執筆者
管理栄養士/分子栄養学カウンセラー
岡かな
大阪市立大学食品栄養科、大学院修士課程修了。医療機関に勤務し、糖尿病や高血圧など生活習慣病の栄養管理に取り組む。その後はヘルスケア事業に移り、年間500人以上のダイエットをサポートする。現在はダイエットサポートの他、特定保健指導や健康に関わる分野の執筆も行っている。誤った情報で10キロ以上リバウンドした自分自身の経験から、科学的根拠に基づく正しい情報の発信を心掛けている。
納豆と勃起との関係とは?
納豆が女性の健康にメリットをもたらすことは有名ですが、男性の勃起力に効果はあるのでしょうか?
そもそも勃起力には、陰茎に送り込む血流の改善と性欲の高まりに関わるテストステロンの維持が重要です。
納豆には、血流改善やテストステロンの維持に役立つ効果があるのか、学術的視点から紐解いていきましょう。
血液サラサラ効果で勃起をサポート
納豆に含まれる栄養素で有名な「ナットウキナーゼ」。
ナットウキナーゼは、納豆菌がつくり出す、たんぱく質を分解する酵素です。
納豆のネバネバのもとになる成分ですね。
ナットウキナーゼには、血栓を溶かして血液をサラサラにする働きがあります。
脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症に関わる疾患を予防する効果も高く、心血管疾患の治療に使用されるほど出典[1]。
ナットウキナーゼによる血流の改善は、勃起力にも良い影響を与えるでしょう。
さらに、納豆由来のレシチンにも、乳化作用による血流改善効果が期待できます。
血液中のコレステロールを溶かして排出するように働きかけるため出典[2]、ドロドロの血液を改善しやすくなるでしょう。
実際に、高コレステロール血症の患者にレシチン500mg/日を摂取してもらったところ、1ヶ月後に総コレステロールが40.66%、LDL(悪玉)コレステロールが42.05%、2ヶ月後に総コレステロールが42.00%、LDLコレステロールが56.15%減少したことがわかりました出典[3]。
わずか1か月の継続摂取で血中コレステロールの低下に効果が見られたことは驚きですね。
血流が原因で低下した勃起力であれば、納豆を摂取することで、比較的早く改善効果を感じられるかもしれません。
勃起力を向上したい人、血栓症や高コレステロール血症を予防したい人は、ナットウキナーゼやレシチンの豊富な納豆の摂取をおすすめします。
抗酸化物質が勃起に関わる精巣や血管を保護
私たちの体は代謝や呼吸にともなう酸素の消費とともに、活性酸素を生じています。
過剰な活性酸素が精巣や血管を傷つけると、性機能や勃起力に支障が出てしまうでしょう。
とくに精巣は酸化ストレスに弱く出典[4]、活性酸素のダメージが大きくなりやすいためより注意すべきです。
そこで役立つのが、活性酸素から体を守る作用をもつ抗酸化物質。
納豆には「イソフラボン」や「大豆サポニン」という抗酸化物質が豊富に含まれており、勃起に関わる精巣や血管を保護する働きが期待できます。
実際に、高齢のラットに大豆イソフラボン100 mg/kgを8週間、毎日経口投与した研究が行われました。
その結果、過酸化脂質の指標となる物質「マロンジアルデヒド(MDA)」が低下し、抗酸化能力の高さの指標となる「グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx))」、「スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)」が有意に上昇したことがわかりました出典[5]。
さらにこの研究では、ラットの血中テストステロン値が上昇したこともわかっており、イソフラボンの抗酸化作用が精巣を保護したことでテストステロン値が上昇したのではないかと示唆されています出典[5]。
