納豆と性欲の驚くべき関係とは?男性への効果や食べ方など
2024年8月20日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

納豆ってどんな食品?

日本食として歴史のある納豆は私たちにも馴染みのある食品です。しかし納豆の栄養価や特徴について、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

まずは納豆の特徴や期待できる一般的な健康効果について解説しましょう。

歴史ある大豆の発酵食品

納豆は大豆を原料とする発酵食品であり、日本では古くから食べられてきた歴史があります。

納豆といえば、納豆菌に由来するあのネバネバが特徴的です。納豆菌が大豆由来のたんぱく質を分解する際、生成されたアミノ酸や糖がネバネバを生んでいます

有名な酵素であるナットウキナーゼも、納豆の発酵過程で納豆菌により生成されるもの出典[1]。豆腐や豆乳、きなこなど、ほかの大豆製品からは摂取が困難であるため、ナットウキナーゼの摂取は納豆を食べる大きなメリットのひとつと言えるでしょう。

また納豆は蒸した大豆をそのまま使用しているため、ほかの大豆製品に比べて成分の損失が少ない点も優秀です

たとえば苦みのある大豆サポニンは、豆腐において味を損ないやすいため量を減らしているものが多いようです。また滑らかな味わいの豆腐や豆乳からは食物繊維の摂取がほとんど期待できません。

大豆の栄養素を余すところなく摂りたい方にも、納豆はおすすめです。

 

体の調子を整える効果が豊富

納豆は大豆製品かつ発酵食品であることから、さまざまな健康効果が期待されています出典[2]

納豆に含まれる成分のうち、強い健康効果が確認されているものを確認しましょう。

【納豆由来の成分による健康効果】

効果主な成分
血栓予防、高血圧予防ナットウキナーゼ、大豆サポニン
食後高血糖の抑制食物繊維
血中脂質のバランス改善大豆レシチン、大豆サポニン、食物繊維
骨折予防ビタミンK、カルシウム、マグネシウム
アンチエイジング大豆サポニン、大豆イソフラボン
整腸作用納豆菌、食物繊維

納豆は血栓の形成を防ぐ力が強く、心筋梗塞や脳梗塞のような心血管疾患のリスクを下げる効果が期待できます

とくにナットウキナーゼには血栓の形成に関わるフィブリンやプラスミン基質を分解するように働きます出典[2]。血糖値や血中脂質を改善する効果も高いため、血液の状態を良好に保ち、血管を保護する効果が非常に高いと言えるでしょう。

また、納豆由来のビタミンKは骨粗鬆症のリスクを下げるためにも役立ちます

65歳以上の日本人男性1,662名を対象とした調査では、納豆の摂取量が多い方ほど、股関節全体と大腿骨頸部における骨密度が高いと報告されています出典[3]。骨の健康を保つために、納豆が役立つと言えそうですね。

また、大豆特有のサポニンやイソフラボンは抗酸化物質として機能するため、病気や老化の進行を抑え、体を若々しく元気に保つ効果も期待できるでしょう。

健康と若さを保つための食品として、納豆は幅広い世代から支持を集めているようです。

 

納豆と性欲の関係とは?

健康と若さの維持に役立つ納豆。元気な体を保つ効果から、性欲の高まりを期待する方もいるようです。性欲の落ち込みを解消するための食品として、納豆は役に立つのでしょうか。

男性の性欲はテストステロンと密接な関係があります。テストステロンは40代を過ぎると急速に減少する男性ホルモン。納豆にはテストステロンの減少を抑える働きが複数あり、適切な食べ方を続ければ性欲を維持するために役立つかもしれません。

ここからは性欲の減少を防ぐ可能性がある納豆の効果について解説しましょう。

抗酸化物質が精巣のテストステロン分泌能力を保護

納豆に含まれるサポニンやイソフラボンなどは抗酸化作用を持つことで知られています。豊富な抗酸化物質の摂取により、テストステロンの合成場所である精巣を保護する効果が期待できるでしょう

たとえば、高齢のラットが大豆イソフラボンを8週間摂取した実験では、血中テストステロン濃度の低下や、酸化ストレスの指標としてよく確認されるマロンジアルデヒド(MDA)の増加が抑えられ、さらに抗酸化能力の指標となるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やグルタチオン(GSH)の低下を大きく軽減できたことが確認されています出典[4]

【高齢ラットへのイソフラボン補給における影響出典[4]

 高齢マウスイソフラボン投与
血中テストステロン約54%低下約12%低下
MDA約2.31倍約1.74倍
SGH約30%低下約9%低下
SOD約31%低下約5%低下

糖尿病マウスへのサポニン投与においても同様に、テストステロンの低下を抑える効果や、酸化ストレスを軽減する効果が得られたと述べられています出典[5]

