テストステロンが増える?男性がくるみに期待できる効果8選
2024年6月13日更新

執筆者

管理栄養士/分子栄養学カウンセラー

岡かな

大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。

クルミってどんな食べ物?

豊富な栄養素を含み、スーパーフードとして注目されている”クルミ”。

健康効果を狙ってクルミを積極的に食べている人もいるのではないでしょうか?

まずはクルミの栄養価や特徴について解説していきましょう。

高脂質かつ低糖質なナッツ

他のナッツと比較して、クルミには栄養面でどのような特徴があるのでしょうか?

じつは、メジャーなナッツの中でクルミは最も脂質が高いんです。

【食品100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より出典[1])】

 エネルギー
(kcal)
たんぱく質
(g)
脂質
(g)
不飽和脂肪酸
(g)
利用可能炭水化物(g)
くるみ
(いり)
71314.668.850.282.8
アーモンド
(いり/無塩)
60820.354.112.655.9
ピスタチオ
(いり/味付け)
61717.456.116.428.2
らっかせい
(小粒種/いり)
60726.549.416.8210.7
カシューナッツ
(フライ、味付け)
59119.847.68.0818.6

クルミは、脂質の中でも特に不飽和脂肪酸の含有量が高いこともわかりますね。

また、脂質は1gあたりのエネルギーが高いことから、脂質の多いクルミはカロリーも高いんです。

さらに、糖質量が少ないこともクルミの特徴のひとつ

低糖質であることから糖質制限をしている人からも、クルミはかなり人気が高いんですよ。

 

ω‐3系脂肪酸の含有量がトップクラス

クルミは、他のナッツに比べて不飽和脂肪酸が多いことを解説しました。

不飽和脂肪酸の中でも、植物や魚の油に豊富な多価不飽和脂肪酸は、血中脂質を改善したり血圧を下げる働きがあります

また、多価不飽和脂肪酸は体内で合成できないため、食品からの摂取が必須とされる栄養素なんですよ。

そして、多価不飽和脂肪酸の含有量がナッツの中で一番多いのが、クルミ。

【食品100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より出典[1])】

 一価不飽和脂肪酸
(g)
多価不飽和脂肪酸
(g)
くるみ
(いり)
10.2650.28
アーモンド
(いり/無塩)
35.0912.65
ピスタチオ
(いり/味付け)
30.9216.42
らっかせい
(小粒種/いり)
20.5716.82
カシューナッツ
(フライ、味付け)
27.748.08

クルミの多価脂肪酸含有量は、他のナッツの3倍以上の含有量を誇ることがわかります。

さらに、クルミは含有する多価不飽和脂肪酸の中でもω‐3系脂肪酸の含有量が最も高いことも特徴と言えるでしょう。

ω-3系脂肪酸と言えば健康効果に優れており、抗酸化作用や抗炎症作用、血中脂質のバランスを整える効果などが期待される良質な脂質です。

まとめると、クルミは健康効果の高い多価不飽和脂肪酸、なかでもω-3系脂肪酸を豊富に含むナッツということですね。

 

男性が期待できるクルミの効果8選

ここからは、男性がクルミに期待できる効果を学術的視点から8つご紹介しましょう。

1.抗酸化作用・抗炎症作用

私たちが生きるためには呼吸や代謝をする必要がありますが、その際に必ず生まれてしまうのが活性酸素。

活性酸素が過剰に発生すると身体を酸化(サビ)させ、動脈硬化、がん、老化、免疫機能の低下などを引き起こしてしまいます出典[2]

そこで活性酸素の除去に役立つのが、クルミに含まれる抗酸化物質。

クルミにはω‐3系脂肪酸であるα-リノレン酸をはじめ、ビタミンE、ポリフェノール、マグネシウムなど、抗酸化・抗炎症に役立つさまざまな物質を含んでいるんです

ちなみに、クルミに含まれるポリフェノールの量や効能は、メジャーなナッツの中で最も高いことをご存知でしょうか?

