執筆者
NP+編集長/NESTA-PFT
大森 新
筑波大学大学院でスポーツ科学について学んだ後、株式会社アルファメイルに入社。大学院では運動栄養学を専攻し、ビートルートジュースと運動パフォーマンスの関係について研究。アルファメイル入社後は大学院で学んだ知識を基に、ヘルスケアメディア「NP+」の編集やサプリメントの商品開発に携わる。筋トレ好きが高じて、NESTA-PFT(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会トレーナー資格)も取得。ラグビー、アイスホッケー、ボディビルのスポーツ経験があり、現場と科学の両面から健康に関する知識できるよう日々邁進中。
テストステロンなくして筋肉の成長なし
mTORの活性化やリボソームの生合成、ミオスタチンの減少...など、様々な生体内プロセスを経て筋肉は大きくなります。
では複数存在する筋肥大反応の中でどれが一番重要なのでしょうか?
もちろん「全て重要」というのが明確な解答ではありますが、あえてランク付けするとしたら「テストステロンの増加」は1,2位を争うくらい大切な要素と言えるでしょう。
なぜならテストステロンは筋肥大反応をスタートさせるホルモンのためです。テストステロンがなければ、それ以降の反応は起こらないといっても過言ではありません。
どれだけプロテインを飲んでもテストステロンがなければ筋肉はつかないのです...。
実際に2016年にミシシッピ大学が発表した研究において、筋肥大におけるテストステロンの重要性が示されています出典[1]。
研究では252名の男性のテストステロン値と筋肉量を測定し、テストステロンの分泌量に従い4つのグループに分類。
その結果、テストステロンが多い上位2グループは、テストステロンが最も少ないグループよりも有意に筋肉量が多いことが明らかにされました。
具体的にはテストステロンが2番目に多いグループはテストステロンが最も少ないグループよりも下半身の筋肉が14.2%、上半身の筋肉が5.6%多く、テストステロンが最も多いグループはテストステロンが最も少ないグループよりも下半身の筋肉が22.1%、上半身の筋肉が5.6%多かったようです。
ただし、この研究だけでは「遺伝的にテストステロンが高い人が筋肉も多いだけなんじゃないの?」とお考えの方もいることでしょう。
ご安心ください。遺伝的にテストステロンが少ない人でも、テストステロンを増やせば筋肉は増えます。
テストステロンの変化量と筋肉の増加率の関係を調査したデータでは、100ng/dlテストステロンが増えるごとに筋肉量は0.6kg増加することが示されているのです!出典[2]
なお、この調査の対象者はテストステロンを直接体内に注入して、急激にテストステロンを上昇させています。
もちろんテストステロンを直接体内に注入することはドーピングかつ安全性が低いため、おすすめはしません。
しかし100ng/dl程度であれば、薬を使用せずとも、サプリメントで増やすことができる可能性は十分にあります...!出典[3]
より効率的に筋肉を大きくしたい方、筋肉の成長に停滞を感じている方は、テストステロン的筋肥大アプローチを取り入れてみるとよいでしょう。
テストステロンを増やして筋肥大効率を最大化するサプメンテーション術
それでは、ここからはテストステロンの分泌量を最大化するサプリメンテーション術をご紹介。
筋トレ界隈では、カロリーバランス・PFCバランス以外の栄養的アプローチは軽視されている傾向にあります。
日本ではテストステロン的栄養アプローチを取り入れている人はほとんどいないため、取り入れることで周りと一歩差をつけられることでしょう!
