監修者
睡眠健康指導士/ロジスティクス管理3級
室井優作
心と体の健康の要となる睡眠のスペシャリスト。眠りに悩みを抱える方のコンサルティングを日々行っている。プロボクサーを目指しており、運動やダイエットに関する指導も可能。おすすめの寝具はウェイトブランケット。
執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
なぜ寝る前のりんごが注目されているのか?
寝る前に食べると良いと噂されている”りんご”。
そもそも、なぜ寝る前のりんごが注目されているのでしょうか?
ひとつは、痩せるという噂があるからです。
一方で、夜のりんごは太るというネガティブな意見を耳にした人もいるかもしれません。
一体、真相はどっちなのでしょうか?
そこで今回は、寝る前のりんごについての真相を学術的視点から徹底的に分析していきます。
寝る前のりんごにまつわる5つの真実
では早速寝る前のりんごに隠された真実を解明していきましょう。
真実1.たしかにリンゴに含まれる栄養素には抗肥満作用はある
早速、寝る前のりんごで痩せるという噂について、見ていきましょう。
結論、確かにりんごに含まれる栄養素には抗肥満効果があるのは事実なんです。
その栄養素こそ、りんごに含まれるポリフェノール(総称:リンゴポリフェノール)として近年注目されている「プロシアニジン」。
リンゴポリフェノールには様々な種類がありますが、全体の半分以上を占めるのがプロシアニジンです。
そして、プロシアニジンには抗肥満効果に対する機序がいくつも示されているんです。
まずは、脂肪細胞の分化を抑制する作用について。
脂肪細胞は分化によって数が増え、さらに大きくなることで肥満に繋がりますが、プロシアニジンは脂肪細胞が分化するのを防ぐ可能性が示されています出典[1]。
また、プロシアニジンはリパーゼという脂肪を分解する酵素の働きを抑えて、食事で摂取した脂肪が吸収されるのを防ぎ、排泄する効果も期待されているのです出典[1]。
さらに、プロシアニジンが体内で中性脂肪の分解を増加させ、エネルギー代謝を亢進させる出典[1]こともダイエットにプラスになる効果ですね。
このように、様々な機序により抗肥満効果が示されているプロシアニジンは、ヒトに対する研究においても実際にダイエット効果が示されています。
肥満気味(内臓脂肪が気になる、あるいはBMIが高め)の健常成人に対し、リンゴ由来プロシアニジンとプラセボを摂取してもらい体脂肪の変化を調査した研究が行われました。
その結果、リンゴ由来プロシアニジンを110mg摂取すると、プラセボと比較して内臓脂肪が有意に低減したことがわかったんです出典[2]。
りんご1個(可食部300g)に約110mgのプロシアニジンが含まれる出典[2]ことから、確かにりんご1個の摂取でダイエット効果が期待できると言えるでしょう。
真実2.プロシアニジンには美肌効果も期待できる
さらにプロシアニジンには、なんと美肌効果もあることが示されています。
というのも、プロシアニジンは抗酸化作用が強い成分であり、活性酸素から細胞を保護することで肌を綺麗に保つことが期待できるんです。
実際に35~65歳の健康な男女50人に対し、プロシアニジンが肌にどのような効果を与えるか調べた研究を見てみましょう。
被験者は、プロシアニジン14.63mgを含むサプリメントを毎日1カプセル摂取するグループとプラセボグループに分けられ、60日後に肌の弾力や潤い、シワの深さなどが測定されました。
その結果、プラセボグループは、肌の荒れ、弾力性、しわの深さが有意に悪化し、保湿能力が低いままであったのに対し、サプリメントグループは、肌の荒れ、弾力性、潤いがすべて改善され、しわの深さが大幅に軽減したことがわかっています出典[3]。
肌荒れやしわが気になっている人、肌を若々しく保ちたい人はプロシアニジンが豊富に含まれるりんごを食べない理由はないですね。
真実3.さらに睡眠に悪影響になる可能性は低い
続いて、寝る前のりんごと睡眠の質について。
寝る前にりんごを食べることで睡眠の質が下がってしまわないのでしょうか?
そもそも「寝る前に食事をすると睡眠の質が下がる」と言われる理由のひとつは、”糖質”にあります。
少し詳しく解説しましょう。
糖分を摂取すると血糖値が上がるのですが、それを下げるために膵臓からインスリンというホルモンが分泌。
その反動で血糖値が下がりすぎてしまい、今度は交感神経を高め血糖値を上げようとします。
交感神経が高まることで興奮作用が強くなるため、結果的に睡眠にとっては悪影響になるというメカニズムなんです。
しかし、夜のりんご摂取は睡眠に悪影響になる可能性は低いんです。
なぜなら、りんごはGI値が低い食品であるため血糖値を急上昇させないから。
実際に2019年に中国で行われた研究では、18~25歳の健康な女性18人に対し、白米を食べた場合、白米とりんごを同時に食べた場合、りんごを先に食べて30分後に白米を食べた場合など様々な条件でその後の血糖値が測定されました。
その結果、白米とりんごを同時に食べた場合とりんごの後に白米を食べた場合で、血糖値の食後急上昇が大幅に抑制されたことがわかっています出典[4]。
このように、りんごは血糖値を緩やかに上げる食材であるため、睡眠への影響は少ないと言えるでしょう。
結論、夜にりんごを食べてはいけないわけではない、ということになりますね。
真実4.品種はレッドデリシャスがベスト
それでは、ダイエット効果や美肌効果が期待できるプロシアニジンを摂取するには、どのような食材が向いているのでしょうか?
答えは、りんごの中でもレッドデリシャスと呼ばれる種類のりんごです。
4種類のりんごのプロシアニジン量を比較した研究では、平均して最もプロシアニジンが多く含まれいたりんごは、レッドデリシャス(207.7mg/1食分)、続いてグラニースミス(183.3mg/1食分)の品種であったことがわかりました出典[5]。
レッドデリシャスはアメリカで最も生産量の多いリンゴの品種です。
輸入食品を取り扱っているスーパーでレッドデリシャスを見かけた際は、ぜひ買ってみてくださいね。
真実5.ただし、寝る前である必要はない・・・
確かに、ダイエット効果や美肌効果があるりんごですが、寝る前の摂取が必要不可欠である研究データはありません。
もちろん、寝る前に食べても睡眠の質に影響を与える可能性は低いですが、あえて夜に食べるメリットは少ないと言えるでしょう。
どちらかというと、お菓子を食べる代わりにりんごを食べたり、食後高血糖を防ぐために食事中や食前に食べるほうが健康メリットが得られて良いかもしれませんね。
リンゴは1日一個を目安に食べると健康的
出典
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