執筆者
NSCA-CPT、調理師免許
大里 亮太(筋肉料理研究家Ryota)
激太り&うつで入院するも入院中にTeststerone氏の「筋トレが最強のソリューションである」に出会い、退院後に筋トレとお料理で体重-25kgに成功。精神的にも立ち直り、パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPTを取得。元々所有していた調理師免許を生かし、筋肉料理研究家として活動するように。昔の自分のように心身ともに悩んでいる方のサポートになればと、日々簡単ダイエットレシピを発信している。
テストステロンはスポーツにどんな影響を及ぼすのか?
男性ホルモンの代表であるテストステロンは、スポーツにもいろいろな影響を与えます。
この項目では具体的な例を、大きく肉体面と精神面に分けて解説します。
身体パフォーマンスを向上させる
テストステロンと言えば、「男らしい体を作るためのホルモン」というイメージをお持ちの方も多いはず。
実際に、テストステロンはさまざまなメカニズムによって筋肥大を引き起こすことが分かっています出典[1]。
また、筋肥大による骨格筋の変化は、筋力の向上にもつながることに。
従って、テストステロンのレベルの高さは、パワーやジャンプ力などの身体パフォーマンスの高さにも関わってくるんです。
ここで、2023年にリバプール・ジョン・ムーア大学から発表された論文をご紹介しましょう出典[2]。
研究では、若年プロ陸上競技選手におけるテストステロン値と筋力などの関係を調査するために、68名のプロ選手を分析。
その結果、男性アスリートにおいてはテストステロンが高いほど20mおよび30mスプリントのタイムが速いという結果に。
合わせて、テストステロンレベルは脂肪量も少なさにも関連していました。
もちろん、競技によって求められる体格や動きは異なるもの。
しかし、テストステロンを高めることは、より良い結果を得るための可能性も高めることにもなるんです。
ただし、これは男性アスリートに限った話。
上記の論文でも、女性アスリートにおいては、テストステロンと関連する身体的な指標は確認できなかったと述べられています。
アグレッシブさを高める
テストステロンは体だけではなく、精神面にも作用するホルモン。
分泌されると脳にも働きかけ、その人の攻撃性を高めたりもするんです。
2012年にアテネ大学から発表された論文でも、テストステロンは攻撃的な行動に関する脳への働きかけや、実際の行動の発現に大きく関わっていると述べられています出典[3]。
この話だけを聞くと、「それってデメリットなんじゃ…」と思われるかもしれません。
たしかに、普段の生活で攻撃的な行動を起こしやすくなるというのは、あまり歓迎されないことでしょう。
しかし、スポーツにおいては、アグレッシブな姿勢が有利に働く可能性があるんです。
ここで、2015年にラス・パルマス・デ・グラン・カナリア大学から発表された論文をご紹介しましょう出典[4]。
研究では、プロバスケットボール選手のホルモンバランスがポジションに与える影響を調査。
スペイン1部リーグの男性選手12名を対象に、運動テストや血液の分析を行っています。
その結果、リバウンドなどの接触プレーが多いセンターのテストステロン濃度は、ガードよりも高いことが判明。
つまり、種目やポジションによっては、テストステロンを高めて攻撃的になることは、より良い結果につながる可能性があるんです。
過度なテストステロンの上昇はドーピング違反になるかも…
ここまでの解説で…
「じゃあ、スポーツ選手はとにかくテストステロンを高めれまくればいいのでは?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、どんな方法を使っても良いという訳ではありません。
じつは、テストステロン由来の化合物であるアナボリックステロイドは、オリンピックをはじめとする主要な競技大会では禁止薬物に指定されています出典[5]。
従って、注射などで直接体内にテストステロンを取り入れることはドーピングとなり、違反者には制裁処分が下されてしまうことに。
また、アナボリックステロイドの乱用は心臓や生殖器、消化器や神経にまで重大な副作用をもたらす可能性も。
加えて、脳の老化を早めたり、認知機能の障害や精神的な障害なども報告されていたりと、使用には大きなリスクが伴います。
さらに注意したいのが、海外製のサプリメント。
というのも、海外製のサプリメントにはラベルに表示が無くても、テストステロンや類似物質が含まれている恐れがあるんです。
実際に日本でも、競技者が知らずに海外製のサプリメントを使用してドーピング違反になってしまう事例が発生しています。