また、サポニンの精巣保護効果も実証されています。
2023年にイランで、糖尿病を誘発したマウスにサポニンを毎日投与する実験が行われました。
その結果、イソフラボンの研究と同じく、マウスの精巣のMDA濃度が低下し、精巣組織の損傷が有意に改善したことがわかったのです出典[6]。
このように、納豆に含まれる抗酸化物質は酸化ストレスから精巣を守ることで、性機能や勃起力改善に役立つでしょう。
血糖値スパイクを防ぎテストステロン合成能力を守る
血糖値スパイクとは、食後の血糖値が急上昇し急降下してしまう現象を言います。
じつは、血糖値スパイクは酸化ストレスを発生させテストステロン濃度に影響を及ぼします。
実際に、19~74歳の74人の男性に対し、75gの経口ブドウ糖負荷試験を行いテストステロン濃度を測定した研究では、血糖値スパイクによりテストステロンの濃度が平均25%低下したことが明らかになっているんです出典[7]。
そこで役立つのが、納豆に豊富に含まれている食物繊維。
食物繊維は腸の中で糖質を包み込みながら移動するため、糖質の吸収速度が遅くなることで、食後の急激な高血糖を防ぐことができるんです。
実際に、29~48歳の健康男性12人に対し、白米150gのみの食事と、白米150gに納豆45gを組み合わせた食事を摂取してもらい、その後の血糖値を測定した研究が行われました。
その結果、白米のみと比較して、白米と納豆の組み合わせでは食後の血糖値が常に低く、食後60分では血糖値が有意に抑制、さらに食後120分間の血糖値の上がり幅の合計値(AUC120)が約6%低くなっていることがわかったんです出典[8]。
さらにこの研究では、白米150gと蒸し大豆45gを組み合わせた食事についても測定されましたが、蒸し大豆よりも納豆のほうが血糖値の抑制効果が強いことが明らかになりました出典[8]。
ペクチンのような水溶性食物繊維やグアーガムのような粘性物質からは、より高い食後高血糖抑制効果を得られます。
納豆はこれらの物質を効率的に摂れることから、より高い効果が出たのではと述べられています。
血糖値スパイクの防止には、蒸し大豆よりも納豆がおすすめと言えそうですね。
腸内環境の改善で勃起力UP!?
「納豆=腸に良い」というイメージを持っている人も多いでしょう。
実際、納豆は腸活にうってつけの食材です。
なぜなら、納豆は発酵食品由来の善玉菌が含まれているだけでなく、豊富な食物繊維が善玉菌の餌になり腸内環境を整えるからです。
ところで、「腸活は勃起力の向上に役立つの?」と疑問を持った人もいるかもしれませんね。
じつは腸内細菌叢の乱れと勃起不全(ED)は密接に関連しているんです。
実際に、30人のED患者と30人の健康な人の腸内細菌叢を調べた研究では、ED患者は腸内細菌の多様性が低く、連鎖球菌の数が多いことがわかりました出典[9]。
多数の研究により、EDの病因は腸内環境の悪化による炎症反応に関連していることが実証されており、炎症を引き起こす主な原因は連鎖球菌とされています出典[9]。
腸内細菌叢を整えることで、炎症を改善しEDの原因を取り除ける可能性がありますね。
EDで悩んでいる人や心配な人は、納豆で腸内環境を整えてみてください。
納豆を食べる際に気を付けたいことは?
ここからは、勃起力向上のための納豆の食べ方や摂取時の注意点について解説します。
納豆で得られる効果を最大限に発揮するために、しっかり確認しておきましょう。
1日2パックまでを目安に
大豆製品に豊富なイソフラボンは、女性ホルモンに似た働きをするため、男性ホルモンであるテストステロンに影響を及ぼすという話を聞いたことはありませんか?