実際に、9種類のナッツのポリフェノール量と抗酸化力を測定した研究では、ポリフェノール量が最も多かったのがクルミであり、さらに抗酸化能力もクルミポリフェノールが最も高いことがわかりました出典[3]

クルミは抗酸化作用において、かなり優秀な食材と言えるでしょう。

これ以降の健康効果においてもクルミの抗酸化作用、抗炎症作用がカギとなるものが多いんですよ。

 

2.血中脂質の改善

「コレステロールが高くなってきた…。」そんな方にもおすすめしたいのがクルミ。

クルミに含まれるω‐3系脂肪酸には血中脂質のバランスを整える効果があるからです。

実際に、65歳以上の男性20名に対し、15g/日のクルミ摂取とトレーニングを6週間実施したところ、中性脂肪、総コレステロール、LDL(悪玉)コレステロールがそれぞれ21%、13%、18%減少し、HDL(善玉)コレステロールが14.4%増加したことが示されました出典[4]

さらにこの研究では、トレーニングのみ実施した場合は血中脂質の改善効果がみられなかったこともわかっています出典[4]

つまり、クルミの摂取が血中脂質を改善したと言えるでしょう。

肝になるのは、ω‐3系脂肪酸の一種であるα-リノレン酸と考えられます。

α-リノレン酸の摂取と血中脂質を調べた47の研究をまとめた報告では、α-リノレン酸の食事摂取により中性脂肪やLDLコレステロールが改善することが結論付けられています出典[5]

コレステロールや中性脂肪が気になる人は、クルミを摂取してみてはいかがでしょうか。

 

3.血糖値スパイクの防止

血糖値スパイクとは、食後の血糖値が急上昇し急降下してしまう現象を言います。

血糖値スパイクが起こると血管が傷つき、動脈硬化が進みやすくなってしまいます

そこで役立つのが、クルミに豊富に含まれている食物繊維。

食物繊維は腸の中で糖質を包み込みながら移動するため、糖質の吸収速度が遅くなることで、食後の急激な高血糖を防ぐことができるんです。

実際に、糖尿病患者を含む24人の参加者に対し、炭水化物量50gを含む白パンと同時に30、60、90gのミックスナッツを摂取してもらい、その後の血糖値を測定した研究が行われました。

その結果、白パンにナッツを加えると、食事の血糖反応がミックスナッツ30g、60g、90gの用量で約11%、30%、54%減少したことが示されたんです出典[6]

またクルミは、食物繊維が豊富なだけでなくクルミ自体が低糖質であることから、より一層、血糖値について安心して食べられますね。

 

4.動脈硬化リスクの低減

先に解説したように、クルミには血糖値スパイクを防止する効果が期待できます。

血糖値スパイクを防止することで血管へのダメージを軽減し、動脈硬化のリスクを低減することができるでしょう。

さらに、クルミは動脈硬化の進展にともなう心筋梗塞や脳梗塞などの脳血管障害の予防にも役立ちます

実際に、2006年に発表されたナッツの摂取と死亡率についての論文では、ナッツの摂取量が増加すると心血管疾患および冠状動脈疾患による死亡リスクが減少することが示されました出典[7]

これらの結果は、クルミなどのナッツに含まれる抗酸化物質が血管内皮機能を高め炎症を軽減し、アテローム性動脈硬化のリスクを下げた結果であると推測されています。

ナッツの中でも特に抗酸化物質が多いクルミ出典[3]は、動脈硬化リスクの低減に期待できそうですね。

 