納豆由来の抗酸化物質はこのように、糖尿病や老化にともなう酸化ストレスを軽減する働きが強いようです。

精巣は活性酸素の発生量と、酸化されやすい不飽和脂肪酸の量がほかの組織よりも多く、酸化ストレスに非常に弱い組織です出典[6]。納豆の摂取で酸化ストレスを減らし、テストステロンの合成能力を守りましょう。

 

テストステロン減少の原因となる「血糖値スパイク」を防ぐ

納豆のネバネバや食物繊維には、血糖値スパイクを防止して精巣へのダメージを防ぐ効果が期待できます

糖尿病患者においては慢性的な高血糖による酸化ストレスで精巣がダメージを受けやすく、勃起不全(ED)や性欲の低下が生じます。一時的な高血糖である血糖値スパイクが日常的に繰り返されることでも、性欲低下やEDのリスクが高まるため注意が必要です。

19~74歳の男性74名による75g経口ブドウ糖負荷試験においては、血糖値の急上昇にともない平均テストステロン値が25%低下したと報告されており出典[7]、血糖値スパイクの影響がいかに深刻であるかがわかるでしょう。

納豆の血糖値スパイク防止効果が確認できる論文を紹介しましょう。白米と納豆を組み合わせて食べた場合、白米のみの単体摂取と比較して、食後120分間の血糖値の上昇幅を約6%抑えられたとする結果が得られました出典[8]

なお、この実験では白米と蒸し大豆の組み合わせも検証されましたが、白米との比較では有意差が見られませんでした。

実は納豆は蒸し大豆に比べて水溶性食物繊維の割合が多い食品。水溶性食物繊維は不溶性食物繊維よりも血糖値の上昇を抑える効果が強いため、より血糖値スパイクを防ぐ力が強いと考えられているのです出典[8]

【食品100gあたりの栄養素(日本標準食品成分表(八訂)増補2023年より)出典[9]

 水溶性食物繊維(g)不溶性食物繊維(g)
黄大豆(国産 ゆで)0.95.8
糸引き納豆2.34.4

白米やうどんのような高糖質食品は血糖値を急激に上げやすい食品。納豆を食事のはじめに食べて血糖値スパイクを防ぎ、精巣へのダメージを減らしましょう。

 

肥満の改善でテストステロンの減少を食い止める

納豆から効率よく摂取できる大豆サポニンには、体脂肪の合成を抑えて肥満を改善する効果が期待できます

内臓脂肪が増えすぎると炎症性サイトカインの発生量も増え、精巣にダメージを与えます。また炎症を起こした脂肪組織は、テストステロンを女性ホルモンのエストラジオールへと変換する酵素「アロマターゼ」の生成を増やすように働くのです出典[10]

過剰な脂肪はテストステロンの天敵。脂肪を落として肥満を改善することが、性欲の維持にいかに重要であるかがわかるでしょう。

納豆の血糖値スパイクを抑える効果は、肥満の改善にも役立ちます。血糖値の急上昇は、体脂肪合成を促すホルモン「インスリン」の分泌を増やすように働きます。食事に納豆をあわせることでインスリンの分泌量を減らし、体脂肪合成のリスクを抑えましょう。

サポニンには膵臓からの消化酵素、リパーゼの働きを抑える効果が確認されています。食事中の脂肪の消化や吸収を抑えられるため出典[11]、体重増加のリスクを落とす効果が期待できるでしょう。

サポニンは豆腐へ加工する過程で量が減りやすい成分効率よく摂取するためには納豆や蒸し大豆のような丸ごと大豆を摂れる食品がおすすめです。体重のコントロールのため、ぜひ納豆を取り入れましょう。

 

腸活によりテストステロンが増える可能性も

納豆による「腸活」も、テストステロンを増やすために役立つ可能性があります。

腸内環境の悪化により、肥満のリスクが高まるほか、体内の炎症反応も起こりやすくなるため、精巣がダメージを受けてしまいます腸活により肥満や炎症のリスクを下げられれば、テストステロンの増加やEDの改善効果も期待できるでしょう

腸内環境を保つためのカギは、腸内細菌の多様性を高めることにあります。ED患者では腸内細菌の多様性が少ないとのデータも存在しているため出典[12]、性欲や勃起力の改善には腸内細菌、とくに善玉菌の多様性を高めることが重要と言えそうですね。

2013年にカナダから発表された論文では、オスのラットの腸内細菌の多様性を高めることで血清テストステロンが増加したと報告されています。さらにこのラットの腸内細菌叢をメスのラットに移植したところ、テストステロンの上昇や炎症反応の減少が見られたとの結果も得られました出典[13]

納豆は善玉菌である納豆を含むことに加え、腸内の善玉菌のエサとなる食物繊維を豊富に含んでいます。実際に納豆の腸内細菌叢への影響を調べた研究では、納豆摂取後に善玉菌であるビフィズス菌が増加したと報告されています出典[14]

納豆は善玉菌を取り入れる手段としても、今ある善玉菌を増やす手段としても活躍できる食品であることがわかるでしょう。

関連記事:【テストステロン2.0】男性ホルモンを増やす最新戦略

 

「納豆の摂りすぎで性欲が落ちる」は本当か?