イソフラボンが体内のエストロゲン受容体に作用し女性ホルモン様の働きをすることで、テストステロンの合成が抑制されてしまう、という噂があるんです。
結論から言うと、「イソフラボンの摂取はテストステロンに影響を及ぼさない」と結論付けられた研究がほとんど。
ただし、一部の報告ではイソフラボンの”摂りすぎ”によりテストステロンが低下したというデータが存在するのも事実です。
イソフラボンを1日100mg以上摂取した8件の研究のうち、2件でテストステロンが減少していることが明らかになっているんです出典[10]。
どんな栄養素も、摂り過ぎは害になるということですね。
そこで、日本の食品安全委員会は、大豆イソフラボンの安全な1日摂取目安量の上限値を70〜75mg/日と発表しています出典[11]。
納豆1パック(45g)に含まれるイソフラボン量は約33mg程度出典[11]のため、納豆2パック(イソフラボン量は約66mg)までであれば適量と言えるでしょう。
大豆製品の摂取量を調節して勃起力を維持
納豆の摂取を2パックまでにしたとしても、他の大豆製品を摂り過ぎていればイソフラボンの過剰摂取に繋がる可能性があります。
大豆製品のイソフラボン量は以下の通り。
【大豆製品に含まれるイソフラボン量(mg/100g)】
食品 | 平均含有量(mg/100g) |
きな粉 | 266.2 |
揚げ大豆 | 200.7 |
大豆 | 140.4 |
高野豆腐 | 88.5 |
納豆 | 73.5 |
煮大豆 | 72.1 |
味噌 | 49.7 |
油揚げ | 39.2 |
豆乳 | 24.8 |
豆腐 | 20.3 |
おから | 10.5 |
醤油 | 0.9 |
※厚生科学研究(生活安全総合研究事業)食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)出典[12]より
納豆より100gあたりのイソフラボン量の多い大豆製品のうち、日常的に摂取しやすいのが豆腐やきな粉ですね。
豆腐は1丁(175g)で約35mg、きな粉は大さじ1杯(14g)で約37mgのイソフラボンを含みます。
また、豆乳は納豆より100gあたりのイソフラボン量は少ないですが、豆乳1杯200mg中には約50mgのイソフラボンが含まれています。
豆腐やきな粉、豆腐を摂取する場合には納豆は1パックまでに抑えましょう。
食事のはじめに食べて勃起力UP
納豆を食べるタイミングは、いつが良いのでしょうか?
おすすめは食事のはじめです。
なぜなら、食物繊維の多い納豆を食事のはじめに食べることで、血糖値の急上昇を防ぐ効果があるから。
「ベジファースト」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
ベジファーストとは、その名の通り野菜(ベジ)を最初(ファースト)に食べる食事法のことを言います。
実際に、18人の健康女性に対し、炭水化物を先に食べる場合と野菜を先に食べる場合のその後の血糖値の変化を調査した研究が、2023年に日本の京都女子大学にて行われました。
それぞれの食事内容と時間は以下の通りです。
- 炭水化物を先に食べる場合
最初に炭水化物(白米)を6分、次にたんぱく質(魚のフライ)を7分、最後に野菜(ごま油をかけたトマトとブロッコリー)を7分かけて食べる - 野菜を先に食べる場合
最初に野菜(ごま油をかけたトマトとブロッコリー)を7分、次にたんぱく質(魚のフライ)を7分、最後に炭水化物(白米)を6分かけて食べる
その結果、炭水化物を先に食べる場合と比較して野菜を先に食べる場合は、食後30分と60分後の血糖値が有意に低く、さらに食後120分間の血糖値の上がり幅の合計値(AUC120)が約1/2程度まで低くなっていることがわかりました出典[13]。
血糖値スパイクを予防するためには、食物繊維の多い納豆をごはんを食べる前に食べることがおすすめですよ。
合わせて読みたい:フル勃起しない原因4つとペニスを硬くする方法15選
まとめ
納豆には、ナットウキナーゼやレシチン、イソフラボン、サポニン、水溶性食物繊維などの栄養素が豊富です。
ナットウキナーゼやレシチンの血流を改善する働き、イソフラボンやサポニンの抗酸化作用、水溶性食物繊維の血糖値スパイク防止効果により、納豆は勃起力向上に寄与してくれるでしょう。
納豆は1日2パックまでを目安に食べましょう。
血糖値スパイクを予防することができるため、納豆は食事のはじめに食べることがおすすめです。
出典
LINEで専門家に無料相談
365日専門家が男性の気になる疑問解決します