5.肥満の改善

クルミを含め「ナッツはカロリーが高いから太りそう…。」というイメージがあるかもしれません。

しかし、じつは適量のクルミの摂取は肥満防止にも効果的なんです。

血糖値が急上昇するとインスリンの大量分泌が起こり、体脂肪が合成されやすくなってしまうことは、多くの人が知っているでしょう。

先に解説したように、クルミの摂取により食後高血糖及び血糖値スパイクを防止することができるため、体脂肪の合成を抑えることにも繋がるんです

さらに、クルミに豊富なn-3系脂肪酸には食欲を抑える効果が確認されており、適量の摂取により満腹感が増加し、全体的な摂取カロリーが抑えられることもわかっています。

実際に、多価不飽和脂肪酸が豊富な食事を摂ることで、食欲を増進させる「グレリン」というホルモンの分泌が抑制され、逆に満足感を生じさせる「コレシストキニン(CCK)」という消化管ホルモンの分泌が増加することが示されました出典[8]

この研究では、オリーブ油などの植物油に高く含有されている一価不飽和脂肪酸についても調査されましたが、一価不飽和脂肪酸よりも多価不飽和脂肪酸が豊富な食事のほうが満腹感が高かったこともわかっています出典[8]

せっかく同じ油脂をとるなら満腹感が高いクルミを選ぶことで、結果的に摂取カロリーを抑えられ、ダイエットにも繋がるでしょう。

 

6.不眠の解消

クルミには睡眠の質を高める可能性も期待できます。

不眠の解消に役立つと考えられているのが、クルミに含まれている 3-ヒドロキシ-4-イミノ酪酸 (HIBA)という化合物

HIBAは、メラトニンの前駆体である5-HTに作用してメラトニン生成を促したり、脳内で5-HTを増やすことで疲労感と眠気を感じさせたりする可能性があるとされています出典[9]

メラトニンは”睡眠ホルモン”とも呼ばれ、自然な眠気を誘う作用があります。

良質な睡眠には欠かせないホルモンですね。

実際にマウスを用いた実験では、クルミの投与により5-HTが増加したことが示されました出典[9]

クルミの摂取により不眠が解消する可能性があるかもしれません。

 

7.肌や髪の老化防止

クルミを摂取することで肌の老化防止にも役立つなら、とても嬉しいですよね。

じつは、クルミに豊富なω‐3系脂肪酸は、抗酸化作用により紫外線によるダメージを防ぐことで肌の老化にも役立つんです

また、ω‐3系脂肪酸の一種であるリノール酸やα-リノレン酸はメラニン生成を抑制する効果も示されているんです。

実際に、紫外線刺激による色素沈着されたモルモットの皮膚に不飽和脂肪酸を塗布した研究によると、最もメラニン生成が抑制されたのはα-リノレン酸、次いでリノール酸、オレイン酸の順であったことがわかりました出典[10]

α-リノレン酸やリノール酸の多いクルミは、肌の老化防止にもってこいな食材と言えますね。

さらに、クルミは白髪防止に繋がる可能性もあるかもしれません

というのも、抗酸化活性が低下することで白髪のリスクが増加することがわかっているんです出典[11]

肌や髪の老化防止にクルミを摂取してみてはいかがでしょうか。


8.テストステロンの増加

テストステロンは男性ホルモンの代表格であり、性欲や勃起力などの男性機能、筋肉の発達に関わる重要なホルモンであることは知っている人も多いでしょう。

さらに、やる気や活力、モチベーションの維持、精神面での健康にも大きな役割を担っているんです。

男性にとって、テストステロンを維持増加させることは大きなミッションと言えますね。

なんと、じつはこれまで解説してきた不眠、血糖値スパイク、肥満などがテストステロン量に大きく関わっているんです。

例えば、2011年に行われた不眠とテストステロンの関係についての研究では、若い男性が5時間の短時間睡眠を1週間続けただけで、​​血中テストステロン量が10~15%減少することが示されました出典[12]

また、血糖値スパイクによりテストステロンの濃度が平均25%低下したというデータも存在します出典[13]

さらに、肥満になると脂肪細胞から炎症性サイトカインが分泌されますが、炎症性サイトカインはテストステロンを分解してしまうことも立証されています出典[14]

つまり、クルミの摂取により不眠や肥満などの健康問題が解決すると、結果的にテストステロンの増加に繋がるということ。

さらに、クルミには亜鉛やマグネシウム、セレンなどテストステロン合成をサポートする 栄養素も豊富に含まれています出典[15]

