アシュワガンダとテストステロンの関係や摂り方のコツを解説
2024年10月24日更新

執筆者

管理栄養士

井後結香

管理栄養士の資格取得後、病院に勤務。献立作成や栄養指導を経験後、健康相談員として地域の特定保健指導業務や疾病の重症化予防事業などに取り組む。健康管理の要となる食事の記事では、無理なく日々の生活に取り入れられるような内容を心掛けている。手軽かつ楽しい食改善で体質の向上を目指せるよう、読みやすく分かりやすい文章での紹介に努めている。

アシュワガンダってどんな成分?

アシュワガンダは「インド人参」または「ウィンターチェリー」とも呼ばれる植物。アシュワガンダには抗酸化作用を持つサポニンやアルカロイドをはじめ、ウィタノリド、ウィザフェリンA、シトインドシドなど、非常に多くの有効成分が含まれています

インドの伝統的なアーユルウェーダ医学では、ハーブとして何千年にもわたり使用されてきた歴史があります。とくに古来から睡眠の質の向上、ストレスや不安の解消、炎症の改善や性的問題の解決などに用いられてきたようです。

ちなみにアシュワガンダは「馬の香り」との意味がある言葉です。新鮮なアシュワガンダが馬の香りを放つことに加え、ハーブの抽出物の摂取により馬に似た強さと活力が得られるとも言われることから名づけられたとされています出典[1]

このようにさまざまな効果が期待できる一方で、アシュワガンダにはいくつかの副作用も確認されている点に注意が必要です。

以前はアシュワガンダも、一般に適量の摂取では副作用を生じないとされる健康食品やサプリメントの成分として認められていました。しかし副作用の報告が複数あったことを受け、2013年に医薬品の成分として指定され、国内でのサプリメント販売はおこなわれなくなりました。

一方で、海外ではアシュワガンダを含有したサプリメントが販売されています。アシュワガンダの使用は、効果と副作用の両方を知ったうえでおこなうべきでしょう。

 

アシュワガンダとテストステロンの関係とは?

アシュワガンダには馬に似た強さと活力が得られると言われるほど、精力増強の効果が期待できるハーブです。

男性の精力に関係する物質といえば、テストステロン。性欲や性機能、活力、筋肉の合成効率など、たくましさに関わるさまざまな機能を高める重要な男性ホルモンです。

アシュワガンダとテストステロンの関係については、主に次の点が判明しています。

  • 睡眠の質の改善
  • 血糖値スパイクの防止
  • 精巣の保護

近年では、不安やストレス、不眠に対するアシュワガンダの有効性が、多くの臨床試験で確かめられています出典[1]出典[2]出典[3]。不眠による睡眠時間の減少はテストステロンを大きく減らすため出典[4]、アシュワガンダによる睡眠の質の向上は、テストステロンの減少防止に役立つでしょう。

また、アシュワガンダにはグルコースの細胞への取り込みを増やして血糖値の上昇を抑える作用も確認されています出典[5]。食後の血糖値の急上昇は多大な活性酸素を発生させ、酸化ストレスを増やすことが分かっています。

とくに精巣は酸化ストレスに非常に弱い組織出典[6]。アシュワガンダの作用により食後高血糖を防止できれば、活性酸素の発生量を減らし、精巣を保護する効果も期待できるでしょう。

また、アシュワガンダ由来のさまざまな抗酸化物質も、酸化ストレスを減らすように働くため、さらなる精巣保護効果が得られそうですね。

実際にテストステロンが増えたケースを1例紹介します。40~70歳の太りすぎの男性57名を2つのグループに分け、アシュワガンダまたは偽薬(プラセボ)の摂取が16週間続けられました。期間終了後、アシュワガンダを摂取したグループは、プラセボを摂取したグループよりも、テストステロンが14.7%、男性ホルモンの前段階の物質であるDHEA-Sが18%増加したとの結果が得られたのです出典[7]

アシュワガンダには、テストステロンを減らす不眠や血糖値スパイクを防ぐ効果とともに、テストステロンを実際に増やす効果も期待できることがわかるでしょう。

 

アシュワガンダの最適量は?

テストステロンの増加をはじめ、さまざまな効果が期待できるアシュワガンダ。より効率的に効果を発揮させるためには、どのくらいの量を摂ればよいのでしょう。

アシュワガンダの主な効果として知られる、ストレス軽減、睡眠の質の改善、テストステロンの増加について、複数の研究から実際に摂取した量を表にまとめました。

【アシュワガンダの摂取量と実際に確認できた効果】

効果

摂取量

ストレスの軽減

200mg出典[3]、300mg出典[2]

睡眠の質の改善

120mg出典[1]

テストステロンの増加

60mg出典[7]、200mg出典[3]、300mg出典[8]、600mg出典[9]

このように、それぞれの効果が確認できたアシュワガンダの量には差があることがわかるでしょう。

とくにテストステロンの増加においては、1日60mgで効果が見られたケースから、その10倍量の600mgで効果が見られたケースまで多岐にわたります

4例の研究における、血清テストステロンの増加率を比較してみましょう。

【アシュワガンダの摂取量とテストステロンの増加率】

 

試験前

試験後

増加率

60mg

332.77pmol/L

378.38pmol/L

約13.7%

200mg

4.53ng/mL

4.86ng/mL

約7.3%

300mg

402.76ng/dL

415.64ng/dL

約3.2%

600mg

630.45ng/dL

726.64ng/dL

約15.3%

テストステロンの増加率は約3~15%台で確認されており、摂取量と増加率は比例していないことがわかります。

研究から適切なアシュワガンダの量は断定できないため、体調の変化を見ながら、販売元の推奨量の範囲内で量を調節する必要があるかもしれません。

 

注意!アシュワガンダの副作用について

アシュワガンダにはさまざまな効果が確認されていますが、日本では医薬品に指定されている成分であり、副作用が見られる可能性がある点に注意が必要です。

アシュワガンダの副作用として、黄疸や高ビリルビン血症をはじめとする肝機能障害が出た事例があります。

たとえば2014年には、20代男性がアシュワガンダを個人輸入し、推奨用量の2~3倍以上に増量して摂取を続けたところ、黄疸と皮膚のかゆみが出現しました。受診時の血液検査で高ビリルビン血症と肝機能障害が認められています。

アシュワガンダの摂取はすぐに中止したものの、その後も高ビリルビン血症が悪化し、中止後23日目に入院対応となりました出典[10]

また、海外でもアシュワガンダの多量摂取による黄疸、高ビリルビン血症、吐き気、皮膚のかゆみ、腹部の不快感など、肝障害に関わる複数の副作用が報告されています。なかでも皮膚のかゆみと高ビリルビン血症は5~20週間にかけて続き、正常化には1~5カ月かかったとする報告が寄せられました出典[11]

このように、アシュワガンダの多量摂取は重篤な肝障害を生じ、副作用からの回復までに長い期間がかかる可能性があります

サプリメントはどのような成分でも、推奨量以上の摂取でより多くの効果をもたらすものではありません。しかしアシュワガンダにおいては副作用の問題が大きいことから、摂りすぎにはとくに注意を払う必要があるでしょう。

副作用がある成分であることを踏まえ、体調を見ながらの慎重な摂取をおすすめします。

 

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アシュワガンダにはストレスの軽減、不眠の改善に加え、テストステロンを増やす効果が期待できます。入手には海外からの輸入が必要であること、副作用を生じる成分であることを踏まえ、慎重な使用を心掛けましょう。

より安全にテストステロンを増やせる成分はほかにも複数存在します。自身にあった、続けやすいサプリメント選びがテストステロンの増加には重要です。

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