つまり、アスリートにはバランスの取れた食事や良質な睡眠、ドーピング禁止物質が含まれていないサプリメントを利用する…
といった、あくまでも自然な方法でテストステロンを高めることが求められるんです。
テストステロンと各スポーツの関係
テストステロンを高めることは、基本的にどんなスポーツにも有利に働きます。
この項目では、中でもテストステロンとの関わりが深い3つの種目をピックアップし、その関係性を解説します。
陸上競技・マラソン
先ほど紹介した通り、テストステロンを高めることは、筋力の向上にもつながります。
そのため、陸上競技においては、テストステロンの高さはほとんどの種目で有利に働きます。
実際に、2023年にモスクワ国立医学大学から発表された論文では、若い男性陸上競技選手のテストステロンレベルと短距離走のパフォーマンスには関連性があるというデータが紹介されています出典[6]。
短距離走や跳躍競技などの競技では瞬発力が求められるので、良い記録を出すためには筋力の高さは重要なポイント。
テストステロンの多さは、そのままアドバンテージになるようです。
ただし、長距離走の選手においては、テストステロンは低下しやすい傾向にあります。
2000年にブリティッシュコロンビア大学から発表された論文では、長距離ランナーにおいては走行距離が長くなるほどテストステロンが低くなるということが分かっています出典[7]。
長距離競技は筋肉隆々ではかえって動きづらく、体重管理のために食事量を制限することもある種目。
従って、長距離選手はテストステロンを十分に生成するだけの栄養を摂取できていない可能性も。
また、走り過ぎによる疲労の蓄積も、ホルモン生成を阻害してしまっているのかもしれません。
ボクシングなどの格闘技
格闘技は、どんな種目でも闘争心の高まるスポーツ。
家で見ているだけでも興奮しますが、実際に戦っている選手たちは試合後に一時的にテストステロンが増加するようです。
2020年にポーランドの医学研究センターから発表された論文では、空手、テコンドー、柔道やレスリング、相撲などの試合前後に選手の血液を分析出典[8]。
その結果、どの種目でも試合後にテストステロンの濃度が大きく上昇していたというデータが紹介されています。
ルールや求められる身体的能力が異なるにも関わらず、同じようにホルモンが変化するというのは興味深いですよね。
しかし、ボクシングをはじめとする体重管理が必要な種目においては、減量によってテストステロンが低下してしまう可能性も。
例えば、2017年にオンライン上の学術誌に発表された論文では、減量によって体重を約5%減らした柔道家が模擬試合の終了後に血液を分析したところ、テストステロンが48%も低下していたというデータが紹介されています出典[9]。
ボクシングや柔道などの体重別の階級を定めているスポーツには、程度の差はあるとは言え、どうしても減量が伴うもの。
従って、体組成の変化による一時的なテストステロンの低下は避けられない道なのかもしれません。
ボディビル
冒頭にも述べた通り、テストステロンの最も大きな働きと言えば筋肥大。
そのため、ボディビル競技においては、いかにテストステロンを高めるかが勝敗のカギを握っていると言っても過言ではありません。
しかし、世界トップレベルのボディビルダーにおいては、先ほど紹介したステロイドの使用が暗黙の了解になっています。
プロボディビルの最高峰「ミスター・オリンピア」などの大会は、競技だけでなくショーの側面も持っています。
観客を魅了するためには、ステロイドの使用もやむを得ないのかもしれません。
また、ボディビルにおいても格闘技と同じく、減量によってテストステロンが大幅に減少する恐れがあります。
2013年にフィッチバーグ州立大学から発表された論文では、ボディビルダーを競技前後に6ヶ月追跡して分析出典[10]。
選手が体脂肪率を14.8%から4.5%に落とした結果、テストステロンが70%ほど低下したというデータが紹介されています。
ちなみに、論文では大会後にはテストステロンのレベルは元に戻ったとも述べられています。
アスリートは自然にテストステロンを高めよう!
テストステロンを高めれば、肉体面・精神面ともにポジティブな効果が表れ、スポーツに有利に働く可能性があります。
しかし、注射や薬剤によるテストステロンの摂取はドーピング違反になり、場合によっては厳しい制裁が下されてしまいます。
また、例えいい成績が収められたとしても、体や精神を壊してしまっては元も子もありません。
どんな種目のアスリートも、食事や睡眠などのバランスを整え、自然な方法でテストステロンを増やしたいものですね。
出典
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