まずはテストステロンを正常に「作る」ための土台作り
テストステロンを増やすためには土台作りが必要不可欠。「テストステロンブースター」と呼ばれるサプリメントを摂っても効果を感じられないのは、テストステロンを分泌するための基礎が整っていないからです。
まず必ず意識してほしいのが脂質の摂取。トレーニーは低脂質にこだわる方が多いですが、実はテストステロン的にはNG。
テストステロンは脂質に含まれるコレステロールを材料に作られるからです。研究でも、総摂取カロリーの20%を摂っている時よりも、総摂取カロリーの40%を摂った方がテストステロンの分泌量が高まることが示されています出典[4]。
もちろん総摂取エネルギーの40%を脂質でまかなうと、体脂肪がつきすぎる、といった別の問題が生まれますが、ここでは減らしすぎはかえって筋肥大効率を落とすということを覚えておきましょう。
また、基礎栄養素の亜鉛やビタミンDは、コレステロールからテストステロンを合成する過程において必要不可欠です出典[5]出典[6]。
とはいえ、これらの基礎栄養素は不足なく摂ることが大切であり、摂れば摂るほど効果があるわけではないことにはご注意ください出典[7]。
脂質・亜鉛・ビタミンDは過不足なく摂って、テストステロンが正常に分泌される土台を整えましょう。
テストステロンを「守る」ための抗酸化物質
続いて、精神的負担が大きい現代で意識していただきたいのが、ストレスからテストステロンを守ること。
ストレスが溜まることで体内で発生する活性酸素はテストステロンの大敵。テストステロンの分泌に関わる臓器のはたらきを弱め、結果的にテストステロンの分泌量を少なくしてしまうのです出典[8]。
対策としては、ストレスの原因となっている事象を取り除くことがベスト。とはいえ、ストレスの原因が仕事や家庭、学業にあると全てを取り除くことは現実的とは言えません。
そこで、抗酸化物質の出番です。抗酸化物質は、活性酸素のはたらきを弱めて無害化してくれるのです。
抗酸化物質は色の濃い野菜や果物に豊富。1日3~8品目ほどは野菜や果物を摂るとよいでしょう。
食事で抗酸化物質を摂ることが難しい場合はサプリメントを活用するのもアリ。例えば以下の栄養素はテストステロンの向上が確認されている抗酸化物質で、サプリメントで摂ることができます。
- アリウムSAC出典[9]:ニンニク由来のサプリメント素材。抗酸化作用のある「S-アリルシステイン」を生にんにくの200倍の濃度で含む。
- マグネシウム出典[10]:抗酸化作用や抗炎症作用が報告されているミネラル。日本人は平均100mg程度不足している。
- ボロン出典[11]:微量栄養素の1種。マグネシウムの吸収率を高めたり、抗酸化酵素のはたらきを活性化したりする作用が確認されている。
仕事や家庭のストレスが絶えない人は、抗酸化物質を摂って、悪影響を和らげましょう。
「ブースト」にはテスノア・LJ100・テストフェン
ここまでの話はあくまでテストステロンレベルを一般健康レベルに保つためのもの。基礎栄養素を摂ったり、ストレスによる減少を防いだりするのは、いわばテストステロンレベルを60%から100%に引き上げるイメージです。
この記事をお読みの皆さんが気になるのは、「どうすれば常人以上のテストステロンを手に入れられるか」だと思います。
テストステロンレベルを100%より更に上に引き上げることで、更なる筋肉を獲得できることでしょう。
一般健康レベルを超えたテストステロンを手に入れるには、やはり常人とは異なることをする必要があります。
栄養であれば、基礎栄養素ではなく、誰も普段摂らないような希少栄養素を摂る必要があるのです。
例えば、以下のような希少栄養素は、テストステロンレベルを上げ、筋肥大を誘発することが研究で示されています。
- テスノア出典[12]:ザクロとカカオの混合物。若い男性、中高年の男性双方で、テストステロンの増加や握力の向上、上腕周囲の増加が確認されている。
- テストフェン出典[13]:カレーのスパイスに使われるフェヌグリークが原料の素材。8週間、筋トレと併用することでテストステロン値やレッグプレス1RMが向上したことが報告されている。
- LJ100出典[14]:熱帯雨林に植生するトンカットアリという植物の抽出物。加齢に伴い増えるSHBGのはたらきをブロックする作用があるため、特に中高年の人と相性がよい。
もちろん上記の素材は、WADAが指定する禁止物質一覧には含まれていない素材です。これらが配合したサプリメントを、トップアスリートが摂取しているとの情報を記事やSNS上で見かけますが、これまでに上記素材が原因でドーピングに引っかかったとの報告はございません。基本的にはドーピングの心配なく利用できるサプリメントと言えるでしょう。
トレーニングの質を上げるならバイオドーパ
最後にトレーニングの質を高めるテストステロンサプリメントをご紹介。それがバイオドーパです。
バイオドーパはムクナマメを濃縮したサプリメント素材。やる気ホルモンのドーパミンの前駆体であるL-DOPAを30%以上保有するように規格化されています。
ドーパミンには脳の視床下部という部位を刺激して、テストステロンを作る指令を出させる役割があります。
つまりドーパミンの材料を豊富に含んだバイオドーパを摂取することで、ドーパミンとテストステロンの双方が増えるのです出典[15]。
ドーパミンの作用によりモチベーションが高まり、テストステロンの作用により活力が高まる可能性は考えられますね。
ただし残念ながら、現状バイオドーパを摂取したことで、筋肥大に繋がったという直接的なデータはございません。
そのためバイオドーパは筋肥大目的よりも、プレワークアウトとして使うの方が相性がよいでしょう。
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今回は筋トレ効率を最大化するテストステロンサプリメントの摂り方について解説しました。
基礎栄養素・抗酸化物質の摂取で土台を整えた上で、ブースターサプリメントを摂取してテストステロンを最大化するとよいでしょう。
ただし、ブースターサプリメントには粗悪品が多いのも事実。推奨量が十分に配合されていなかったり、科学的に効果が証明されていない素材が配合されていたりすることがございます...。
さらに海外製のサプリメントブースターには、副作用の大きい素材やドーピングに引っかかる素材が配合されていることも...。
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