テストステロンを増加させ男性機能を向上させるために、クルミの摂取は期待できそうですね。

合わせて読みたい:【テストステロン2.0】男性ホルモンを増やす最新戦略

 

クルミの食べ方のコツ

ここからは、量や種類など意識したいクルミの食べ方について解説します。

クルミで得られる効果を最大限に発揮するために、しっかり確認しておきましょう。

1日15~30gの間で調節

クルミは100gあたり713kcalであり、かなり高カロリーな食材

食べ過ぎれば余ったエネルギーは脂肪として蓄えられてしまいます。

よって、間食で推奨されているエネルギー量の200kcal出典[16]を目安として、1日あたり30gまでの間で食べましょう。

クルミ30gで213kcalなので、それ以上は食べ過ぎないように注意してくださいね。

また、クルミ15g/日で血中脂質が改善したという研究結果出典[4]があるため、中性脂肪やコレステロールが気になる人は15g/日を目安に摂ってみてはいかがでしょうか。

 

毎日の継続で健康効果倍増

抗酸化物質は、体内で長期にわたり貯蔵できるものではありません。

よって、一度クルミを食べたからと言ってすぐに健康効果に繋がるというものではなく、毎日の継続摂取が大切になります。

とくにテストステロンや血中脂質の改善などは、長期摂取で効果が得られることが多いんです。

クルミの摂取で血中脂質が改善した研究でも、15g/日のクルミを6週間、継続摂取した結果です。

毎日の継続摂取を忘れないように、パンやヨーグルトと一緒に食べる習慣やチャック付の袋に入れて持ち歩くなどの工夫をしてみてくださいね。

 

無塩・素炒りのものを選ぼう

健康志向の高まりにより、ドラックストアやコンビニなどでもクルミが販売されており、味や種類も増えていますよね。

そこで注意が必要なのが、味がついていておいしいクルミ

塩がついているクルミは余分な塩分を摂取してしまう上、しょっぱい味付けで食欲が刺激され、食べ過ぎてしまう可能性があります。

糖分がまぶされたクルミも、余計に脂質や糖質を摂取してしまうことになります。

毎日のクルミ摂取には、無塩かつ素揚げのものを選ぶとよいでしょう。

 

ほかのナッツとの組み合わせもおすすめ

もちろんクルミだけでも健康効果が得られますが、目的によっては他のナッツと組み合わせるのもおすすめ。

例えば、アーモンドはビタミンEや食物繊維が豊富です

ビタミンEは強い抗酸化作用をもつ栄養素なので、これまで紹介してきた健康効果がさらにパワーアップするでしょう。

また食物繊維を追加で摂取することで、血糖値スパイクの防止や肥満改善にも一役買ってくれますね。

そして、テストステロン上昇効果をより引き出したいなら、ブラジルナッツが良いですよ

ブラジルナッツにはテストステロンの増加を促す栄養素「セレン」が豊富に含まれているんです。

ブラジルナッツは1粒あたり70μg程度のセレンを含むため、1日1〜2粒追加するだけで効果を発揮できるでしょう。

 

まとめ

クルミは他のナッツと比較して、脂質が多く、中でも健康効果の高い多価不飽和脂肪酸がメジャーなナッツの3倍以上も含まれています。

多価不飽和脂肪酸の中でもω-3系脂肪酸、ポリフェノールなどの抗酸化物質も豊富で、抗酸化作用により血中脂質の改善や動脈硬化リスクの低減、肌の老化防止、テストステロンの増加に繋がるでしょう。

クルミに豊富な食物繊維のおかげで、血糖値スパイクの防止及び肥満予防にも効果的で、メタボやダイエットをしている人にも嬉しいですね。

ただし高カロリーかつ高脂質であるため、食べ過ぎは禁物です。

少量を継続摂取して、元気で若々しい体づくりに役立てましょう。
 

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