまいもと、蒸し芋、焼き芋、干し芋(蒸し切干)の栄養価は次のとおりです。

【食品100gあたりの栄養価(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より)】出典[1]

 エネルギーたんぱく質脂質単糖当量
さつまいも126kcal1.2g0.2g30.9g
蒸し芋131kcal1.2g0.2g32.6g
焼き芋151kcal1.4g0.2g36.7g
蒸し切干277kcal3.1g0.2g66.5g

 

 エネルギー水溶性食物繊維不溶性食物繊維食物繊維
 
さつまいも126kcal0.6g1.6g2.2g
蒸し芋131kcal0.6g1.7g2.3g
焼き芋151kcal1.1g2.4g4.5g
蒸し切干277kcal2.4g3.5g8.2g

※食物繊維には水溶性、不溶性のほか、難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)が含まれるため、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の合計と食物繊維総量との数値が合致しない場合があります。

これらの栄養価の差をもとに、それぞれのさつまいも食品の特徴や、トレーニーとの相性について解説しましょう。

蒸し芋は冷やしてよりダイエット向きの間食に

蒸し芋は100gあたりのカロリーや糖質量が比較的控えめです。カロリー密度が低いため、多めに食べられて満腹感を高めやすい点もメリットになるでしょう。

ダイエット中に蒸し芋を取り入れる場合は、一度加熱したものを常温または冷蔵庫で冷やすことをおすすめします。

炭水化物食品に含まれるでんぷんの一部は、消化されない「難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)」として、食物繊維と似た働きをすることが分かっています出典[8]

このレジスタントスターチは冷ますと増える性質があります。炭水化物食品であるさつまいもを冷やすことで、より多くのレジスタントスターチを摂取できるでしょう。

焼き芋は加熱時間や温度帯の違いにより、より分解されたグルコースやマルトースといった糖を多く含みます。そのため難消化性でんぷんを効率よく増やしたい場合には、でんぷんの割合が多い蒸し芋が適しているでしょう。

なお、冷やすことで増加したレジスタントスターチは、再度の電子レンジ加熱で減少しないと報告されています出典[9]。温かい蒸し芋を食べたい場合には、冷やしてから再度加熱するとおいしく仕上がるでしょう。

 

糖度の高い焼き芋はバルクアップにおすすめ

焼き芋の大きな特徴は、低温でじっくり焼き上げることにあります。低温かつ長時間の加熱により、でんぷんを分解して糖に変えるための酵素「β-アミラーゼ」を十分に作用させることができます出典[10]

甘さの少ないでんぷんが分解され、甘い糖の割合が増えるため、焼き芋は比較的血糖値を上げやすい食品です。血糖値の急上昇に伴うインスリン分泌は、筋肥大を効率化させるために役立ちます。

そのため焼き芋は、体を大きくしたいバルクアップ中のトレーニーと相性がよいさつまいも食品と言えるでしょう。

焼き芋は蒸し芋や干し芋より甘さを感じやすいため、甘い間食を控えている方向けの食品でもあります。チョコレートや洋菓子などの甘いお菓子と比較すると、焼き芋は低カロリーかつ低脂質であるためダイエット中にも取り入れやすいでしょう。

焼き芋も冷やすことである程度レジスタントスターチを増やせます。ダイエット中には血糖値の急上昇を抑えるため、一度冷ましてから食べましょう。

 

干し芋は食欲のコントロールが難しい減量期に

蒸し芋や焼き芋と比較した際の干し芋のメリットとして、栄養価の高さと携帯性が挙げられるでしょう。

たとえば蒸し芋100gあたりのカロリーは131kcalであるのに対し、干し芋は277kcalと約2倍のエネルギー密度があります。しかし、たんぱく質は干し芋1.2gに対して3.1g、食物繊維は2.3gに対して8.2gと、いずれも倍以上の栄養価を誇ることが分かるでしょう。

比較的カロリーの高いさつまいも食品ではありますが、干し芋にはそれ以上に高い栄養価が見込めます。少ない量で効率よく栄養を補給できるため、摂取カロリーを抑えたい場合に活躍するでしょう。

噛み応えがあることから少量でも満腹感を高めやすいため、摂取量は自然と減らせます。エネルギー密度の高さを気にしすぎず、適量を取り入れて食欲のコントロールに役立てましょう。

 

干し芋で体脂肪を増やさず筋肉を増やそう!

干し芋は携帯性・保存性に優れた高糖質食品です。低脂質かつ食物繊維を豊富に含み、噛み応えもあることから、体脂肪合成のリスクが低い間食として活用しやすいでしょう。

血糖値の上昇を緩やかにできる特徴を踏まえ、食べるタイミングには工夫が必要です。

トレーニング前はより速やかに吸収できる高糖質食品が望ましいため、干し芋よりも白米や餅、うどんの活用がおすすめです。また激しいトレーニングの直後には消化機能が一時的に落ちる場合があるため、消化に時間のかかる干し芋の摂取は慎重に行いましょう。

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