このように、納豆にはテストステロンを増やすように働くさまざまな成分が確認されています。毎日納豆を摂ることで、性欲や勃起力などの低下を抑える効果が期待できるでしょう。

一方で、納豆のような大豆製品の摂りすぎで性欲が落ちるとの噂を耳にしたことがある方もいるかもしれません。ここからは納豆の摂りすぎが招くリスクと、適切な納豆の食べ方について解説します。

イソフラボンがテストステロンを下げる可能性

大豆イソフラボンの摂取量が増えると、テストステロンが減少する可能性が指摘されています。

イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンに構造が似ており、女性においてはエストロゲンの働きをサポートする効果があることで知られています。そのため男性の摂取でもエストロゲンの働きが強まり、性欲や勃起力が落ちるのではと考えられてきました。

では実際にテストステロンとイソフラボンの関係について調査した論文を確認しましょう。イソフラボンを1日100mg(納豆1パック40gに換算すると3パック以上出典[15])以上摂取した研究は8件あり、テストステロンの減少が見られたのは次の2件です出典[16]

【大豆イソフラボンの摂取によりテストステロンの減少が見られたケース】

 2003年、イギリスの論文出典[17]2008年、アメリカの論文出典[18]
対象者男性20名男性20名
摂取量1日120mg(スコーン)1日141mg(豆乳1杯ずつ3回)
摂取期間6週間12か月
減少量約5.7%(総テストステロン)約5.8%(遊離テストステロン)

1日あたり100mg以上のイソフラボンを継続摂取しても、テストステロンが減少しなかったケースも8件中6件あります。イソフラボンが必ずしもテストステロンを落とすとは言い切れませんが、減少ケースが確認されている以上、摂りすぎには注意した方がよさそうですね。

 

大豆製品の量に気を付ければ性欲低下の心配はない

性欲低下を防ぐため、すべての大豆製品を制限する必要はありません。納豆を含めた大豆製品の量に気を付ければ、納豆の優れた成分を摂りつつ性欲低下のリスクを抑えられるでしょう。

大豆イソフラボンとテストステロンの関係を分析した論文では、大豆製品の摂取を習慣とするアジア人において、1日75mgまでの摂取であれば問題がないと述べられています出典[14]。また日本の食品安全委員会においても、1日の摂取目安量の上限として70~75mgが示されています出典[17]

大豆製品を安全に摂るためには、大豆イソフラボンを1日75mgまでに抑えるとよいと言えそうですね。

少し古いデータですが、厚生労働省の調査では大豆製品のイソフラボン含有量が次のように示されています。

【食品中100gあたりのイソフラボン含有量(厚生科学研究(生活安全総合研究事業)食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)より出典[17]

食品平均含有量(mg/100g)
きな粉266.2
大豆140.4
納豆73.5
煮大豆72.1
味噌49.7
油揚げ39.2
豆乳24.8
豆腐20.3
おから10.5
しょうゆ0.9

納豆を取り入れつつ大豆イソフラボンの量を計75mg以内に収められる組み合わせとして、次のようなものが考えられるでしょう。

  • 納豆2パック80g(約58.8mg)+根菜と油揚げの味噌汁(味噌7gと油揚げ20g:約7.4mg)=約66.2mg
  • 納豆2パック80g(約58.8mg)+冷奴75g(約15.2mg)=約74mg
  • 納豆1パック40g(約29.4mg)+大豆の煮物50g(約36.1mg)=約65.5mg
  • 納豆1パック40g(約29.4mg)+豆乳150ml(約37.2mg)=約66.6mg

納豆を1~2パックの範囲であれば、冷奴や味噌汁のようなほかの大豆製品も食べられることがわかります。1日の摂取目安量を超えない範囲で、適度に大豆製品を取り入れましょう。

 

納豆を上手く味方につけて性欲を高めよう!

テストステロンの減少にともなう性欲の低下には、納豆の継続的な摂取が効果的です。食物繊維や大豆サポニン、大豆イソフラボンなどの働きにより、酸化ストレスや肥満、腸内環境の悪化などを防ぐ効果が期待できるでしょう。

納豆は豆腐や豆乳のようなほかの大豆製品よりも、大豆サポニンや食物繊維を効率よく摂取できる点で非常に優れています。また納豆菌を含むため、腸内細菌を積極的に増やす力もとくに強く、腸活の強い味方となるでしょう。

ただし大豆イソフラボンの摂りすぎは、テストステロンを減少させる可能性があるため注意が必要。1日75mgまでを目安にする場合、納豆の摂取は1日1~2パックがおすすめ。ほかの大豆製品との組み合わせにも注意しつつ、毎日の納豆で性欲低下を防ぎましょう。

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